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リンパ浮腫の予防とセルフケアのポイント

乳がんや子宮がん、卵巣がんの手術の後に発症することが多いリンパ浮腫。リンパ浮腫は、重症化すると日常生活に支障が出る病気です。予防とセルフケアの方法を知って、発症や悪化を防ぎましょう。

 

リンパ浮腫とは

リンパ浮腫とは、がんの治療をした部位に近いところで、リンパ液がうまく流れずにむくんだ状態のことを言います。

発症してしまうと完全に治癒するのは難しく、進行が早い病気です。むくんだところが重たく感じたり、関節を曲げづらくなったりと生活にも支障をきたします。

リンパ浮腫は、がん(主に乳がん・子宮がん・卵巣がん)でリンパ節の切除を行った場合や、放射線治療や一部の薬物療法を行った場合に多く発症します。

 

リンパ浮腫のメカニズム

リンパ浮腫は、リンパ液の流れが滞って溜まっている状態です。では、リンパ液とはどのようなもので、正常だとどのように流れるのでしょうか。

私たちの身体には、毛細血管という細い血管が張り巡らされています。毛細血管の壁には、実は小さな穴があって、一日に約20Lの水分が穴から漏れているのです。この漏れ出ている水分がリンパ液です。

漏れ出たリンパ液の8割から9割は再び毛細血管に吸収されます。残りの1割から2割はどうなるかというと、リンパ管→リンパ節→胸管(きょうかん)・右リンパ本幹→静脈という流れで循環します。この一連の流れがリンパ循環です。

乳がんや子宮がんの手術では、リンパ節を切除や放射線治療をしてがんの転移を防ぐ必要があります。手術によってリンパ節を損傷すると、手や脚のリンパ液はリンパ節以外の細いリンパ管を通って循環することになり、正常な循環が難しくなるのです。

リンパ循環が正常に行われないとむくみが生じ、リンパ浮腫になるというわけです。

また、原発性といって、手術などの誘因後ではなく、リンパ管の発達やリンパ液が作られる量のバランスが要因で発症するリンパ浮腫もあります。

 

リンパ浮腫が起こりやすい部位

リンパ浮腫の予防とセルフケアのポイント

リンパ浮腫が起こりやすい部位は、乳がんの手術後か、子宮がんや卵巣がんの手術後かによって異なります。

乳がんの手術後に発症するリンパ浮腫は、肘(ひじ)の上下に起こりやすくなります。乳がんの手術では、乳房や乳腺だけでなく、わきの下にあるリンパ節を取り除くので、その影響を受けて生じるのが上肢リンパ浮腫です

一方で、子宮がんや卵巣がんの手術後に多く発症するのが下肢リンパ浮腫です。下腹部や陰部、脚の付け根(内もも)あたりに起こりやすくなります。原発性の場合も下肢に見られ、術後の場合も原発性の場合も、片脚のみに発症することが多い病気です。

 

リンパ浮腫の予防、セルフケア

残念ながらリンパ浮腫を確実に防ぐ方法はありません。しかし、日常生活での注意点を守って予防する、悪化しないようにセルフケアを行うといった対策を取ることは可能です。

リンパ浮腫は、発症しても軽度であればセルフケアを続けながら日常生活を送れます。重症化しないように、早めに治療に取り掛かかり、無理のない程度にセルフケアを行いましょう。

リンパ浮腫の予防とセルフケアのポイントを紹介します。
 

予防

以下は、上肢・下肢リンパ浮腫の予防のために留意しておきたい日常生活の行動です。
 

上肢・下肢共通

● 仕事や家事は無理をせず適度に休憩をとる
● 激しい運動は控える
● 締め付けがきつい指輪や下着、靴下など皮膚に跡が残るようなものを着用しない
● クッションなどを下に敷き該当部位を少し(10cmほど)上げて寝る ※脚を上げる場合は両足とも上げる
● 長時間の入浴を避ける
● 肥満にならないようにする

上肢または下肢それぞれのリンパ浮腫を予防するための、留意するべき行動もあります。
 

上肢

重いものを持ったり、買い物袋などを肘にかけて持ったりしない
 

下肢

長時間同じ姿勢でいることを避ける
サイズが小さめの靴やヒールが高い靴は避ける
 

セルフケア

リンパ浮腫のセルフケアは、主にスキンケアとリンパドレナージです。
 

スキンケア

リンパ浮腫が生じると皮膚が薄くなってしまうので、外からの刺激に対する防御力が下がってしまいます。

皮膚を清潔に保ち、潤いを与え、外部刺激から保護して、皮膚が働きやすい状態を持続しましょう。

スキンケアのポイントは、①保清、②保湿、③保護の3つです。

1 保清
石けんやボディソープは、自分の肌質に合ったものを選んで使用しましょう。また、ゴシゴシこすったりせずに優しく洗います。水虫など皮膚の病気があれば、早めに治しましょう。

2 保湿
自分の肌に合った保湿ローションなどを使用して、乾燥を防ぎましょう。

3 保護
擦り傷や切り傷など、けがをしないよう意識します。長袖、長ズボン、手袋などで肌を守るとよいでしょう。直射日光に当たるのも控えてください。
 

リンパドレナージ

リンパドレナージとは、皮膚や皮下組織に溜まったリンパ液を、健康なリンパ管系に移動させてむくみを改善させるマッサージです。ここでは、自宅でできるセルフマッサージの方法を紹介します。自己判断で行わず、担当医や看護師に相談したうえで行いましょう。
 

準備運動

1 肩まわし
両肩をゆっくりと大きく10回まわす。

2 腹式呼吸
口からゆっくり息を吐き、鼻からゆっくり息を吸う。
 

手の動かし方

1 皮膚に手のひらをあてがうように、やさしく密着させる。
2 あてがった手を、リンパを流したい方向へ1秒ほどかけてゆっくりとずらす。
3 ずらした後に力を抜き、手の位置を元に戻す。これを5回から10回繰り返す。
4 手のひら位置を変えて、①~③を繰り返す。
 

上肢のドレナージ

溜まっているリンパ液を、正常なリンパ節が残っている脇の下まで流すマッサージです。

1 手術していない方の脇の下をマッサージする(リンパ液が流れ込みやすくなる)。
2 胸の上あたりを、手術していない方の脇の下に向かって流す。
3 手術した方の二の腕を、肩先に向かって流す。
4 手首から肘に向かって流す。
5 指先から手首に向かって流す。
⑤、④、③、②の順で手術していない方の脇の下へ流す。
 

下肢のドレナージ

溜まっているリンパ液を正常なリンパ節の残っている脇の下まで流します。誘導する脇の下は、リンパ浮腫が左に出ているなら左、右に出ているなら右側です。

1 むくんでいる脚と同側の脇の下をマッサージし、脇の下のリンパ節へ流れ込みやすくする。
2 胴体部分を、脇の下に向かって流す。
3 太もも部分を、腰の外側に向かって流す。
4 ひざの周囲を、上に向かって流す。
5 ふくらはぎを、足首から膝に向かって流す。
6 足はつま先から上に向かって流す。
⑥、⑤、④、③、②の順で脇の下へ流す。

 

早期発見のポイント

リンパ浮腫は手術後すぐに発症するとは限らず、数年後に発症することがあります。早期発見のポイントは、日ごろからよく観察し変化に早く気付くことです。

以下に当てはまるようでしたら、リンパ浮腫を疑って医師に相談しましょう。

● 手足がだるく感じたり、重く感じたりする
● 部分的にむくんでいる
● ちょうどよかった靴がきつく感じる
● 指輪がきつく感じる
● 腕時計のベルトを止める位置が太くなる
● 静脈がみえにくくなる

 

リンパ浮腫の治療、相談は専門医へ

リンパ浮腫は、自然と治ることがなく、悪化すると日常生活に支障をきたしてしまう病気です。早期の発見、早期の治療が大切ですので、リンパ浮腫の疑いがあれば早めに専門医へ相談しましょう。

リンパ浮腫を診ているのは、形成外科やリンパ浮腫外来です。ただし、がん(悪性腫瘍)の治療直後は体力を消耗しているので、主治医と相談することをおすすめします。

適切な治療やセルフケアで、症状が改善することがあります。まずは医師の診察を受けて治療を開始してください。

銀座リプロ外科では、外科的治療の他、保存的治療にも力を入れています。
リンパドレナージは毎日行うことが重要です。自宅で簡単に行なえ、比較的良好な成績を残している銀座リプロ式リンパドレナージの方法をご指導しております。

リンパ浮腫の手術に関して詳しくはこちらをご覧ください。

この記事の執筆医師

永尾光一(東邦大学泌尿器科教授 リプロダクションセンター長)

永尾 光一 先生

東邦大学 医学部教授(泌尿器科学講座)
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター長
東邦大学医療センター大森病院 尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

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