リンパ浮腫には運動が大切だとわかっていても、忙しさや症状による動きにくさから、毎日続けることは難しいものです。
本記事では、「むくみ改善のためにできることをしたい」と前向きに考えている方へ、運動療法のポイントや続けやすい方法を紹介します。
むくんだ部位を自分で管理しようという姿勢は、リンパ浮腫治療において非常に大切です。頑張りすぎずに運動を生活に取り入れられるよう、ぜひ参考にしてください。
リンパ浮腫を発症したら、まず以下の4つの保存的治療に取り組むことが基本です。
保存的治療は、手術せずに症状の進行を抑えたり改善を目指したりする方法で、早期から始められ、長期にわたって続けていく必要があります。がん診療ガイドラインでも推奨されており、患者さんが日常生活のなかで継続して取り組めることが重要です。
スキンケアは、リンパ浮腫の保存的治療の1つで、発症前から実施したい方法です。
リンパ液が滞っている部位は乾燥してバリア機能が低下しており、皮膚の小さな傷から細菌が侵入しやすいといえます。
老廃物の貯留した部位に細菌が入ると増殖し、蜂窩織炎(ほうかしきえん)という感染症につながります。感染を繰り返せばリンパ管の機能が徐々に低下し、むくみが悪化するでしょう。
蜂窩織炎をきっかけにリンパ浮腫を発症するケースもあり、むくみのリスクがある部位は日常的に皮膚を健康に保つことが非常に大切です。
リンパ浮腫におけるスキンケアの基本は、以下の3つです。
皮膚にクリームを塗ると不衛生であるといわれることもありますが、当院では、入浴後に肌に浸透しやすい保湿剤を使用することを推奨しています。ささいな習慣の継続が大きな差につながるため、無理なくできる方法を取り入れることが理想的です。
リンパ浮腫の保存的治療には、用手的リンパドレナージも挙げられます。用手的リンパドレナージは、教育を受けた専門家が行う特殊なマッサージ方法です。
ドレナージとは「排液」という意味で、滞ったリンパ液を健康なリンパ節に向かって誘導します。優しいタッチで皮膚を動かすようにし、体液の循環を助けます。
用手的リンパドレナージは、リンパ管・リンパ節の位置やリンパ液の流れる方向を正しく理解して行うことが必要です。強い刺激は逆効果となる恐れがあるため、指導を受けていない家族やマッサージ店のスタッフに揉んでもらうことは避けてください。
用手的リンパドレナージ単独では、一時的な効果にとどまるケースが多く、圧迫療法や運動療法との組み合わせが推奨されています。定期的な施術とケアの併用で、腫れや重だるさを改善させられれば、より快適に過ごせるでしょう。
弾性着衣を使用した圧迫療法は、リンパ浮腫の保存的治療において中心となる方法です。
医療用の弾性着衣(ストッキング・スリーブなど)や弾性包帯を用いてむくんだ部位を一定の圧力で包み込み、血液・リンパ液の循環を助けます。皮膚の下に余分な水分・老廃物が溜まることも防止でき、脚や腕をスッキリとした状態に保てるでしょう。
治療には一定以上の圧迫圧が必要であり、弾性着衣はドラッグストアで売られているむくみを取るためのソックスとは異なります。専門家の指導に従った、適切な圧迫圧と長さの製品を選ぶことが大切です。
食い込みや横方向のシワは痛み・皮膚トラブル・むくみの悪化につながる可能性があるので、装着方法についての指導を必ず受けましょう。
圧迫療法は毎日続けることで大きな効果を発揮します。無理なく治療に取り組めるよう、はきやすさ・続けやすさにこだわった弾性着衣の選択をおすすめします。
医師が必要と判断した場合は、要件や上限額があるものの保険適用で弾性着衣を購入可能です。
リンパ浮腫の保存的治療の1つが、圧迫下での運動療法です。弾性着衣での圧迫と、筋肉が収縮・弛緩する際のポンプ作用を組み合わせることで、より効率的にリンパ液の循環を促進できます。
ポンプ作用とは、筋肉が動くときに血管・リンパ管を圧迫したり解放したりして、血液やリンパ液を押し出す働きです。
リンパ管は、血管と違って心臓のようなポンプ機能を持っていないので、適度な運動で筋肉や関節を動かし、流れを促すことが特に大切です。ポンプ作用の効果をより高めるためには、リズミカルな運動が適しています。
適切な負荷の運動は、リンパ浮腫の発症リスクを高めず、生活の質の向上にも貢献します。長く続けるためにも、楽しみながら体を動かしましょう。
自宅でもできる治療を行い、リンパ浮腫と前向きに付き合いたいと考えている方に向け、以下の項目にわけて運動療法のポイントを解説します。
運動はむくみの改善だけでなく、体重管理や全身の健康維持にもつながります。自分でリンパ浮腫の症状をコントロールできたという自信は、むくみのある体とポジティブな気持ちで向き合うきっかけになるでしょう。
リンパ浮腫における運動療法は、むくみが表れる前から実施可能です。脚や腕を圧迫した状態での自重トレーニングは、リンパ液の流れを促すドレナージ効果が見込めます。
筋肉のポンプ作用によってもリンパ液の流れが促進されるため、運動して筋力を保つことは循環機能の維持にもつながります。
肥満は、脂肪がリンパ管を圧迫することでリンパ浮腫を発症する要因の1つとなり、定期的な運動での体重管理は非常に大切です。
むくんでから運動を始めるよりも、未然に取り組んでおくほうが、リンパ浮腫を発症しても脚や腕の状態を良く保てるでしょう。
リンパ浮腫の症状改善には、毎日少しでも動くことが重要で、特別な運動でなくても効果があります。歩く距離を少し長くしたり、立ちっぱなし・座りっぱなしを避けたりすることがおすすめです。
余裕があれば、以下のような軽い負荷の運動を取り入れても良いでしょう。
運動時も弾性着衣を装着しつづけることが大切です。弾性着衣はプールの中で使えませんが、水圧が自然な圧迫となり、リンパ液の循環を助けてくれます。
リンパ浮腫の方が運動療法に取り組む際は、安全に実施するために、以下の点に注意しましょう。
激しい運動による血流の過度な増加は、リンパ液の増生を招き、むくみを悪化させる恐れがあります。強い疲労感やストレスは免疫機能を低下させ、リンパ浮腫の進行を引き起こしかねません。
むくんだ部位が赤く腫れたら、蜂窩織炎が疑われます。すみやかに運動を中止し、医療機関を受診してください。
自分に合った運動の種類・時間・頻度を専門家に指導してもらったうえで、運動に取り組みましょう。
運動療法がリンパ浮腫に良いとわかっていても、忙しい毎日のなかにエクササイズを取り入れることは非常に大変です。重だるさがあって思うように動けず、「運動を楽しむどころじゃない」という方もいるかもしれません。
毎日運動に取り組んでいたとしても、自己流の方法では効果が出ない場合も多くあります。
リンパ浮腫の進行を防ぎ、むくみを改善したい場合、続けやすく効果のある方法を選ぶことが大切です。
当院では、「運動する時間がない」「つらいトレーニングはしたくない」とお悩みの方に向けて、「銀座リプロ式運動療法」を開発しました。
銀座リプロ式運動療法は、簡単に心地良く行え、筋力アップとドレナージの効果が期待できます。「運動によってむくみを軽減したい」「定期的に用手的リンパドレナージに通う時間とお金がない」という方におすすめです。
銀座リプロ式運動療法の特徴や、対象者・流れ・効果について詳しく紹介します。
銀座リプロ式運動療法は、以下のような特徴があるプログラムです。
簡単なので、テレビを見たり音楽を聴いたりしつつ、朝晩ベッドの中でも行えます。用手的リンパドレナージのように通院しなくて良く、運動のために時間を設ける必要がない点もメリットです。
リンパ浮腫の保存的治療は、毎日続けることで効果を発揮しますが、つらく大変な方法ではモチベーションが続かないでしょう。銀座リプロ式運動療法は、手軽で心地良く、継続しやすい方法です。
当院では、医師の判断のもと、銀座リプロ式運動療法をリンパ管静脈吻合術(LVA)後の患者さんに導入しています。
LVAとはリンパ浮腫に対する手術の1つで、機能の低下したリンパ管を切断して近くの細い静脈につなぎ合わせ、リンパ液の流れるバイパスを作る方法です。
手術によってリンパ液の流れができている状態でしっかりと圧迫し、銀座リプロ式運動療法を行えば、循環をさらに促す効果が期待できます。
ただし、当院での受診の条件は、がん治療がすべて完了していることです。

銀座リプロ式運動療法が適していると判断された場合の流れは、以下のとおりです。
| 1 | 事前評価 |
・リンパ浮腫がある部位のサイズ測定 ・写真撮影 ・体重測定 |
|---|---|---|
| 2 | 運動指導 | 当院で手術を受けられた方は無料 |
| 3 | 自宅での実施 | 10日~1か月ほどの間、自宅で運動療法を実施 |
| 4 | 効果測定 |
・皮膚の状態の確認 ・サイズ測定 ・写真撮影 ・体重測定 |
むくんでいる部位の評価は、ご来院のたびに実施します。数字や写真といった客観的データで症状の変化がわかると、運動を続けるモチベーションになるでしょう。
銀座リプロ式運動療法は、むくみが進んでいる患者さんでも、自覚症状の軽減や患肢サイズの減少といった効果が期待できます。
子宮がん術後に左下肢リンパ浮腫を発症した女性が、銀座リプロ式運動療法を1週間行なった場合の脚の太さにおける変化は、以下のとおりです。
| 足の甲(指の付け根) | 足首 | 膝関節より5cm下 | 膝関節より10cm上 | 太ももの付け根 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 初診時 | 24.0cm | 24.0cm | 38.0cm | 45.0cm | 58.0cm |
| 1週間後 | 23.0cm | 23.0cm | 36.5cm | 42.5cm | 55.0cm |
わずかな期間で、下肢全体がサイズダウンしたことがわかります。
周径の計測部位は、以下の日本癌治療学会のがん診療ガイドラインに準じています。

出典:図2 四肢における周径の計測部位|日本癌治療学会 がん診療ガイドライン
リンパ浮腫のより良い治療法をお探しなら当院へご相談ください。
当院では、以下のような保存的治療・手術を実施しています。
リンパ浮腫の診察経験が豊富な医師が、専門的な検査を実施したうえで治療法を提案し、患者さんと一緒に方針を決定します。
リンパ浮腫は、放置すると進行する恐れがあり、早期の発見と治療がカギです。当院の治療で悪化や合併症のリスクを抑えましょう。ご相談をお待ちしています。
c 2019 Association of Microsurgery, Ginza Reproductive Surgery.