リンパ浮腫に弾性ストッキングは効果的?着用の注意点と併用する治療法 | 銀座リプロ外科 東京のリンパ浮腫治療クリニック        
COLUMN

「がん治療後に脚がむくんできた」と感じている方は、弾性ストッキングの着用が必要な可能性があります。

リンパ節の切除や放射線治療の影響でリンパ液の流れが悪くなり、リンパ浮腫を発症する患者さんは少なからず存在します。重症化すると日々の生活にも影響するうえ、感染症を引き起こすリスクがあるため、早期発見と継続的な治療が必要です。

本記事では、リンパ浮腫の治療に有効だとされている弾性ストッキングの効果や、着用時の注意点について解説します。リンパ浮腫の治療を始めるきっかけに、ぜひ参考にしてください。

 

リンパ浮腫の治療に使用する弾性ストッキングとは?

リンパ浮腫の治療に使用する弾性ストッキング
リンパ浮腫の治療に用いられる弾性ストッキングは、患部を圧迫するために特殊な編み方をされた医療機器です。適度な圧力を加えて血液や滞ったリンパ液の循環を促し、むくみを軽減させます。

弾性ストッキングを履いて日常生活を送ることで、ふくらはぎの筋肉が持つ「筋ポンプ」作用をより高める効果も期待できます。筋ポンプとは、運動時に筋肉が収縮と弛緩を繰り返して血液を押し上げる作用です。

医療用の弾性ストッキングはドラッグストアで販売されている着圧ソックスとは異なり、医師の指示書があれば保険適用の対象となります。

弾性ストッキングをリンパ浮腫の治療に取り入れる際は、医師の指導のもと症状に合った製品を選び、正しく着用することが重要です。

 

リンパ浮腫に対する弾性ストッキングの効果

リンパ浮腫の患者さんが弾性ストッキングを着用すると、以下のような効果が期待できます。

・症状の軽減と進行予防が期待できる
・合併症予防につながる

弾性ストッキングの着用は「圧迫療法」と呼ばれ、リンパ浮腫の治療において勧められている手法の1つです。モチベーションを高く持って治療に取り組むためにも、まずは効果をしっかりと確認しましょう。

症状の軽減と進行予防が期待できる

弾性ストッキングは、リンパ浮腫によるむくみを軽減し、症状の進行を防ぐ目的で使用されます。

リンパ浮腫は、リンパ液の流れが滞ることで組織に余分な水分が溜まって起こります。弾性ストッキングを使って外部から適度な圧力を加えると、リンパ液の流れを促せ、むくみの軽減が期待可能です。

リンパ浮腫は放置により悪化し、皮膚の硬化や皮下組織の変性といったもとに戻らない状態に陥る場合もあります。弾性ストッキングを日常的に着用して血液やリンパ液の循環を促せば、重症化を防げます。

リンパ浮腫が重症化すると関節を動かしにくくなり、日常生活の動作にも影響を及ぼすでしょう。弾性ストッキングによる適切な圧迫は、身体の機能や生活の質の維持にも貢献します。

合併症予防につながる

リンパ浮腫にともなう合併症の予防も、弾性ストッキング着用で期待できる効果です。

リンパ浮腫が進行して免疫機能が低下すると、わずかな傷からでも細菌感染を起こし、蜂窩織炎(ほうかしきえん)のような重篤な炎症につながります。蜂窩織炎は手足が腫れたり高熱が出たりして入院が必要なケースもある、非常に恐ろしい症状です。

組織や細胞の間にリンパ液が停滞することで、細菌が増えやすい環境を作り出してしまいます。適切な弾性ストッキングの着用によりリンパ液の流れを促し、合併症のリスクを軽減しましょう。

すでにリンパ浮腫を発症している脚に傷がある場合は、医師に相談し、慎重に着用してください。

 

弾性ストッキングを着用する際の注意点

リンパ浮腫を発症している方が弾性ストッキングを着用するときの注意点は、以下のとおりです。

・自分に合ったサイズを選ぶ
・症状に合う形を選ぶ
・毎日着用する
・定期的に交換する
・医師や専門家の指導を受ける

弾性ストッキングの選び方や着用方法を誤ると、治療効果が得られないだけでなく、体にとって害になる可能性もあります。効果的に使用するために、正しい情報を確認しましょう。

自分に合ったサイズを選ぶ

自分に合ったサイズの弾性ストッキングを選んで着用することは、リンパ浮腫の治療において大切なポイントです。

小さすぎてきつい弾性ストッキングは血液やリンパ液の流れを妨げる原因となってしまいます。反対に、大きすぎれば圧迫が不十分となり、治療効果を得られません。

サイズが合わない弾性ストッキングを着用し続けていると、しびれ・痛みが生じたり、症状が悪化したりする恐れもあります。

医療機関で専門家に足の周囲や長さを正確に測定してもらい、ぴったりなサイズを選ぶことが必要です。

症状に合う形を選ぶ

リンパ浮腫の治療では、症状に合う形の弾性ストッキングを選択することも重要です。

弾性ストッキングには以下のようにさまざまな種類があるため、むくみの部位や程度によって適切な形を選んでください。

・ひざ下タイプ
・太もも丈
・パンティストッキングタイプ

片足だけのソックスタイプは、ずれないように履き口がきつくなっています。自分の体に合っていなかった場合は、リンパ液の流れが停滞し、むくみがひどくなる可能性があります。

リンパ浮腫の原因となったがんの種類によっても症状が出る場所が異なるため、知識のある専門家の指示を仰ぎましょう。症状に応じた弾性ストッキングを使用することで、効果的な圧迫が可能です。

毎日着用する

弾性ストッキングは毎日着用することで、リンパ浮腫に対する治療効果を発揮します。慣れるまで履きにくさを感じるかもしれませんが、着用をやめてしまうとむくみが進行するので、継続が重要です。毎日洗濯し、清潔な弾性ストッキングを着用しましょう。

以下のような条件を満たしていることも、毎日着用するには欠かせません。

・トイレに行くときに支障がない
・自分で着脱ができる
・周囲の視線が気にならない

リンパ浮腫治療のための弾性ストッキングは、日中活動している間は常に履くことが推奨されます。就寝時には着用しない場合がほとんどですが、必ず医師の指示に従いましょう。

定期的に交換する

リンパ浮腫治療のための弾性ストッキングは、定期的に交換してください。

一度購入すれば繰り返し使えますが、弾性ストッキングの圧は永久に保たれるわけではありません。使用とともに劣化してしまうため、一般的には半年を目安に交換をおすすめしています。

医師の指示のもと保険適用で購入した場合でも、6ヵ月経てば経年劣化が認められ、再申請が可能です。

着用して締め付けが弱くなったと感じたときは、新しい弾性ストッキングとの交換を検討しましょう。履き口を引っ張るように装着すると生地が伸びて劣化が早くなってしまうので、適切な圧を長く保てるよう丁寧に扱うことも大切です。

医師や専門家の指導を受ける

弾性ストッキングは、必ずリンパ浮腫に精通した医師の診断や専門家の指導を受けてから着用を開始してください。

自己判断で弾性ストッキングを選んだ場合は、圧迫圧や形状が適切でなく、症状を悪化させる恐れがあります。リンパ浮腫の重症度によって必要な圧・長さは異なるため、医師の診断を受けたうえで購入しましょう。

弾性ストッキングを着用しないほうが良い患者さんもいます。リンパ浮腫の治療中は定期的に診察を受け、着用している弾性ストッキングが適切か確認してもらってください。

 

リンパ浮腫|弾性ストッキング着用NGのケース

リンパ浮腫の患者さんでも、弾性ストッキングの導入を控えることのあるケースは以下のとおりです。

・下肢に動脈閉塞性疾患がある
・下肢の深部静脈血栓症を発症したばかりである
・重度の皮膚炎がある
・心不全を起こしている
・リンパ浮腫のある脚に感染症を起こしている
・リンパ浮腫を起こしている脚に感覚障害がある
・治療に同意が得られない

関節炎で自分での着脱が難しい方や、締め付けに耐えられない認知症患者さんには、適正値より圧を下げた製品を選択する場合もあります。

 

弾性ストッキングと併用するリンパ浮腫の治療法

ストッキング以外の予防、治療方法
リンパ浮腫に対しては、弾性ストッキングによる圧迫療法とともに以下のような治療も行います。

・スキンケア
・用手的リンパドレナージ
・運動療法
・手術

リンパ浮腫は、早期発見とともに根気強い治療の継続が重要です。がん治療のあと、脚にむくみを少しでも感じたら、早めに専門医を受診しましょう。

スキンケア

弾性ストッキングでの圧迫とともにリンパ浮腫の治療に用いられる手法が、スキンケアです。

リンパ浮腫の患者さんは、皮膚が乾燥しやすくなっています。肌が乾燥しているとバリア機能が働かず感染を起こすことがあるため、炎症予防には保湿が欠かせません。

感染によるリンパ管の炎症は、リンパ浮腫を悪化させる可能性があります。継続したケアにより皮膚の硬化や傷・ただれを予防しましょう。スキンケアを習慣化することで、感染の原因となる小さな傷や水虫にも気付きやすくなります。

用手的リンパドレナージ

リンパ浮腫には、用手的リンパドレナージという治療法もあります。単独では明確な治療効果が証明されていないので、必ず弾性ストッキングでの圧迫療法と併用しましょう。

ドレナージには排液という意味があり、停滞したリンパ液をリンパ管の流れに沿って健康な部分へと促します。用手的リンパドレナージは、施術直後はむくみが改善して見えますが、効果が持続しないため定期的にクリニックに通うことが必要です。

自分でケアをする「簡易的リンパドレナージ」を行いたい場合は、リンパ管の位置や力加減をしっかりと専門家に指導してもらいましょう。症状に合わない方法で行えばリンパ浮腫を増悪させる危険があるため、自己判断での実施は避けてください。

運動療法

運動療法も、リンパ浮腫に対する治療法の1つです。効果をより高めるために、弾性ストッキングを着用し、むくんだ脚を圧迫した状態で運動することがおすすめです。

圧迫しながらの運動は、筋肉の収縮と弾性ストッキングの圧力により、血管やリンパ管に大きなポンプ作用が働きます。滞っていた体内の循環を改善させることで、むくみの軽減が期待できます。

ただし、疲労感が残るほど負荷をかけると、リンパ浮腫が悪化するリスクがあるので注意が必要です。ウォーキングや室内での足踏み・足の体操など、毎日続けられるくらいの運動が良いでしょう。

自身の体調やリンパ浮腫の症状に適した運動のレベルはどのくらいか、専門家に確認してから行なってください。

手術

弾性ストッキングによる圧迫と併用するリンパ浮腫の治療法には、手術もあります。

発症から長い時間が経っていない患者さんであれば「機能再建手術」という、新しいリンパ管の流れを作る手術による治療効果が見込めます。機能再建手術の例は、以下のとおりです。

術式 方法
リンパ管静脈吻合術(LVA) 顕微鏡下でリンパ管と近くの細い静脈をつなぐ
リンパ節・リンパ管移植(LNT) 健康なリンパ節・リンパ管を体内から移植する

 
症状が進行した方には、変性した脂肪組織を除去する手術を勧めるられる場合もあります。

手術後も弾性ストッキングの着用を続け、リンパ浮腫を発症した脚を良い状態に保ちましょう。

 

リンパ浮腫に関するお悩みは当院へ

「自分に弾性ストッキングが必要かわからない」「もっと良い治療法がないか知りたい」といったお悩みは、当院へお聞かせください。

当院では、リンパ浮腫治療の経験が豊富な医師が診察し、患者さんの症状に合わせた弾性ストッキングの種類や治療法をご提案します。既製品の弾性ストッキングが合わない場合は、完全オーダーメイドの製品もご案内が可能です。

弾性ストッキングは継続して着用する必要があるにもかかわらず、がんの治療が終了すると相談する場がなくなり悩む患者さんが大勢います。圧迫療法だけでなく、手術のようなリンパ管機能への根本的なアプローチで治療効果が見込める場合もあります。

リンパ浮腫の治療には、医療機関と患者さんが一緒に取り組むことが重要です。リンパ浮腫に関するお悩みがある方は、ぜひ当院にご相談ください。

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この記事の執筆医師

永尾 光一 先生

永尾 光一 先生

東邦大学 医学部教授
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 形成外科センター長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。形成外科診療科部長を経験する(基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

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