近年のライフスタイルの変化や晩婚化を背景に、不妊の検査や治療を希望する方も年々増加傾向にあります。不妊治療という言葉を耳にする機会も増えてきたのではないでしょうか。
不妊は女性に原因があると考えている方も多いかもしれませんが、実際には不妊の原因の半分は男性にもあります。そのため、不妊治療は男女ともに早期に原因を発見し、治療を始めることが妊娠への近道なのです。
今回は、男性に不妊の原因がある場合、どのような見分け方が考えられるのか、またその治療方法についても解説します。
- 男性不妊・精索静脈瘤にお困りのかたへ
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男性不妊の40%にある精索静脈瘤は、精巣やその上の精索部(精管、血管、神経、リンパ管などを覆う膜)に静脈瘤(じょうみゃくりゅう・静脈の拡張)が認められる症状のことを指します。一般男性の15%に認められ、男性不妊症患者の40%がその疑いであるとされています。
男性の不妊原因はどんなことが考えられる?
男性不妊の主な原因は次の通りです。根治可能なものと対症療法が必要なものとあるので順に説明します。
根治可能な男性不妊の原因
根治可能な男性不妊の原因には、造成機能障害、性機能障害、精路通過障害があります。
精索静脈瘤(造精機能障害)
男性不妊の原因の80%を占めます。染色体やホルモンの異常が原因となることがありますが、明確な原因がわからない場合が約半数です。
精子をつくる機能が低下した「乏精子症」「精子無力症」「無精子症」などがあります。最も多いのが精索静脈瘤で約40%です。早期発見し、適切な治療や手術を受ければ自然妊娠の期待ができます。
性機能障害
神経障害や糖尿病、心因性、薬剤性など病気やストレスにより勃起や射精ができない状態です。
勃起障害(ED)は精神的な原因が考えられ、近年増加傾向にあります。性行為を行う際に十分な勃起を維持できないという症状ですが、ED治療薬で90%改善でき、自然妊娠も可能です。
また、射精障害は精液量が減少している、または精液が射出されない状態のことです。逆流性射精、糖尿病の他に、膀胱頸部手術や経尿道的前立腺切除術の合併症でみられます。
精路通過障害
なんらかの原因で精子の通り道が狭くなったり詰まったりなど、精液中に精子がうまく流れなくなる状態です。パイプカットや鼠径ヘルニアの手術を受けたことがある方にも見られ、パイプカット再建術が可能です。
低ゴナドトロピン性性腺機能低下症
先天性、後天性のものがありますが、下垂体からFSHやLHのホルモンが十分に分泌されず起こります。不足しているホルモンを自己皮下注射して補充すれば、無精子症であっても精子が出現するでしょう。後天性の場合には、自然妊娠も期待できます。
対症療法が必要な男性不妊の原因
対症療法が必要な男性不妊の場合は不妊の原因の治療をせず、人工授精や体外受精、顕微鏡授精、精巣内精子最終術(TESE)などにより妊娠を目指します。原因は以下の通りです。
染色体・遺伝子異常
染色体の数や形など遺伝子の突然変異により先天的に発生し、男性不妊の原因となることがあります。
がん治療に伴う抗がん剤などの薬剤性
精巣は抗がん剤による感受性が強い臓器です。抗がん剤の種類や量により異なりますが、正常な精子の形成に影響を与え、精巣の萎縮・乏精子症・無精子症などを引き起こします。
停留精巣
陰嚢内に精巣が入っていない状態で、先天的な異常の中でも頻度の高い疾患です。10歳未満で停留精巣の手術を受ければ男性不妊のリスクが下がります。大人まで手術を行わなかった場合は、精巣の発育不良や精子の酸性能が停止するため、男性不妊の原因になります。
原因不明
原因不明で、精子を作る機能が低下しているものは多いです。生活習慣の改善やストレスを下げるサプリメントなどもありますが、必ず妊娠できるというわけではありません。
男性が不妊の原因になっている場合の見分け方
男性側に不妊の原因があるかどうかは、セルフチェックやクリニックの検査で見分けられます。
<セルフチェック>
セルフチェックはあくまで目安ですが、下記のような方法で確認してみると良いでしょう。
陰嚢
左の精巣が小さい、陰嚢が腫れている、サイズの左右差などを確認します。
左陰嚢が垂れていて、表面がデコボコしている、陰嚢内にミミズがはっているように見えるなどあれば、精索静脈瘤の検査を受けましょう。
精液
精液量が少ない、血液が混ざっている、精液が白濁しておらず透明であるなどの場合も不妊の原因になることがあります。
自覚症状
陰嚢の腫れ・熱・痛みや違和感などがあったり、デコボコしたりしていると、精索静脈瘤の可能性が高いです。
<クリニックでの検査>
男性不妊については自覚症状がない場合が多いので、精液検査・尿検査・超音波検査・血液検査を受けることで判断することをおすすめします。
精液検査
精子を採取し、精液量や精子濃度、運動率、正常形態率などを調べます。
尿検査
性病の感染有無を調べます。
超音波検査
エコーを使用し、精巣のサイズの計測、精巣内部の異常や精索静脈瘤の有無などを調べます。視診・触診も行います。
血液検査
血液中のホルモン、抗精子抗体、染色体を調べます。感染する可能性のある感染症の有無も確認します。
男性不妊の場合は、まず精索静脈瘤の症状がないか確認することが大切です。なぜなら、痛みが少なく自分では気づきにくいということや、精索静脈瘤が男性不妊で最も割合が大きい原因であるからです。
男性の不妊原因を取り除く治療方法
男性不妊の原因によって治療法が異なります。内科的治療と外科的治療があるので、順に説明します。
<内科的治療>
薬物療法
薬の内服によって行われる治療です。逆行性射精の場合は抗うつ剤、EDの場合はPDE-5阻害薬を使用することもあります。
精子の数や運動量に問題がある場合には、漢方薬、ビタミン剤、血流改善薬などによる薬物療法を行いますが、薬物療法はあくまで補助的治療になります。
生活習慣の改善
障害を起こす可能性がある薬剤、喫煙、アルコールの過剰摂取、サウナ、長時間の入浴。など、男性不妊の原因として考えられるものはできる限り中止します。
<外科的治療>
精巣内精子回収法(TESE)
無精子症など改善が難しい場合、精巣を切開して精子を回収する方法です。
精索静脈瘤の治療・手術
精索静脈瘤の手術は結紮術といい、静脈瘤ができた箇所をある程度(完全ではなく)縛る方法が一般的です。多くの術者はリンパ管や動脈、静脈も縛ってしまうため、リンパ管の停滞による合併症として陰嚢水腫や精巣血流障害、精索静脈瘤の再発が考えられます。
精索静脈瘤の術式は複数あり、それぞれに合併症や再発リスクがあります。クリニックによって採用している術式が異なりますので、事前にリサーチすることも大切です。
保険適用の手術や一括結紮では比較的手技がやさしいため、手術経験が豊富でない医師が手術を行う場合も考えられます。
また、良いものを残す手術を行っていると説明する施設も増えていますが、手術内容が説明と本当に同じ内容かなど、注意が必要です。また、執刀する医師のマイクロサージャリーの経験や、これまでの症例数、治療成績なども参考にされると良いでしょう。
一度受けた手術は、後戻りできないため、手術を受けるときは十分に検討することをお薦めいたします。
男性不妊に精通し、手術の実績が豊富なクリニックを選びましょう。
銀座リプロ外科では、合併症や再発のリスクを極力抑えるためスーパーマイクロサージャン(0.5mm以下の血管吻合にも熟練した医師)による外科治療を行っております。
まとめ-男性の不妊治療なら銀座リプロ外科-
銀座リプロでは永尾医師が提唱したスーパーマイクロサージャンによる「ナガオメソッド」によって精索静脈瘤の手術を行っています。
1番の特徴はリンパ管や動脈、神経が全て温存できるという点です。ナガオメソッドでは、一般的な手術では結紮される部位の多くのものを温存する形で施術を行います。
ナガオメソッドの手術方法では豊富な知識と経験が必要で、経験の少ない医師が手術を行うことはありません。非常に微小な領域を扱うスーパーマイクロサージャンによる手術です。
ナガオメソッドは、再発率は0.5%と低く、重篤な合併症の心配もほとんどありません。日帰りで手術を行えるだけでなく、一般的な施術だと約5cmの切開も約2cmで済むため、身体の負担が少ないのも特徴です。オンライン診療も受け付けていますので、精索静脈瘤をはじめ、不妊でお悩みの方はぜひ一度当院までご相談ください。
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〒104-0061 東京都中央区銀座2-8-19 FPG links GINZA 6F
この記事の執筆医師
永尾 光一 先生
東邦大学 医学部教授(泌尿器科学講座)
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長
昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。
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