精巣上体炎とは
精巣上体炎とは、陰嚢の中で精巣の後ろ側にある精巣上体が炎症を起こして、腫れや痛みが起きる病気です。急性のものと慢性のものがあり、急性のものは発熱などの全身症状をともない、慢性の場合は局所的な症状が3ヶ月以上持続します。このページでは、精巣上体炎の症状や診断、原因や治療方法についてご紹介します。
また、精巣上体炎と間違われやすい精索静脈瘤との違いや、不妊への影響についても紹介します。
症状
陰嚢の腫れと痛み
精巣上体炎の症状は、陰嚢が腫れたり、触ると柔らかいかたまりのようなものがあったり、圧痛を感じる場合があります。最初は鈍痛でも、放置すると時間とともに悪化し、椅子に座っていることも辛くなってしまいます。
発熱が見られることも
精巣上体炎は炎症のため、発熱することもあります。
何科にいく?診断方法
まずは泌尿器科へ
陰嚢が腫れる疾患には、精巣上体炎、精巣炎、精索静脈瘤、精巣水瘤、精索水瘤、鼠径ヘルニア、精索捻転、精巣腫瘍などがあります。
すぐに治療が必要なものがありますので泌尿器科受診をお勧めいたします。
問診・触診
・問診で発症時期や腫れや痛みの経過を確認
・触診で腫れや圧痛の有無を確認
尿検査
・細菌感染の有無を診るため、尿検査を実施(原因菌として大腸菌、クラミジア、淋病などがある)
超音波検査
・精索静脈瘤・精巣腫瘍などを除外するため、ドップラー超音波検査を実施
原因
精巣上体炎の原因として、細菌感染を原因とするものと、性交渉を原因とするものがあります。
細菌感染
尿路感染症(大腸菌、クラミジア、淋菌などによる)や、泌尿器科的処置による合併症としての感染症があります。
性交渉
性感染症(クラミジアや淋菌などによる)が精巣上体に広がります。
治療方法
抗菌薬の使用
精巣上体炎の原因で、最も多いのが細菌です。性的活動が多い若い世代では、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)や性器クラミジア感染症(Chlamydia trachomatis)が原因であることが多いです高齢男性では、大腸菌が多くなっています。そのため、これらの菌に対して、抗菌薬(ニューキノロン系,ドキシサイクリンなど)を投与し、疼痛・腫れ・熱感に対しては冷却します。症状が強い場合は、入院して点滴治療を行います。
痛み止め・冷却
局所の安静、冷却が重要な治療です。痛みや腫れが強い場合は、保冷剤などで冷却する。細菌培養、薬剤感受性検査の結果で適切な抗生剤を使用します。
安静にする
強い痛みの場合は、床上安静します。
精巣上体炎は不妊の原因になる?
精巣上体は精巣から精管の途中に存在し、精子の通過する部位です。そこで炎症が起こると精管より細い精巣上体管は閉塞し無精子症などの原因になります。特に性感染症(クラミジア・淋菌)では、性行為で女性に感染し卵管閉塞の原因にもなります。
精巣上体炎と間違えやすい病気
精索静脈瘤
精索静脈瘤は、静脈血の逆流で精索や陰嚢がうっ血する病気で、男性不妊や陰嚢痛の原因になります。また、うっ血により慢性精巣上体炎を合併しやすく難治性にもなります。
前立腺炎
とくに慢性前立腺炎は会陰部・陰嚢・下腹部の違和感や鈍痛を起こします。陰嚢や鼠径部の鈍痛が精巣上体炎と同じような症状を呈します。
精索捻転症
思春期男子が好発年齢で、精索がねじれて精巣への血流障害を伴うので緊急手術が必要な疾患です。
陰嚢水腫
精巣水瘤とも呼び、精巣の周りに水がたまる疾患です。男性不妊の原因にはなりませんが、日常生活に支障があったり、見た目が悪ければ手術を行います。
精巣腫瘍
精巣にできる悪性腫瘍です。停留精巣や精索静脈瘤で精巣機能が低下した精巣に発生しやすいです。放置すると全身に転移して生命予後に影響します。エコー検査で早期発見でき、早期診断、早期治療が必須です。
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この記事の執筆医師
永尾 光一 先生
東邦大学 医学部教授(泌尿器科学講座)
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長
昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。
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