弾性ストッキングの効果とは?着用で改善が期待できる症状と選び方 - 銀座リプロ外科
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弾性ストッキングの効果とは?着用で改善が期待できる症状と選び方

「弾性ストッキングはむくみ改善に効果があるの?」と疑問に感じていませんか。

脚のむくみは、重力による一時的な症状のこともあれば、病気が原因で起こるケースもあります。

弾性ストッキングの使用で、むくみや疲労感をはじめ、さまざまな病気の症状改善や予防が期待できます。しかし、自分に合ったサイズや圧迫圧を適切に選んで着用しなければ、逆効果になる可能性もあるため注意が必要です。

本記事では、弾性ストッキングの効果や着用が推奨されるケースを解説します。選び方や使用が適さない人の特徴も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

 

 

弾性ストッキングとは?

弾性ストッキングとは、脚に段階的な圧力をかけて心臓に戻る静脈の血流を促し、血液やリンパ液のうっ滞を防ぐ医療用商品です。商品によって圧迫圧の強さや丈の長さはさまざまで、症状に合ったアイテムの選択が重要です。

弾性ストッキングの効果と、市販されている着圧ソックスとの違いを紹介します。

 

弾性ストッキングの効果

弾性ストッキングは、血液・リンパ液の流れが悪くなって起こるむくみ・疾患に対して有効で、主な効果は以下のとおりです。

・むくみや疲労感の改善
・下肢静脈疾患の症状緩和
・血栓症予防

弾性ストッキングの圧迫圧は足首部分がもっとも強く、太ももに向かうほど弱まっていき、筋ポンプ作用の効果を高めるので血流改善が望めます。筋ポンプ作用とは、ふくらはぎの筋肉が伸び縮みして血液を押し上げる仕組みです。

気になる症状を改善し、生活の質を高められるよう、医師の指示を仰ぎながら自分に合った商品を正しく着用することが肝心です。

 

着圧ソックスとの違い

医療用の弾性ストッキングと市販されている着圧ソックスには、次のような違いがあります。

弾性ストッキング 着圧ソックス
分類 医療機器 雑貨・衣料品
圧迫圧の強さ ・商品によってさまざま
・グラデーション式に変化
・比較的弱い
・目安表示のみ
用途 ・疾患の症状改善・予防
・不快な症状の改善
・不快な症状の改善
・美脚づくり
公的保険 疾患によっては医師の指示書があれば適用 適用なし

 

弾性ストッキングと着圧ソックスは、似ているように見えても、目的や圧迫設計などが異なります。自分の目的に沿った商品の購入が重要です。

弾性ストッキング着用時の注意点を確認する

 

弾性ストッキングが効果的なケース

弾性ストッキングは、以下のようなケースでの着用が効果的です。

・むくみ・疲労感
・リンパ浮腫
・下肢静脈瘤
・深部静脈血栓症の予防
・妊娠中

自身に当てはまるケースがあれば、弾性ストッキングを積極的に取り入れ、症状を改善・予防しましょう。

 

むくみ・疲労感

脚にむくみや疲労感がある方は、弾性ストッキングを着用することで改善効果が期待できます。

ふくらはぎの筋ポンプ作用が弱まると、血液やリンパ液の流れが滞り、皮下組織に水分・老廃物がたまり、むくみや疲労感が生じます。健康状態に問題がないにもかかわらず脚にむくみや疲労感が出やすい人の特徴は、以下のとおりです。

・長時間同じ姿勢でいることが多い
・運動不足である
・脚の筋力が低下している
・塩分・水分を摂りすぎている

歩行や運動、寝転がって足を上げる動作などで、脚にたまった水分・老廃物が排出されやすくなります。日常生活のなかで症状を改善させる行動を取りにくい方は、弾性ストッキングを使用し、血液やリンパ液の流れを促しましょう。

 

リンパ浮腫

弾性ストッキングは、リンパ浮腫によるむくみ改善にも効果があります。

リンパ浮腫とは、リンパ液の流れが滞留してむくみが起こる疾患です。生まれつきの体質が原因で生じる方もいますが、卵巣がん・子宮がんなどの手術や放射線治療の影響で発症するケースが大半です。

リンパ浮腫

脚のリンパ浮腫の治療は、以下のような方法を組み合わせて行います。

・スキンケア
・リンパドレナージ(医療用マッサージ)
・弾性ストッキング・包帯による圧迫療法
・脚を圧迫した状態での運動療法

リンパ浮腫を完治させることは困難であり、放置すると重症化し、手術が検討されることもあります。軽度であれば弾性ストッキングでの症状改善・悪化防止が望めるため、むくみに気づいた時点で早期に対処することが大切です。

 

下肢静脈瘤

下肢静脈瘤に悩んでいる方は、弾性ストッキングにより脚のだるさやむくみなどの改善効果が見込めます。

下肢静脈瘤とは、脚の表面近くにある静脈がこぶのようにふくらむ病気です。静脈の逆流防止弁が機能しないことが原因で、血液が重力に逆らえず脚にうっ滞した状態になります。

下肢静脈瘤によって脚に表れる症状は、以下のとおりです。

・こぶ状の静脈が浮き出てボコボコとした見た目になる
・だるさ
・むくみ
・こむら返り

症状が進行すると、痛みや皮膚炎、潰瘍などが生じます。

弾性ストッキングで外部から圧力をかけると、血液の逆流や停滞を防ぎやすくなるため、症状の改善が望めます。下肢静脈瘤が重症化して手術が必要になる前に、医師のアドバイスを受けながら弾性ストッキングを試しましょう。

 

深部静脈血栓症の予防

深部静脈血栓症のリスクがある場合は、弾性ストッキングで予防効果が望めます。深部静脈血栓症とは、体の奥のほうにある静脈に血のかたまりができ、血管が詰まる病気です。脚に血栓が生じることが大半で、痛みや腫れ、むくみなどの症状が表れます。

深部静脈血栓症の発症リスクが高い人は、以下のとおりです。

・手術後の患者さん
・長時間の移動で座りっぱなしの人
・長期安静が必要な方
・高齢者

ふくらはぎの筋ポンプ作用が使えない方や筋力が低下している高齢者は、弾性ストッキングで血流が滞りにくい状態をつくることが大切です。

深部静脈血栓症を発症している方が急性期に弾性ストッキングを着用すると、血栓がはがれて肺塞栓症を引き起こすリスクがあります。肺塞栓症は命に関わる可能性もあるため、医師の指示に従って弾性ストッキングを治療に取り入れるかを決めましょう。

 

妊娠中

妊娠中に弾性ストッキングを着用すると、体の変化によるむくみや下肢静脈瘤の発症リスクの軽減が期待できます。

妊娠中は女性ホルモンの影響で静脈がふくらみやすく、血液量は約1.5倍に増加します。お腹が大きくなり骨盤内の静脈を圧迫するため、むくみや下肢静脈瘤が起こりやすい状態です。

マタニティ専用の弾性ストッキングもあり、妊婦さんの体に負担をかけずに血液・リンパ液の流れを促進できます。妊娠中に下肢静脈瘤を発症する方は10~20%ほどいるといわれているため、発症リスク軽減の対策をしておきましょう。

 

効果が期待できる弾性ストッキングの選び方

弾性ストッキングの効果を最大限に得るためには、自分の体に合った商品を選ぶことが重要です。選び方次第で結果に大きな差が出るばかりか、逆効果になるケースもあります。

圧力の強さやサイズ・長さについて詳しく解説するので、自分の症状や目的に応じて商品を選択する際の参考にしてください。

 

圧力の強さ

弾性ストッキングの圧力の強さと、4つの圧迫圧が推奨される主なケースを以下の表にまとめました。

分類 圧力の強さ(mmHg) 推奨されるケース
弱圧 14~21 ・血栓症・静脈瘤の予防
・軽度のむくみ
中圧 23~32 ・軽度の下肢静脈瘤
・中等度のむくみ・リンパ浮腫
・深部静脈血栓症の予防
強圧 34~46 ・中等度以上の下肢静脈瘤
・重度のむくみ・リンパ浮腫
超強圧 49~70 重度難治性のリンパ浮腫

 

弾性ストッキングの圧力は、使用を続けることで低下していきます。定期的に新品と交換し、適切な圧迫療法を継続しましょう。

 

サイズと長さ

弾性ストッキングの効果を得るには、自分に合ったサイズと長さの選択が大切です。

サイズが小さければ締め付けが強すぎて血流が悪化し、大きすぎると適切な圧迫圧が得られません。メーカーによってサイズは異なるため、足首・ふくらはぎ・太ももなどの周囲を測り、体に合った商品を選んでください。

計測は、むくみが改善されている起床後すぐに行うことが肝心です。各部位を計測してサイズ選びに迷う場合は、足首の太さを基準に決めましょう。

弾性ストッキングの長さの種類は、以下の3つです。

・ひざ下タイプ
・太ももタイプ
・パンストタイプ

長さのあるタイプは、圧迫圧によっては着脱が容易にできないこともあります。自身の症状に加え、日常生活への影響も加味した選択を推奨します。

 

弾性ストッキングの着用に注意が必要な人は?

弾性ストッキングの着用に注意が必要な人は、以下のとおりです。

・肌トラブルを起こしやすい人
・心臓や血管に関わる病気のある人

体質や持病を考慮せず自己判断で使用することは大変危険なため、必ず医師の指示を仰ぎましょう。

 

肌トラブルを起こしやすい人

肌トラブルを起こしやすい人は、弾性ストッキングの着用でよりリスクの高い状態になる可能性があるため、注意が必要です。素材が肌に合わなかったり、蒸れや摩擦で皮膚に負荷がかかったりし、かゆみや発疹、かぶれといった症状が出現する場合があります。

弾性ストッキングによる肌トラブルを防ぐためには、正しい着用方法を守り、念入りにスキンケアをしましょう。着用前に保湿剤を塗り、皮膚環境を整えることが大切です。塗ったあとは少し乾かしてから着用すると、弾性ストッキングの目詰まりを防げます。

肌が弱い方は日頃から皮膚の状態をよく観察し、異変を感じた際はすみやかに医師へ相談してください。

 

心臓や血管に関わる病気のある人

弾性ストッキングは、心臓や血管に関わる以下のような病気がある人には適しません。

・うっ血性心不全
・動脈の血行障害
・深部静脈血栓症(急性期)

弾性ストッキングの着用で下肢からの血流が増えると心臓への負担が大きくなるため、うっ血性心不全の悪化リスクが高まります。動脈に血行障害がある場合は、圧迫により血流がさらに妨げられます。

弾性ストッキングの着用を検討する際は、持病を考慮したうえで医師からの指示に従いましょう。

 

効果のある弾性ストッキングをお探しの方は当院へ

効果のある弾性ストッキングをお探しの方は、ぜひ当院へお問い合わせください。

当院は、リンパ浮腫の治療につながるパンストタイプの「銀座リプロ式弾性ストッキング」や、下肢静脈瘤のためのソックスを取り扱っています。自身に合った製品がわからないという方は、リンパスリム外来という、むくみに関するお悩みの相談先もお選びいただけます。

当院では、むくみを引き起こす疾患に対し、弾性ストッキングをはじめ、運動療法・生活指導・手術など、さまざまな方法での対処が可能です。つらい症状でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

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この記事の執筆医師

永尾 光一 先生

永尾 光一 先生

一般社団法人日本精索静脈瘤協会 理事長
医療法人社団マイクロ会 理事長
銀座リプロ外科 院長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

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