コラム 前立腺がん治療後のむくみはリンパ浮腫?予防・早期発見方法と対処法
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前立腺がん治療後のむくみはリンパ浮腫?予防・早期発見方法と対処法

  • 精索静脈瘤

前立腺がんの治療後、片方の脚がむくみ始めて悩んでいませんか。

前立腺がんを治療したあとに生じるむくみは、リンパ浮腫の疑いがあります。放置すると日常生活に支障をきたす恐れがあるため、早期に発見し、医療機関で受診することが大切です。

本記事では、リンパ浮腫の予防・早期発見方法や治療法を解説します。前立腺がんの治療後に表れやすいリンパ浮腫以外の合併症も紹介するので、気になる症状がある方はぜひ参考にしてください。

 

 

前立腺がん治療後に起こるリンパ浮腫とは


前立腺がんの治療後に脚や陰のう付近に認められるむくみは、リンパ浮腫の恐れがあります。リンパ浮腫は、何らかの原因でリンパ液の流れが阻害され、部分的に溜まってしまう状態です。

前立腺がんの処置が原因で発症する理由と、主な症状についてチェックしましょう。

前立腺がん治療が原因で発症する理由

以下のような前立腺がんの治療法にはリンパ液を流れにくくする副作用があり、リンパ浮腫が発症する確率を高めます。

治療法 リンパ浮腫の発症につながる理由
リンパ節郭清(かくせい) リンパ節を失うことでリンパ液の流れが悪くなる
放射線治療 放射線が当たった組織が変化してリンパ管を圧迫する
抗がん剤治療 抗がん剤がリンパ管の機能を障害する

複数の治療法を組み合わせることで、リンパ浮腫の発症リスクがさらに高まるケースもあります。

主な症状

リンパ浮腫の主な症状は、むくみやだるさ、関節の動かしにくさです。
リンパ浮腫は進行性の病気であり、国際リンパ学会によると、症状ごとに以下のようなステージに分類されます。

ステージ 症状
0期 リンパ液の流れが悪くなっているが、症状は表れていない
I期 むくみが表れているが、腕や脚を上げると症状が軽減する圧痕が見られるケースがある
II期 腕や脚を上げてもむくみが改善しなくなる圧痕がはっきりと見られる
II期後期 皮膚が硬くなり、押しても圧痕が見られなくなる
III期 皮膚が分厚くなり、皮下の脂肪が増える

参考:国際リンパ学会『表3.病期分類』

脚の付け根や陰部など、前立腺がんの治療を受けた部位の近くに気になる症状があれば、リンパ浮腫を疑いましょう。

 

前立腺がん治療は合併症が出現しやすい

前立腺がんの治療後は、リンパ浮腫だけでなく、以下のような合併症が出現しやすいため注意してください。

  • 尿失禁
  • 性機能障害(勃起障害・射精障害)

手術で前立腺直下の尿道括約筋が傷つくと、排尿機能が低下し、尿失禁が起こります。Xホールドのような圧迫着で会陰部(肛門と陰のうの間)に加圧し、尿道括約筋の収縮をサポートすることで、排尿機能を制御できる場合があるので、専門家への相談がおすすめです。

性機能障害が長引く場合は、陰茎海綿体注射(薬の投与)や陰茎の手術による治療を検討します。

 

前立腺がん治療後のリンパ浮腫予防のために

前立腺がん治療後のリンパ浮腫の予防には、以下の対策を行うことが大切です。

  • 適正な体重を保つ
  • 締め付けの強い衣服の着用を避ける

各対策について詳しく解説するので、日常的にしっかりと実践し、リンパ浮腫の発症予防を目指しましょう。

適正な体重を保つ

適正な体重を保つことは、前立腺がん治療後のリンパ浮腫の予防法として効果的です。

リンパ浮腫のリスク因子の1つとして、肥満体型が挙げられます。肥満になると、リンパ管のまわりに蓄積した脂肪細胞がリンパ管を圧迫し、リンパ液の流れが阻害されかねません。

BMI(体格指数)が25以上の方は、肥満体型とみなされるため注意しましょう。BMIは「体重(kg)÷身長(m)×身長(m)」で計算できます。肥満体型の場合は、日々の生活にウォーキングを取り入れたり、栄養バランスの良い食事を心がけたりすることが大切です。

締め付けの強い衣服の着用を避ける

前立腺がん治療後のリンパ浮腫を予防するためには、きつい下着や締め付けの強い衣服の着用を避けましょう。タイトな衣服やアクセサリーの着用で体を締め付けると、リンパ液の流れが滞る恐れがあります。

下着や衣服を脱いだあとに、皮膚に痕が残る場合はサイズが小さい可能性があります。ワンサイズ上げ、ゆったりとした服装を選んでください。

きつい衣服だけでなく足を組む・正座するといった行為も、リンパ液の流れを悪化させる要因なので、前立腺がんの治療を受けた方は控えましょう。

 

前立腺がん治療後のリンパ浮腫の早期発見方法

前立腺がんを処置したあとに生じるリンパ浮腫は、以下の方法で迅速に発見できるケースがあります。

  • むくみがないか確認する
  • 脚の太さを定期的に測定する
  • 症状が気になったら早めに検査を受ける

早い段階で見つかれば、より負担の少ない治療法で改善が望めます。自宅で定期的にチェックできる方法も紹介するので、参考にしてください。

むくみがないか確認する

むくみがないか確認することは、前立腺がん治療後のリンパ浮腫を早い段階で見つけられる手段の1つです。
下半身の皮膚に、以下のような変化が見られた場合は、リンパ浮腫の代表的な症状の1つであるむくみの兆候かもしれません。

  • つまみにくくなった
  • 硬くなった
  • しわが目立たなくなった
  • 押すと痕が残るようになった
  • 衣服やアクセサリーの痕が付くようになった

発症を見逃さないよう、丁寧にチェックしましょう。軽症のときは脚を上げるとむくみが消失するので、休めば治まるからといって安心はできない点を理解しておいてください。

脚の太さを定期的に測定する

前立腺がんの治療後に脚の太さを定期的に計測すると、リンパ浮腫を早期に発見できる可能性が高まります。治療前と比べて1cm以上脚が太くなっている場合は、発症が疑われます。
太さを計測する箇所は、以下の5つです。

  • 脚の付け根
  • 膝上
  • 膝下
  • 足首
  • 足の指の付け根

「イスに座っているときに膝上5cmの太さを測る」のように、毎回同じ姿勢・位置で測定し、太さの変化を認識しやすくすることが大切です。月初めの朝や月末の就寝前など、測定のタイミングもなるべく統一してください。

症状が気になったら早めに検査を受ける

前立腺がんの治療後にリンパ浮腫が疑われる症状を発見した場合は、早めに医療機関で検査を受けましょう。
病院では、確定診断やほかの病気との鑑別のために、以下のような検査が実施されます。

  • インドシアニングリーン(ICG)検査
  • リンパシンチグラフィー
  • 超音波検査
  • CT検査
  • MRI検査
  • 血液生化学検査
  • 胸部レントゲン検査
  • 心電図検査

病歴が診断の手がかりの1つとなるため、検査前の問診では前立腺がんの治療を受けたことをしっかりと伝えてください。

リンパ浮腫の主な検査方法について詳しく知る

 

前立腺がん後のリンパ浮腫の治療法

前立腺がん治療のあとにリンパ浮腫を発症した際の主な治療法は、以下の4つです。

  1. スキンケア
  2. 圧迫療法
  3. 運動療法
  4. リンパ管静脈吻合術(LVA)

リンパ浮腫は慢性的な経過をたどることが多い病気ですが、適切な治療をしっかりと続ければ、症状の緩和や悪化防止を実現できるでしょう。

1. スキンケア

前立腺がんを治療したあとにリンパ浮腫が生じた際の治療法の1つがスキンケアです。

健全な皮膚は、表層にある角質層が細菌やアレルギー物質の体内への侵入を防いでいます。しかし、リンパ浮腫になると、角質層の防御機能が低下し、細菌感染が起こりやすくなります。

感染を防ぐためには、皮膚を清潔にし、保湿することが大切です。石鹸やボディソープを泡立てて優しく洗うことを心がけ、タオルでゴシゴシと擦ってはいけません。皮膚を洗ったあとは、保湿剤を塗って乾燥を防ぎます。
小さな擦り傷や虫刺されも細菌感染の原因になるため、肌の露出を抑えられる服装を選びましょう。

2. 圧迫療法

圧迫療法も、前立腺がんの治療後にリンパ浮腫が起こった場合に重要な治療法です。弾性ストッキング・弾性包帯で患部に圧力を加え、リンパ液の流れが滞った部分から本来行く方向へ送り、症状の改善を目指します。

医療用の弾性ストッキングには、陰のうのあたりがメッシュ素材になっているリンパスリムのように、男性の体型を考慮して開発された製品もあります。患者さんによって適したサイズや圧迫圧は異なるので、専門家の指導のもとで購入・実施することが重要です。

弾性ストッキング・弾性包帯は日常的に装着することで効果が得られるため、はきやすさもチェックして選びましょう。

3. 運動療法

前立腺がん治療のあとにリンパ浮腫が生じた際は、運動療法によっても症状の緩和が期待できます。弾性ストッキングで患部に圧力を加えながら、ウォーキングや足の体操などを行うと、滞っていたリンパ液が流れやすくなります。

ただし、激しい運動は体への負担が大きく、リンパ浮腫を悪化させかねません。疲労感や筋肉痛が生じない程度の軽度な運動を毎日継続して行うことが大切です。運動の強度や頻度などの詳細は、専門家に確認しましょう。

4. リンパ管静脈吻合術(LVA)

前立腺がんの治療後にリンパ浮腫を発症し、保存療法ではなかなか改善しない場合は、リンパ管静脈吻合術(LVA)のような手術が検討されます。

LVAは、リンパ管と静脈をつないでリンパ液の流れる道をつくる方法です。貯溜しているリンパ液を静脈に流せるため、むくみの改善が期待されます。LVAは小切開で済むため患者さんへの負担が小さく、局所麻酔で行えて日帰り可能なことがメリットです。

リンパ管の機能がなるべく残っているうちに実施することが、LVAの効果を高めます。

当院では、超微小外科の技術を応用したLVAを実施しています。手術当日の日帰りが可能で、仕事やプライベートが忙しい人でも受けやすいでしょう。

手術から半年経った頃に、リンパ液の流れをチェックするための検査を受けることを推奨しており、術後のケアもサポートしています。

LVAの詳細をチェックする

 

前立腺がん治療後のリンパ浮腫は当院へ

前立腺がん治療後のリンパ浮腫が疑われる場合は、当院へご相談ください。

当院は、前立腺がんを含むがん手術後のリンパ浮腫の治療を専門的に行なっているクリニックです。圧迫療法の実施方法についてのアドバイスから手術まで、一貫した診療体制を整えています。

当院のLVAは、直径0.5mm以下のリンパ管・血管の吻合技術を有するスーパーマイクロサージャリーに精通した医師が担当します。

前立腺がんの手術を受けた経験があり、「脚がむくんでいる気がする」とリンパ浮腫の発症を心配している方は、ぜひお気軽に当院へご相談ください。

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DOCTOR

医師のご紹介

銀座リプロ外科 院長 永尾 光一
一般社団法人日本精索静脈瘤協会 理事長
医療法人社団マイクロ会 理事長

銀座リプロ外科では年間800例を超える精索静脈瘤手術を行っております。中でも永尾光一医師はナガオメソッドにより20年以上、精索静脈瘤手術をしており、その手術数は10,000例程度となります。日本ではまだあまり知られていない診療が多いですが、より多くの患者様に気軽に相談していただければと思っております。

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