「むくみがなかなか引かない」「腕や脚が重だるい」といった、リンパ浮腫の症状を自覚してはいませんか。リンパ浮腫は自然に治らないうえ、放置すると悪化し、生活に大きな支障をきたすことがあります。
本記事では、リンパ浮腫が悪化したときの症状や受診の目安などをくわしく解説します。当院でできる治療法も紹介するので、症状を改善し、少しでも快適な生活を送りたい方はぜひ参考にしてください。
リンパ浮腫を放置するとどうなる?
リンパ浮腫は自然に治らず、治療を受けず放置すると、以下のような流れで悪化する病気です。
ステージ0 | リンパ液の流れは悪くなっているものの、見た目の変化はない |
---|---|
ステージⅠ |
|
ステージⅡ |
|
ステージⅢ | 肥厚・色素沈着・イボなど皮膚の変化が目立つ |
太く、硬く変化した腕や脚を元の状態に戻すことは難しいため、症状に気づいた際は早く治療を開始しましょう。
リンパ浮腫が悪化すると起こる症状
リンパ浮腫が悪化すると、以下の症状が起こります。
- むくみが進行する
- 皮膚が厚く硬化する
- リンパ液が皮膚から漏れ出す
- 蜂窩織炎を発症する
悪化により、つらい症状に悩まされるだけでなく、外出が困難になるといった生活の質の大幅な低下につながりかねません。深刻な事態に陥る前に、医療機関で早めに適切な治療を受けることが重要です。
むくみが進行する
リンパ浮腫が悪化すると、むくみの症状が強まります。
初期のリンパ浮腫では、夕方になると足が重く感じられたり、靴下の痕がくっきりと残ったりする程度の軽いむくみです。進行すると、むくみは一日中続き、手首や足首の位置がはっきりとわからなくなる状態に陥ります。
体液がたまり続けることで、組織の弾力が失われ、指で押すと痕が残る状態(圧痕性浮腫)にもなります。
むくみが強くなると、歩行や階段の上り下りがつらくなるだけでなく、長時間の外出や立ち仕事が難しくなりかねません。
リンパ浮腫は一般的なむくみとはまったく異なるため、悪化させないよう注意しましょう。
皮膚が厚く硬化する
リンパ浮腫によりリンパ液がたまった状態が長期間続くと、皮膚が分厚く・硬くなる「線維化」が進行し、ゴワついた感触になります。さらに悪化すると「象皮症」と呼ばれる状態に至り、イボ状に皮膚が硬くなったり、色素沈着を伴ったりすることもあります。
やわらかさを失った皮膚は、乾燥やひび割れが生じやすく、見た目の変化が精神的な負担となるだけでなく感染症のリスクを高めるでしょう。
皮膚の硬化が進むと、用手的リンパドレナージや圧迫療法などの保存的治療が効きにくくなるため、悪化する前の対処が肝心です。
リンパ液が皮膚から漏れ出す
重度のリンパ浮腫では、皮膚からリンパ液がにじみ出てくるリンパ漏になることがあります。
服と皮膚が擦れてできた小さな傷からリンパ液が漏れるケースもあり、近場への外出でも気をつかうようになるでしょう。頻繁に衣服や寝具が濡れれば、日常生活に大きな不便が生じます。
皮膚がリンパ液で常に湿っていることで、ただれや赤みを引き起こしたり、傷口から細菌に感染したりするリスクもあります。
リンパ液の漏出がある場合は、保護剤を当てたうえから圧迫療法を実施するといった専門的な処置が必要です。
蜂窩織炎を発症する
蜂窩織炎(ほうかしきえん)は、リンパ浮腫の代表的な合併症である細菌感染による炎症で、むくみの悪化とともにリスクが高まります。患部の免疫機能低下が原因で起こります。
蜂窩織炎の症状は、以下のとおりです。
- 38度以上の発熱
- 全身の倦怠感
- 食欲低下
- 強い痛み
- 皮膚の赤み
- 腫れ
- ぼつぼつとした赤い発疹
蜂窩織炎を繰り返すと、リンパ管の損傷がさらに進み、リンパ浮腫のさらなる悪化を招く悪循環が起こりかねません。血液循環により菌が全身に広がると、菌血症を併発する恐れもあります。
蜂窩織炎に対しては、早期の抗菌薬治療が不可欠です。
リンパ浮腫の受診のタイミングは?
がん治療で影響を受けた部位に以下の症状が1つでも当てはまる場合は、リンパ浮腫を疑い、早期に医療機関で受診することが必要です。
- がん治療から半年以上経過してもむくみが残っている
- 腕や脚に重さや突っ張るような違和感が続く
- 皮膚をつまむと左右で厚み・やわらかさに差がある
- 数日安静にしてもむくみが解消しない
- 手術した側の腕や脚の血管が見えにくくなっている
- 脚にあったむくみが下腹部や陰部にまで広がっている
リンパ浮腫は時間が経つほど治療効果が出にくくなります。「多少のむくみは仕方ない」と思わず、医療機関に相談しましょう。
リンパ浮腫の悪化を防ぐ方法①|保存的治療
リンパ浮腫の悪化を防ぐための保存的治療として、以下の4つが挙げられます。
- 用手的リンパドレナージ
- 圧迫療法
- 圧迫下の運動療法
- スキンケア
複数の治療法を組み合わせることで、症状の改善が見込めます。日常生活に取り入れ、毎日の習慣にしましょう。
用手的リンパドレナージ
用手的リンパドレナージは、リンパ浮腫の治療法の1つで、専門家が手技でリンパ液の流れを促す方法です。滞ったリンパ液を適切な場所へ導き、悪化したむくみを軽減させます。
血流改善やリラックス効果を目的とした通常のマッサージとは異なり、強い力をかけず、皮膚を優しくなでるように行うことが特徴です。蜂窩織炎が見られる場合は受けられないため、事前の体調確認が欠かせません。
定期的に用手的リンパドレナージを受けると、症状の進行を抑える効果が期待できます。ただし、単独では効果が持続しにくいため、圧迫療法やスキンケアと組み合わせましょう。
圧迫療法
圧迫療法は、弾性着衣や弾性包帯で患部に適切な圧力をかけて循環を促し、体液の貯留を防ぐ治療法です。
リンパ浮腫が悪化して患肢が太くなってしまうと、一般的な弾性着衣が入らず、弾性包帯を使用しなければならないケースが多く見られます。弾性着衣と弾性包帯の違いは、以下のとおりです。
弾性着衣 (弾性ストッキング) |
|
---|---|
弾性包帯 |
|
包帯の見た目の悪さや使いにくさに難渋している方には、オーダーメイドの弾性着衣がおすすめです。
オーダーメイドも可能な弾性着衣「リンパスリム」をチェックする
圧迫下の運動療法
弾性着衣(弾性ストッキング)や弾性包帯を装着した状態で行う運動療法は、リンパ液の流れを改善する効果をさらに高めます。運動して筋肉のポンプ機能が働くと、リンパ液がより流れやすくなり、継続することでリンパ浮腫の悪化を予防できます。
リンパ浮腫改善におすすめの運動は、以下のとおりです。
- ウォーキング
- 簡単なストレッチ
- 軽い筋力トレーニング
マラソンやテニスといった激しい運動は、血流を増やすことでリンパ液を増加させるうえ、疲労が蓄積するため、リンパ浮腫が悪化しかねません。医師・専門家の指導を受けながら運動の種類や頻度を決定してください。
スキンケア
リンパ浮腫患部は細菌感染を起こしやすい状態なので、スキンケアを毎日行い、皮膚を健康に保ちましょう。細菌感染による炎症は、むくみ悪化の原因であり、できる限り予防したい合併症です。
細菌から体を守っている角質層のバリア機能や静菌緩衝作用は、皮膚が乾燥すると働きが低下してしまいます。以下のスキンケアによってリンパ浮腫の患部を清潔に保ち、保湿することが重要です。
- 石鹸やボディソープをよく泡立ててから手で優しく洗う
- 指や爪の間も丁寧に洗う
- ローションやクリームなどの保湿剤を使う
洗う際に体をゴシゴシ擦ると、皮膚を傷つける原因になりかねません。入浴後、15分以内を目安に保湿剤を塗り、皮膚の潤いを保つことが大切です。
リンパ浮腫の悪化を防ぐ方法②|手術
リンパ浮腫の悪化を防ぐ方法として、以下の手術も挙げられます。
- リンパ管静脈吻合術(LVA)
- リンパ管・リンパ節移植術(VLNT)
術後も保存的治療を継続すると、むくみや感染のリスクを抑える効果が期待できます。
リンパ管静脈吻合術(LVA)
リンパ管静脈吻合術(LVA)は、約0.5mmの細いリンパ管と静脈を顕微鏡下でつなぎ、滞ったリンパ液を流す道を作る手術です。リンパ管の機能がひどく悪化していないタイミングで受けると、リンパ浮腫に対するより高い治療効果が期待できます。
局所麻酔で1~2cmの切開で行う術式なので、患者さんへの負担が少なく、病院によっては日帰り手術が可能です。仕事や家庭の事情で手術を諦めていた方でも、外科的治療を視野に入れやすいでしょう。
初期かつ上肢のリンパ浮腫であれば、術後の圧迫療法が不要になるケースもあります。
リンパ管・リンパ節移植術(VLNT)
リンパ管・リンパ節移植術(VLNT)は、健康なリンパ管・リンパ節を移植し、リンパ液の流れを改善するリンパ浮腫の手術です。
保存的治療では改善が見られなかったり、LVAだと治療効果が期待できなかったりする、やや症状が悪化した患者さんでも高い成果が見込めます。
ただし、術後に効果を実感できるまでに1年以上かかるケースがあるうえ、全身麻酔を用いた手術は患者さんへの負担が大きくなりがちです。VLNTを実施できる医療機関は限られているという懸念点もあります。
当院でできるリンパ浮腫治療
当院では、患者さんの状態やライフスタイルに合わせた、以下のリンパ浮腫治療を提案しています。
リンパスリムでの圧迫療法 | 続けやすさにこだわった医療用弾性着衣 |
---|---|
銀座リプロ式運動療法 | リンパドレナージ効果と筋力アップが期待できる運動法 |
リンパ管静脈吻合術(LVA) | スーパーマイクロサージャリーの経験豊富な医師による日帰り手術 |
当院では、リンパ浮腫を専門的に治療する大学病院の医師による、保存療法から手術まで一貫したサポートが可能です。経験豊富な医師とともに、症状改善を目指しましょう。
リンパ浮腫が悪化する前に当院で診察を
リンパ浮腫が悪化する前に、当院で診察を受けることをおすすめします。
「まだ大丈夫」と思っていても、気づかないうちに進行し、日常生活に支障が出てしまう患者さんは少なくありません。早期に相談するほど、リンパ浮腫の症状進行を防げるとともに、高い治療効果が見込めます。
当院では、高い技術と実績を誇る医師による手術だけでなく、リンパスリムや銀座リプロ式運動療法といった保存的治療もご提案可能です。「体がだるい」「むくみが取れにくい」と感じた際は、ぜひ当院にご相談ください。
お問い合わせ・ご予約はこちら
〒104-0061 東京都中央区銀座2-8-19 FPG links GINZA 6F
この記事の執筆医師

永尾 光一 先生
一般社団法人日本精索静脈瘤協会 理事長
医療法人社団マイクロ会 理事長
銀座リプロ外科 院長
昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。形成外科診療科部長を経験する(基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。