リンパ浮腫の治療にかかる費用は？手術法の比較や保険適用について

リンパ浮腫の悪化に気をつけながらの生活に疲れ、「費用も気になるけれど効果が高い治療を受けたい」と思っていませんか。

リンパ浮腫には、必要に応じて手術と保存的治療を組み合わせる治療法が有効です。完全に治すことは難しいものの、軽度の段階で適切な治療を受ければ、症状の軽減や悪化予防が期待できます。

本記事では、リンパ浮腫の基礎知識に加え、治療の方法や費用について解説します。リンパ浮腫と長く付き合うストレスを少しでも減らすために、ぜひ参考にしてください。

リンパ浮腫とは

リンパ浮腫とは、リンパ管・リンパ節の損傷や機能低下によりリンパ液が正常に流れず、組織内に水分や蛋白質が溜まって生じるむくみのことです。

進行性の病気であり、自然治癒せず、一度機能が低下したリンパ管は修復できないため、完治は困難です。しかし、早期から適切な治療を行うことで、むくみといった症状を軽減でき、進行を防げます。

リンパ浮腫が進行した際に気づけるよう、原因と重症度別の症状を確認しましょう。

原因

リンパ浮腫の原因は、以下の2パターンに分かれます。

リンパ浮腫患者さんの90％以上が続発性で、日本では、以下のようながん治療のあとに生じるケースが多いことが特徴です。

・リンパ節郭清（かくせい）
・手術・放射線治療
・一部の抗がん剤治療

リンパ節郭清とは、がん手術の際に、転移の有無の確認、または転移を防ぐために周囲のリンパ節を切除することです。がんの転移・再発を防ぐ効果は見込めるものの、リンパ液の流れが悪くなり、リンパ浮腫を招いてしまいます。

症状

リンパ浮腫は、放置すると以下のように症状が進行します。

出典：国際リンパ学会『表3.病期分類』
 

0～Ⅰ期では自覚症状がないか、だるさや疲労感といった軽い症状しか出ません。腕・脚を高くして横になれば症状が治まりやすいため、リンパ浮腫だと気づかない方もいます。

Ⅰ～Ⅱ期になると、以下のような症状が出て、リンパ浮腫が自覚できるようになるでしょう。

・衣服がきつい
・指輪や腕時計などが装着しにくい
・靴が履きにくい
・正座しにくい
・重苦しさや痛みを感じる
・手や足を動かしにくい
・手に力を入れにくい
・皮膚が乾燥する

腕や脚のボリュームの左右差がはっきりと確認できる方は、Ⅱ期まで進行している可能性があります。Ⅱ期後期〜Ⅲ期になると歩行・家事・仕事をしにくくなり、日常生活に影響が出かねません。

重症のリンパ浮腫では、皮膚が象の皮のように厚く硬くなる象皮症（ぞうひしょう）という状態になるケースもあります。厚く硬くなった皮膚は元には戻らないため、リンパ浮腫は重症化する前に治療することが大切です。

リンパ浮腫の診断・検査

リンパ浮腫の診断は、問診や、腕・脚の太さや皮膚の状態を確かめる視診・触診に加え、進行度をより詳しく把握できる以下の検査によって行われます。

リンパシンチグラフィーは、むくみがある手や足の指の間に薬剤を注射して行う検査です。リンパ液が流れているところは筋状に、むくみが生じている部分は雲のように写り、深い部位のリンパ液の流れが視覚的にわかります。

インドシアニングリーン（ICG）検査は、皮膚の浅いところにあるリンパ管を細かい部分まで確認できることが特徴です。

検査結果から正確な病状を把握し、状態に合った治療法を提案してもらいましょう。

リンパ浮腫の治療法①｜保存的治療

リンパ浮腫の治療は、以下のような保存的治療を組み合わせて行われます。

・スキンケア
・用手的リンパドレナージ
・圧迫療法
・圧迫した状態での運動療法

日常生活に取り入れて毎日行い、リンパ浮腫の症状改善・悪化予防を目指してください。

スキンケア

リンパ浮腫の保存的治療として、スキンケアが挙げられます。

むくんだ腕や脚の皮膚は薄くなったり乾燥したりしてバリア機能が低下しており、細菌感染しやすい状態です。小さな傷から細菌に感染して蜂窩織炎（ほうかしきえん）に陥ると、高熱が出て入院が必要な場合もあり、リンパ浮腫の悪化にもつながります。

以下のようなスキンケアの習慣を取り入れ、保湿や傷の予防に努めましょう。

・皮膚を清潔に保つ
・保湿剤で肌の潤いを維持する
・長袖・長ズボンを着用して傷や虫刺されを防ぐ
・調理やガーデニングのときは手袋をつける

リンパ浮腫のある部位に赤みや腫れ、熱感などの症状が現れた場合は、蜂窩織炎を発症している可能性があります。安静にして患部を冷やし、すみやかに医療機関を受診してください。

用手的リンパドレナージ

用手的リンパドレナージも、リンパ浮腫の保存的治療の1つです。溜まったリンパ液を正常なリンパ節に流し込むイメージで、手技に精通した専門家が優しい力でマッサージを行います。

用手的リンパドレナージは、美容目的のリンパドレナージュとはまったくの別物です。リンパ管・リンパ節の位置や、力のかけ方を正しく理解して行う必要があります。むくみが気になるからといって自己流でマッサージを行うことも避けましょう。

用手的リンパドレナージは単独での治療効果がはっきりと証明されてはいないため、ほかの保存的治療と組み合わせることが必要です。

圧迫療法

弾性ストッキングや弾性スリーブのような弾性着衣を用いた圧迫療法も、リンパ浮腫の保存的治療です。症状に応じた圧力を外側からかけることで、リンパ液の流れを促したり、体液のうっ滞を改善します。

日中は弾性着衣を装着しておく必要がありますが、リンパ浮腫のある腕や脚を常に良い状態に保てるため、症状の進行予防にも役立ちます。

圧迫療法では、症状に合った圧迫圧や形状の弾性着衣を選択することが必要です。しわができたり、たるんだりしていると適切に圧迫できないだけでなく、症状を進行させたり　
痛みや肌トラブルの原因になったりします。

自己判断で市販のむくみ防止ソックスを使うことは避け、専門家の指導を受けて圧迫療法を実施しましょう。

圧迫した状態での運動療法

リンパ浮腫の保存的治療の1つは、弾性着衣やバンデージを着用しながら軽い運動をする方法です。筋肉の動きがポンプのようにリンパ管や血管を刺激するため、リンパ液や血液の流れの改善が期待できます。

無理なく続けられるよう、散歩やストレッチのような軽い運動がおすすめです。腕にリンパ浮腫がある人は肩を回す、脚のむくみの場合は膝や足首を曲げたり伸ばしたりするといったストレッチを毎日の生活に取り入れましょう。

息を切らすような激しい運動は血流が増え、リンパ液の産生を促してしまい逆効果になりかねません。専門家と相談しながら運動の種類・強さ・時間を決めてください。

リンパ浮腫の治療法②｜手術

リンパ浮腫の治療法には、手術という選択肢もあります。手術の方法によってはリンパ液の流れる道を新たに作り、リンパ管機能の根本的な改善が期待可能です。

3つの手術方法の違いと、当院でのリンパ管静脈吻合術（LVA）について詳しく解説します。

手術方法の比較

リンパ浮腫の治療のために行われる手術には、以下のような種類があります。

・リンパ管静脈吻合術（LVA）
・リンパ管・リンパ節移植術（VLNT）
・脂肪吸引術（LS）

リンパ浮腫治療で代表的な手術は、リンパ管静脈吻合術（LVA）です。流れが滞ったリンパ管を途中で切って近くの静脈につなぎ、リンパ液が流れる道を新たに作ります。軽度〜中等度のリンパ浮腫に対する効果が期待できます。

リンパ管・リンパ節移植術（VLNT）は、健康なリンパ管・リンパ節をほかの部位から採取し、患部に移植する手術です。重度のリンパ浮腫に対しても一定の効果が見込めます。

脂肪吸引術（LS）は、リンパ浮腫により増生した脂肪組織を除去する方法で、LVAやVLNTのような手術と併用される場合もあります。

各手術方法のメリット・デメリットを比較しました。

リンパ浮腫の状態に合った術式を選ぶ必要があります。症状が軽いうちに手術すると、傷が小さく済んだり、局所麻酔で行えたりといった負担の少ない方法を選択可能です。

当院が注力している手術｜リンパ管静脈吻合術（LVA）

リンパ浮腫の治療法として、当院ではリンパ管静脈吻合術（LVA）に注力しています。リンパ管静脈吻合術（LVA）は、直径0.5mmほどのリンパ管と静脈を顕微鏡下でつなぎ、リンパ液の流れる道を再構築する方法です。

手術では、リンパ管と血管の位置やリンパ液の流れの状態によって、以下の方法を臨機応変に使い分けます。

開する位置は、手術前の検査で決定します。患者さんの体への負担が少ない局所麻酔で手術が行われ、術後はすぐに歩いて帰宅可能です。傷口が小さく済むので、日常生活への影響も最小限に抑えられるでしょう。

リンパ管静脈吻合術（LVA）は、リンパ管の機能が残っている状態で受けたほうが、高い治療効果を得られます。

当院のリンパ管静脈吻合術（LVA）の流れや治療効果を詳しく確認する

当院で手術を受ける場合の流れ

当院でリンパ管静脈吻合術（LVA）を受ける際の一般的な流れは、以下のとおりです。

1. 初診・検査
2. 手術
3. 再診・フォローアップ

初診では、患者さんの症状や既往歴を伺い、必要に応じてICG検査や超音波検査、患肢の計測を行います。検査や保存的治療実施の結果をもとに、手術が勧められるかを判断して治療方針を決定するため、不明点や心配なことがあれば遠慮なくお伝えください。

手術は局所麻酔下で実施し、顕微鏡を使用してリンパ管と静脈をつなぎ合わせます。手術にかかる時間は通常2〜3時間ほどです。

術後は切開した部分に防水テープを貼り、当日中に帰宅していただけます。圧迫療法を行なっている方は、術後も続けましょう。傷口が小さいので術後の腫れや痛みはほとんどありません。痛みのある場合でも、鎮痛剤でケアできる方がほとんどです。

術後半年を目安に再検査を受けていただき、傷の状態やリンパ浮腫の改善状況を確認します。必要に応じてフォローアップを行うため、ご安心ください。

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リンパ浮腫の治療にかかる費用は？

リンパ浮腫の治療費用は、治療内容や保険適用の有無によって異なります。

主な治療法の費用について、保険適用になるかも含めて紹介します。当院における診療費用についても解説するので、希望する治療を決める際の参考にしてください。

公的保険の対象となる場合がある
以下のうち一方の条件を満たす方は、国の基準を満たした医療機関でリンパ浮腫の治療を受けた場合、公的保険が適用されます。

1. がん治療でのリンパ節切除後にリンパ浮腫を発症した
2. 原発性のリンパ浮腫である

弾性着衣は、リンパ節郭清後のリンパ浮腫の方、原発性リンパ浮腫いずれも医師の指示書があれば1回に2着まで療養費（3割負担）で購入できます。使用による劣化を考慮し、半年ごとの申請・購入が可能です。

ただし、リンパ浮腫だと診断される前に予防的に行うリンパ管静脈吻合術（LVA）や、一部の脂肪吸引術（LS）には保険が適用されません。手術を受けるタイミングには注意してください。

当院での診療費用について

当院では、手術を含む、リンパ浮腫におけるすべての診療を保険適用で行なっています。リンパ管静脈吻合術（LVA）を受ける場合は、高額療養費制度の申請をすると、自己負担額が約5～30万円で済みます。

患者さんの経済的負担が大きくならないよう、通常は保険適用でないICG検査は無料です。

さらに、当院で手術を行う方で適応のある方には、自宅で無理なく続けられる銀座リプロ式運動療法を無料で指導しています。手術との併用により高い効果が期待できます。

 

リンパ浮腫の手術は当院へご相談を

リンパ浮腫の手術をお考えの方は、当院へご相談ください。当院では、手術を含むリンパ浮腫の治療を保険適用で行なっており、費用負担を抑えられる体制を整えています。

専門的な検査・手術のほか、弾性ストッキングの提供といった包括的なリンパ浮腫治療を実施しています。リンパ浮腫治療の経験が豊富な医師が、症状に合った治療法をご提案可能です。

「リンパ浮腫の治療を続けているけど効果がない」「症状が進行している気がする」といった場合は、ぜひ一度当院の初診をご予約ください。

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