リンパ浮腫の保存的治療について
保存的治療の基本は、複合的理学療法と呼ばれ、4つの主要素「医療リンパドレナージ、スキンケア、圧迫療法、運動療法」を個別の症状に応じて実施します。
リンパ浮腫を進行させないためには、リンパドレナージの他、スキンケア、圧迫療法、運動療法を日常的に行う必要があります。何もしないでいると、リンパ浮腫は進行します。浮腫みが進み、痛みの出現、炎症、更には、蜂窩織炎などを起こすこともあります。
スキンケアでは、皮膚の清潔と保湿を保ちます。皮膚にクリームを塗布すると不衛生になると言われる場合がありますが、何もしないでいると、冬など特に乾燥しやすい季節は、肌荒れから皮膚に傷がつき、菌が侵入し蜂窩織炎を起こすリスクがあります。当院では、入浴後などに吸収のよい保湿剤を使用されることを推奨しております。
圧迫療法は、医療用弾性着衣や包帯で、浮腫みの発生を抑えます。最近では、様々な種類の着衣が発売されており、症状に応じて、最適な方法を組み合わせます。
運動療法は、患肢を圧迫した状態で運動を行い、筋肉によるポンプ作用を活かして効果的にリンパ液の流れを促します。一般的には、毎日5000歩以上の歩行が推奨されています。
リンパドレナージとは
日本医療リンパドレナージ協会 用語集 引用
●医療徒手リンパドレナージ(MLD)
手を用いて行うリンパ排液マッサージ療法のことです。(”ドレナージ”とは、「排出」「排液」という意味。)
医療リンパドレナージはむくみのある患部の皮膚に手を当て、皮膚や皮下組織にたまった体液を、健康なリンパ管系に移動させてむくみを改善させるマッサージ療法です。
英語ではManual Lymph Drainage(MLD)と記述されます。
●簡易的リンパドレナージ(SLD)
簡易的リンパドレナージとは、医療徒手リンパドレナージを簡単にしたもので、患者自身や介助者(家族など)にも習得していただき実施します。英語ではSimple Lymphatic Drainage(SLD)と記述されます。
圧迫療法とは
日本医療リンパドレナージ協会 用語集 引用
●圧迫療法
圧迫療法とは、弾性包帯や弾性着衣(弾性スリーブ・弾性ストッキング)により、患肢に適切な圧力をかけて症状を改善する方法です。
●弾性着衣
弾性スリーブや弾性ストッキングを用いて行う圧迫療法のことです。
●バンデージ療法
弾性包帯を多重層に巻いて行う圧迫療法のことです。
定期的なリンパドレナージや圧迫療法はとても大変
医療リンパドレナージは、定期的な通院が必要です。ご自身でもやり方を覚え、毎日行う必要があります。ご自分でできない場合は、家族の協力が必要となります。
また、弾性着衣での圧迫も日常的に行います。(弾性着衣は、医師が必要と判断した場合は、保険で購入できます。要件や上限額などもあるため、詳しくはこちらをご覧ください。
下肢リンパ浮腫で、弾性ストッキングが履けない場合は、弾性包帯を用いて圧迫します。
いずれにしても全ての行程を、毎日行う必要があり、患者様は根気が必要ですが、ご自身で完結できない場合は、ご家族の協力が必須となります。
「銀座リプロ式リンパドレナージ」とは?
通院不要で自宅で簡単に行うことができます。簡単なので、無理なく快適で、毎日続けることができます。忙しくリンパドレナージに通えない方、自分で毎日行うのが大変という方にお薦めです。
銀座リプロ式リンパドレナージは、テレビを見たり、音楽を聴いたり、朝晩ベッドの中でも簡単に行うことができます。
銀座リプロ式リンパドレナージには、3つの要素があります。
1、適切な弾性着衣(必要であればオーダーメイドのものを使用)での圧迫
2、手または足の適切な挙上
3、心地よい振動による運動効果
おおまかな流れ
初診時に、計測と弾性着衣の確認をし、「銀座リプロ式リンパドレナージ」の体験をしていただきます。
それ以降はご自宅で継続していただきます。
評価
10日~1カ月後にリンパ浮腫の再評価を行います。
当院では、サイズ測定、写真撮影の他、患者様のお身体の状態やご希望で3D画像撮影も行い、評価しております。
銀座リプロ式リンパドレナージを行いながら、担当医師が手術の適応を検討いたします。
3D画像撮影(左下肢リンパ浮腫症例)
患者さまからのお声
リンパ浮腫の患者さまは、日ごろ痛みなどで辛い思いをされています。そのため、銀座リプロ式リンパドレナージを行うと、皆さん一様に「気持ちいい~♪」と、にっこりしながらおっしゃいます。
受けられた方の事例
浮腫が進んでいる患者さまで、圧迫療法を組み合わせながら銀座リプロ式リンパドレナージを1週間行ったところ、自覚症状の軽減や患肢サイズの減少といった効果を得ることができました。
Aさん 子宮癌術後の左下肢リンパ浮腫
初診時の周径(cm)
①24.0 ②24.0 ③38.0 ④45.0 ⑤58.0
1週間後の周径(cm)
①23.0 ②23.0 ③36.5 ④42.5 ⑤55.0
Bさん 子宮癌術後の右下肢リンパ浮腫
初診時の周径(cm)
①19.0 ②18.0 ③29.0 ④36.5 ⑤51.5
2週間後の周径(cm)
①19.0 ②17.5 ③29.0 ④35.5 ⑤46.5
周径の計測部位については、日本癌治療学会のがん診療ガイドラインに準じています。
詳しくは以下の図を参照してください。
図2 四肢における周径の計測部位
出典:日本癌治療学会 がん診療ガイドラインより
いつからはじめればよい?
リンパ浮腫の治療は早期発見・早期治療がカギとなります。一度発症してしまうと、生涯に渡って病状が進行する可能性もあるため、ぜひお早めにご相談ください。
ご相談はこちらから。
ただし、外科的治療は体力を消耗するため、がん(悪性腫瘍)の治療直後はぜひ主治医とご相談ください。
お問い合わせ・ご予約はこちら
〒104-0061 東京都中央区銀座2-8-19 FPG links GINZA 6F
この記事の執筆医師
永尾 光一 先生
東邦大学 医学部教授
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 形成外科センター長
昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。形成外科診療科部長を経験する(基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。
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