下肢のリンパ浮腫の原因・症状と治療法|セルフケアから手術まで | 銀座リプロ外科 東京のリンパ浮腫治療クリニック        
COLUMN

「脚のむくみが続いているけれど、もしかしてリンパ浮腫?」と不安に思ってはいないでしょうか。

がん治療後は、リンパ液の流れが滞り、下肢がむくむリンパ浮腫が生じることがあります。リンパ浮腫は放置すると悪化し、日常生活に支障をきたす恐れがある一方で、適切な治療とケアを行えば、症状の改善やコントロールが見込める病気です。

本記事では、下肢のリンパ浮腫の原因や症状、治療法について詳しく解説します。イキイキと日々を過ごすために、まずは正しい知識を知っておきましょう。

下肢のリンパ浮腫とは
 

下肢のリンパ浮腫とは

下肢のリンパ液の流れが滞り、リンパ浮腫が起こることがあります。

下肢とは、人の体のうち、股関節から先の部分のことです。具体的には、太もも(大腿)・ひざ(膝関節)・すね(下腿)・足首・足(足部)が含まれます。日常生活で心臓よりも下に位置することが多く、リンパ液の流れが滞りやすい部位です。

下肢のリンパ浮腫は、旅行で長時間歩いたり、引っ越しで重い荷物を運んだりすることによる、疲労や頑張りすぎでひどくなる場合があります。

 

下肢のリンパ浮腫が起こる原因

下肢のリンパ浮腫が起こる主な原因は、以下のとおりです。

・先天的な要因
・がんの治療

先天的な要因によるリンパ浮腫を「原発性リンパ浮腫」、手術や事故といった後天的な原因のケースは「続発性リンパ浮腫」と呼びます。

後天的な要因に心当たりがある方は、リンパ浮腫の症状が出ていないか、自分の足や太ももを細やかにチェックする習慣をつけると良いでしょう。

先天的な要因

生まれつきのむくみ症や、リンパ管・リンパ節の発育不全などが原因で、下肢にリンパ浮腫が生じる場合があります。新生児期から発症しているケースもあれば、30歳を過ぎてから症状が出る患者さんもいるなど、リンパ浮腫の現れ方はさまざまです。

原発性リンパ浮腫では、足の甲やすねを中心に腫れや冷感、痛みといった症状が出現することが多く見られます。病気が進行すると皮膚や関節が硬くなったり、感染を起こしたりするリスクが高くなります。

原発性リンパ浮腫に根本的な治療方法はないため、早期に発見して進行を予防することが大切です。

がんの治療

がんの治療は、下肢のリンパ浮腫を引き起こす原因の1つです。

がんの手術では、転移を防ぐために病変周辺のリンパ節を切除する「リンパ節郭清(かくせい)」を行う場合があります。リンパ節を切除することによって、リンパ液の流れが滞り、むくみが生じる仕組みです。

がん手術でのリンパ節切除がきっかけのリンパ浮腫は、治療後数ヵ月で生じるケースもあれば、10年以上経ってから発症することもあります。

リンパ管やリンパ節を損傷させる可能性のある放射線治療も、リンパ浮腫の原因です。

 

下肢のリンパ浮腫の症状

下肢のリンパ浮腫の症状は、進行度によって異なることが特徴です。

リンパ浮腫は、初期の段階では自覚症状が乏しく、病状が進行すると生活に影響を及ぼし、治療が難航します。「リンパ浮腫かもしれない」と思ったらすぐに受診し、早めのケアに取り組むことが重要です。

下肢のリンパ浮腫が出現しやすい部位と、重症度別の症状を解説します。

症状が出現しやすい部位

下肢のリンパ浮腫は、治療したがんの種類によって以下のような部位に出現します。

がんの種類 治療内容 リンパ浮腫が出現しやすい部位
・子宮体がん
・卵巣がん
・大腸がん
・外陰がん
脚の付け根のリンパ節切除 リンパ節を切除した側の下肢
・子宮がん
・卵巣がん
・大腸がん
骨盤内のリンパ節切除 下腹部
陰部
両方の下肢

 

がん治療が原因のリンパ浮腫は、手術や放射線の影響を受けた部分だけに現れることが特徴です。該当する治療を受けた方は、リンパ浮腫を起こしやすい部位を時折チェックしておきましょう。

がん治療をした部分とは離れているにもかかわらず下肢がむくむ場合は、リンパ浮腫以外の病気の可能性もあります。専門医を受診し、ほかの病気と見分けてもらうことが必要です。

早期~軽度

下肢に起こるリンパ浮腫の早期〜軽度の症状は、以下のとおりです。

・リンパ液がたまって皮下がむくむ
・血管(静脈)が見えにくくなる
・皮膚がつまみにくい
・ しわが目立たなくなる

早期〜軽度のリンパ浮腫は、自覚症状が乏しいという特徴があります。一時的に脚を上げた姿勢をとると症状が軽くなる場合が多く、病気ではないと安心する患者さんが大勢います。

「気づかないうちにリンパ浮腫が進行してしまった」というケースに陥るかもしれません。がん治療後はリンパ浮腫が起こりやすいことを、しっかりと認識しておきましょう。

中等度

下肢のリンパ浮腫が進行して中等度の段階になると、次のような症状が出現します。

・脚のだるさや重さが気になる
・疲れやすい
・脚が腫れぼったく感じる
・むくんでいる部分を指で押すと痕が残る

中等度は、「がんの治療前と比べて脚が明らかに太くなった」と感じる人が出てくる段階です。中等度まで進行したリンパ浮腫は、日常生活に影響を及ぼすことも多くあります。

さらに進行すると治療が困難になる恐れもあるため、下肢のむくみが気になったときにはすみやかな受診をおすすめします。

重度

病状が進行して重症化した下肢のリンパ浮腫の症状は、以下のとおりです。

・皮膚が厚く・硬くなる
・乾燥しやすくなる
・関節が曲げにくくなる
・手足を動かしたときに違和感が生じる
・皮膚の下に脂肪が沈着する

症状が悪化すると、皮膚のひび割れや傷から細菌が入るリスクが高まります。細菌感染による重篤な炎症である蜂窩織炎(ほうかしきえん)は、免疫力の低下したリンパ浮腫の患者さんによく見られる合併症です。

感染を起こさないよう怪我に気をつけたりスキンケアを継続したりして、症状の進行や合併症の発症を防ぐ必要があります。早めに受診し、今後のケアの方法について、専門家に指導してもらいましょう。

 

下肢のリンパ浮腫が起こる原因

下肢にリンパ浮腫の症状が出現した場合は、すみやかな受診とともに以下のようなセルフケアに取り組むことも大切です。

・太りすぎない
・適度に運動する
・疲れやストレスをためない
・きつい下着や締め付けの強い衣服を避ける

体重増加はむくみのきっかけとなります。ウォーキングといった適度な運動により体重増加を防ぎ、リンパ液の流れを促しましょう。

疲れやストレスがたまると、免疫力が低下し、リンパ浮腫悪化の原因となります。仕事や家事で無理しすぎなくてすむよう、同僚や家族などにも協力を仰いでください。

きつめの下着やヒールの高い靴などは、体に負担をかけ、むくみのきっかけとなりやすいため避けたほうが無難です。

リンパ浮腫の症状改善や悪化防止には、治療と同時にセルフケアも大きな役割を果たします。症状に気づいた時点ですみやかに受診し、日常生活の送り方に関して医師からアドバイスを受けましょう。

 

下肢のリンパ浮腫の治療法

下肢のリンパ浮腫の治療法

下肢のリンパ浮腫の治療は、以下のような複数の方法を組み合わせて行われます。

保存的治療 用手的リンパドレナージ
圧迫療法
圧迫した状態での運動
外科的治療(手術)

 

保存的治療には、症状の進行を抑制するだけでなく、手術前後の状態を整える役割もあります。病院を受診したときのみが治療ではないと認識し、日常生活のなかでも自身でのケアを継続することが必要です。

用手的リンパドレナージ

むくみを軽減させるための医療用マッサージである用手的リンパドレナージは、下肢のリンパ浮腫に用いられる保存的治療の1つです。流れが滞っている部分から、正常に働いているリンパ節へとリンパ液を誘導します。

下肢の場合は、リンパ浮腫を起こしている側のわきの下(左下肢にむくみがあれば左のわき)へ、リンパ液を誘導するイメージです。

コリをもみほぐす筋肉マッサージや、美容目的のリンパドレナージュとは異なるので、安易に自己流で行わないようにしましょう。

用手的リンパドレナージを実施した直後はむくみが改善したように見えますが、効果は一時的であることがほとんどです。取り入れる際は、ほかの治療法との併用を検討してください。

圧迫療法

下肢のリンパ浮腫の治療には、圧迫療法も用いられます。リンパ液が患部に滞留するとリンパ浮腫が進行する恐れがあるため、弾性のある包帯やストッキングなどで適度な圧をかけ、流れを促します。

あまりに高い圧の弾性着衣は血行を妨げたり、神経障害を引き起こしたりしますが、力が弱すぎると効果が得られません。弾性ストッキングにたるみやしわがある場合も、皮膚に障害が生じる可能性があるため、装着方法の指導をしっかりと受けることが必要です。

症状に合い、治療にも適切な弾性着衣を専門家に選んでもらいましょう。

圧迫した状態での運動

弾性着衣・バンテージで圧迫した状態での運動も、下肢のリンパ浮腫に用いられる治療法です。

リンパ浮腫のある下肢を圧迫した状態で運動することで、筋肉のポンプ作用と外圧により血液やリンパ液の流れが良くなります。下肢から上体へのリンパ液の流れも促し、むくみの改善につなげます。

ただし、ハードな運動をしすぎると血流の増加によりリンパ液も増生され、逆効果となってしまうため、脈拍が上がらない程度に留めましょう。

下肢のリンパ浮腫の症状を改善させたい方は、弾性ストッキングを履いたうえで運動をします。具体的には、ウォーキングやひざの曲げ伸ばし・かかとの上げ下ろしなどを、自身の体調と相談しながら行なってください。

外科的治療(手術)

下肢のリンパ浮腫では、進行程度に応じて外科的治療(手術)が選択される場合もあります。

リンパ管静脈吻合術(LVA) リンパ管の一部を切開して細い静脈とつなぎ合わせる
リンパ節・リンパ管移植(LNT) 体内の健康なリンパ節・リンパ管を患部に移植する
脂肪吸引術(LS) 変性した皮下組織を除去する

 

リンパ浮腫が生じた場所や太さ、リンパ液の流れている量に応じて治療効果が見込める術式を選びます。

早期介入によりリンパ管の機能が残っている場合は、LVAやLNTの効果が期待できるでしょう。一方で、組織変性が進んでいる患者さんには、LVAやLNTと余分な脂肪を除去するLSを組み合わせた方法をとります。

 

下肢のリンパ浮腫の治療に関するQ&A

「下肢のリンパ浮腫の治療を受けたいけれど不安」という方に向け、以下のようなよくある質問に回答します。

・病院ではどのような検査をする?
・手術をする場合の流れは?
・治療にはどのくらい費用がかかる?

専門的な治療を受けるためには、リンパ浮腫の診療経験が多くある医師のもとで適切な検査と診断を受けることが大切です。信頼できる医療機関を選び、納得のいく治療を受けましょう。

病院ではどのような検査をする?

下肢のリンパ浮腫が疑われる際に、診断のために行われる検査は以下のとおりです。

・患部の計測
・写真撮影
・超音波検査
・リンパシンチグラフィー
・インドシアニングリーン(ICG)検査

検査結果から主治医が症状の進行段階を判断し、適切な治療法を選びます。検査・診断の結果、手術による治療効果が見込まれると判断され、患者さんが希望する場合は血液検査も行います。

感染症の有無やほかの疾患との鑑別のために、追加の検査が必要になることもあるでしょう。正確な診断を受けることで、早期に適切な治療を開始でき、症状の進行防止が可能です。

手術をする場合の流れは?

下肢のリンパ浮腫に対し、手術をする場合は、以下のような流れで進みます。

1.今後の治療方針の相談をする
2.手術に同意した場合は具体的な内容について説明を受ける
3.術後のセルフケアや生活の注意点の指導を受ける
4.手術日の予約をする

全身麻酔をともなう手術でなければ原則入院は不要です。当院で実施しているリンパ管静脈吻合術(LVA)は局所麻酔で行うため、手術終了後は歩いて帰宅できます。

手術後は定期的な診察を受け、経過を確認してもらいながら適切なケアを続けましょう。術後も圧迫療法や運動を継続することで、より良い治療効果が期待できます。

治療にはどのくらい費用がかかる?

下肢のリンパ浮腫の治療にかかる費用は、患者さんごとに大きく異なります。費用に差が生じる理由は、保険適用の対象となるかが症状や原因・治療法によって決まり、重症度でも自己負担割合が異なるためです。

リンパ浮腫の治療で公的保険が適用される項目は、以下のようなごく一部です。

・医師から処方された弾性着衣の購入費
・複数の手法を組み合わせた保存的治療費
・リンパ管静脈吻合術(LVA)の手術費

当院は、リンパ浮腫にかかわる診療は保険適用で行なっており、経済的な理由で受診をためらっている方も、安心して治療を受けられる環境を整えています。まずは信頼できる医療機関を見つけ、相談してみましょう。

 

下肢のリンパ浮腫にお悩みなら当院へ

下肢のリンパ浮腫にお悩みの方は、ぜひ一度当院へご相談ください。当院ではリンパ浮腫に関する専門知識を持った経験豊富な医師が対応し、適切な治療法をご提案します。

リンパ浮腫は、進行すると治療が難しくなる病気です。しかし、熟練した技術を持ち、信頼のおける医師のもとで治療に取り組むことで改善が見込めます。

早期の受診が症状の進行を防ぐ鍵となるため、お悩みの方はお気軽にお問い合わせください。

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この記事の執筆医師

永尾 光一 先生

永尾 光一 先生

東邦大学 医学部教授
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 形成外科センター長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。形成外科診療科部長を経験する(基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

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