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リンパ浮腫になったらどうする?リンパ浮腫が治った例や外来治療、セルフケアについて

リンパ浮腫になってしまったら…。今回は、その後の治療や対策について、実例も紹介しながら説明していきます。

リンパ浮腫とは

リンパ浮腫は、体内で何らかの原因によりリンパ液の流れが阻害されリンパ管がつまり、むくみを発症する状態です。一度発症すると徐々に進行し、悪化すると手術が必要になります。

リンパ浮腫は大きくは2つに分けられ、1つは先天性のリンパ管機能不全や発育不全です。

もう1つはがんなどの治療で手術をした後の後遺症によるもの。最も多いのは子宮がんや乳がん治療のため、リンパ節の手術を行った場合です。残存しているリンパ管がリンパ液を身体中に運びますが、流れの滞りやつまりが起こると負担がかかり、感染などをきっかけに腕や下肢にむくみが生じてしまいます。
この状態を「リンパ浮腫」といいます。

リンパ浮腫の初期症状

リンパ浮腫の治療は早期発見が重要です。むくみにより皮膚が厚くなって静脈が見えにくくなったり、強く押すと跡が残ったりしたら、リンパ浮腫の可能性があります。他にも感覚的な初期症状は主に、腕や下肢のだるさ・痺れ、重く感じる、肩が上がりにくい、などがあります。

見落としやすい注意点として、体質がやせ型の方は、脂肪が付きにくいためむくみが見えづらく、自覚症状が出る頃には重症化してしまっていることがあります。また、更年期症状のだるさやむくみと混同し、発見が遅れる例もあります。

見た目や自覚の有無だけではリンパ浮腫と判断することは難しいため、不安や違和感があれば早めに医療機関で受診し、適切な処置につなげましょう。

リンパ浮腫を治すまでのプロセス

実際にリンパ浮腫との診断を受けたら、今後の治療方針を決定するためより詳しい検査を行います。主な検査内容は以下です。

  • 写真撮影や患部の計測
  • 超音波検査

検査の結果、手術適応となり手術を希望する場合には血液検査も行います。

どの治療法を選択するかは、症状の進行度合いやリンパ浮腫の位置、リンパ管の細さなどから総合的に判断されますが、この段階で適用の術式に不安や気になることがないよう担当医師と納得のいくまで相談しましょう。

手術は、局所麻酔で行うため、終わったら徒歩で帰宅可能です。手術の糸は後に溶けるものを使用しますので消毒や抜歯に再度通う必要はありません。

その後は、およそ3ヵ月から半年後を目安に術後検査を再度受けることが推奨されています。術後検査までの期間は、患部の状況に応じて弾性ストッキングなどを着用して過ごして下さい。

手術の結果、腕のリンパ浮腫においてはある程度進行していても、術後の圧迫が不要になるケースが多く報告されています。下肢の場合は心臓から遠く静脈圧も高いため、圧迫不要や完治するのは難しいとされています。とはいえ、ある程度進行してしまっているリンパ浮腫でも、腕や下肢の太さが改善したり、皮膚組織内での感染が減少したりする例は多数あります。

リンパ浮腫外来でできること

病院でできるリンパ浮腫の治療は、医療リンパドレナージ、圧迫療法、運動療法などの保存的治療と、外科的治療(手術)があります。

保存的治療の医療リンパドレナージは、むくみの原因となっているリンパの流れを改善させるための専門のマッサージです。流れの悪くなっている部分を避けて、正常に機能しているリンパ節へと流れを促します。

リンパドレナージと並行して効果的なのが、弾性ストッキングや弾性包帯(バンテージ)などで圧迫する圧迫療法と、患部を圧迫した状態での運動で筋肉ポンプの作用を促進する運動療法です。

リンパ浮腫の治療で大切なことは、病院での治療に加えご自身でのセルフケアが重要な役割を果たすということです。セルフケアについては後述(※5.)しますので、こちらを参考に、普段の生活の中でむくみのリスクを回避した過ごし方を心がけて下さい。

外科的治療では、リンパ管と静脈を繋ぎ合わせ流れを作る機能再建手術や、リンパ節移植手術、減量手術を行います。

機能再建手術でリンパ管と静脈を繋ぎ合わせる方法は主に2種類あり、1つはリンパ管を一旦切断し、その切り口に細い静脈を縫い付ける端端吻合、もう1つはリンパ管の側面に穴を開けそこに細い静脈を吻合する側端吻合です。

リンパ節移植手術は、むくみのある腕や下肢に、他の部位で正常に機能しているリンパ節を移植する手術です。この手術は全身麻酔で行うことが多いため入院が必要です。また、症状の進行度合いに応じて、脂肪吸引や皮下組織の切除などの減量手術を併用することもあります。

いずれも高度な技術を要する治療であり、患者様への負担も大きくなりますので、診断の際に医師とよく相談して最適な治療を選ぶ必要があります。

リンパ浮腫の手術に関して詳しくはこちらをご覧ください。

リンパ浮腫のセルフケアでできること

リンパ浮腫のセルフケアでできること

せっかく手術や医療リンパドレナージの施術を受けても、ご自身の生活スタイルが原因でむくみが促進していては意味がありません。体重管理や適度な運動、スキンケアなどの日常生活の注意点を以下に説明します。

体重の増加や運動不足

体重が増えて肥満になると、脂肪でリンパ管やリンパ節が圧迫され、リンパ液の流れが滞りむくみ症状の悪化につながります。日頃から体重計測を行い、食生活に気を付けて過ごしましょう。

また運動不足もむくみの原因になります。リンパ液の流れを促すために、筋肉ポンプを意識しウォーキングなどの適度な運動をしましょう。

皮膚を清潔に保つ

リンパ浮腫による免疫機能の低下で、炎症を起こしたり感染症にかかりやすくなったりします。細菌は皮膚から体内に侵入し、感染や炎症を引き起こしますので、患部を清潔に保つよう意識し、小さな傷や乾燥などにも気を付けましょう。またガーデニングで土を扱う際や刺激の強い洗剤を使う時には手袋をして下さい。

強いストレスや極度の疲労を避ける

ストレスや疲れを蓄積させるような生活は、リンパ流れの乱れにつながります。また重いものを持つことや、旅行などで普段よりも長距離を歩き続けることなどによって、むくみや炎症を起こしやすくなります。

他にも、立ち仕事などで長時間同じ姿勢でいることや、座りっぱなし、正座を続ける、などもリンパの流れを阻害します。これらも意識してむくみのリスクを回避した生活を心がけましょう。

下肢のリンパ浮腫の手術なら銀座リプロ外科

リンパ浮腫の治療には、手術をはじめ医療リンパドレナージなど専門知識と熟練した技術を要します。

リンパ管の再建手術は、非常に細い血管やリンパ管をつなぎ合わせる高度な技術を必要とする手術です。

また、リンパ浮腫は完治が難しく何度も繰り返す可能性もあるため、長く一緒に治療に取り組める医師を探すことも重要なポイントとなります。信頼できる医師のもとで安心して治療を受けて下さい。

当院では、リンパ浮腫に関する悩みや不安を専門家に相談できるリンパルームのご用意もあります。治療に当たっては専門知識を持った経験豊富な医師が対応します。

リンパ浮腫にお悩みの方はぜひ一度、銀座リプロ外科へご相談下さい。

リンパ浮腫の手術に関して詳しくはこちらをご覧ください。

この記事の執筆医師

永尾 光一 先生

永尾 光一 先生

東邦大学 医学部教授
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 形成外科センター長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。形成外科診療科部長を経験する(基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

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