COLUMN

陰圧式勃起補助具 Vigor(ビガー)2020によるED治療

「EDを改善したいけれど、薬や注射、手術には抵抗がある」
「現在服用している薬の関係で、ED治療薬が飲めない」

このようにEDの治療法で悩んでいる方は、陰圧式勃起補助具 Vigor(ビガー)2020による治療を検討してみてはいかがでしょう。

陰圧式勃起補助具は、簡単な操作で勃起状態を作り出せる医療機器です。陰圧式勃起補助具を使うことで、陰茎海綿体に血液が送り込まれ、勃起を促します。

この記事では陰圧式勃起補助 Vigor(ビガー)2020のメリット・デメリットやリスク、他の治療法との違いなどを解説します。

 

男性不妊・精索静脈瘤にお困りのかたへ
男性不妊の40%精索静脈瘤が原因

男性不妊の40%にある精索静脈瘤は、精巣やその上の精索部(精管、血管、神経、リンパ管などを覆う膜)に静脈瘤(じょうみゃくりゅう・静脈の拡張)が認められる症状のことを指します。一般男性の15%に認められ、男性不妊症患者の40%がその疑いであるとされています。

陰圧式勃起補助 Vigor(ビガー)2020とは?

陰圧式勃起補助具として現在日本で唯一の管理医療機器

Vigor(ビガー)2020は、陰圧式勃起補助具のひとつです。厚生労働省から管理医療機器として認可を受け、2021年10月に株式会社A&HBが販売を開始しました。(医療機器製造販売承認番号:30300BZX00279000)

従来も厚生労働省から承認された「VCD式カンキ」という陰圧式勃起補助具がありましたが、現在は生産を終了しています。そのため、現在の日本で購入できる陰圧式勃起補助具はVigor(ビガー)2020のみです。

陰圧式勃起補助具とは

陰圧式勃起補助具は、主にED治療に用いられる医療器具です。ペニスポンプや、真空勃起装置(Vacuum Erection Device:VEDポンプ)と呼ばれることもあります。

シリンダー(円形の筒)の中に陰茎(ペニス)が入った状態で、付属のポンプを用いてシリンダー内に陰圧をかけ真空状態にすることで、陰茎海綿体に血液が送り込まれ、勃起状態を強制的に促す仕組みです。

陰圧式勃起補助具のメリットとデメリット

陰圧式勃起補助具のメリット

陰圧式勃起補助具には、主に以下のメリットがあります。

  • ● 性交可能な勃起状態になる
  • ● 即効性がある
  • ● 自分の好きなタイミングで使用できる
  • ● ED治療薬を飲めない方でも勃起効果を得られる
  • ● 器具の構造が単純で、年齢を問わず使いやすい
  • ● 故障しにくく長期的に使い続けられる
  • ● 前立腺癌術後でも使用できる
  • ● 海綿体がストレッチされて陰茎の若返りが期待できる

 

陰圧式勃起補助具を使用すると、陰茎の低酸素状態を和らげる効果が期待できます。低酸素状態の改善は、勃起機能も改善する。
また、EDではない方でも、陰茎の若返り効果を期待して使用するのもおすすめです。繰り返し使用することで、陰茎がより硬くなる、温かくなるといった変化が期待できます。

陰圧式勃起補助具のデメリット

陰圧式勃起補助具には、主に以下のデメリットがあります。

  • ● 性交時の満足感を得にくい
  • ● 痛みなどの軽度の副作用がある
  • ● 操作時に痛みを感じる場合がある
  • ● 勃起させるのに10分程度の時間を要する
  • ● 使用時間が30分と限られる

 

陰圧式勃起補助具で勃起状態にしても、そのままシリンダーを外したら血液が逆流して勃起が終わってしまいます。そのため陰茎の根本にゴムリングを巻き、締め付けたうえでシリンダーを外さなければなりません。

そのときに、違和感や不快感、痛みを伴うことがあり、性行為に集中しにくいところが欠点です。さらに陰茎内で血流がとどまる影響で、陰茎が冷たくなりやすく、挿入時にパートナーへ不快感を与えることもあるでしょう。ゴムリングを付けた状態で性交するので、パートナーの理解が欠かせません。

こんなお悩みの方におすすめ

陰圧式勃起補助具は、以下のような方に適しています。

  • ● ED治療薬を服用したが、あまり効果を実感できなかった方
  • ● 心臓病などの持病により、ED治療薬を服用できない方
  • ● 他の薬との飲み合わせの関係で、ED治療薬を服用できない方
  • ● 薬の副作用が心配な方
  • ● 薬は飲みたくない、薬に頼りたくない方
  • ● 根本的に治療がしたいと思っている方
  • ● 前立腺癌切除術をした後の陰茎リハビリが必要な方(術後にEDになることが多い)
  • ● 陰茎硬化症(ペロニー病)で陰茎が短縮した方

 

他のED治療(ED治療薬・陰茎海綿体注射・手術)との違い

ED治療薬について

ED治療薬には複数の種類があり、日本で厚生労働省の認可を受けているものは、バイアグラ(シルデナフィル)・レビトラ(バルデナフィル)・シアリス(タダラフィル)の3種類です。国内・海外で有効性と安全性が十分認められています。いずれも医師の処方が必要で、それぞれ効果や作用時間には差があります。

ED治療薬は、血管内皮細胞のeNOSという、勃起を促す物質に働きかけるのが特徴です。性行為の1時間くらい前に飲むことで勃起作用が起こり、副作用として顔のほてりや頭痛、目の充血といった症状が現れることがあります。

また、狭心症や心筋梗塞の治療などで特定の薬を服用している方は、飲み合わせの関係で、ED治療薬を服用できない。普段飲んでいる薬や既往歴がある方は、医師に正しく申告しましょう。

ED治療薬はこれまで保険適用外でしたが、2022年4月1日からは、バイアグラやシアリスを含む6成分16品目が、不妊治療に限り保険適用になりました。

陰茎海綿体自己注射について

糖尿病、前立腺がん術後、加齢などでED薬が無効な場合に、血管拡張薬であるプロスタグランジンE1を陰茎海綿体に性交の10分前に自己注射する。プロスタグランジンE1の代わりにパパベリンが使用されることがあるが、パパベリンは、陰茎海綿体の線維化(EDの悪化)を招くので、日本性機能学会ではプロスタグランジンE1を推奨しています。

陰圧式勃起補助具 Vigor(ビガー)2020によるED治療

▼陰茎海綿体自己注射の施術について詳しくはこちらをご覧ください
https://ginzarepro.jp/sinryo/penile-injections/

手術によるED治療について

ED治療の手術で代表的なのは、陰茎プロステーシス手術です。ED治療薬、陰圧式勃起補助具や陰茎海綿体自己注射による治療ができない方、効果を得られなかった方が最後の選択肢として行う治療です。陰茎海綿体内に、プロ―シスというシリコンの棒を埋め込みます。

埋め込んだシリコンの角度を自分で調整できるので、いつでも勃起状態を作れるのが利点です。しかし通常の勃起に比べて陰茎が細い、冷たいなど、満足感を得られない可能性があります。また、保険適用外の手術なので、費用は50~100万円などと高額です。

陰圧式勃起補助 Vigor(ビガー)2020での治療について

Vigor(ビガー)2020は、すでに解説している通り、現在の日本で唯一購入可能な陰圧式勃起補助具です。ビガーを使用することで陰茎の海綿体に血液が送り込まれ、勃起状態へ導きます。

手動による簡単な操作で勃起でき、他の治療に比べてどなたでも挑戦しやすく副作用が少ないのが特徴です。なお、ED治療薬と併用することもできます。

比較表

ED治療薬・陰茎海綿体自己注射・手術(陰茎プロステーシス手術)・陰圧式勃起補助具の主なメリット・デメリットを比較しました。

治療法 メリット デメリット
ED治療薬 ・国内外で十分な有効性と安全性が認められている
・バイアグラやシアリスを含む6成分16品目が、不妊治療に限り保険適用
・飲み合わせの関係で服用できない方もいる
・顔のほてりや頭痛などの副作用がある
陰茎海綿体自己注射 ・ED治療薬で効果がでなかった方も改善する可能性がある ・用量が多すぎると持続勃起症になり病院で勃起を治める必要がある
・実施している医療機関が少ない
・治療費は保険適用外
手術 ・薬や注射で効果を得られなかった重度のEDにも対応可能
・術後はいつでも勃起状態になれる
・自然な勃起に比べて満足感を得にくい
・実施している医療機関が少ない
・治療費は保険適用外
陰圧式勃起補助具 ・他のED治療ができない、抵抗がある方でも挑戦しやすい
・即効性がある
・操作が簡単で長期的に使い続けられる
・陰茎の痛みや冷たさなど、性交時に満足感を得にくい
・勃起させるのに10分程度の時間が必要で雰囲気がない
・使用時間が30分と制限される

 

治療のリスク

陰圧式勃起補助具 Vigor(ビガー)2020には、軽度ではあるものの副作用のリスクがあります。具体的な副作用は以下のとおりです。

  • ● 陰茎の痛みや腫れ
  • ● 皮下出血
  • ● 射精障害
  • ● 陰嚢吸引

 

ただしED治療薬に比べると、大きな副作用の心配は少ないと言われています。

 

治療の流れ

陰圧式勃起補助具 Vigor(ビガー)2020の使用方法を解説します。

まず内容物は以下のとおりです。

内容物

  • ● シリンダー
  • ● ポンプ
  • ● チューブ
  • ● パッキン×3
  • ● リング

 

なお、下記潤滑剤は別売りです。

ビガー(潤滑油)

組み立て方

➀シリンダーとポンプをチューブでつなぐ
➁シリンダーにパッキンを取り付ける
短いパッキンを先に取り付け、上にかぶせるように長いパッキンを取り付ける。陰茎が大き目の方は2つ、通常の方は3つ取り付ける。痛みが強い場合はパッキン1つでもよい。

ビガー(組み立て)

使い方

➀陰茎にリングを装着する
➁陰茎に潤滑剤を塗る
 必要に応じて、パッキンの入口にも塗る
➂亀頭をパッキンの穴にあて、ポンプを数回押す
 亀頭がシリンダー内に入る
➃陰茎全体がシリンダー内に入ったら10秒以上待ち、ゆっくりとポンプ操作を繰り返して勃起させる

取り外し方

➀陰圧解除ボタンを押して陰圧を止める
➁陰茎にパッキンが付いた状態で、シリンダーをパッキンから取り外す
➂パッキンを押し広げながら、陰茎から取り外す

お手入れ方法

➀水またはぬるま湯で洗い流す
➁乾燥後、専用ケースに収納する

 

よくある質問

  • 1日何分くらい行うべきですか?

    1日の吸引時間は約15分以内です。付属のリングは30分以上使用しないでください。

  • 使用後、どのくらいの期間で効果を実感できますか?

    約2ヶ月間継続的に使用すると、EDの改善が見込めると言われています。

  • 使用して効果を実感できたら、使用をやめてもいいですか?

    やめても問題ありません。しかし継続的に使用することで陰茎が鍛えられ、より長く効果を実感していただけます。

  • 操作は難しいですか?高齢者にも扱えるのでしょうか?

    操作は簡単なので、高齢の方でも問題なく取り扱えます。パッキンの穴に当て、手動式ポンプを数回押すと、亀頭がシリンダーの中に入ります。自分のタイミングでポンプを押してコントロールすることで勃起します。

  • お風呂場で使っても問題ありませんか?

    お風呂場で使うこと自体は問題ありませんが、ポンプ部分が濡れると故障を招きます。濡れないように注意しながら使用してください。

  • 過去に事故は発生していますか?

    Vigor(ビガー)2020に関する事故は報告されていません。しかし海外では、真空勃起装置を使ったまま就寝してしまい、皮膚壊死になった事例があります。長時間の使用や、使用した状態で寝てしまうことのないように気を付けてください。医師の指示に従い、取り扱い説明書を熟読のうえ使用するのが大切です。

  • お手入れ方法は面倒ですか?

    簡単です。パッキン・リング・シリンダーを水もしくはぬるま湯で洗浄して乾いた布で拭き、よく乾燥させてください。なお、煮沸・直射日光・アルコール・オイルなどは故障や劣化を早める原因になります。

  • パッキンが外れません。どうすればいいですか?

    ローション(潤滑剤)を使ってゆっくりと動かすと外れやすくなります。それでも外れないときは、パッキンを広げてハサミで切って外してください。

  • ローション(潤滑剤)は市販のものを使っても大丈夫ですか?

    ローションはVigor(ビガー)2020専用ローション「Flux(フラックス)」の使用を推奨しています。アルコール・オイル不使用で、乾いたときにサラリとした使い心地です。


この記事の執筆医師

永尾 光一 先生

永尾 光一 先生

東邦大学 医学部教授(泌尿器科学講座)
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

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