COLUMN

リンパ節廓清でリンパ節転移がないと病理診断されたらリンパ浮腫の早期診断と早期治療をお薦めいたします。

リンパ浮腫とは

リンパ浮腫とは、リンパの流れが滞り、腕や脚などにむくみが生じる疾患です。腕に生じた場合を上肢リンパ浮腫、脚に生じた場合を下肢リンパ浮腫といいますが、実際には肩の周りや下腹部にまでむくみが生じることも多くあります。
リンパ浮腫は、「二次性(続発性)リンパ浮腫」と「原発性リンパ浮腫」に分類され、多くは二次性リンパ浮腫です。日本をはじめとした先進国では、がんの手術や放射線治療に伴い発症する方が大部分を占めます。化学療法(抗がん剤)に伴うむくみはリンパ浮腫とは異なりますが、化学療法によるむくみに引き続いてリンパ浮腫を生じる患者さんは非常に多く、むくみを生じた場合は注意深いケアや、検査を行うことが勧められます。

 

リンパ浮腫の種類

リンパ浮腫は、「二次性(続発性)リンパ浮腫」と「原発性リンパ浮腫」に分類され、多くは二次性リンパ浮腫です。日本をはじめとした先進国では、がんの手術や放射線治療に伴い発症する方が大部分を占めます。化学療法(抗がん剤)に伴うむくみはリンパ浮腫とは異なりますが、化学療法によるむくみに引き続いてリンパ浮腫を生じる患者さんは非常に多く、むくみを生じた場合は注意深いケアや、検査を行うことが勧められます。

 

浮腫の種類

浮腫にもさまざまなタイプがあります。心臓や腎臓の機能に問題がある場合や、甲状腺機能低下症などの疾患は両脚がむくむことが多くなります。静脈やリンパ管の流れに問題がある場合は、脚では両側性に起こることも片側の脚のみに生じることもあります。腕の場合は乳がんの術後の方が多いため、乳がんの治療を行った側に生じることが非常に多いです。

 

続発性(二次性)リンパ浮腫が起こる原因

リンパ浮腫になる原因として多いがんは子宮がん、卵巣がんなどの婦人科がんと、乳がんです。がんの転移には血行性のほか、リンパ管を通って生じるものもあります。このため、検査や治療の目的でリンパ節を取り除いたり、放射線をあてたりすることがあります。リンパ節はリンパ管からのリンパ液が流れ込む大切な通り道ですから、検査や治療によって、リンパの流れが滞ることをきっかけとして、リンパ浮腫が生じることがあるわけです。

 

リンパ浮腫が原因となって起こる病気

「蜂窩織炎」

しばしばむくんだ腕や脚が赤くはれて40度近く熱が出る蜂窩織炎を繰り返す患者さんがいらっしゃいます。蜂窩織炎は非常に強い炎症反応で、入院を要するだけでなく、炎症でリンパ管をさらに痛めてしまうので、リンパ浮腫事態が悪化してしまうという悪循環に陥ってしまう可能性があります。
 

「象皮症」

象皮症はリンパ浮腫の治療がうまくなされないまま長期間り患した場合に最終的に陥る腕や脚の状態です。皮膚が厚くなって乾燥し、くびれのない、象さんのような見た目になってしまうことに由来します。

どうして蜂窩織炎になってしまうのか

リンパ管系は体液の運搬のほか、免疫担当細胞がその中を移動して、免疫機能がうまく働くために必要な期間です。リンパ浮腫になってリンパ管系の働きが悪くなると、見た目にむくんで太くなるだけでなく、リンパ浮腫にかかった腕や脚の免疫機能が落ちます。このためその腕や脚ではちょっとした傷からでも容易に菌が侵入、増殖してしまい、蜂窩織炎を起こしやすくなります。

 

どうして象皮症になってしまうのか

象皮症は蜂窩織炎を含めた強い炎症反応を長期間繰り返すことでリンパ管や皮下組織が硬く変性し(線維化といいます)、元に戻らなくなるために生じます。早期にきちんとした治療やケアに取り組むことで、将来象皮症になることは避けることができます。

 

リンパ浮腫の治療方法

リンパ浮腫には保存治療と、外科治療がありますが、非常に早期のリンパ浮腫を除いて、保存治療にきちんと取り組むことが外科治療を導入する前提となります。外科治療の効果を十分に得るためにも、適切な保存治療や日々のケアの方法を知っておくことはとても大切です。

保存的治療

保存治療の基本は複合的理学療法と呼ばれ、4つの主要素「スキンケア、医療リンパドレナージ、圧迫療法、運動療法」を症状に応じて実施します。
 

外科的治療

リンパ浮腫の外科治療は、リンパ液の流れを再建する手術と、余分な組織を除去する手術とに分けられます。再建手術はなるべく機能が残っている早期の方が高い治療効果が望めます。一方、非常に進行して、組織の変性が強いと考えられる場合は、機能再建と減量手術を組み合わせる方法が有効です。
再建手術はリンパ管静脈吻合(Lymphaticovenular anastomosis: LVA)と、リンパ節移植手術に大別されます。
 

リンパ管静脈吻合

リンパ管と静脈を吻合して(縫い合わせて)バイパスを作成し、リンパ液を静脈に流す道を作成します。
端端吻合や側端吻合など、様々な吻合方法がありますが、患者さんのリンパ管と静脈の状態に合わせて、いずれかの方法を臨機応変に使い分ける手術技術が求められます。
 

リンパ節移植手術

リンパ節移植手術は、健康で正常なリンパ管機能の部位から、むくんだ腕や脚にリンパ節を移植し、その栄養動静脈を移植先と吻合する術式です。
 

減量手術

進行例において脂肪吸引などを行います。リンパの流れの再建と併用して適応することでより高い治療効果が期待できます。

 

その他、リンパ浮腫の手術に関して詳しくはこちらをご覧ください。

この記事の執筆医師

永尾 光一 先生

永尾 光一 先生

東邦大学 医学部教授
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 形成外科センター長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。形成外科診療科部長を経験する(基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

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