「持っている弾性ストッキングを履く気にならない」と、さらに良い製品をお探しではありませんか。
弾性ストッキングはリンパ浮腫の治療に効果がある一方で、正しい選び方を実践しなければ身体的・精神的な負担が発生します。
自分に必要な製品を見極めるには、症状や目的に合った選び方を知ることが大切です。本記事では、弾性ストッキングを選ぶポイントについて詳しく解説します。自分に合った製品を選び、毎日を快適に過ごしましょう。
弾性ストッキングとは
リンパ浮腫の治療に用いる弾性ストッキングは、適度な圧力をかけて血液やリンパ液の流れを促すための一般医療機器です。
一般的なストッキングやドラッグストアで販売している着圧ソックスとは、用途や機能が異なります。医療機関での指導のもと、適切な圧迫圧やサイズを選ぶことが重要です。
リンパ浮腫治療における弾性ストッキングの使用目的と種類を紹介します。
使用する目的
弾性ストッキングは、次のような目的でリンパ浮腫治療に使用されます。
・リンパ液の流れを促進する
・停滞しているリンパ液を健康な部位へ移動させる
・静脈の循環を良くする
・リンパ漏を予防・改善する
適切な圧力の弾性ストッキングを履くことで、リンパ浮腫によるむくみの軽減や、症状の悪化予防が可能です。日常生活での快適な動作をサポートし、治療効果を高めることも期待できます。
自分がいつから弾性ストッキングの装着を開始すれば良いのかは、がん治療の主治医やリンパ浮腫の専門医とよく相談しましょう。
種類
弾性ストッキングには、使用目的や症状に応じて以下のようにさまざまな種類があります。
・ひざ下丈(ハイソックスタイプ)
・太もも丈
・パンティストッキングタイプ
・ベルト付き片足ストッキングタイプ
出典:リンパ浮腫簡易指導マニュアル|北海道リンパ浮腫診療ネットワーク
注意すべき点は、片足タイプの弾性ストッキングを選んだ場合、時間が経つとリンパ浮腫がないほうの脚がむくむリスクがあることです。
片足・靴下タイプの製品は、ずれ落ちないようにシリコンの滑り止めがついているものなどもありますが、いずれも履き口の締め付けを強くしています。弾性ストッキングより上の部分をむくませる可能性もあるため、知識のある専門家と購入前によく相談することをおすすめします。
弾性ストッキングは、既製品も多く販売されていますが、オーダーメイドの入手も可能です。
既製品は標準的なサイズで、手軽に試せる点がメリットです。一方、オーダーメイドであれば個人の体型にぴったり合わせ、適切に圧迫できるため、より良い治療効果が得られるでしょう。
リンパ浮腫における弾性ストッキングの選び方
リンパ浮腫の治療に使う弾性ストッキングの選び方を、以下の観点から解説します。
・圧力
・サイズ
・長さ
・素材
症状に合わせることはもちろん、自分で着脱できるかや、治療のモチベーションを保てるかといった側面も大切なポイントです。
最初に選んだ弾性ストッキングが、必ずしも最適とは限りません。合わなかった場合は別のストッキングに変更することも柔軟に考えましょう。
圧力
弾性ストッキングの選び方のポイントの1つには、圧迫圧があります。リンパ浮腫の治療では、症状の進行度によって適切な圧が異なります。
圧迫療法に使う弾性ストッキングの標準的な装着圧は、以下のとおりです。
リンパ浮腫の進行度 | 推奨される装着圧 |
---|---|
早期~軽度 | 弱圧(14〜21mmHg) |
中等度~重度 | 中圧(23〜32mmHg) |
重度 | 強圧(34〜46mmHg) |
重度難治性 | 超強圧(49〜70mmHg) |
公的保険で購入する場合は、通常30mmHg以上の圧迫圧が必要となりますが、医師の指示があれば20mmHgでも適用可能です。
弾性ストッキングは、血液やリンパ液の流れを促すために足先が最も圧が強く、太ももや下腹部に上がるにつれ弱圧になっています。圧が体に合わない場合は、治療効果が得られなかったり、外陰部や下腹部までむくんでしまう原因になったりします。
サイズ
自身の体にとって適切なサイズを選択することも、リンパ浮腫治療における弾性ストッキングの選び方のポイントです。
既製品を購入する際は、以下の部位の太さをメジャーで測り、近いサイズを選びます。
・ウエスト
・ヒップの最も突き出ている部分
・太もも
・ひざの下
・ふくらはぎの最も太い部分
・足首
パンティストッキングタイプや両脚そろった靴下タイプの弾性ストッキングは、むくんだ脚に合わせてサイズを決めることが一般的です。しかし、片方の脚がゆるくなり履き心地が悪いだけでなく、リンパ浮腫のない側のむくみを予防できないデメリットもあります。
既製品がすべての部位に合う人は少ないため、よりフィットした弾性ストッキングを求めているのであれば、オーダーメイドの購入がおすすめです。
長さ
自分の症状に合った長さであるかどうかも、リンパ浮腫治療の弾性ストッキングの選び方で大切なことです。
長さの種類 | 推奨される人 |
---|---|
ひざ下丈 |
・むくみ・皮膚の変化がひざ下までに限定されている ・肥満により長いストッキングの着用が難しい |
太もも丈 |
・むくみが太ももまで拡大している ・ひざの関節炎がある ・脚が変形している |
パンティストッキング |
・下腹部や外陰部までむくんでいる ・片足ずつのストッキングだとずれてしまう |
弾性ストッキングは、長いほど着脱が難しくなります。装着したままトイレに行けるか、自分で着脱できるかといった点も、長さを選ぶ際に着目すべきポイントです。
自分だけで弾性ストッキングを脱いだり履いたりすることが難しい場合は、家族や周囲の人に手伝ってもらえるかも確認してから選びましょう。
素材
リンパ浮腫の治療に使う弾性ストッキングの選び方の1つには、素材に注目することも挙げられます。弾性ストッキングは、伸縮性のある2本の糸を「丸編み」あるいは「平編み」という方法で編んで作られています。
丸編み(画像:左)は、糸の張力を変化させて圧や形を調整する編み方です。フィット感を得にくいものの見た目が美しく、市販の弾性ストッキングによく用いられます。
平編み(画像:右)は針目の数を変えて平たく編み、縫い合わせてストッキングの形にします。編み目が粗い一方でフィット感が良いため、オーダーメイドに多用される編み方です。
日常生活での使用が苦痛にならないよう、素材にもこだわって弾性ストッキングを選びましょう。
弾性ストッキングの使い方
リンパ浮腫の患者さんが弾性ストッキングを使用する際に注意するポイントは、以下の2つです。
・しわやたるみが生じないよう装着する
・毎日使用する
弾性ストッキングの効果を引き出すためには、適切な使用方法を守ることが求められます。
しわやたるみが生じないよう装着する
弾性ストッキングを装着する際は、しわやたるみが生じないように気を付けましょう。しわやたるみができると、圧力が均一にかからず、逆にリンパ液の流れを妨げてしまいます。圧力がかかったしわの部分の皮膚が傷つき、感染を起こしてしまう恐れもあります。
長さが余り、弾性ストッキングを折り返して装着する方がいますが、局所的に過剰な圧がかかってしまうため、決して行わないでください。
弾性ストッキングは均等に伸ばしながら、下から上へゆっくり引き上げて装着しましょう。圧迫圧の強い弾性ストッキングは装着が難しいので、専門家の指導を受けることをおすすめします。
毎日使用する
リンパ浮腫の患者さんは、基本的に毎日弾性ストッキングを装着する必要があります。日中は装着し、横になって血液やリンパ液の流れが妨げられにくくなる就寝時には外すことが一般的です。ただし、医師の指示があった場合は就寝時も装着します。
清潔を保つために、弾性ストッキングは毎日洗濯し、完全に乾燥させて使用しましょう。洗い替えとして、はじめから2足購入することをおすすめします。
毎日装着・洗濯していると次第に繊維が伸び、圧が弱くなります。購入して半年ほど経過したら、買い替えを検討してください。
弾性ストッキングの選び方を間違えると?
弾性ストッキングの選び方を間違えた際のリスクは、以下のとおりです。
・しびれや痛みが出る
・皮膚トラブルの原因となる
・毎日の使用が苦痛になる
症状に合っていない弾性ストッキングの使用は、適切な圧力がかからず、本来の効果が得られないうえ、かえって状態を悪化させる可能性があります。
しびれや痛みが出る
弾性ストッキングの選び方を間違え、過度に圧がかかると、しびれや痛みの原因となります。
弾性ストッキングの目的の1つは、適切な圧力で血流やリンパ液の流れをサポートすることです。サイズが小さすぎる・圧が強すぎる弾性ストッキングは、必要以上に脚を圧迫して血流を悪化させ、痛みが出現します。
神経が締め付けられることにより、しびれを感じる恐れもあります。装着中に足が冷たくなる・感覚が鈍くなる場合は要注意です。
一方で、装着トラブルが心配で大きすぎたり圧が弱すぎたりする弾性ストッキングを選ぶと、十分な治療効果を得られません。
しびれや痛みが出るときは、弾性ストッキングのサイズや圧迫力が適切かの確認を推奨します。
皮膚トラブルの原因となる
皮膚トラブルも、弾性ストッキングの選び方を間違った場合に起こりうる問題の1つです。弾性ストッキングの装着中にしわができて皮膚に食い込むと、傷の原因となります。
通気性の悪い素材を使用していることにより、汗がこもり、湿疹やかぶれが起こる場合もあります。着用後にかゆくなったり、赤い発疹ができたりするときは、弾性ストッキングの素材やサイズが肌や体に合っていないかもしれません。
入浴や着替えなどの弾性ストッキングを脱いだタイミングで、赤くなっている部分や傷がないか、脚をチェックする習慣を付けると良いでしょう。
毎日の使用が苦痛になる
間違った選び方のもと購入した弾性ストッキングは、毎日の使用が苦痛になる恐れがあります。
サイズの合わない弾性ストッキングは、関節に負担がかかり動きにくくなるため、日常生活に悪影響が及んでしまいます。「リンパ浮腫を治したい」という気持ちがあっても、着用しにくく、サイズが合わないと履きたくなくなってしまうでしょう。
弾性ストッキングは毎日装着する必要があり、使用を中断すると、リンパ浮腫は進行してしまいます。装着したときの見た目も含めて、毎日使用しても精神的に負担を感じない弾性ストッキング選びが重要です。
リンパ浮腫には銀座リプロ式弾性ストッキングを
リンパ浮腫の圧迫療法には、銀座リプロ式弾性ストッキングがおすすめです。
下肢のリンパ浮腫の多くは、最初は片側のみに出現しますが、時間とともに会陰や下腹部もむくむようになります。症状が進行すると、もう一方の脚にもむくみが生じてくることもあります。
銀座リプロ式弾性ストッキングにはパンティストッキングタイプを採用しており、ずれ落ちや太もも部分での締め付けの予防が可能です。
会陰部や骨盤内を刺激することでリンパ液の貯留を防ぐという特別な機能も持ち、現時点でリンパ浮腫のない脚への症状拡大を防止できることもメリットです。
銀座リプロ外科では、医療機器メーカーの協力により、患者さんの体やむくみの状態に合わせた完全オーダーメイドの弾性ストッキングを提供しています。銀座リプロ式弾性ストッキングの特徴と、当院の製品を選ぶメリットを紹介します。
特徴1:オーダーメイドだから痛くない・しびれない
銀座リプロ式弾性ストッキングの特徴は、オーダーメイドのため痛みやしびれの出現を抑えられる点です。専用の機械で着圧を測り、一人ひとりにぴったりなサイズの弾性ストッキングを作ります。
適正な着圧で履けるので、一部の組織に負担がかからず、痛みやしびれの出現なく着用可能です。しびれや痛み・重だるさ・赤みなどの改善に加え、リンパ浮腫の悪化防止が期待でき、多くの患者さんにご満足いただいています。
銀座リプロ式弾性ストッキングは、市販のストッキングが合わない場合や、より快適に着用したい方におすすめです。専門的な診察・計測をもとに作成するため、安全で長く続けやすい点もメリットです。
特徴2:「リンパルーム」で何でも相談できる
当院に設けている「リンパルーム」では、弾性ストッキングの使用方法や装着にともなう悩みを相談できます。
弾性ストッキングを買いたくても、購入できる施設や指示書を書いてくれる医師の所在がわからない患者さんは大勢います。がんの専門病院は患者数が多く、弾性ストッキングに関する指導まで行えないこともあるでしょう。
当院のリンパルームでは、お手持ちの弾性ストッキングの状態や着圧の確認、履き方の指導をします。銀座リプロ式弾性ストッキング購入後もきちんとフォローしますので、安心してご利用ください。
特徴3:圧迫療法と一緒にほかの治療法も検討できる
当院では、圧迫療法で使う弾性ストッキングの相談とあわせて、手術による治療効果が見込めるかの検討も可能です。
リンパ浮腫の症状改善において、リンパ液の流れる道を新しく作り、リンパ管の機能を回復させる手術が効果的な場合があります。
当院は、局所麻酔下で機能の低下したリンパ管と皮下静脈をつなげる、リンパ管静脈吻合(LVA)を中心とした手術を行なっています。発症してから早い時期のほうが手術の傷が小さくすむだけでなく、高い治療効果が期待できるため、リンパ浮腫は早期発見・受診が重要です。
当院を受診いただければ、症状に応じて弾性ストッキングと併用すべき治療方法をご提案します。
リンパ浮腫にお悩みなら当院へ
弾性ストッキングの選び方に迷ったら、当院へご相談ください。リンパ浮腫治療の経験豊富な医師が詳しく診察し、適切な治療法や弾性ストッキングの種類・圧迫圧をご提案します。
リンパ浮腫の治療では、弾性ストッキングの着用のほか、適度な運動・皮膚の管理など、複合的なケアが大切です。手術による治療効果が見込める場合もあります。
リンパ浮腫に対する総合的なサポートが可能な当院へ、ぜひ一度お問い合わせください。
お問い合わせ・ご予約はこちら
〒104-0061 東京都中央区銀座2-8-19 FPG links GINZA 6F
この記事の執筆医師

永尾 光一 先生
東邦大学 医学部教授
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 形成外科センター長
昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。形成外科診療科部長を経験する(基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。
所属医療機関