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下肢のリンパ浮腫の原因と改善法

リンパ浮腫の原因と対策について、今回はリンパ浮腫の中でも下肢にできるタイプの改善法をご紹介します。

 

下肢のリンパ浮腫とは

まず、下肢のリンパ浮腫とはどのようなものでしょうか。

リンパ浮腫の種類には、「原発性リンパ浮腫」と呼ばれる生まれつきのむくみ症や、先天性のリンパ管やリンパ節の発育不全からなるものと、「続発性リンパ浮腫」と呼ばれる主に手術後に生じるリンパ管の働きの不具合によるものがあります。

子宮がんや卵巣がんなど下半身の治療後は下肢のリンパ浮腫につながりやすい一方で、乳がんなどの治療後には上半身がリンパ浮腫につながりやすいと言われています。

 

下肢のリンパ浮腫が起こる原因

下肢のリンパ浮腫は、前述のとおり、子宮がんや卵巣がんの手術後に発症することが多くあります。

がんの手術では、「リンパ節郭清(かくせい)」といって、がんの転移を防ぐためにがん周辺のリンパ節を切除する場合があります。リンパ節を切除することによって、リンパ液の流れが滞り、むくみが生じます。

下肢のリンパ浮腫は、旅行で長時間歩いたり、引っ越しなどで重い荷物を運んだりと、疲労や頑張り過ぎること、無理し過ぎることでむくみやすくなります。

また、がん手術でのリンパ節切除がきっかけでリンパ浮腫の発症となる際、治療後数カ月で生じる場合もあれば10年上経ってから生じる場合もあります。

症状の段階は以下の通りです。

早期の症状

リンパ液がたまって皮下が浮腫むため、静脈が見えづらくなったり、皮膚が張ったりします。皮膚をつまんだ際につまみにくい、またはしわが目立たなくなることもあります。自覚症状があまりなく、気づかないうちにむくみを起こしているかもしれません。

軽度から中度の症状

腕や脚にだるさ・重さを感じ、疲れやすいなどの症状が出てきます。また、腫れぼったいと感じたり、指でむくんでいる部分を押すと跡が残ったりします。がんの手術を受けている場合は、腕や脚ががんの治療前と比べて太くなることがあります。

重度の症状

むくみが進行し重症化してくると、皮膚が厚くなる、乾燥しやすくなる、硬くなるといった変化が現れます。また関節が曲げにくくなる、手足を動かしたときに違和感がでることがあります。

セルフケア方法

上記のような症状を感じたら、早期の治療が大切です。なるべく早めに医療機関の診察を受けましょう。

また、むくみの初期症状が比較的軽い場合は、その後の発症や悪化を予防するため以下の点に注意して、リスクを避けた生活を心がけましょう。

  • 体重増加はむくみのきっかけとなります。運動不足は体重増加につながるためウォーキングなど適度な運動を心がけましょう。
  • 疲れやストレスが溜まると、リンパ管の流れに障害が生じやすくなります。仕事や家事も無理し過ぎないようにしましょう。
  • きつめのストッキングやヒールの高い靴などは、体に負担をかけむくみのきっかけとなりやすいので回避しましょう。

また、リンパ浮腫になってしまった場合、治療と同時に自身でのセルフケアも大きな役割を果たします。

乾燥や感染から皮膚を守るためのスキンケアや、リンパの流れを促す用手的リンパドレナージ(医療マッサージ)など、治療と同時に医師からのアドバイスを受けられますので、これらを参考にして自身の症状に合った治療とセルフケアを行いましょう。

 

下肢のリンパ浮腫の治療法

下肢のリンパ浮腫の治療法

リンパ浮腫の治療には、手術(外科的治療)と、手術前後の環境を整える保存的治療があります。手術内容については後述(※6)します。保存的治療には、個々の症状に応じて複数の療法を組み合わせて行う「複合的理学療法」があり、主な内容は以下の通りです。

用手的リンパドレナージ

用手的リンパドレナージは、むくみを軽減させるための医療用マッサージの手法です。手のひらで皮膚をなでて、脚にたまったリンパ液を正常に機能するリンパ節の方へ流れるよう促します。リンパ浮腫の予防ではなく、リンパ浮腫との診断がされた際に、むくみの改善を目的として行われる治療法です。

エステなどで行われている美容マッサージやコリ等をもみほぐす筋肉マッサージ、痩せ身や美容目的のリンパドレナージとは異なりますので自己流で安易に行わないようにしましょう。

手法としては、流れの滞っているリンパ節を避けて、正常に働いているリンパ節へと誘導します。下肢の場合はリンパ浮腫のある側の脇の下(左足に浮腫があれば左側の脇)へ促すようリンパ液を誘導するイメージです。実際にセルフドレナージを行いたい方は医師に相談をして適切な指導を仰いで下さい。

圧迫療法

圧迫療法はリンパ浮腫の治療の中で最も重要な役割があり、リンパドレナージによりむくみが軽減した状態を維持するためにも行うべき治療です。リンパ液の滞留でリンパ浮腫の症状が進行してしまうので、リンパ液をためないよう、弾性のあるバンテージ(弾性包帯)や着衣(弾性スリーブ、弾性グローブ、弾性ストッキング)などで圧迫します。

症状の程度によって圧迫の方法は異なり、比較的軽度のリンパ浮腫であれば弾性着衣を用いた圧迫をし、重症化したリンパ浮腫なるとバンテージを用いた圧迫を行うなど、個々の症状に合わせて行います。

圧迫した状態での運動

弾性着衣やバンテージなどを用い、患部を圧迫した状態で運動をすることで、筋肉のポンプ作用と外圧により血液やリンパ液の流れが良くなります。このリンパ液を下から押し上げる作用を利用して、下肢から上体へのリンパの流れを促し、むくみの改善につなげます。この際、過度な運動をすると血流の増加によりリンパ液も増生され逆効果となってしまうため、脈拍の上がらない程度の運動に留めましょう。

外科的治療には、リンパ浮腫の進行程度に応じて2種類の手術があります。早期発見によりリンパ管の機能が残っている場合には機能再建手術を、一方、組織変性が進んでいる場合には機能再建と余分な組織を除去する減量手術を組み合わせた方法を行います。

 

病院での検査は何をする?

上記の通り、症状の進行段階によって適切な治療法を選ぶため、診断を受けたら以下のような検査を行います。

  • 写真撮影や患部の計測
  • 超音波検査
  • ICGリンパ管蛍光検査(造影検査)

また、手術適応となり希望する場合には血液検査も行います。

 

手術はどんなことをする?内容や流れについて

機能再建手術には、リンパ管の一部を切開し細い静脈とつなぎ合わせる側端吻合と、リンパ管を切断して細い静脈と縫い合わせてつなぐ端端吻合があり、患部の場所や太さ、リンパ液の流れている量に応じて術式を選びます。

減量手術は、脂肪吸引や皮膚皮下組織を切除する方法がありますが、リンパの流れを滞らせずに再建と併用して行うことで、より高い治療効果が期待できます。

まずは、初診にて検査を実施し今後の治療方針を相談します。手術が決まったら具体的な説明や手術後のセルフケアや過ごし方について説明を受け、手術日の予約をします。全身麻酔を伴う手術でなければ原則入院は不要です。局所麻酔のため、手術終了後は歩いて帰宅できます。

 

初診費用

すべて保険診療になります。
手術費用については適用する術式によりますので診察の際に医師にお尋ねください。

 

下肢のリンパ浮腫の手術なら銀座リプロ外科

リンパ浮腫の手術は、非常に細い血管やリンパ管をつなぎ合わせる高度な技術を要する手術です。

未熟な医師による施術はリンパ管の損傷や、リンパ液の漏れ出しによる症状の悪化などのリスクにつながりますので、熟練した技術を持つ信頼のおける医師と治療に取り組むことが大切です。

銀座リプロ外科では、お家で毎日簡単にセルフケアが可能なオリジナルのリンパドレナージ方法「銀座リプロ式リンパドレナージ」を全ての患者様にお教えしています。

当院ではリンパ浮腫に関する専門知識を持った経験豊富な医師が対応します。
リンパ浮腫にお悩みの方はぜひ一度、銀座リプロ外科へご相談下さい。

リンパ浮腫の手術に関して詳しくはこちらをご覧ください。

この記事の執筆医師

永尾 光一 先生

永尾 光一 先生

東邦大学 医学部教授
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 形成外科センター長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。形成外科診療科部長を経験する(基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

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