リンパ浮腫とは?原因と治療法 | 銀座リプロ外科 東京のリンパ浮腫治療クリニック        
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リンパ浮腫とは?原因と治療法

がんの手術や放射線治療の影響で、リンパ液が溜まってむくんでしまうリンパ浮腫という病気になることがあります。

一度発症し、進行すると完治が難しい病気ですが、早期発見し適切なケアを続ければ悪化を防ぐことができ、手術で治療することも可能です。

今回は、リンパ浮腫がどのような症状なのか、また原因や治療法を詳しくご説明します。

 

リンパ浮腫とは

リンパ管やリンパ節が何らかの理由で傷ついてしまうと、リンパ液が体内に漏れたり、皮下組織に溜まったりして、腕や脚がむくんだ状態になる病気がリンパ浮腫です。

発症すると治りづらく進行しやすいため、むくんだ部分に重さを感じたり、関節が曲げづらくなったり生活にも影響することもあります。

大きなリンパ節は、首・わきの下・骨盤・鼠径部などの付け根にあります。リンパ管やリンパ節が傷ついた場合、リンパ液は代わりとなる別の細いリンパ管・集合管を通って鎖骨下静脈を目指します。しかし、リンパ液の回収ルートが少なくなり、リンパ管内の圧が高くなり続けるため、その部分の排液がうまくできず機能不全になり皮下組織にリンパ液が貯留してしまうのです。

リンパ管内圧が高くなると、リンパ管の壁を厚く硬く変性させていきます。それに伴ってリンパ管内が狭くなり、リンパ液が外へ押し出されます。さらにむくみが進行するため、状態もどんどん悪化していくというわけです。

リンパ浮腫には、リンパ管やリンパ節の先天的形成不全などの問題により発症する「原発性リンパ浮腫」と、がん手術や放射線治療で受けた圧迫や損傷がきっかけで発症する「続発性リンパ浮腫」があります。

続発性リンパ浮腫の大部分は、がんの手術により周辺のリンパ節を切除(リンパ節郭清)後、または放射線治療や抗がん剤治療後にリンパの流れが悪くなると起こります。乳がん、子宮がん、卵巣がん、前立腺がん、大腸がんなどの手術後に起こり、女性の発症率が高いです。

一度リンパ浮腫が悪化すると完治は難しく、症状は進行し続けます。早期発見をして、適切なケアをしましょう。

 

リンパ浮腫の予防と早期発見・治療

リンパ浮腫の予防

リンパ浮腫を予防するには、発症や悪化の要因を知り、普段から適度に体を動かすことでリンパの流れを良くしていく工夫が必要です。

<感染・炎症予防>

傷口が小さくても細菌が侵入することで起こる感染や炎症は、リンパ浮腫の発症や悪化の原因です。ケガ、虫さされ、日焼け、水虫、巻き爪、植物やペットによる外傷などが起因します。日頃から、保湿や日焼け止めなどのスキンケアで、肌のバリア機能を高めて清潔にしておくとよいでしょう。

<疲労予防、ストレス解消>

体重の増加はリンパ浮腫のリスクを高めます。バランスの良い食事と適切な体重を保ちましょう。また、疲れが溜まるとリンパ浮腫の発症や悪化に影響します。

過度の運動、重い荷物を長時間持つ、同じ姿勢での長時間の仕事、旅行、刺激の強いマッサージなども原因となります。長時間の作業などは、こまめに休憩をし、リラックスを心がけるとよいでしょう。

<体の部分的な圧迫を防ぐ>

衣類などの締め付けでリンパ管を圧迫してしまうと、リンパの流れを妨げてしまいます。ゆったりしたものを着用する必要があります。

締め付けの強い衣類を避け、きついアクセサリーを付けるのを控えましょう。また、重たい荷物を持たない、立ったままの状態を避ける、飛行機に乗るときはサポートタイプのストッキングを着用する、きつい靴を履かないなど留意が必要です。

リンパ浮腫の早期発見

まずは、早期の治療をするためにも、普段から自分の身体のどこがむくみやすいのかを知っておくことが大切です。

がんの治療後、むくみやすい場所は、がんの種類や治療をした場所で異なります。乳がんの場合は、わき・背中に、子宮がん・卵巣がん・前立腺がん・大腸がんなどは下半身に、それぞれ違和感があれば注意が必要です。

むくみやすい部分の腕や脚の太さを1ヶ月に1回程度、時間を決めて計測するようにしておくと変化に気づきやすいです。明らかに太さに左右差が出ている場合は、早めに担当医師に相談しましょう。

下記は、重症度に関係した症状です。

軽度 こわばり、重さ、だるさ、疲労感、違和感
中等度 重苦しさ、痛み、感覚の異常、皮膚の圧迫感、肌がカサカサする
重度 蜂窩織炎(ほうかしきえん)を繰り返すことによって、リンパ漏や皮膚表面の硬化

 

がんの手術後の後遺症として生じるリンパ浮腫の初期症状は、リンパ節を切除した側の腕や脚が、むくんだり、重だるく感じたりすることです。がん治療後、5年、10年以上たってから発症することもあります。

リンパ浮腫の検査

最近のリンパ浮腫の検査では、症状の進行を判断する画像診断が主流です。特に、リンパシンチグラフィーが広く容認されていましたが、インドシアニングリーン(ICG)蛍光リンパ管造影検査の方が、より早期のリンパ管異常を見つけ出すことができることがわかってきています。

ICG蛍光リンパ管造影検査では、症状がはっきりと現れる前から変化が見られます。初期の異常が出ているかどうか、また、その後慢性リンパ浮腫になる可能性も判断できるのです。

リンパ浮腫は重症化すると、症状を改善させるのにも時間がかかります。放っておいても完治せず、元には戻りません。腕や脚がだんだん太くなり、皮膚が厚くなったり、皮下脂肪組織が硬くなったりします。放置して病状が進んだ状態で治療をしてもなかなか戻りにくくなるので、早めに検査を受けましょう。

 

リンパ浮腫の合併症

リンパ浮腫の治療をしないで病状が進行してしまうと、合併症を起こす可能性もあります。腕や脚のむくみだけではなく、皮膚が厚くなったり、皮下の脂肪組織が硬くなったりします。次のような合併症に気を付けましょう。

蜂窩織炎(ほうかしきえん)

リンパ浮腫の中でも代表的かつ、最も注意すべき合併症です。皮膚や皮下脂肪層における感染症で、患部が赤く腫れあがる症状が出ます。

リンパ浮腫の部分は感染防御機能が低下しているので、小さな傷や虫刺されなどから細菌が入るとすぐに感染し、免疫反応で皮膚の炎症が起こります。短時間の間に38度以上の高熱が出ることもあり、炎症が重度になると緊急入院が必要な場合もあります。

蜂窩織炎になると、リンパ管で強い炎症が起こるので、リンパ浮腫が悪化してしまうという悪循環に陥ってしまいます。これを何度も繰り返すとリンパ浮腫もどんどん悪化していくので、日頃からスキンケアを行って皮膚を清潔に保ちましょう。

もし、感染や炎症をしてしまった場合、保存治療やセルフケアを行うと悪化させてしまう可能性があるので、一度休止してください。安静にして、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。

リンパ漏(ろう)

リンパ管部分に傷がつき、リンパ液が皮膚から漏れ出す病気をリンパ漏といいます。傷口から蜂窩織炎を起こす可能性もあるので、気づいたらすぐに病院を受診しましょう。

象皮症(ぞうひしょう)

長期にわたり進行したリンパ浮腫の重症化した部分が硬くなり、イボやかさぶたができたりする状態を象皮症といいます。象の皮膚のように皮膚が厚くなり、皮下組織も脂肪の沈着と線維化で固くなってしまうのです。手首やひじ、指、膝などの関節が曲がりにくくなってしまいます。

清潔を保つように心がけ、軟膏で保護するなどの治療を続けましょう。リンパ浮腫の早期のうちから適切なケアと治療をしていれば象皮症は防げます。

 

リンパ浮腫の治療法

リンパ浮腫の治療法

重度のリンパ浮腫を完治させるのは困難で、発症後は早めの治療をする必要があります。治療法としては、症状の軽減や悪化防止、進行を遅らせることを目的とした保存治療と、新たなリンパ管の流れを作る外科治療があります。

<保存治療>

まず保存治療を選択し、リンパの流れを良くし、症状を悪化させず改善するような治療を行います。リンパ浮腫のどの状態であっても継続すべき治療です。

医師や専門機関で浮腫の重症度の確認や指導をしてもらい、治療の見直しや外科治療の検討をします。病院だけの治療では難しいため、患者様自身も体重管理や感染予防など、日常的に気を付けながら積極的にセルフケアを習慣づけることが大切です。

保存治療は、下記4つの治療を組み合わせて行う治療です。

圧迫療法

腕や脚のむくみの部分に圧力をかけて、マッサージにより正常な場所に戻したリンパ液の逆流を防ぎ、むくみを軽減させます。弾性包帯、弾性着衣(弾性スリーブ・グローブ、弾性ストッキング)などを医療者からの指導のもとに最適なものを毎日装着します。

医療リンパドレナージ

医療リンパドレナージセラピストの資格を保有する専門家が、溜まったリンパ液の流れを優しく正しい方向へドレナージ(排液)する医療的マッサージです。皮膚や皮下組織に溜まったリンパ液を、リンパ節へ流してむくみを改善します。

運動療法

リンパ浮腫を発症している場合は、弾性包帯や弾性着衣を着用し、圧迫した状態で運動をします。リンパ浮腫専門の理学療法士や作業療法士の指導により、腕や脚の動きに合わせて筋肉の収縮と弛緩を繰り返すことで、リンパ液が流れやすくなります。

スキンケア

むくんだ皮膚は、正常な人に比べて感染症を起こしやすい状態です。普段から肌を清潔にし、乾燥や肌荒れ予防のため保湿する必要があります。ひび割れや水虫など、感染を起こしやすい部分を保湿し、皮膚のバリア機能を保つようにしておきましょう。

<外科治療>

外科治療には、リンパ液の運搬機能を再建する機能再建手術と、余分な組織を除去する減量手術があります。機能再建手術は早期であれば治療効果が高いですが、進行してしまっている場合は、機能再建手術と減量手術を組み合わせるのが有効です。

保存療法をしていて悪化した場合や、蜂窩織炎を繰り返す場合、リンパ液がにじみ出てしまっているリンパ管の本数が多い場合などに、外科手術が適応されます。手術によって、リンパ液の流れを新しく作り出すことで症状の軽減が期待できます。

リンパ管細静脈吻合術(LVA:Lymphaticovenular anastomosis)

顕微鏡をのぞきながら、皮膚直下の脂肪組織の中のリンパ管と細い静脈をつなげてバイパスを作り、溜まったリンパ液を静脈へ流す手術のことをいいます。リンパ管は0.5㎜くらいで非常に細いものです。

局所麻酔で受けられ、傷口が小さく済むので身体への負担が少ない手術です。正常なリンパ管が多く残っているほど高い効果が得られます。ただし、リンパ管を再生させるわけではないので、術後も圧迫療法は必須です。

リンパ節・リンパ管移植術

健康かつ正常なリンパ節やリンパ管を移植する手術で、リンパ管の機能回復や、LVAで改善が難しい重症の部位にも効果が期待できます。全身麻酔を使用する手術になり、採取箇所・移植箇所それぞれに傷が残ります。身体の負担は大きくなりますが、治療効果も高いので検査結果によってはおすすめの治療です。

減量手術

超音波によってリンパ管や血管、神経などの損傷を最小限に、リンパ浮腫組織を除去できます。

症状がかなり進行している場合、リンパ管細静脈吻合術、リンパ節・リンパ管移植術ではリンパの流れを改善できても脂肪を減らすことはできません。リンパ浮腫が進行すると、そこに皮下脂肪が溜まってしまい、さらにリンパや血管を圧迫して重症化してしまいます。

この場合、脂肪吸引や皮膚皮下組織の切除、またはこの両方を行います。機能再建手術と併用するとより高い効果が期待できます。

 

リンパ浮腫の治療は銀座リプロ外科へ

今回は、リンパ浮腫がどのような病気なのか、原因や治療法についてご説明しました。リンパ浮腫は、一度、病状が進行してしまうと完治は難しい病気です。がんの手術や抗がん剤治療を終えたら、リンパ浮腫の早期診断と早期治療を受けることを推奨します。

当院で行っている日帰りリンパ管静脈吻合手術(LVA)に関しては、身体への負担が少ない治療とされています。スーパーマイクロサージャリー(超微小外科手術)の領域で、0.5㎜前後の血管やリンパ管をつなぎ合わせます。高度で熟練した技術を持つ医師のみが執刀できる手術です。

技術が未熟な場合、リンパ管の損傷によりリンパ液が漏れてしまい、リンパ浮腫の進行を促進させてしまうことがあります。当院の医師は経験豊富で、長年リンパ浮腫の患者様を多く治療しているため、そういった心配は極めて少ないです。

また、銀座リプロ外科では、オリジナルのリンパドレナージ方法「銀座リプロ式リンパドレナージ」を開発し、全ての患者様にお教えしています。その後はお家で毎日簡単にセルフケアが可能です。

リンパ浮腫の治療は早期に見つかるほど効果的です。もし、気になる症状があるようでしたら、ぜひご相談ください。

 

参考文献

  1. リンパ浮腫ネットワークジャパン(リンネット) - リンパ浮腫の仕組みや治療法について
  2. がん情報サービス - リンパ浮腫 もっと詳しく
  3. 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院 - リンパ浮腫の原因や症状、合併症について
  4. 国立研究開発法人 国立がん研究センター 中央病院 - リンパ浮腫についての基礎知識

この記事の執筆医師

永尾 光一 先生

永尾 光一 先生

東邦大学 医学部教授
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 形成外科センター長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。形成外科診療科部長を経験する(基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

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