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リンパ浮腫の手術概要、方法、効果について

一度発症すると完治が難しい「リンパ浮腫」。症状が軽ければ通常の生活を送ることができますが、重症化してしまうと治療の効果が出にくくなり、日常生活にも支障が出てきます。

しかし、発症から長期経過してしまった場合でも、外科治療によって症状を軽減することが可能です。本記事では、リンパ浮腫の手術概要、方法、効果について解説します。

 

リンパ浮腫とは

体内には動脈・静脈の他にリンパ管があり、リンパ管内にはリンパ液が流れ、それぞれの経路を経て臓器や組織・細胞などに体液を流すという役割があります。そのリンパの流れが滞ってしまい、主に腕や脚がむくんでしまう状態をリンパ浮腫といいます。

早期発見して治療を開始できれば、元の状態に近い状態まで戻ることができます。リンパ浮腫の完治は困難ですが、日常生活でのケアなどに注意すれば、浮腫を発生しにくくすることは可能です。

一度発症してしまうと徐々に進行していき、病状も長く続くため、重症化すると日常生活にも負担が大きくなります。

 

リンパ浮腫の原因・症状

リンパ浮腫の原因や症状について解説します。

原因

リンパ浮腫の原因は下記のように、「二次性リンパ浮腫」と「原発性リンパ浮腫」に大きく2つに分けられます。

二次性リンパ浮腫

がんの外科治療や放射線治療、外傷の後遺症に伴いリンパ液の流れが悪くなり発症するなど、原因が明らかなものです。リンパ浮腫の多くが二次性リンパ浮腫です。がんの治療直後にリンパ浮腫が生じることもあれば、10年以上経過後に生じることもあります。

乳がん・子宮がん・卵巣がん・前立腺がん・大腸がんなどの治療として行うリンパ節の切除やリンパ節に放射線を当てた治療、抗がん剤、がんの再発・リンパ節への転移などにより発症することがあります。

このうち、腕のリンパ浮腫は大部分が乳がん、脚のリンパ浮腫のほぼ9割が子宮がん・卵巣がんが原因といわれており、圧倒的に女性の発症率が高いです。

原発性リンパ浮腫

原因の特定が難しく、生まれながらにしてリンパ管の形成不全や機能がある場合に起こります。リンパ系の発達が不十分、リンパ管の数が少ないなど、すべてのリンパ液を処理できなくなってしまいます。

リンパ浮腫の症状

代表的な症状は下記の通りです。

  • 腕や脚の一部または全部の腫れ
  • 四肢の重さ
  • 四肢が動かしにくくなる
  • 痛み・不快感
  • 再発性感染症
  • 皮膚の硬化と肥厚

初期の段階ではあまり目立った症状が見られません。両手と両脚の末端に多少のむくみがありますが、腕や脚を上げると改善する程度です。指で押した痕がはっきり残るようになります。ピリピリ感やだるさなど違和感があります。

症状が進行すると、最終的には、皮膚が厚くなり脂肪の沈着などの皮膚変化が見られるようにまでなってしまいます。

これらの症状は一度発症すると治りづらく進行しやすいです。むくんだところに重みを感じる、関節が曲げにくいなど、日常生活に影響を及ぼすほどになるでしょう。そのため、予防や早期治療がとても重要です。

リンパ浮腫リスク度診断

 

リンパ浮腫の手術概要

まず治療には、「保存的治療」と「外科的治療」があります。先に保存的治療について解説し、続いて外科的治療(手術)についてご説明します。

保存的治療

圧迫療法、リンパドレナージ、スキンケア、運動療法などがあります。従来の治療法で、浮腫の軽減・悪化防止・進行抑制ができますが、完治させることは難しいです。

圧迫療法

弾性包帯や弾性着衣(ストッキング・スリーブ・グローブなど)によって圧迫します。体に合わないものを着用すると悪化するので注意しましょう。担当の医師の指示のもとで、状態に合った最適なものを選びます。
これだけでの完治は難しいですが、手術療法との併用でより症状の改善を目指せます。

リンパドレナージ

たまったリンパ液を正常なリンパ節へ誘導するようなドレナージ(排液)を行います。手で行う医療的マッサージで、固くなった皮膚をほぐし、皮膚状態を改善する効果もあります。

スキンケア

保湿クリームを塗り、スキンケアをします。むくんでしまった皮膚は傷ついて炎症しやすいので、ひび割れや水虫などの感染症にも注意しなくてはなりません。皮膚を清潔で健康な状態に保てば、細菌の感染を抑えられます。

リンパ浮腫ではリンパの流れが悪くなるので、怪我をしたときに傷口から細菌に感染しやすいです。腕や脚全体の皮膚とそのすぐ下の組織に炎症が生じる細菌感染症の蜂窩織炎(ほうかしきえん)はリンパ浮腫を悪化させるので、毎日のケアで予防する必要があります。

運動療法

関節や筋肉を動かす運動や体操でリンパ液や静脈血の流れを促します。ウォーキング、水泳、自転車こぎ、軽いエアロビクスなどを疲労や筋肉痛が残らない程度に、無理のない範囲で行うことが重要です。

外科的治療(手術療法)

早期発見が遅れたり、蜂窩織炎の感染を繰り返したりして時間とともに悪化してしまった場合、リンパ管の機能が失われてしまいます。

発症から長期を経過して重症化してしまい、保存的治療のみで対応できない場合も、外科治療(手術)と組み合わせることで症状をかなり軽減させることが可能です。

溜まったリンパ液を下肢や上肢で静脈に流すためのバイパスを作り、新たなリンパ管の流れを作るための手術を行います。「リンパ管静脈吻合(ふんごう)術」と「リンパ節・リンパ管移植」また「脂肪吸引術」がありますので概要をご紹介します。

リンパ管静脈吻合(ふんごう)術

リンパ浮腫の代表的な手術です。LVA(Lymphatic-Venous Anastomosisの頭文字)とも呼ばれます。

リンパ管と静脈をつないで、腕や脚に滞ったリンパ液を静脈に流す方法で、局所麻酔・小切開で行えるため、最も体の負担が少ない手術です。リンパ管のリンパ液の回収能力が低下し、浮腫が悪化し続けるという悪循環を解消することを目的とします。

リンパ管は0.5㎜前後ほどで、非常に細い管です。肉眼では縫い合わせることはできないので、手術用の顕微鏡を駆使して行います。閉塞部分(脚の付け根・脇)より先の下肢や上肢のリンパ管と静脈を顕微鏡下でつないで、閉塞途中で溜まったリンパ液が静脈に流れるように改善します。

局所麻酔で行われることが多く、一般的には入院しますが、クリニックによっては日帰り手術も可能です。

リンパ節・リンパ管移植

時間とともに悪化したリンパ浮腫は、蜂窩織炎などの感染でさらに進行します。皮膚が固くなり、リンパ機能が失われてしまった場合、リンパ管静脈吻合手術では効果が期待できません。リンパ管に強いダメージがありLVAでは改善が見込めない場合に、自身の健康なリンパ節やリンパ管を移植し、リンパの流れを改善するための治療です。

脂肪吸引術

リンパ浮腫の進行に伴い増えた脂肪は、手術では減少しません。患部を細くするために、全身麻酔下で、沈着してしまった脂肪を吸引します。

吸引箇所は細くなりますが、機能が正常なリンパ管も損傷してしまうので、リンパの流れがより悪化してしまう可能性があります。すでにリンパの流れがまったくない重症な場合の最終手段の治療です。

 

リンパ浮腫手術の方法

リンパ浮腫手術の方法

リンパ管静脈吻合(ふんごう)術

  1. 超音波やICG蛍光リンパ管造影を用い、手術直前にリンパ管や静脈の位置を診察し、皮膚切開位置を決定する。
  2. 局所麻酔を行い、小さく切開する。
  3. リンパ管と皮下静脈を吻合する。

上肢や下肢において、狭窄(きょうさ:管の中が細く狭くなる状態)や閉塞が起きている部分より手前のダメージが少ないリンパ管を選択します。これを静脈に吻合しリンパ管から静脈へのバイパスを作ります。

リンパ管は非常に細いため、顕微鏡下で直径0.5㎜ほどしかない管を直径50マイクロメートル(0.05㎜)という非常に細い針で縫い合わせて行います。

1か所あたり30分から1時間くらいかかりますが、一度に数か所手術することが一般的のようです。

リンパ節・リンパ管移植

  1. 事前にリンパの流れを検査し、リンパ節を採取する部分を決定する。
  2. 全身麻酔を行い、自身の健康なリンパ節・リンパ管を血管のついた状態で採取する。
  3. 必要な部分に移植する。

 

リンパ浮腫手術の効果

術後、リンパの排液が進むと浮腫が軽減し、個人差はありますが、次のような効果が期待できます。

  • 四肢の周径の減少
  • 重さ・だるさの軽減
  • 皮膚の柔軟性が高まる
  • 蜂窩織炎の頻度の減少
  • リンパ漏(リンパ液が傷口などから出てきてしまう)の改善
  • 日常の負担減少

 

リンパ浮腫手術に関する注意点

日常生活での注意点について確認しておきましょう。

  • 体重の増加
  • 適度な運動
  • 皮膚を刺激せず清潔に保つこと

体重が増えるとリンパ浮腫が悪化するので、日頃から食生活に気をつけ、適度な運動をする習慣をつける必要があります。

また、手術はリンパ管を再生させるものではないので、術後も圧迫療法やマッサージなどを行わなくてはなりません。皮膚を刺激しないようにスキンケアを行い、清潔で健康な状態に保ちましょう。

 

まとめ

リンパ浮腫の完治は難しいですが、早期発見により治療を続ければ症状を緩和できます。がんの手術や抗がん剤治療後には、実績豊富な専門の医師によるリンパ浮腫の早期発見と早期治療をおすすめします。

銀座リプロ外科では、リンパ浮腫の手術のために、最先端の機器と高度な外科手術を行っており、リンパ管細静脈吻合術の日帰り手術が可能です。直径0.5㎜ほどのリンパ管を顕微鏡下で直径0.05㎜ほどの細い針で縫い合わせるので、かなり高度で熟練した技術が必要になります。

当院は長年の実績があり、経験豊富な医師が対応します。術後に切開部位からリンパ液が漏れる、または切開をした傷跡が目立つなどの合併症の心配も極めて少ないです。

また、リンパルームという専門家に相談できる場を設けており、リンパ浮腫の改善のために日頃注意することや、患者様が抱えている悩みのサポートを完全予約制5,500円(税込み)でご利用いただけます。

初診のご予約については、メールでの対応を随時行っております。お一人で悩まず、ぜひご相談ください。

施術の紹介

リンパ浮腫の治療・手術(日帰りリンパ管静脈吻合術・LVA)

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この記事の執筆医師

永尾 光一 先生

永尾 光一 先生

東邦大学 医学部教授
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 形成外科センター長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。形成外科診療科部長を経験する(基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

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