治りにくい疾患の1つにリンパ浮腫があります。手足がむくんでしまうのが主な症状ですが、場合によっては感染症を引き起こし、日々の生活にも影響してくるでしょう。早期発見と継続的な治療が必要ですが、なかなか病気に対する知識が広まらず、早期発見・早期治療が難しいのが現状です。
そこで今回の記事は、リンパ浮腫と弾性ストッキングについて解説します。リンパ浮腫の知識はもちろん、治療に使われる弾性ストッキングについても詳しくお伝えします。弾性ストッキングをご使用中の方や既存のストッキングが合わない方に対して、当院が採用しているオーダーメイドについても説明しますので、ぜひ最後までお読みください。
リンパ浮腫とは
リンパ浮腫は、手足などにむくみが出現する疾患です。体内のリンパ液は、静脈に吸収できなかったタンパク質や老廃物などが、毛細リンパ管に入ることで作られています。そのため、高濃度のたんぱく質を含んでいます。
このリンパ液がリンパ管に回収されずに滞ってしまうと、皮膚の下に溜まってしまい、リンパ浮腫を発症します。
リンパ管の途中には、リンパ液を浄化する役割を持つリンパ節があります。風邪をひいたときにリンパ節が腫れるのは、体内のウイルスを攻撃するためにリンパ節の作用が活発化しているためです。
がん治療等でリンパ管やリンパ節に影響を受けた方は、リンパ浮腫を発症する可能性があります。発症時期は予測が出来ないため、注意が必要です。
リンパ浮腫の症状
リンパ浮腫という病気は進行しやすいのが特徴です。国際リンパ学会では、リンパ浮腫の症状を大きく4つに分けており、0期~3期に分類しています。それぞれの時期に起こる症状は以下の通りです。
【0期(潜在期)】
リンパの流れは悪いが、明らかなむくみの症状は起きていない。見た目の変化がなく、無症状の状態。
【1期】
皮膚を押すとその部分が凹み、違和感がでることもある。日によって症状にばらつきがあるが、患部を高い位置に挙げる(挙上)ことで、症状が落ち着くこともある。
【2期】
皮膚を押すと痕が残る状態。見た目にも変化があり、明らかな左右差が生じる。挙上しても症状が軽減することはない。
【3期】
最も進行している状態。皮膚組織が変化して固くなってしまう。炎症(蜂窩織炎)など合併症の危険があり、セルフケアだけでは回復が難しい状態。
3期がさらにひどくなると皮膚変化が起き、「象皮症」・「リンパのう胞」・「リンパ漏」などを引き起こす可能性があります。悪化する前に早期発見が大切です。
リンパ浮腫は上記のように少しずつ進行していきます。病気が進行してしまうと関節が曲がりにくくなるため、日常生活に支障をきたす可能性もあります。
発見が難しい疾患ではありますが、ただのむくみだと思って油断せずに、必ずリンパ浮腫の専門医を受診してください。重症化を防ぐためにも、早期に適切な治療をしましょう。
リンパ浮腫になる原因
リンパの流れが滞ることで発症するのがリンパ浮腫です。リンパ浮腫には2種類あり、「続発性(二次性)リンパ浮腫」と「原発性(一次性)リンパ浮腫」があります。これらは発症原因で区別されており、続発性リンパ浮腫はがん治療の影響で発症し、原発性リンパ浮腫は明らかな原因がわからない状態での発症です。
リンパ浮腫患者の大半は続発性リンパ浮腫に属していて、がん治療のためにリンパ節やリンパ管の切除を行った方や、放射線の照射を行った方に多く発症します。発症時期は定かではなく、がん治療後すぐに発症するケースもあれば、10年以上経って発症するケースもあるでしょう。
また、発症の原因が分からない原発性リンパ浮腫患者も一定数いて、多くの場合は先天的な発育形成不全などが原因だと考えられています。しかしながら、はっきりとした発症原因は分かっていません。生まれた時からむくみがある場合や、年齢を重ねたことでむくみが生じる場合もあるため、原因を突き止めることは困難です。
リンパ浮腫の発症や悪化を防ぐためには、日頃から検診などで健康状態をチェックすることはもちろん、自身の体型維持も大切です。過剰に体重が増加するとリンパの流れを妨げてしまうため、注意してください。
リンパ浮腫と弾性ストッキングの効果と注意点
リンパ浮腫の治療法はいくつかあります。状態によっても治療法は異なりますが、特に重要なのが圧迫療法です。圧迫療法は保存療法(複合的療法)の1つで、弾性ストッキングを使用します。
弾性ストッキングの効果
弾性ストッキングは、患部を圧迫するために特殊な編み方をされた医療用のストッキングです。適度な圧を加えると血流が改善し、体内の循環が良くなるため、リンパ浮腫には効果があります。毎日履き続けることで、浮腫みの軽減や進行を遅らせることが可能です。
湿疹や皮膚潰瘍などの合併症も予防できるので、日常的に弾性ストッキングを着用することは効率的な治療法です。
弾性ストッキングの注意点
弾性ストッキングには、着用に関する注意点がいくつかあります。
- 自身にあったサイズを選ぶ
- 毎日着用する
- 毎日洗濯をする
- 定期的に交換する
- 医師または専門家の指導を受けたうえで着用を開始する。
弾性ストッキングは患部を圧迫するものです。しかし、皮膚が食い込むほどきついものやシワが出来るサイズを着用していると、リンパの流れを止めてしまう原因になりかねません。必ず、ご自身に合うサイズのものを使用してください。
サイズが合わないストッキングを着用し続けていると、しびれや痛みが生じます。もしそれらを感じたら、すぐに着用を中止しましょう。血流の悪化やうっ血を招く恐れがあります。
また、弾性ストッキングは毎日着用することで効果を発揮します。慣れるまでは履きづらさを感じることもありますが、履くのをやめてしまうとむくみが進行するので、継続することが重要です。日々洗濯をして、清潔なものを着用しましょう。
一度購入すれば繰り返し使えますが、弾性ストッキングの圧は永久のものではありません。使用とともに劣化してしまうため、一定期間使用したら交換する必要があります。着用の際に締め付けが弱くなったと感じたら、新しいものと交換しましょう。半年の目安で交換するのがおすすめです。
患者様の持病や状態によっては、弾性ストッキングの使用が適さない場合があります。必ず医師の診断や専門家の指導を受けてから着用を開始してください。
ストッキング以外の予防、治療方法
リンパ浮腫の保存療法には、弾性ストッキングによる圧迫療法の他にも複数の種類があります。
スキンケア
リンパ浮腫の場合、皮膚が乾燥しやすくなっています。
肌が乾燥している状態では、バリア機能が働いておらず感染を引き起こしやすいため、炎症を防ぐためにも保湿ケアは重要です。
リンパドレナージ
リンパ浮腫には、リンパドレナージという治療法も効果的です。ドレナージには排液という意味があり、リンパの流れに沿ってマッサージをすることで、流れを活性化させます。リンパドレナージは、毎日行うことが重要です。
各クリニックではセラピストが対応していますが、自宅ではご自身で行うか、ご家族の協力のもと取り組んでください。ご自宅でもケアする場合、クリニックでセラピストが行うマッサージを覚えていただく必要があります。
※ 銀座リプロ外科では、リンパドレナージのための通院が困難な方や、毎日自身で行うのも大変という方向けに、「銀座リプロ式リンパドレナージ」を推奨しています。
毎日気持ちよく簡単に行っていただけることが特徴です。当院の患者様は、この方法で良い結果を得られています。ぜひご相談ください。
圧迫療法
先程紹介した弾性ストッキングの他にも、色々なタイプの弾性着衣があります。腕だけのスリーブタイプや包帯タイプなどもあるので、ご自身にあったタイプを見つけましょう。
運動療法
筋肉や関節を動かすことによってリンパや血液の流れは良くなります。しかし、疲労感が残るほど負荷をかけてしまうと、症状が悪化してしまう恐れがありますので注意してください。
ウォーキング・水泳・軽めのエアロビクス・自転車こぎなどがおすすめですが、関節を動かすことを意識してエクササイズを行うだけでも良いでしょう。弾性ストッキングを着用して患部を圧迫した状態で行うと、より効果的です。
リンパ浮腫には、保存療法として上記4つの治療法がありますが、手術療法もあります。術式は状態によって決定しますが、手術療法と保存療法を組み合わせることが重要です。
いずれにしても、リンパ浮腫は根気よく治療を行うべき疾患ですので、早期発見と継続性がとても重要になります。むくみを少しでも感じたら、早めに受診しましょう。
リンパ浮腫の治療なら銀座リプロ外科
リンパ浮腫は、発見しにくく治りにくいのが特徴です。
最初は多少むくんでいる程度だとそのままにしてしまう方が多くいますが、発症すると進行しやすく、日々の生活に支障をきたすこともあります。特にがん治療を行った経験のある方は注意が必要です。
当院はリンパ浮腫の治療に注力しており、オリジナルの「銀座リプロ式リンパドレナージ」を考案しました。リンパドレナージは毎日続けることが必要ですが、クリニックで毎日受けようと思うと費用と時間がかかります。自身でリンパドレナージの方法を覚えて行うのも大変です。
初診時に状態の評価を行った上で、銀座リプロ式リンパドレナージを体験していただき、方法をお教えします。その後はご自宅で続けていただけます。
また、弾性ストッキングに関しても、既存のものが合わない場合は、完全オーダーメイドの製品もご案内しています。身体に合ったものが作れるので、一部分にだけ過剰に圧がかかることもありません。医師の診断があれば保険適用金額で購入できます。
弾性ストッキングはご自身に合うサイズを着用する必要があるのに、サイズの相談をする場が少ないのが現状です。当院では、リンパルームという履き方指導やお持ちの弾性ストッキングに関して相談できる場を作っており、二人三脚での治療が出来ます。
治療の継続が大切なリンパ浮腫だからこそ、医師と患者様が一緒に取り組むことが重要です。ぜひリンパ浮腫にお悩みの際は、当院までご相談ください。
当院は、ホームページで診察のご予約を承っております。(初診と再診では入力フォームが異なりますのでご注意ください)
問い合わせも随時受け付けておりますので、ホームページからお気軽にお問い合わせください。
お問い合わせ・ご予約はこちら
〒104-0061 東京都中央区銀座2-8-19 FPG links GINZA 6F
この記事の執筆医師
永尾 光一 先生
東邦大学 医学部教授
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 形成外科センター長
昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。形成外科診療科部長を経験する(基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。
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