男性不妊治療・手術前には感染症検査のひとつとして、HIV検査が行われます。
「HIVって何?エイズとの違いは?」
「HIV検査は、なぜ行わなければならないの?」
本記事ではこのような疑問を持っている方に向けて、HIVの症状や感染経路といった基礎知識から、男性不妊治療時になぜ検査しなければならないかを解説します。
不妊治療を検討している方は、HIV検査の必要性を把握することで、納得したうえで検査を受けられるでしょう。ぜひ参考にしてください。
- 男性不妊・精索静脈瘤にお困りのかたへ
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男性不妊の40%にある精索静脈瘤は、精巣やその上の精索部(精管、血管、神経、リンパ管などを覆う膜)に静脈瘤(じょうみゃくりゅう・静脈の拡張)が認められる症状のことを指します。一般男性の15%に認められ、男性不妊症患者の40%がその疑いであるとされています。
HIVとは?
HIVはHuman Immunodeficiency Virus(ヒト免疫不全ウイルス)の略です。HIVとは、簡単に表現すると、人の免疫細胞に感染するウイルスの名称です。
人の体を細菌やウイルスなどの病原体から守る細胞である、Tリンパ球やマクロファージ(CD4陽性細胞)などに感染します。
HIVは、大きくHIV1型とHIV2型の2種類に分けられます。
HIVとエイズとの違い
ちなみにHIV=エイズではありません。エイズ(AIDS)はAcquired Immunodeficiency Syndrome(後天性免疫不全症候群)の略で、HIV感染により免疫機能が低下し、それに伴い引き起こされる病気のことです。
HIVに感染すると体内の免疫力が壊されてしまい、健康だったときには感染しなかった弱いウイルスにも感染しやすくなります。その結果、さまざまな病気を発症してしまうのです。
エイズと診断される病気は23種類と決められており、HIVに感染していても、23種類の病気に該当しない限りエイズではありません。つまり、HIVはエイズの原因となるウイルスの名称で、エイズはHIV感染によって発症する病気の総称です。
HIVの感染経路
HIVの主な感染源は、血液・精液・膣分泌液・母乳などです。ちなみに、唾液や涙、尿には他人へ感染させるほどのウイルスは含まれません。そのため感染経路として多いのは、以下の3つです。
- 性行為による感染
- 血液感染
- 母子感染
性行為による感染
性行為による感染は、最も多い感染経路です。HIVを含む精液・膣分泌液・血液などが、性行為によって相手の性器・肛門の粘膜や傷口から侵入することで感染します。
感染を予防するには、コンドームを正しく使用して、精液・膣分泌液・血液などが直接触れないようにするのが有効です。しかし、それで100%予防できるとは限りません。
血液感染
麻薬や覚せい剤の回し打ちなど、注射器・注射針を他人と共有し、感染者の血液が他の人の血管内に侵入することで感染します。ちなみに日本では、献血された血液は厳格なHIV検査を実施しているため、輸血で感染するのは稀です。
母子感染
HIVに感染している母親が妊娠すると、妊娠中や出産時、もしくは授乳時に子どもへ感染する可能性があります。ただ、妊娠初期にHIV検査を実施し、HIVに対する薬を内服、母乳を与えないなどの対策をとることで、母子感染を0.5%未満まで抑えることができています。
HIVの症状について
HIVの症状は経過ごとに異なります。
経過ごとの症状は次の章で解説しますが、感染初期(急性期)・無症候期・エイズ発症期の3つに分類するのが一般的です。時間が経過するほど症状は悪化します。
HIV感染による主な症状は、以下のとおりです。
- 発熱
- のどの痛み
- 倦怠感
- 下痢
- リンパ節の腫れ
- 咽頭炎
- 皮疹(ひしん)
- 筋肉痛
- 急激な体重の減少
- 著しい寝汗
症状と経過について
HIVに感染しても、短期間でエイズを発症するわけではありません。感染後は症状によって、以下の3つの時期に分類されます。
➀感染初期(急性期)
➁無症候期
➂エイズ発症期
➀感染初期(急性期)
感染初期(急性期)は、HIVに感染してから2~6週間の時期です。HIVが体内で急激に増殖していき、風邪やインフルエンザのような症状が見られます。
具体的には発熱・のどの痛み・倦怠感・下痢・リンパ節の腫れ・咽頭炎・皮疹(ひしん)・筋肉痛など。これらの症状は、HIV感染者の50~90%に出現しています。
しかし軽度なことも多く、症状は数日から数週間で自然と消えていくため、風邪やインフルエンザといった他の急性ウイルス症候群とほとんど区別がつきません。全く症状が現れないこともあるので、この時点でHIVに感染したと気づくのは難しいでしょう。
➁無症候期(無症候性キャリア期)
無症候期(無症候性キャリア期)とは、とくに何の症状も現れない時期で、HIV感染から5~10年が一般的です。ただしこの期間には個人差があり、5年以内にエイズを発症する人もいれば、10年以上経ってから発症する人もいます。
無症候期は自覚症状がほとんどないため、HIVの検査を自主的に受けない限り、感染していることに気づくのは困難です。
症状は出ないものの、HIVは体内で増殖を続けており、Tリンパ球などの免疫細胞が徐々に壊れていきます。免疫力が低下していくと、急激な体重の減少や著しい寝汗、下痢などの症状が出ることもあります。
➂エイズ発症期
治療を受けずに長期間経過した場合、免疫力の低下によりエイズを発症します。健康であればかかることが少ない「日和見(ひよりみ)感染」や「悪性腫瘍」「神経障害」などを引き起こすこともあります。
適切な治療を受けなければ、死に至ることもあるので、早期発見が何よりも大切です。
不妊症治療・手術前に何故行う?
不妊治療や手術を受ける際、HIV感染の有無を事前に検査で調べなければなりません。そこで陽性だった場合は治療を受ける必要があります。
「検査には費用がかかるし、自覚症状もないのに、なぜ検査しなければいけないの?」と疑問に思う方もいるでしょう。
HIV検査を行う最も大きな理由は、HIVに感染している女性が妊娠すると、母子感染してしまう恐れがあるからです。また、HIV感染が原因で不妊になっている可能性もあります。
HIV検査をはじめとする感染症検査は、妊娠を希望する女性に限らず男性も行わなければなりません。なぜなら、男性がHIVに感染していて、女性が感染していない場合、女性に感染させてしまうリスクが高いからです。
HIV感染は性交による感染が多いのですが、コンドームを使用していても完全に防げるものではありません。また、前述したとおり自分自身でHIV感染に気づくのは困難です。だからこそ、赤ちゃんを守るためにも検査する必要があります。
その他に行うスクリーニング検査について
男性不妊の治療を行う際は、HIV検査に限らずさまざまなスクリーニング検査(術前検査)が必要です。スクリーニング検査は、健康状態や不妊の原因となる疾患を調べるための検査で、治療前に受けなければなりません。
男性不妊で行われる主なスクリーニング検査は、以下のとおりです。
- 精液検査
- 感染症検査
- ホルモン検査
- 超音波検査
精液検査
精液検査は、精液量や精液中の精子濃度・精子運動率・奇形率・白血球数などを調べる検査です。男性不妊症で最も重要な検査で、基準値よりも低い場合は、自然妊娠が難しいことがわかっています。
検査をする際は、3~7日程度の禁欲期間を設けなければなりません。検査結果によって人工授精・体外受精・顕微授精などの治療が必要です。
感染症検査
感染症に罹患しているか確認するための検査で、血液検査により行われます。夫婦間の感染や母子感染、精子を扱うクリニック内での感染を予防するのが目的です。検査される主な感染症は、以下のとおりです。
- HIV
- HBs抗原
- HCV抗体
- RPR
- TP抗体(梅毒)
- 風疹抗体
感染症検査で陽性の場合は、不妊治療の前に感染症の治療を行います。
ホルモン検査
血液検査で、FSH(卵胞刺激ホルモン)・LH(黄体形成ホルモン)・テストステロン(男性ホルモン)を調べます。
FSHとLHは、脳下垂体から分泌されるホルモンです。FHSは精巣を刺激して精子を作るように促す機能があり、LHは精巣内にある細胞に働きかけ男性ホルモンの分泌を促します。テストステロン(男性ホルモン)は精巣から分泌されるホルモンです。テストステロンは精子の濃度や運動速度などに影響を与えます。
LH・FSH・テストステロンが低下している場合は、ホルモン治療が有効です。逆にFSHが高い場合、精巣での精子を作る機能が低下していると考えられます。
超音波検査
超音波の機器を使用して、生殖器の状態を検査します。精巣の大きさや状態、精索静脈瘤が無いかどうかを調べるのが目的です。そのほか、視診や触診でも診察が行われます。
男性不妊治療・精索静脈瘤手術は銀座リプロ外科へ
男性不妊治療や精索静脈瘤検診・手術は、ぜひ銀座リプロ外科へご相談ください。
当サイトを運営している銀座リプロ外科は、男性不妊治療を中心としたクリニックです。精索静脈瘤手術を得意とし、男性不妊や生殖機能に関する手術を総合的に実施しています。
日本全国から患者さまにご来院いただいており、大学病院や提携のレディースクリニックからのご紹介でご来院いただく方も多数いらっしゃいます。
当院は患者さまのプライバシーを重視しており、診察室は個室なので声もれを心配する必要はありません。
精索静脈瘤だけではなく、難治性EDの手術・パイプカット・パイプカット後のパイプカット再建術といった手術も行っております。男性不妊でお悩みの方は、ぜひ銀座リプロ外科へお気軽にご相談ください。
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〒104-0061 東京都中央区銀座2-8-19 FPG links GINZA 6F
この記事の執筆医師
永尾 光一 先生
東邦大学 医学部教授(泌尿器科学講座)
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長
昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。
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