不妊治療が必要なのは女性だけとは限りません。男性不妊もあり、先天性の不妊と後天性の不妊があります。子どもを望む夫婦の場合は、男性不妊を正しく理解する必要があるといえるでしょう。
今回の記事では、男性不妊の割合から原因、治療法と幅広く紹介します。男性不妊にお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
- 男性不妊・精索静脈瘤にお困りのかたへ
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男性不妊の40%にある精索静脈瘤は、精巣やその上の精索部(精管、血管、神経、リンパ管などを覆う膜)に静脈瘤(じょうみゃくりゅう・静脈の拡張)が認められる症状のことを指します。一般男性の15%に認められ、男性不妊症患者の40%がその疑いであるとされています。
男性不妊の割合
不妊の問題を抱える夫婦の場合、男性と女性どちらに問題があるか、WHOが1998年に調査をしています。調査結果は次の通りです。
この調査結果から、男性で何らかの不妊の問題を抱えているのは「夫婦ともに問題あり」の24%と、「男性のみ問題あり」24%を合わせた48%であるのが分かります。調査が行われたのは1998年と20年以上前ですが、男性不妊が不妊の原因の半数近くに達しているのは驚く方も多いのではないでしょうか?
男性の不妊はさまざまな原因がありますが、1番多いのが精索静脈瘤と呼ばれる症状で、不妊の原因の約40%を占めています。
男性不妊の原因
男性不妊の原因は多様で原因不明のものが多いですが、造精機能障害・精路閉塞障害での精子異常・性機能障害・ホルモン低下などがあります。それぞれの原因を確認しましょう。
精索静脈瘤(造精機能障害)
男性不妊のなかで、精子量・精子数・精子運動率など精巣機能が低下する「精索静脈瘤(造成機能障害)」や、精子の通り道が塞がってしまう「精路閉塞障害」などについてご紹介します。
精索静脈瘤
精索静脈瘤とは、成人男性の15%、男性不妊の40%を占めており、最も多い症状です。精巣から心臓へ戻る血液が逆流してしまい、静脈が瘤(こぶ)になった状態を指します。造成機能が低下し、精子のDNA損傷や男性ホルモンの低下を起こします。
質のよい精子を作るには陰嚢が体温より2~3℃低い状態が好ましいのですが、精索静脈瘤があると陰嚢が温まるため、精子が作られにくい状態になります。
精索静脈瘤が認められた場合、手術での治療が可能です。
乏精子症・精子無力症
乏精子症とは、精液の中の精子が少ない状態を指します。自然妊娠に必要な精子の力の目安は1ml4000万ですが、乏精子症の状態は1ml1600万以下の状態です。精子無力症とは、精子の運動性が悪く、精液検査の際に前進できる全精子が40%以下の状態を指します。
乏精子症・精子無力症の両方が同時に起こることがあり、精索静脈瘤が原因となる場合が多いです。何らかの原因で造成機能が低下し、十分に機能する精子が作られていない可能性があります。
非閉塞性無精子症
射精した精液内に精子がない「無精子症」には、精子が作られていない「非閉塞性無精子症」と、精子は作られているのに通り道がふさがっている「閉塞性無精子症」があります。精巣がなんらかの原因で精子を作れなくなる非閉塞性無精子症は、造精機能障害です。
閉塞性無精子症
精巣内で精子が作られていても、精子の通り道(精巣上体・精管など)が塞がってしまい、精液中に精子が含まれない状態のことです。
無精子症のうち、閉塞性無精子症が精路閉塞障害として挙げられ、原因は先天性・後天性とあります。
- 先天性:先天性精管欠損症
- 後天性:パイプカット術後、両側鼠径ヘルニア術後、両側精巣上体炎、感染症、射精管閉塞など
性機能障害
性機能障害には、勃起障害(ED)・射精障害・陰茎彎曲症などがあります。造成機能障害以外の男性不妊の原因では、勃起障害が多いです。
勃起障害(ED)
勃起機能が低下し、性交時に勃起が維持できない状態です。原因は、神経・血管の障害、薬の副作用、心理的なものなどさまざまで、原因が1つだけではないことも多いです。
不妊治療で排卵に合わせた性交を行っている場合、ストレスやプレッシャーを抱えてしまうことで、勃起不全につながる場合があります。30~40代の方にはED治療薬によって改善が期待できます。
射精障害
射精障害は、勃起ができても射精ができない状態を指します。
マスターベーションでは射精できるのに、性交では射精ができない膣内射精障害が多く見られ、遅漏の状態ともいえます。特効薬はなく、治療には時間を要します。
また、糖尿病や末梢神経の障害・下腹神経障害などにより、射精した精液が尿道から膀胱へと逆流してしまう症状もあります。逆行性射精といい、内服薬での治療が可能です。
陰茎彎曲症
先天性・後天性があり、勃起時に陰茎が曲がってしまう症状です。軽度であれば問題ないですが、性交に支障がある場合は手術を検討しなくてはなりません。陰茎形成術を受ければ、ほとんどの方で性交ができるようになります。
ホルモン低下(低ゴナドトロピン性性腺機能低下症)
まれな疾患ではありますが、脳の視床下部や下垂体から分泌される性腺刺激ホルモンが低下することで、精巣発育不全・無精子症・射精障害などを引き起こします。ホルモン治療で改善可能です。
男性不妊のその他の原因
男性不妊のその他の原因には、原因不明や治療が難しいものがあります。染色体・遺伝子異常、抗がん剤・放射線治療後、停留精巣、精巣炎などがあり、顕微授精・体外受精といった対処療法を行います。
男性不妊の治療法
根本的治療や対処療法、補助的療法など、男性不妊にはどのような治療法があるのかを紹介します。夫婦で子どもを望んでいる場合は、男性不妊も原因の1つと考え、向き合って治療するのが望ましいでしょう。
根本的治療法
最も医学的根拠が高いのは手術による治療です。精索静脈瘤手術(ナガオメゾッド)、精路再建術、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症治療などがあります。
精索静脈瘤手術
逆流している精索静脈を糸などでしばって結ぶ(結紮)または切断し、逆流が起きない状態にします。血流を遮断する部位によって「高位結紮術」と「低位結紮術」にわかれます。約50~70%の方が手術後約3~6か月後に精液所見の改善に期待できます。
「日帰り顕微鏡下精索静脈瘤手術・ナガオメソッド」は高度な技術の低位結紮術で、生殖機能を改善させる治療法です。再発率が非常に低く、精索動脈やリンパ管を残せるため合併症がありません。
精路再建術
精巣上体炎、鼠径ヘルニア手術後の合併症、射精管閉塞、パイプカットなどが原因となり、精子の通り道が再建可能な場合に行う手術です。
精巣で精子が作られているので、精子の通り道の閉塞が改善すれば、精液中に精子が確認できるようになり自然妊娠に期待できます。精子が出ない場合は、同時に対処療法を行うことがあります。
低ゴナドトロピン性性腺機能低下症治療
先天性、交通事故・脳腫瘍、成人発症などありますが、不足している下垂ホルモンの自己注射をすることで治療可能です。
定期的にホルモン補充療法をすることになりますが、国から難病指定されているため、申請すれば補助が受けられます。早期診断や適切な治療により、約9割以上の方で射出精子が認められるようになります。
対症療法
根本的治療が難しい男性不妊の場合、精子を回収し、人工授精・体外受精・顕微鏡受精・精巣内精子採集術(TESE)などで妊娠を目指す治療法です。
精巣内精子採集術(TESE)とは、非閉塞性無精子症の場合、手術用顕微鏡を使用して精巣の中の精細管を採取します。手術操作によっては、生殖機能が低下することがあります。
対処療法の場合も、事前に男性が精索静脈瘤の有無を検査することをおすすめします。精索静脈瘤があった場合、精液の状態が悪くなってしまうためです。精索静脈瘤であれば、治療を受けることで妊娠率・出産率が上昇し、流産・奇形のリスクも低下します。
補助的療法
医学的根拠が低いため、あくまで補助的に行う治療法です。不妊治療を検討する場合は、まずは生殖専門医(泌尿器科)の診察を受けましょう。
漢方・サプリメント
他の不妊治療と併用することで、精液所見の改善に期待ができます。サプリメントは、抗酸化薬で精巣内のストレス軽減の効果のあるCoQ10やビタミンC・E、精子の運動に関係する亜鉛などがあります。漢方薬はエビデンスが低いため、改善も限られてしまいます。
最も原因として多い精索静脈瘤とは?
精索静脈瘤とは、精巣から心臓につながっている静脈が逆流したり、うっ滞したりして瘤のようにふくらんだ状態を指します。
血液がうっ滞すると、循環がうまく行えず老廃物がたまります。精子を作る環境として体温より2~3℃低い温度が望ましいのですが、精索静脈瘤ができると血液が逆流し、陰嚢が温まります。陰嚢の温度が上がると、精子を作りにくい環境になってしまうため、精巣機能が低下するのです。
成人男性の15%、男性不妊の40%が精索静脈瘤と診断されるため、決して珍しい症状ではありません。男性不妊の原因をまず特定し、治療を検討することをおすすめします。
精索静脈瘤の手術を行う基準は?
精索静脈瘤の手術を行う場合、主な基準は次の3つです。
- 夫婦が妊娠を望んでいる
- 女性側に不妊の原因がない
- 精索静脈瘤が触知できる
まずは検査をして、精索静脈瘤を特定したうえで、女性に不妊の原因がないか調べます。夫婦ともに不妊の原因がある場合は双方の治療が必要になるためです。
精索静脈瘤の手術は2018年から保険適用になりましたが、費用面での負担がないとはいえません。手術を検討している場合は妊娠に対して前向きな気持ちがあるかも重要な要素です。
男性不妊で悩んでいる場合はもちろん、思春期に片方の精巣が小さくなっている場合や、将来的に子どもを望む場合も手術を行うケースがあります。精索静脈瘤手術後は精液所見の51%から78%が改善されるため、根本的な治療を望む場合は検討するとよいでしょう。
当院で行うナガオメソッドとは
ナガオメソッドはこれまで20年以上、累計施術件数1万件ほどの実績がある手術方法です。血管やリンパ、神経などを1本ずつ丁寧に調べ、逆流している血管のみ結紮します。必要な部位はすべて残せるのがメリットです。
他の結紮手術では、必要な部位も結紮する場合があり、患部に浮腫ができるなど、手術にリスクが伴います。ナガオメソッドはそのようなリスクが少ない方法です。技術力の高い医師が顕微鏡下で行うため、大切な精管・動脈・リンパ管・神経を温存できます。
機能の低下や血流障害、リンパ浮腫などの合併症も少なく、再発のリスクは0.5%と低めです。精液所見の改善も87%という結果が出ています。顕微授精対象者で38%、体外受精対象者で50%、人工授精対象者で60%、正常精液でも1.8倍の方で自然妊娠ができるまで精液改善しています。
高度な技術が必要とされるため、ナガオメソッドの手術は自由診療です。院長の永尾先生をはじめ、数名の医師のみが行える方法を取り入れています。
その他の手術法
静脈瘤の手術法には、ナガオメソッドの他に、一般的な顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術(一括結紮法・時短法)、精索静脈瘤高位結紮術、腹腔鏡下精索静脈瘤結紮術などがあります。
一般的な顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術(一括結紮法・時短法)
鼠径部を切開して精管と動脈を1~2本残し、精巣に近い静脈(内静脈)のみ結紮します。
手術は短時間で日帰りが可能ですが、大事な動脈・リンパ管・神経を一括で結紮するため、リンパ浮腫や血流悪化のリスクがあります。また、外精逆流静脈が残るため再発率が高いです。
精索静脈瘤高位結紮術
腹部を切開し、腎臓に近い静脈を結紮します。保険診療で自己負担額が少なく、手術の難易度も低いですが、陰嚢水腫発生率や再発率の可能性が高いです。局所麻酔または全身麻酔を行い、入院が必要な場合もあります。
腔鏡下精索静脈瘤結紮術
腹腔鏡を使用し、腹部や鼠径部の静脈を結紮します。身体へのダメージの大きさや重篤な合併症のリスクがあり、全身麻酔や入院が必要です。生殖医療専門医にはあまり推奨されておらず、精索静脈瘤高位結紮術と顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術が一般的に行われます。
検査費用
銀座リプロ外科での精索静脈瘤の検査費用は次の通りです。
初診料 | 5,500円 |
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エコー検査 | 5,500円 |
初診のエコー検査で精索静脈瘤の診断をし、グレード別に手術が必要かどうかも判断します。初回検査時に手術の予約を取ったり、初診当日に手術を受けたりも可能です。男性不妊にお悩みで、症状を早く改善したい方はぜひご相談ください。
銀座リプロでは精液検査を実施していません。精液検査を希望される方には提携の医療機関をご紹介いたします。
まとめ
夫婦で不妊の問題を抱えている場合、約半数が男性にも問題がある事実がわかりました。男性不妊は治療できる場合が多く、不妊の症状を改善できる可能性があります。
男性不妊の主な原因は精索静脈瘤です。手術が必要な場合は、銀座リプロ外科で取り扱っているナガオメソッドを選択されてはいかがでしょうか?
夫婦の年齢や家族状況などを踏まえて慎重に決定する必要があるので、一度医師にご相談ください。
当院のホームページでは以下の記事も読まれています。ぜひ参考にしてください。
■ 精索静脈瘤の原因は?主な原因を徹底解説!
■ 精索静脈瘤を放置するとどうなるの?自然に治ることはあるの?
■ 無症状でわかりづらい?精索静脈瘤の主な症状
施術の紹介
精索静脈瘤とは?症状や検査方法、治療・手術方法を解説
詳しくはこちらお問い合わせ・ご予約はこちら
〒104-0061 東京都中央区銀座2-8-19 FPG links GINZA 6F
この記事の執筆医師
永尾 光一 先生
東邦大学 医学部教授(泌尿器科学講座)
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長
昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。
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