精索静脈瘤手術後の子作りはいつから可能?自然妊娠の確率を上げるには - 銀座リプロ外科
COLUMN

精索静脈瘤の治療を考えているものの、手術後いつから子作りができるのか、妊活のタイミングが遅れてしまうことを心配してはいませんか。経過に問題がなければ手術後1週間で性交渉が再開でき、不妊治療は2ヵ月後から行えます。

精索静脈瘤は男性不妊の原因の40%に見られる病気です。しかし、適切な手術方法により治療することで、精液所見が改善し、自然妊娠につながったケースも多く報告されています。

本記事では、精索静脈瘤の手術の流れやメリット、放置するリスクなどを紹介します。妊活のタイミングに合わせて精索静脈瘤手術を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

精索静脈瘤の原因・手術の詳細を詳しく知りたい

 

 

男性不妊・精索静脈瘤にお困りのかたへ
男性不妊の40%精索静脈瘤が原因

男性不妊の40%にある精索静脈瘤は、精巣やその上の精索部(精管、血管、神経、リンパ管などを覆う膜)に静脈瘤(じょうみゃくりゅう・静脈の拡張)が認められる症状のことを指します。一般男性の15%に認められ、男性不妊症患者の40%がその疑いであるとされています。

精索静脈瘤の手術後はいつから子作りできる?

精索静脈瘤手術後の子作り再開の目安として、自然妊娠やタイミング法での妊娠を望む場合、手術からおよそ1週間後には性交渉を開始可能です。

性交渉の再開時期や精液所見が改善するまでの目安を解説します。精索静脈瘤の手術を考えており、子作り再開のタイミングに不安がある方は、ぜひ参考にしてください。

性交渉の再開は1週間後

精索静脈瘤を治療した場合、性交渉は手術後1週間をすぎれば可能です。タイミング法も同じ時期から行えます。ただし、創部に痛みや出血があるときは再開を延期しましょう。

精液検査や体外受精のような婦人科治療に関しては、精液所見の改善が見られ始める2ヵ月後以降の再開を推奨します。

精索静脈瘤がある方の多くは、精子のDNAにダメージが生じていたり、運動率や形態が低下していたりして、精液所見が悪くなっています。

手術によって精子の状態が良くなると、顕微授精・体外受精・人工授精・タイミング法などのすべての不妊治療で、妊娠率向上が期待可能です。不妊治療のステップダウンができたり、自然妊娠が叶う方もいるでしょう。

精液所見が改善するまでの目安

精索静脈瘤の手術後、精液所見が改善するまでにかかる期間の目安は2〜3ヵ月ほどです。精子は精巣で約70日かかって造られるので、一般的な精液検査は3ヵ月間隔で行われます。

体外受精のような不妊治療は、精液所見が改善してから行うと良いでしょう。

精索静脈瘤は重症度に応じて3段階のグレードに分けられており、重度であるほど、手術により精液所見が大きく改善するという研究結果が報告されています。

精液所見が改善することで、自然妊娠の可能性が高められるほか、不妊治療に取り組んでいる場合も、ステップダウンが期待できます。

 

そもそも精索静脈瘤とは?

精索静脈瘤は、精巣の血液を心臓に戻す精索静脈で逆流が起こり、精索や陰のう部分に瘤(こぶ)のような膨らみができる病気です。

精索静脈が逆流する原因には、静脈弁の機能が不十分であったり、ナットクラッカー現象が起こったりすることが指摘されています。

ナットクラッカー現象とは、左腎静脈が腹部大動脈と上腸間膜動脈に挟まれて圧迫され、流れが悪くなる状態です。精索静脈は左腎静脈と合流するため、影響を受けてしまいます。

精索静脈瘤は、男性不妊の40%の原因となっており、治療によって改善できる病気です。放置すると、徐々に進行して重症になるため、できる限り早いタイミングで泌尿器科を受診し、診察と超音波検査を受けましょう。

精索静脈瘤によって起こる男性不妊とは?検査・治療法を詳しく確認する

 

当院の精索静脈瘤手術

男性不妊の4割は精索静脈瘤が原因。自然妊娠を目指すなら治療しよう

当院で精索静脈瘤に対して行なっている「日帰り顕微鏡下精索静脈瘤手術・ナガオメソッド」を紹介します。

精索静脈瘤は手術によって改善でき、治療後は精子の質や妊娠率のアップなどが期待できます。しかし、手術の精度によって温存できる血管・リンパ管・神経の数や、逆流静脈を縛る位置が異なり、再発率や合併症に大きく影響するため、注意が必要です。

治療効果の高い手術方法を選ぶために、当院の日帰り顕微鏡下精索静脈瘤手術・ナガオメソッドの強みや流れを確認してください。

日帰り顕微鏡下精索静脈瘤手術・ナガオメソッド

日帰り顕微鏡下精索静脈瘤手術・ナガオメソッドとは、精索静脈瘤手術の第一人者といわれる永尾医師が開発した方法です。血管やリンパ管、神経を1本ずつ丁寧に分離する手法で、逆流している静脈だけを縛って切離するため、重要な組織をすべて温存できます。

日帰り顕微鏡下精索静脈瘤手術・ナガオメソッドの特徴は、一般的な手術で処置する内精逆流静脈だけでなく外陰部逆流静脈(外精逆流静脈)まで結紮・切離する点です。再発率が0.1%と低く、合併症のリスクもほとんどありません。

当院での手術は、トレーニングを積んだ医師(スーパーマイクロサージャン)が行います。スーパーマイクロサージャンは、0.3〜0.5mmの微小血管やリンパ管などをつなげられる顕微鏡手術の専門医のため、安心して治療を受けてください。

日帰り顕微鏡下精索静脈瘤手術・ナガオメソッドでは、小学6年生から使用可能な独自の7段階局所麻酔法を採用しており、日帰りで手術を受けられます。

麻酔・手術ともに精度の高い方法のため、当院では精索静脈瘤に対しては保険適用のない自費診療を行なっています。

図1. 顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術の4つの切開部位

顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術
術式 麻酔 日帰り/入院 手技難易度 外陰部静脈処理 動脈・リンパ管温存数 ※ 再発率 精液改善率
合併症
顕微鏡下
鼠径部高位結紮術
全身 入院 普通 × 少ない 3〜6%以上 術者による
顕微鏡下
鼠蹊部結紮術
全身 入院 普通 × 少ない 3〜6%以上 術者による
顕微鏡下
鼠蹊高下結紮術
局所 日帰り/入院 難しい × 少ない 3〜6%以上 術者による
顕微鏡下
鼠蹊下結紮術
ナガオメソッド
局所 日帰り 非常に難しい
オナガメソッドのみ
多い◎ 0.1%◎ 精液改善87%
合併症なし
顕微鏡下
陰嚢上部結紮術
局所麻酔 日帰り/入院 難しい × 少ない 3〜6%以上 術者による
精索静脈瘤高位結紮術
麻酔 日帰り/入院 手技難易度 外陰部静脈処理 動脈・リンパ管温存数 ※ 再発率 精液改善率
合併症
腹腔鏡手術 全身 入院 普通 ×
(再発リスク高)
なし 3〜6%以上 術者による
※精巣水瘤 7~43%
※精巣萎縮の可能性あり
肉眼的高位結紮術 全身 入院 普通 ×
(再発リスク高)
少ない 3〜6%以上 術者による
※精巣水瘤 7~43%
※精巣萎縮の可能性あり

※ ヨーロッパ泌尿器科学会ガイドライン2025

 

図2. 顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術(精密さ)

 

手術の流れ

日帰り顕微鏡下精索静脈瘤手術・ナガオメソッドを行う際の流れは、以下のとおりです。

1. 手術前:診察・エコー検査・手術前検査
2. 前日:自宅で剃毛(電気シェーバーが安全)
3. 手術当日:1時間程度の手術、歩いて帰宅

手術前は、不妊治療歴や既往歴、アレルギーがないかなどを問診で確認し、陰のうのサイズや逆流静脈の有無を触診・エコー検査でチェックします。

前日、自宅で剃毛(電気シェーバーが安全です)しておいてください。

手術当日は施術を行います。食事は来院の3時間前までに済ませてください。手術にかかる時間はおよそ1時間で、術後は当日中に帰宅できます。

手術部位は内出血しないようハンドタオルで圧迫し、テープを傷口に貼るため、シャワーの再開は翌日からにしましょう。手術をして1週間後からは軽い運動や性交渉も行えます。

手術についてさらに詳しく知りたい方は「日帰り顕微鏡下精索静脈瘤手術・ナガオメソッド」をご覧ください。

 

精索静脈瘤の手術を受けるメリット

精索静脈瘤の手術を受けるメリットは、以下のとおりです。

・自然妊娠の確率が高まる
・不妊原因の根本的な治療により効果が持続する

精索静脈瘤は進行性の病気で、放っておくと精液所見は徐々に悪化していき、妊娠の確率が下がります。

一般男性の15%が発症する頻度の高い病気のため、妊活を始めるタイミングで精索静脈瘤がないかどうか、泌尿器科で診察・超音波検査を受けることをおすすめします。

自然妊娠の確率が高まる

精索静脈瘤の手術を受けるメリットの1つは、自然妊娠の確率が高まる点です。手術により精液所見が良くなり、妊娠・出産率の向上が期待できます。

精索静脈瘤手術は、DNAにダメージのある精子の割合を減らし、妊娠率を1.5〜2倍ほど上げたとする報告もあります。

一般的な手術により精液所見が良くなる人の割合は、50〜70%程度です。一方、当院の日帰り顕微鏡下精索静脈瘤手術・ナガオメソッド後は、87%の方で精液所見に改善が見られています。

体外受精のような不妊治療での妊娠を目指していた方でも、精子の形態や運動率が良くなることで自然妊娠が叶ったケースもあります。

不妊治療による心身の負担を軽減したい方で、精索静脈瘤がある場合は、治療を受けることが自然妊娠への近道です。

不妊原因の根本的な治療により効果が持続する

不妊原因の根本的な治療により効果が持続することも、精索静脈瘤の手術を受けるメリットです。

精索静脈瘤は静脈内の血液の逆流により精巣機能を低下させる病気です。手術を受けて病気の原因となる血液の逆流を治療できれば、精巣機能低下の根本的な回復につながり、精子の運動率や形態も改善します。

ただし、効果を持続させるためには、適切な手術法を選択することが重要です。合併症や再発のリスクが低い手術を選び、2・3人目の子作りを考えたときに、再び治療が必要な事態にならないようにしましょう。

 

精索静脈瘤を放置するリスク

精索静脈瘤を放置すると、以下のような状態に陥る恐れがあります。

・症状が進行する
・精巣の機能が低下する
・精子の質が悪化する

精索静脈瘤は進行性の病気で、自然に治ることはありません。放置により精巣の機能が低下し、造られる精子の運動率・形態が悪くなります。

精索静脈瘤を治療しない場合のリスクについて詳しく確認しましょう。

症状が進行する

精索静脈瘤を放置するリスクの1つは、症状が進行することです。精索静脈瘤は重症度により、以下のような3つのグレードに分類されます。

重症度 症状
グレード1 ・立った状態でお腹に力を入れたときに触診でわかる
・エコー検査でわかる
グレード2 ・立った状態で触るとわかる
・見るだけではわからない
グレード3 見るだけで確認できる

 

グレード1の状態では患者さん自身が病気に気づくことは難しいですが、放っておくと精巣が萎縮したり、グレード2に進行し陰のうが腫れたりして、左右差がわかるようになります。

グレード3になると見ただけではっきりと陰のうの膨らみがわかり、セルフチェックでも確認できる状態です。陰のうに違和感や痛みが出ている方もいるでしょう。視診や触診、エコー検査でグレードをチェックし、グレード2以上の方には通常、手術が勧められます。

精巣の機能が低下する

精巣機能の低下も、精索静脈瘤を放置した際に考えられるリスクです。精巣には、精子を造ったり、テストステロンのような男性ホルモンを産生したりする役割があります。

精索静脈瘤がある状態にしておくと、精巣はダメージを受け続け、DNAを損傷した精子が造られる割合が増加します。DNAが傷ついた精子では、妊娠の確率は下がります。

精巣機能の低下は、男性ホルモンにも影響します。精巣機能が悪くなり、テストステロンの分泌が低下すると、性機能の低下や更年期障害の重症化につながります。

男性の更年期障害は、うつやED(勃起不全)の原因にもなるため、精索静脈瘤を治療してリスクを下げておきましょう。

精子の質が悪化する

精索静脈瘤を放置するリスクには、精子の質が悪化することも挙げられます。精索静脈で血液の流れが滞ると、精巣内が以下のような状態に陥り、造られる精子に悪影響が及びます。

・温度が2~3℃ほど上がる
・低酸素状態になる
・活性酸素が増える

精巣が適切に機能して状態の良い精子を造るには、体温より2〜3℃低い温度であることが必要です。精索静脈瘤のために血液循環が悪くなり、酸素が十分に供給されない状態も精液所見を悪化させる一因です。

活性酸素とは呼吸により取り込んだ酸素から発生し、本来であれば細胞間の情報伝達に作用し、免疫機能において重要な役割のある物質です。しかし、過剰に存在すると、精子の運動率を低下させたり、DNAへダメージを与えたりして悪影響を及ぼします。

精子のDNAダメージや運動率の悪化は、流産のリスク上昇にもつながります。パートナーの妊娠・出産を望むのであれば、精索静脈瘤の治療をして、考えられるリスクを下げておくことが得策です。

 

精索静脈瘤の手術をお考えの方は当院へ

精索静脈瘤の手術をお考えの方は、当院へご相談ください。

当院は精索静脈瘤をはじめとした男性不妊の治療を専門としたクリニックです。日帰り顕微鏡下精索静脈瘤手術・ナガオメソッドの手術枠を多く設けているため、短い待機期間ですみ、およそ2週間ほどで手術が受けられます。

日帰り顕微鏡下精索静脈瘤手術・ナガオメソッドを受けられた患者さんの87%で精液の改善が見られ、多くの方が自然妊娠されています。

精索静脈瘤の手術をしてパートナーの妊娠を叶えたい方は、ぜひ当院での手術をご検討ください。

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この記事の執筆医師

永尾 光一 先生

永尾 光一 先生

東邦大学 医学部教授(泌尿器科学講座)
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

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