高齢者のペッサリー使用の注意点やデメリット|痛い・外れる際の対応策 - 銀座リプロ外科
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高齢者のペッサリー使用の注意点やデメリット|痛い・外れる際の対応策

骨盤臓器脱と診断され、「年齢的に手術はしたくない」という思いからペッサリーを選択したものの、痛みや違和感にお悩みではありませんか。

ペッサリー療法は、手術を受けるリスクが高い高齢者に骨盤臓器脱の治療法として勧められることの多い方法ですが、トラブルも報告されています。特に、長期間のペッサリー使用は合併症を引き起こす恐れがあり、注意が必要です。

本記事では、高齢者がペッサリーを使う際の注意点を紹介します。リスクの低い治療法も紹介するので、「ほかの方法に切り替えたい」という方はぜひ参考にしてください。

 

高齢者の骨盤臓器脱治療にペッサリーは適する?

ペッサリーは、腟内に挿入して子宮や膀胱などの臓器が下がらないように支える医療器具で、骨盤臓器脱の治療に使用されます。外科的処置を行わずに症状を改善できるため、手術による合併症のリスクが高い高齢者にとって有力な治療の選択肢です。

ペッサリーは、装着後すぐに症状が軽減し、日常生活を送りやすくなる利点がある一方で、高齢者による使用ではトラブルが多発することも事実です。

高齢でも骨盤臓器脱を放置してはいけない理由と、治療にペッサリーを選んだときのリスクについて解説します。

高齢者による骨盤臓器脱の放置は危険

放置により骨盤臓器脱の症状は進行するため、治療しなければ危険です。

骨盤臓器脱とは、骨盤底筋がゆるみ、子宮・膀胱・直腸などが下垂して腟から脱出してしまう病気です。放置すると、脱出した臓器が下着と擦れて傷ついて出血や感染の原因になったり、排尿・排便困難により尿路感染症や便秘の悪化を招いたりします。

高齢者は、免疫力が低下しやすく一度体調を崩すと回復に時間がかかり、寝ている期間が1週間続くだけで筋力は10~15%低下するといわれています。少しの体調不良が、転倒リスク上昇・骨折・寝たきり・認知症と、雪崩のように状態悪化を引き起こしかねません。

骨盤臓器脱の悪化を防ぎ、さらなるリスクを回避するためには、体に負担の少ない手術や医療機器装着での治療を検討しましょう。

高齢者のペッサリー使用でトラブルが起きやすい理由

高齢者がペッサリーで骨盤臓器脱を治療した際にトラブルが起きやすい理由は、以下のとおりです。

  • 腟の粘膜が薄く乾燥している
  • 違和感や症状の変化に気づきにくい
  • 骨盤底筋のゆるみによって脱落しやすい

女性ホルモン減少にともない、高齢者の腟は粘膜が乾燥して傷つきやすい状態です。ペッサリーを長期間装着すると、摩擦によるただれや出血が起こりやすくなります。

年とともに感覚が鈍くなり、違和感や症状の変化に気づけなければ合併症を見逃すリスクも高まるでしょう。

ペッサリーを使用する際は、診察でサイズを合わせます。しかし、高齢者は組織の弾力低下や骨盤底筋のゆるみによってペッサリーが脱落しやすく、合うサイズを見つけにくいことが問題点の1つです。

 

高齢者のペッサリー使用の注意点・デメリット

ペッサリーは、骨盤臓器脱を発症した高齢者に勧められることの多い医療器具ですが、以下のような注意点が存在します。

  • 安定性の高さと違和感の少なさの両立が難しい
  • 尿漏れが起こりやすくなる
  • 大きなサイズの使用で出血・感染リスクが高まる
  • 定期的な受診が負担になる

ペッサリーでの治療に不安を感じている方は、リスクをきちんと確認しましょう。

安定性の高さと違和感の少なさの両立が難しい

高齢者は骨盤底の支持組織が弱っているため、ペッサリー使用時の問題として、安定性の高さと違和感の少なさの両立が難しい点が挙げられます。

ペッサリーは、臓器をしっかりと支えるためにある程度のサイズやかたさが必要です。サイズを大きくすると安定性が増すものの、装着時の圧迫感や異物感は強くなります。同じ場所にペッサリーが当たり続けることで炎症のリスクも高まります。

ペッサリーを小さめにすると違和感は減りますが、活動時や腹圧がかかった際に、ずれや脱落が起きやすくなるでしょう。

尿漏れが起こりやすくなる

尿漏れが起こりやすくなることも、高齢者がペッサリーを使うときの注意点です。

ペッサリーを装着すると、下垂していた膀胱や尿道の位置が元に戻ることで、腹圧性尿失禁が起きやすくなることがあります。

腹圧性尿失禁とは、お腹に力が入ったときに尿道をしっかりと締められず、尿が漏れてしまう状態です。症状を改善するためには、腹圧が上昇した際に尿道をきちんと締められるよう、骨盤底筋を鍛えることが大切です。

ペッサリーに骨盤底筋を鍛える効果はないため、使用を続けていても尿漏れの改善は期待できないでしょう。

大きなサイズの使用で出血・感染リスクが高まる

高齢者が大きいサイズのペッサリーを使用すると、出血・感染リスクが高まります。高齢者は腟の粘膜が薄く乾燥しており、摩擦や圧迫によって小さな傷ができやすい状態です。

脱落を予防するために大きなペッサリーを長期間装着すると、傷が広がり、ただれや出血・感染の原因になります。感染が進行した場合は、悪臭や膿をともなうおりものが出るほか、痛みで日常動作がつらくなるでしょう。

認知機能が低下していれば出血やおりものの変化に気づけず、適切な対処ができないまま症状が進行する恐れもあります。

定期的な受診が負担になる

ペッサリー使用時は、安全に使い続けるために定期的な受診が必要であり、高齢者の方にとって大きな負担となりかねません。

ペッサリーを医師に処方してもらったあとも2〜3か月ごとに受診し、腟内の状態確認と交換を行う必要があります。使用者本人が毎日着脱・洗浄するタイプもありますが、高齢者には管理が難しく、自分で管理する場合でも3~6か月に1回は通院が必要です。

年とともに足腰が弱くなって歩行が困難になったり、自動車運転免許証を返納したりして、通院が難しくなることは容易に想像できます。介護を受けている方は、受診のたびに家族や介護サービスへの依頼が必要です。

通院の負担が原因で治療を中断すると、骨盤臓器脱が悪化してしまうでしょう。

 

高齢者|ペッサリーが合わない場合の対応策

骨盤臓器脱の治療でペッサリーが合わなかった場合、高齢者に推奨される対応策は以下のとおりです。

  • 体への負担が少ない手術を受ける
  • フェミクッションを使用する

リスクを抑えて治療したい方は、ぜひ参考にしてください。

体への負担が少ない手術を受ける

体への負担が少ない手術によって骨盤臓器脱の根本的治療を試みることは、ペッサリーが合わなかった場合の対応策の1つです。負荷が比較的少ないとされ、高齢者にも勧められる術式は以下のとおりです。

術式名
詳細
腟式子宮全摘術

腟断端固定術

腟壁形成術
  1. 子宮を摘出する
  2. 腟断端を靭帯に固定する
  3. たるんだ腟壁を整える
腟閉鎖術
腟壁を縫合して臓器の脱出を防ぐ
経腟メッシュ手術
(TVM)
腟から人工メッシュを挿入して骨盤内臓器を支える
腹腔鏡下仙骨腟固定術
(LSC)
  1. 腹部に小さな穴を数か所あける
  2. 腹腔鏡を使ってメッシュを挿入・固定する

 

お腹を大きく切開しない点が共通点ですが、負担が少ない手術といっても、麻酔にともなうリスクや合併症の可能性が完全になくなるわけではありません。

フェミクッションを使用する

「ペッサリーは合わないが手術も不安」という場合は、医療機器であるフェミクッションで骨盤臓器脱を治療する方法があります。構成部品と使い方・特徴は、以下のとおりです。

構成部品
使い方・特徴
クッション
  • 腟口に当てて臓器を正しい位置で保持する
  • シリコンゴム100%なのでアレルギーのリスクが低い
  • S・M・Lの3サイズがセットになっている
ホルダー
  • クッションをセットしてサポーターで固定する
  • クッションのずれや腟内への侵入を防ぐ
  • 布製で洗って繰り返し使用できる
  • 使い捨てタイプもある
サポーター
クッションを腟口に密着させて履く

 

フェミクッションを装着した直後から、骨盤臓器脱による不快な症状を抑えられるでしょう。

 

高齢者の骨盤臓器脱治療にはフェミクッションがおすすめ

以下の理由から、高齢者の骨盤臓器脱治療にはフェミクッションの使用をおすすめします。

  1. 装着が簡単で通院の必要がない
  2. 高い治療効果が期待できる
  3. 体への負担が少ない

ペッサリーの使用が難しい方がフェミクッションを使うメリットについて、詳しく解説します。

理由1. 装着が簡単で通院の必要がない

高齢者にフェミクッションでの骨盤臓器脱治療をおすすめする理由の1つが、装着が簡単で通院の必要がないことです。

臓器が体の中におさまっていることを確認したうえで(立位よりは座位の方が臓器をおさめやすいです)、ホルダーにつけたクッションを腟口に当て、サポーターを履くだけで装着できます。体が不自由で自分で装着できない方でも、介助者が1人いれば十分に使用可能です。

サポーターは、多様な種類・カラーが用意されているので、装着のしやすさや好みで選ぶと良いでしょう。

フェミクッションはオンラインで購入でき、処方・交換のために通院する必要はありません。頻繁に病院に通えない方でも、無理なく治療を続けられます。

理由2. 高い治療効果が期待できる

高い治療効果が期待できることも、高齢者の骨盤臓器脱にフェミクッションをおすすめする理由です。

フェミクッションは、子宮脱・膀胱瘤・直腸瘤といったさまざまな骨盤臓器脱の方に有効です。臨床試験では、すべてのケースで臓器が高い位置で保持されたという報告が見られます。

参考:Magnetic resonance imaging evaluation of the effectiveness of FemiCushion in pelvic organ prolapse|Obstetrics&Gynaecology

体の外から臓器をしっかりと支えることで、立位・歩行時や、咳・いきみといった腹圧がかかる場面でも脱出を防げるため、不快感が和らぎます。ペッサリーのように体の中に異物を入れなくても高いサポート効果を得られる点は、フェミクッションの大きなメリットです。

理由3. 体への負担が少ない

フェミクッションは体への負担が少なく、ペッサリーによるトラブルが気になる高齢者におすすめです。

体内に挿入しないため、閉経後で腟粘膜が薄い方でも、炎症やただれ・感染のリスクを抑えられます。クッション・ホルダー・サポーターはすべて洗えるので、手入れがしやすく、清潔に使用可能です。

腟口に直接触れるクッションは、シリコンゴム100%で作られており、アレルギーのリスクはきわめて低いといえます。クッションにオリーブオイルを塗るとさらに刺激がなくなります。

フェミクッションは、使用者に与えるリスクが少ないとされる「クラスⅠ」の医療機器です。睡眠時は装着しなくてもよく、毎日洗浄できるので衛生的で悪臭の発生も抑えられます。

 

骨盤臓器脱の治療にはフェミクッションが有効

骨盤臓器脱の症状改善のために用いたペッサリーでトラブルが起き、新たな治療法をお探しの方にはフェミクッションをおすすめします。

インターネット上で注文可能なので、自宅ですぐに購入手続きができ、頻繁な通院は不要です。装着時に強い力は必要なく、ペッサリーを自己着脱するより楽に使用できるでしょう。

「年だから」と、骨盤臓器脱を放置していると、徐々に進行して活動量が低下し、寝たきり・認知症につながりかねません。リスクを抑えられる手軽な骨盤臓器脱の治療法をお探しなら、ぜひフェミクッションをお試しください。

フェミクッションでの骨盤臓器脱治療を始める

この記事の執筆医師

永尾 光一 先生

永尾 光一 先生

一般社団法人日本精索静脈瘤協会 理事長
医療法人社団マイクロ会 理事長
銀座リプロ外科 院長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

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