リンパ浮腫の特徴と症状|早めに気づくためのポイントと治療法 - 銀座リプロ外科
COLUMN

がん治療をした部位にむくみが続き、「リンパ浮腫かもしれない」と不安になっていませんか。

リンパ浮腫は、リンパ液の流れが障害された部位に起こる、むくみや重だるさを特徴とした病気です。一度発症すると自然には治らないため、できる限り早く症状に気づき、治療を始めることが大切です。

本記事では、リンパ浮腫の特徴や治療方法についてわかりやすく解説します。ぜひ最後まで読み、「受診が必要かもしれない」と気づいたときのすみやかな行動につなげましょう。

 


 

リンパ浮腫の特徴|症状と見た目

リンパ浮腫の特徴を症状と見た目に分けて解説します。

一度リンパ浮腫を発症すると自然治癒は期待できず、放っておけば徐々に進行して症状が深刻になりかねません。あらかじめ特徴を知っておき、発症時にいち早く気づきましょう。

リンパ浮腫の症状

リンパ浮腫は、以下のような症状が慢性的に続くことが特徴の病気です。

  • むくみ
  • だるさ・重さ
  • 皮膚の乾燥
  • 皮膚の柔軟性の低下
  • 多毛
  • 脂肪組織の増加

むくみやだるさは朝より夕方のほうが強いことが多く、軽度であれば休憩によって一時的に軽減される場合もあります。

しかし、進行すると皮膚が厚くなり硬化して関節の動きまで制限され、日常生活を送ることすらつらくなるでしょう。

リンパ管の機能が低下している部位にのみ症状が出ることも特徴的です。

リンパ浮腫の見た目

リンパ浮腫を発症した腕や脚には、特徴的な見た目の変化も見られます。

  • 腕や脚の太さに左右差が生じる
  • 皮膚の張りが強く光沢が出て見える
  • 皮膚のシワが目立たなくなる
  • 静脈の見え方が左右で異なる

重度のリンパ浮腫では、皮膚や皮下組織が厚く硬くなり、くびれのない象のような腕・脚になることもあります。

見た目の変化による心理的な負担から外出や就労を躊躇してしまうと、生活の質が低下するでしょう。外見上の特徴に気づいたら、すみやかに専門的な治療を受けてください。

 

リンパ浮腫とはどのような病気?

リンパ浮腫はリンパ管やリンパ節が十分に働かず、体の一部に水分・老廃物が溜まる病気です。

  • 一般的なむくみとリンパ浮腫の違い
  • リンパ浮腫の原因
  • 注意すべき合併症
  • リンパ浮腫の検査・診断方法

上記の項目を通して、一般的なむくみとは異なる、特徴的な症状について理解を深めましょう。

一般的なむくみとリンパ浮腫の違い

一般的なむくみとリンパ浮腫の違いは、次のとおりです。

比較項目 一般的なむくみ リンパ浮腫
原因 ・心臓・腎臓・肝臓などの病気
・生活習慣
・ホルモンバランス
リンパ管の機能低下
内容物 水分 水分・タンパク質
発症部位 全身に表れることが多い リンパ管の機能が障害された部位の近く

 

体内では常に血管から組織に水分が供給され、リンパ管で回収されています。循環が滞ったり、何らかの原因でバランスが崩れたりすると、血管外の水分が多くなりむくみます。

一方で、リンパ浮腫はリンパ液の流れが悪くなることで本来回収されるはずだった体液が組織に溜まり、腕・脚・体の一部がむくむ病気です。

健康に影響のないむくみは、時間の経過とともに軽減します。慢性的に続く場合は、一度病院で受診することをおすすめします。

リンパ浮腫の原因

リンパ液の流れを障害し、リンパ浮腫を引き起こす代表的な要因は、以下のとおりです。

原発性(先天性) リンパ管系の発達が生まれつき不十分
続発性(後天性) がん治療・感染・外傷など

 

日本では、がん治療のあとに発症するケースが多く見られます。転移を防ぐための病巣近くのリンパ節切除、手術・放射線治療や一部の抗がん剤の使用がリスク因子として挙げられます。


がん治療が終わってすぐに発症する人もいれば、10年以上経ってから起こるケースもあり、長い間注意しておかなくてはなりません。

注意すべき合併症

リンパ浮腫のケアを怠ると、合併症を起こすリスクがあるため注意が必要です。

合併症 症状
蜂窩織炎 細菌感染により赤く腫れて発熱や強い痛みをともなう
象皮症 皮膚が厚く硬くなり腕や脚にくびれがなくなる
リンパ漏 皮膚にできた小さな傷からリンパ液が漏れ続ける
リンパ小疱 むくんだ皮膚に1~2mmの水ぶくれができて治らない

 

まだ症状が表れていない状態での蜂窩織炎が、リンパ浮腫発症のきっかけになることもあります。リスクがある方は、発症前から合併症について知っておき、あらかじめ対策しましょう。

リンパ浮腫の検査・診断方法

リンパ浮腫が疑われる症状で受診した際は、問診・視診に加え、超音波検査・リンパ液の流れを調べる検査を通じて診断されます。

病院では、体重や腕・脚の太さの測定、皮膚の状態のチェックが行われます。がんの既往がある方は、治療した時期のような詳細を医師や専門スタッフに伝えましょう。

超音波検査では、皮膚の下に貯留した体液の状態を確認します。リンパシンチグラフィーやICG(インドシアニングリーン)検査といった、特殊な薬剤を注射してリンパ液の流れを見る検査は、早期リンパ浮腫の発見に重要です。

むくみは心臓や腎臓の病気・がんなどでも起こるため、リンパ浮腫かどうかを正しく区別する必要があります。

 

病院で受診すべきリンパ浮腫のサイン

次のような症状が腕や脚に見られる場合は、受診することがおすすめです。

  • むくみのせいで左右の腕・脚の太さが異なる
  • 重だるい
  • 皮膚にツッパリ感がある
  • 片方の腕や脚だけシワが目立たない
  • 皮膚がつまみにくい
  • 下着やアクセサリーの痕が残る

がん治療により、手術を受けた部位の周囲が一時的に腫れたり、抗がん剤の副作用でむくんだりすることもあります。

受診するタイミングは、がん治療が終了し、かつ手術から半年を過ぎた頃を目安にすると良いでしょう。

 

リンパ浮腫の治療方法

リンパ浮腫の治療方法は、大きく保存的治療と外科的治療に分けられます。

保存的治療は、手術以外の手段で症状の改善を目指す方法です。適切な時期に外科的治療を受ければ、良好な状態を保ちつつ悪化の防止が可能です。

リンパ浮腫の治療では、適切な方法を複数組み合わせることで、より良い結果が期待できるでしょう。

保存的治療

以下のような保存的治療を早期から行うと、リンパ浮腫の症状改善・悪化予防が望めます。

圧迫療法 弾性着衣・弾性包帯で患部を圧迫して組織間液の貯留を防ぐ
運動療法 ・筋肉の動きで血液・リンパ液の循環を促す
・圧迫療法と併用すると効果がより期待できる
スキンケア ・皮膚を清潔に保ち、保湿して感染を防ぐ
・感染につながる傷や虫刺されを予防する
用手的リンパドレナージ 専門家にリンパ液の流れを促すマッサージをしてもらう

 

自分で取り組める方法は自宅で毎日行い、症状の進行を防げれば生活の質の維持につながります。

外科的治療

リンパ浮腫に対する代表的な手術方法は、以下のとおりです。

リンパ管静脈吻合術
(LVA)
リンパ管と静脈をつないでリンパ液を流すバイパスを作る
リンパ管・リンパ節移植術
(VLNT)
・健康な部位から採取したリンパ管・リンパ節を患部に移植する
・上肢のリンパ浮腫では鼠径部から、下肢の場合は腋窩から移植することが多い
脂肪吸引術
(LS)
増殖した皮下脂肪を除去する

 

LVAは症状が進んでいないタイミングであれば数cmの切開で済み、高い効果が期待できる一方で、重症化していると改善が乏しい可能性があります。

外科的治療が必要でない段階から継続的に受診しておくと、手術を受ける適切なタイミングを見逃さずに済みます。

 

リンパ浮腫の治療効果を維持するポイント

次のようなポイントを意識して過ごし、保存的治療・外科的治療の効果を高めましょう。

  • 生活習慣の改善に努める
  • 症状を日々観察する

リンパ浮腫は一度発症すると完治が難しく、長期的に対処する必要があります。症状改善に向けた行動を毎日続けられるよう、無理したり過度に思いつめたりしないことが大切です。

生活習慣の改善に努める

リンパ液の流れは日々の生活習慣に大きく影響されるため、体重管理や運動、皮膚のケアなどの積み重ねが症状の安定につながります。

リンパ液の循環を妨げる習慣がないか、自身の生活を振り返ってみましょう。

リンパ液の流れを妨げる要因 改善させるポイント
肥満 ・適正体重を保つ
・食事の量・栄養バランスに気をつける
運動不足 日常的に適度な運動をする
長時間の同じ姿勢 同じ姿勢が続くときはこまめに休憩する
疲労・ストレス ・重労働を避ける
・ストレスを溜めない

 

毎日の生活の延長線上に治療があると認識し、むくみのある腕・脚を自己管理することが大切です。

症状を日々観察する

リンパ浮腫の治療効果を維持する方法の1つが、毎日の症状の観察です。早期に異変を見つけて適切な対応ができれば、合併症や悪化の予防が見込めます。

以下のような習慣を身につけ、むくんだ腕・脚を細やかに観察しましょう。

  • むくんでいる部位の太さを定期的に測る
  • 皮膚の赤みや熱感がないか入浴時に確認する
  • スキンケアの際に皮膚の変化をチェックする

むくみが急に強くなった場合は、症状の悪化や、使用している弾性着衣が合っていない可能性が考えられます。

赤い発疹や熱感に気づいたら、蜂窩織炎を疑い、すぐに医療機関で受診してください。小さな変化に気づく力を高めると、症状をコントロールしやすくなり、治療効果の長続きが期待できるでしょう。

 

当院が提供するリンパ浮腫の治療

当院では、リンパ浮腫に対して次のような治療を提供しています。

弾性着衣
「リンパスリム」
・はきやすさ・見た目の美しさにこだわった弾性着衣
・パンティストッキング・アームスリーブの展開あり
・オーダーメイドも可能
銀座リプロ式運動療法 ・リンパ液の排出を促す運動方法
・弾性着衣を装着した状態で実施
・自宅で簡単に実施可能
リンパ管静脈吻合術
(LVA)
・0.5mm以下の血管・リンパ管を扱う顕微鏡手術のプロが執刀
・局所麻酔・日帰りで実施可能

 

リンパ浮腫に関するお悩みを看護師や専門スタッフに相談できる、「リンパルーム」のご利用(自費5,000円)も可能です。

 

リンパ浮腫でお悩みの方は当院にご相談を

リンパ浮腫の特徴に当てはまる症状が出現した方は、ぜひ当院へご相談ください。当院では、リンパ管静脈吻合術(LVA)をはじめとし、圧迫療法・日常生活の指導といったリンパ浮腫に特化した治療を行なっています。

一度発症すると長く付き合わなければならないからこそ、リンパ浮腫のある方は不安なく治療を続けられる医療機関と出会うことが非常に大切です。

当院は、リンパ浮腫治療の経験が豊富な大学病院の医師が在籍しており、患者さん一人ひとりに合わせた治療を提供します。リンパ浮腫に関するお悩みは一人で抱え込まず、どうぞお気軽に当院へお聞かせください。

リンパ浮腫専門医師の診察を受ける

この記事の執筆医師

永尾 光一 先生

永尾 光一 先生

一般社団法人日本精索静脈瘤協会 理事長
医療法人社団マイクロ会 理事長
銀座リプロ外科 院長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。形成外科診療科部長を経験する(基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

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