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リンパ浮腫の合併症・蜂窩織炎|原因や症状、治療方法を解説

リンパ浮腫患者の約30%が発症する蜂窩織炎(ほうかしきえん)。
蜂窩織炎はリンパ浮腫の特徴的な合併症のひとつで、患部が炎症を起こして細菌感染している状態です。

リンパ浮腫を発症すると、小さな傷や過労、体力の低下で蜂窩織炎を発症する可能性があります。リンパ浮腫患者が蜂窩織炎になると、急激に症状が進行する恐ろしい合併症です。場合によっては、敗血症性ショックで命を落としてしまいます。

今回は、蜂窩織炎の原因や症状、治療方法について詳しく解説していきます。

 

蜂窩織炎とは

蜂窩織炎とは、皮膚と皮下組織に細菌感染が起こり、強い炎症を引き起こす感染症です。顔面や四肢に発症し、特に下肢の脂肪組織に生じます。

原因となる細菌は、黄色ブドウ球菌や溶血連鎖球菌などさまざまです。細菌が皮膚と皮下組織で増殖することで蜂窩織炎を発症します。

特に、黄色ブドウ球菌は食中毒などの原因として認知されている細菌ですが、誰の皮膚にも存在する細菌です。これらは皮膚だけではなく、鼻や口の中、傷口にも付着しています。

細菌感染を防ぐためには、日頃からの手洗いうがいの徹底、そして怪我をしたときは傷口を衛生的に保つことが大切です。

一般的には、傷口から細菌が入ることで蜂窩織炎になります。しかし、リンパ浮腫患者の場合、どれだけ生活に気をつけていても蜂窩織炎になってしまう場合があります。リンパ浮腫のある患部は、浮腫みで皮膚が張り、乾燥しているためです。

浮腫みのある患部にはタンパク質や脂肪、壊れた細胞や細菌などの老廃物が多く含まれており、細菌が増殖しやすいです。リンパ浮腫の部位は免疫不全と同じような状態で、体内にごくわずかな細菌が侵入するだけでも蜂窩織炎を発症します。身体に疲れが溜まると発症する方が多いです。

さらに、蜂窩織炎は細菌感染のため、何度も発症する可能性があります。リンパ浮腫患者が蜂窩織炎を発症した場合、症状が急速に進行して発熱などの全身症状が現れます。

強い炎症が起きると、血管内膜の隙間を広げるために毛細血管が拡張され、炎症が起きた部分に好中球などの多形核白血球を集めて守ろうとします。

血管内膜の隙間が広がると、毛細血管内の蛋白は一定量の水分を引きつけた状態で、組織間隙(そしきかんげき)に滞留し、浮腫みや発熱、熱感が認められるようになるでしょう。

蛋白は一定量の水分を引きつける性質があるため、組織間隙の水分量も増えて浮腫みが起こります。

リンパ浮腫患者の場合、リンパ管の障害で組織間隙の蛋白が増加しているため、もともと血管内に水分を引きつける力が弱まった状態です。強い炎症が起きると組織間隙に蛋白と水分が大量に滞留し、身体の防御機能が上手く働かず、蜂窩織炎を発症してしまいます。

 

蜂窩織炎の原因

リンパ浮腫患者の場合、小さな傷や過労、体力低下などが蜂窩織炎を発症する原因です。仕事が忙しくなる年末年始や初夏などに多く発症する傾向があります。蜂窩織炎はリンパ浮腫の悪化にもつながるため、早期発見と治療が不可欠です。

先ほどもお話しした通り、リンパ浮腫患者はもともと血管内に水分を引きつける力が弱まった状態です。組織間隙に蛋白や水分が滞留した状態は、細菌が増殖しやすく、絶好の培養地になってしまいます。

リンパ浮腫患者は、極力細菌を体内に入れないよう注意しなければなりません。

虫刺さされやガーデニングなどの土いじりも、細菌が体内に侵入するきっかけなので注意が必要です。手袋や長袖シャツ、長ズボンなどを着用し、手先や爪の清潔にも心がけましょう。

また、水虫も蜂窩織炎を発症するリスクを高めるので、体力維持と細菌感染に注意して生活することが大切です。

 

蜂窩織炎の症状

蜂窩織炎の症状

蜂窩織炎は、リンパ浮腫の患部に急速な炎症が現れます。下記の症状がすべて現れた場合、蜂窩織炎の可能性が極めて高いです。

  • リンパ浮腫部位の赤みや熱感、痛み
  • 38℃以上の発熱
  • 倦怠感

蜂窩織炎を発症した場合、蚊に刺されたような赤い斑点が出現したり、患部全体に赤みが現れたりします。患部が腫れあがり、強い痛みを伴います。

早期発見と治療が欠かせず、速やかに炎症を抑えなくてはなりません。蜂窩織炎の治療は最優先であるため、医師の指示に従って治療に専念しましょう。リンパドレナージや圧迫療法は中止し、スキンケアのみ継続してください。

蜂窩織炎で医療機関を受診する際は、必ずリンパ浮腫を発症していることを医師に伝えましょう。

蜂窩織炎を繰り返すことでリンパ管もダメージを受け、リンパ浮腫の悪化につながります。リンパ浮腫は根気よく治療してくことが大切です。蜂窩織炎の治療が終わってから、リンパ浮腫の治療を再開し、蜂窩織炎を再発しないようケアを続けていきましょう。

 

蜂窩織炎の治療方法

蜂窩織炎は、抗生物質の内服で治療します。炎症を起こしている患部は安静にし、冷却が有用です。抗生物質が効くと皮膚の赤みや腫れが軽快しますが、自己判断で内服を中断せず、必ず医師の指示通りの期間服用し続けることを徹底しましょう。

重度の蜂窩織炎でない限りは、2~3日程度の抗生物質の内服治療となりますが、重度の場合は発熱、倦怠感、関節痛などが全身症状があり入院治療が必要です。

蜂窩織炎は治療開始が遅れるほど、症状が悪化していきます。適切な治療をしなければ、感染した患部の切除、最悪の場合は細菌が全身に回り、命を落とすこともある恐ろしい感染症です。

蜂窩織炎をたびたび発症することで、度重なる欠勤のため就労困難になる方や、旅行やスポーツなどの活動を著しく制限せざるを得ない方もいます。蜂窩織炎を発症しないための対策はもちろんですが、その原因となるリンパ浮腫との付き合い方を理解し、生活の質を向上させましょう。

 

リンパ浮腫の治療なら銀座リプロ外科

銀座リプロ外科は東京の銀座に位置する、超微小血管手術を専門としたクリニックで、日本全国から患者様がご来院され、数多くの症例を経験したドクターが在籍しています。

また、当院では遠方に住んでいる方にもお気軽に相談していただけるよう、オンライン診療が可能です。来院が難しい場合も、手術に関する相談やセカンドオピニオンについて、ぜひお気軽に当院へご相談ください。

リンパ浮腫は放置していると症状が進行し、日常生活に大きな支障をきたす疾患です。リンパ浮腫から蜂窩織炎に進行し、さらに症状が進行すると象皮症を発症します。

当院でのリンパ浮腫の検診は、全て保険診療で受けられ、手術は局所麻酔だけで行うため、日帰りできます。仕事や家庭の事情で忙しい方にも、大きなご負担をかけることがなく治療が受けられます。

当院では、初期のリンパ浮腫を発見できる赤外線観察カメラシステムを導入しており、早期発見・1時間以内の診断が可能です。手術での皮膚切開は1〜2cm程度のみで、顕微鏡下で行います。皮膚縫合は、溶ける糸を使用するため、術後の消毒抜糸の必要はありません。

的確にリンパ管を繋ぎ合わせる技術で、リンパ浮腫の進行を抑えます。リンパ浮腫の治療は長期にわたりますが、共に治療に取り組んでいきましょう。遠方の方は術後の経過観察のため、全国の提携施設を紹介いたしますのでご安心ください。

施術の紹介

リンパ浮腫の治療・手術(日帰りリンパ管静脈吻合術・LVA)

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この記事の執筆医師

永尾 光一

日本泌尿器科専門医

永尾 光一先生

東邦大学 医学部教授(泌尿器科学講座)
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター長
東邦大学医療センター大森病院 尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

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