リンパ浮腫を治す方法はある?症状の改善や効果的な治療法について - 銀座リプロ外科
COLUMN

リンパ浮腫の症状の進行に焦りを感じ、「治す方法を知りたい」と思っていませんか。

リンパ浮腫は完治が難しい病気ですが、適切な治療により症状の改善や悪化予防が見込めます。

本記事では、治療方法の種類や、悪化予防のために自身が行えることについて説明します。症状がさらに進行し、日常生活に大きな支障が出ないよう、リンパ浮腫にお悩みの方はぜひ参考にしてください。

 

 

リンパ浮腫を治す方法はある?

リンパ浮腫を完全に治す方法は、2025年4月時点では存在しません。ただし、早めの治療により、症状の改善や悪化予防が望めます。

リンパ浮腫という疾患や、早期治療の重要性などについて解説します。むくみといった症状にお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。

そもそもリンパ浮腫とは

リンパ浮腫とは、リンパ液の流れが阻害されてリンパ管周辺の組織内に体液が溜まり、むくみを発症する状態です。主な原因は2つあり、リンパ管の先天的な機能不全(原発性)と、がん治療(続発性)です。

原発性のリンパ浮腫は、生まれたときから症状が見られたり、妊娠・出産をきっかけに発症したりするケースがあります。続発性の場合は、がんの治療にともなう、リンパ節の切除や、放射線によるリンパ管へのダメージなどが原因で発症します。

リンパ浮腫の主な初期症状は、腕や脚のだるさ・しびれ・重さなどです。リンパ浮腫は進行性の疾患であり、適切なケアが必要となるため、専門家へのすみやかな相談が大切です。

一度発症すると完治は難しい

リンパ浮腫を発症すると、完治は難しいといえます。一度傷ついてしまったリンパ管は正常な状態には戻りません。

ただし、完全に治す方法がないからといって放置すると、症状が進行し、以下のような状態に陥るリスクがあります。

・皮膚が硬く・厚くなる
・皮下の脂肪が増える
・皮膚からリンパ液が漏れ出す
・合併症を発症する

専門家による治療を受けるとともに、患者さん自身がケアの方法や重要性などを理解し、うまく付き合っていくことが求められます。

早期治療による症状改善・悪化予防はできる

リンパ浮腫は、早いタイミングで適切な治療を受ければ、症状改善や悪化予防ができる疾患です。適切なケアにより、以下のような効果が期待できます。

・患部のだるさや重さを軽減する
・患部のむくみを軽減する
・皮膚が柔軟性を取り戻す
・蜂窩織炎の発症リスクを低減する

蜂窩織炎(ほうかしきえん)は、リンパ浮腫の患者さんが発症しやすい合併症であり、ブドウ球菌やレンサ球菌などの細菌が原因の感染症です。

蜂窩織炎の発症リスクついて詳しく知りたい

リンパ浮腫の治療法には、保存的治療と外科的治療の2つがあります。できる限り早いタイミングで専門家に相談し、症状改善や悪化予防を目指しましょう。

 

リンパ浮腫を治療する方法①|保存的治療

リンパ浮腫を治療する方法の1つ目は、保存的治療です。保存的治療では、手術以外の方法で症状の改善を目指し、具体的には以下の4つが挙げられます。

・圧迫療法
・用手的リンパドレナージ
・運動療法
・スキンケア

リンパ浮腫の改善には、病院での治療に加え、セルフケアが重要な役割を果たします。専門家に相談しつつ、保存的治療を組み合わせて日常生活のなかに取り入れ、症状の緩和と進行抑制を実現しましょう。

圧迫療法

リンパ浮腫の保存的治療の1つは、圧迫療法です。圧迫療法とは、弾性着衣・包帯によって上肢や下肢などを圧迫し、リンパ液の流れを改善してむくみを軽減する方法です。

圧が強すぎたり弱すぎたりすると、リンパ浮腫の悪化につながるリスクがあるため、専門家による指導のもとで行いましょう。

弾性着衣には、専用の弾性ストッキングやスリーブなどの種類があり、自身に合うタイプやサイズを選ぶことが大切です。むくみの程度により圧迫の方法は異なり、重度のケースでは一般的に弾性包帯が用いられます。

用手的リンパドレナージ

用手的リンパドレナージも、リンパ浮腫の保存的治療の1つです。

用手的リンパドレナージとは、手のひらで皮膚を優しくさするように動かし、溜まっているリンパ液を正常なリンパ節へ誘導する治療法です。ドレナージは排液を意味する言葉で、リンパ液の流れを改善し、むくみを軽減するために行われます。

ただし、用手的リンパドレナージの効果は一時的なので、圧迫療法のような、ほかの保存的治療とともに取り入れることがおすすめです。

用手的リンパドレナージは、専門の訓練を積んだセラピストが行う治療であり、美容目的のリンパドレナージュとは異なる点に注意しましょう。

運動療法

リンパ浮腫の保存的治療には、運動療法もあります。

運動療法とは、関節や筋肉を適度に動かして症状の改善を目指す方法で、ウォーキングやストレッチ、自転車こぎなどの多様な種類があります。運動により骨格筋の収縮と弛緩を繰り返し、周辺のリンパ管を圧迫することにより、リンパ液の流れを促進する仕組みです。

弾性着衣・包帯を身につけて圧迫したまま運動するとより効果的で、リンパ液の流れの改善が期待できます。

ただし、過度な運動はむくみを悪化させるリスクがあるので、適切な強度を把握するために専門家の指示を仰ぎましょう。

スキンケア

スキンケアも、リンパ浮腫の保存的治療として挙げられます。

リンパ浮腫を発症している方は、皮膚が乾燥しやすくなり、バリア機能が低下します。乾燥した皮膚にヒビが入ると、細菌の侵入による蜂窩織炎発症のリスクが高まるため、注意が必要です。

リンパ浮腫の患者さんが蜂窩織炎になった場合は、症状の急速な悪化やむくみの進行につながる可能性があります。

感染症のリスクを低下させるには、皮膚を清潔に保ち、保湿するスキンケアが欠かせません。入浴時は肌を強くこすらず、洗ったあとは保湿剤を使って皮膚のうるおいを保ちましょう。

日焼けしたり、虫に刺された箇所をかいたりなど、皮膚に負担がかかる行為を避けることも重要です。

 

リンパ浮腫を治療する方法②|外科的治療

リンパ浮腫を治療する方法には、保存的治療に加え、外科的治療があります。外科的治療とは手術による治療法であり、主に以下の3つのことです。

・リンパ管静脈吻合術(LVA)
・リンパ管・リンパ節移植術(VLNT)
・脂肪吸引術(LS)

手術は、リンパ浮腫を完全に治すことではなく、症状の改善を目指して行われます。症状の程度によって有効な外科的治療は変わるため、専門家と相談して選択しましょう。

リンパ管静脈吻合術(LVA)

リンパ浮腫の外科的治療の1つに、リンパ管静脈吻合術(LVA)があります。

LVAとは、顕微鏡下で0.5mmほどのリンパ管と静脈をつなぎ合わせ、リンパ液の通り道をつくる手術です。基本的に局所麻酔で行われ、1~2cmほどの切開で手術できるため、体への負担が少ない点がメリットです。

リンパ浮腫が上肢に生じたケースでは、術後に圧迫療法が不要になる症例が多く見られます。早期のリンパ浮腫であるほど、LVAの治療効果が期待できるため、ぜひ当院へご相談ください。

リンパ管静脈吻合術(LVA)の詳細をチェックする

リンパ管・リンパ節移植術(VLNT)

リンパ浮腫の外科的治療の1つは、リンパ管・リンパ節移植術(VLNT)です。

VLNTは、リンパ浮腫が生じている部位へ、正常に機能しているリンパ節やリンパ管、血管を移植する手術です。症状が進行しており、リンパ管静脈吻合術(LVA)による治療効果が期待できないケースで行われます。

VLNTのデメリットは、手術を受けてから効果が出るまでに1年以上かかる場合もある点です。リンパ節やリンパ管などを採取した部位のリンパ液の流れに、異常が発生するリスクもあります。

脂肪吸引術(LS)

脂肪吸引術(LS)も、リンパ浮腫の外科的治療の1つです。

LSとは、リンパ浮腫の重症化により蓄積した脂肪を吸引し、患部を細くする治療を指します。脂肪を吸引することで、患部が軽くなったり、見た目が良くなったりする点がメリットです。

ただし、手術のなかでリンパ管や血管が傷つき、リンパ液の流れが悪くなるリスクがあるため、最終的な手段となります。実施するかどうかを慎重に検討することが重要です。

 

当院におけるリンパ浮腫治療のプロセス

当院の初診では、リンパ浮腫の診断のために、以下の4つが行われます。

・計測
・写真撮影
・超音波検査
・インドシアニングリーン(ICG)検査

インドシアニングリーン(ICG)検査とは、インドシアニングリーンと呼ばれる緑色の薬剤を注射し、赤外線カメラを当ててリンパ液の流れを確認する方法です。

検査の結果、手術が適し、患者さんが治療を希望する場合は、血液検査や詳細説明を受けたうえで予約を行なっていただきます。

手術は入院の必要はなく、局所麻酔なので終わったあとはすぐに徒歩で帰宅可能です。

当院では、患者さんの状態にもよりますが、1か月後・3か月後・6か月後・1年後などで術後の経過を定期的に見させていただいております。半年後を目安に術後検査を受けることを推奨しています。

初診から手術後までの流れを確認する

 

リンパ浮腫の進行予防のために自身ができること

リンパ浮腫の進行予防のために自身ができることは、以下のとおりです。

・体重の増加や運動不足を防ぐ
・感染を予防する
・強いストレスや極度の疲労を避ける
・早期治療を意識する

手術や保存的治療を一生懸命行なったとしても、生活スタイルが原因でむくみを促進しては意味がありません。日常生活における注意点を把握し、日頃から意識して過ごしましょう。

体重の増加や運動不足を防ぐ

リンパ浮腫の進行予防のために自身ができることの1つは、体重の増加や運動不足の防止です。

体重が増えて肥満になると、リンパ管が脂肪組織に圧迫されてリンパ液の流れが滞り、むくみの悪化につながります。日頃から体重を計測し、食生活を見直しましょう。

運動不足や長い時間同じ姿勢でいることも、リンパ液の流れに悪影響があります。リンパ液の流れを促せるよう、ウォーキングやストレッチなどの適度な運動をし、長時間の立ちっぱなし・座りっぱなしを避けてください。

感染を予防する

感染予防も、リンパ浮腫の進行予防のために自身ができることの1つです。リンパ浮腫の患者さんは、リンパ液の流れが悪くなることで免疫機能が低下し、炎症・感染症のリスクが高まります。

日常生活のなかで、以下のポイントを意識することが大切です。

・刺激の強い洗剤を使う際はゴム手袋をつける
・プールや温泉は傷がないときに利用する
・水虫のような皮膚の病気はすみやかに治療する
・ガーデニングをするときは長袖・手袋を着用する

患部を清潔に保ち、小さな傷や乾燥、やけどなどに気をつけましょう。

強いストレスや極度の疲労を避ける

リンパ浮腫の進行予防のために自身ができることの1つに、強いストレスや極度の疲労の回避もあります。ストレスや疲れは、リンパ液の流れを悪化させる要因となる点に注意が必要です。

重い荷物は、リンパ浮腫を発症していないほうの腕で持ち、患部に負担をかけないようにすることを推奨します。仕事や旅行などで普段よりも長距離を歩く場合は、疲れが溜まる前に休憩しましょう。

ストレス発散のために、リラックスできる時間を確保することも大切です。

早期治療を意識する

早期治療を意識することも、リンパ浮腫の進行予防のために重要です。

リンパ浮腫を治療せず放置して重症化すると、皮膚が硬くなったり、患部からリンパ液が漏れ出したりします。症状が進行するほど、上肢や下肢が動かしにくくなり、日常生活に支障が出かねません。

早期のリンパ浮腫治療は、リンパ液の流れを改善し、進行を抑えるために非常に効果的です。「むくみが悪化してきて不安」といったお悩みは、1人で抱え込まず、すみやかに専門家へ相談しましょう。

 

リンパ浮腫の治療なら当院へご相談を

リンパ浮腫の治療については、当院へご相談ください。当院では、リンパ管静脈吻合術(LVA)を中心としたリンパ浮腫治療を行なっており、リンパ浮腫を専門に治療している経験豊富な大学病院の医師が在籍しております。

リンパ浮腫は完全に治すことが難しい疾患なので、長く一緒に治療に取り組める専門家を探すことが重要です。

当院は、リンパ浮腫に関するお悩みを専門のスタッフにご相談いただける「リンパルーム」を設けています。

リンパルームは、「弾性着衣が合わない」「弾性包帯の見た目に抵抗がある」「ケア方法が正しいかわからない」といった不安がある際にもご利用可能です。患者さん一人一人の生活スタイルに合わせて、アドバイスをさせていただきます。

リンパ浮腫に関する不安は、一人で抱え込まず、ぜひお気軽に当院へご相談ください。

この記事の執筆医師

永尾 光一 先生

永尾 光一 先生

東邦大学 医学部教授
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 形成外科センター長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。形成外科診療科部長を経験する(基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

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