子宮脱セルフチェックリスト|症状から受診の目安・治療方法まで - 銀座リプロ外科
COLUMN

仕事で重いものを持った際に、「腟から何か出てくる感覚がある」と気になっていませんか。

お腹に力を入れたときや、夕方に表れる腟の違和感・下垂感は、子宮脱の症状であることが疑われます。違和感を放置すると次第に症状が強まり、生活に支障をきたすでしょう。

本記事では、子宮脱のセルフチェックリストを紹介します。セルフチェックで当てはまった場合にとるべき行動や子宮脱の治療方法についても解説するため、自身の症状でお悩みの方は参考にしてください。

 

 

子宮脱をチェックしやすいタイミング

子宮脱を自分でチェックしやすいタイミングは、以下のとおりです。

  • 重いものを持ったとき
  • 排泄後に陰部を拭くとき
  • 入浴しているとき
  • 1日活動した日の夕方や夜

はじめのうちは、お腹に力を入れる動作により、腹圧が上がることで子宮が押し下げられ、症状を自覚することがあります。トイレやお風呂で陰部を触ると硬いものが手に当たって違和感を覚える人もいるでしょう。

ただし、軽度の子宮脱では自覚症状が表れず、悪化するまで気づかない方もいます。症状が分かりやすいタイミングで確認すると、早めに子宮脱に気づきやすいといえます。

 

子宮脱のセルフチェックリスト

次の2つのポイントに分けて、子宮脱かどうかを確認するためのセルフチェックリストを作りました。

  • どのような自覚症状があるか
  • 子宮脱になりやすい生活習慣や既往歴があるか

自宅ですぐにチェックできるので、医療機関に行くべきかの判断材料としてください。

 

症状からチェックする

以下の症状にチェックが付いた方は、子宮脱を発症している可能性があります。

  • 陰部に何かが触れる感覚がある
  • 太ももの間に何かが挟まっているような気がする
  • 長時間の立ち仕事で陰部に違和感を覚える
  • 尿が出にくい
  • 尿漏れしやすい
  • 便の出しにくさや便秘がある
  • 下着と陰部が擦れて痛い
  • 陰部に出血が見られる

子宮脱の原因は、骨盤底筋が弱くなったり、ダメージを受けたりして骨盤内の臓器を支えられなくなることです。子宮の位置が下がることで膀胱や尿道・直腸も影響を受け、排泄機能にも障害が出ます。

陰部の痛みや出血が認められる方は、子宮脱が進行している恐れがあります。

 

なりやすさからチェックする

子宮脱ではないか、発症リスクの高さからもチェックしましょう。

  • 重いものを持つ仕事をしている
  • 肥満体型である
  • 便秘気味である
  • 経腟分娩の経験がある
  • 3,500g以上の赤ちゃんや多胎児を出産した
  • 鉗子分娩・吸引分娩で出産した
  • 子宮を摘出した

上記はすべて骨盤底筋に大きな負担をかけ、子宮脱のリスクを高めます。20〜30代では症状がなくても、閉経後に子宮脱になるケースもあります。

チェックリストに該当する方は子宮脱になる可能性があるため、現時点での自覚症状の有無に関係なく対策しておくことがおすすめです。

発症前のリスクを対策しておきたい

 

子宮脱セルフチェックで当てはまったら

子宮脱のセルフチェックに当てはまったあとにとるべき行動の指針として、以下の3つのポイントを解説します。

  • 受診の目安
  • 受診する診療科
  • 検査方法

子宮脱はデリケートな部位の病気であり、羞恥心から受診をためらう方が多いでしょう。しかし、悪化すると日常生活に支障をきたすため、早めの診断・治療が大切です。

 

受診の目安は?

症状のセルフチェック項目に当てはまった場合は、子宮脱を発症している恐れがあるので、早めに医療機関で受診してください。

「ちょっとした違和感だから」「歳だから尿漏れはよくあること」と、気づいた症状を放置してはいけません。軽度のうちに子宮脱の診断を受け、対処すれば負担が軽い方法で治療できる可能性が高まります。

排尿障害や出血のような日常生活に支障をきたすほど重度の症状がある方は、すみやかな受診が大切です。子宮脱がさらに進行すると、脱出した部位が炎症を起こしたり、 腎盂腎炎になったりしかねません。

気になる症状がある場合は、恥ずかしがらずに受診することをおすすめします。

 

何科で受診すべき?

子宮脱に関する症状のセルフチェック項目に該当したら、以下の診療科で受診しましょう。

  • 婦人科
  • 泌尿器科・女性泌尿器科
  • ウロギネ外来

婦人科の医師は、子宮脱をはじめとした女性の生殖器の専門家です。子宮脱は閉経後に起こることが多いので、婦人科はホルモンバランスの相談にものってもらえる、頼りになる相談先です。

排尿困難や尿漏れをともなう場合は、泌尿器科で受診しても良いでしょう。

ウロギネ外来は、婦人科と泌尿器科の両方に詳しい医師が在籍する診療科で、骨盤臓器脱や腟の違和感といった女性特有の症状を診察・治療します。ただし、ウロギネ外来を持つ医療機関は少なく、自宅近くにない可能性がある点には注意してください。

 

子宮脱の検査方法とは?

婦人科・女性泌尿器科・ウロギネ外来では、以下の検査を通して子宮脱を診断します。

  • 問診
  • 視診
  • 内診
  • 超音波検査
  • 尿検査

問診では症状や既往歴などがチェックされ、子宮脱の可能性を探ります。子宮が下降しているかどうかは陰部を見たり、内診でお腹に力を加えたときの腟内を確認したりして調べることが一般的です。

子宮や膀胱などの臓器の詳しい位置は、腟からの超音波検査で分かるでしょう。超音波検査は、超音波を当てることで体内の情報を可視化する手法です。

子宮が下垂して膀胱が圧迫されると、尿の濁りや残尿が観察されるため、尿検査も有効です。尿の色を観察したり、膀胱内の残尿量を確認したりして尿路感染症を合併していないかを判断します。

 

子宮脱の治療方法

子宮脱の治療方法は、大きく分けて以下の2種類です。

  • 外科的治療法
  • 保存的治療法

症状が軽い場合は、手術しない保存的治療法で対処できる可能性があります。セルフチェックで少しでも当てはまる項目があった方は、早めに医療機関で受診することが大切です。

 

外科的治療法

臓器が体の外へ脱出したり排泄障害が進行したりし、日常生活に支障をきたしている子宮脱には、以下のような外科的治療法が勧められることがあります。

術式名 詳細
経腟メッシュ手術
(TVM手術)
腟から人工メッシュを挿入して子宮を支える
腟式子宮全摘術

腟壁形成術
  1. 子宮を摘出する
  2. 骨盤の高い位置で腟壁を固定して腟の脱出を防ぐ
腟閉鎖術
  • 腟を縫い合わせて閉じる
  • 子宮を摘出する方法としない術式がある
腹腔鏡下仙骨腟固定術
(LSC)
  1. 腹腔鏡で臓器と腟壁の間にメッシュを挿入する
  2. メッシュを仙骨に固定して引き上げる
ロボット支援下仙骨腟固定術
(RSC)
ロボットを使ってLSCを行なって精度を高める

 

手術には、出血や痛み・感染といった合併症のリスクが少なからず存在します。術後に子宮脱が再発する可能性がある点も認識しておくことが必要です。

 

保存的治療法

手術するほど子宮脱が進行していなかったり、リスクを抑えたかったりする場合は、以下のような保存的治療法が選ばれます。

  • 骨盤底筋トレーニング
  • ペッサリー療法
  • フェミクッションの装着

骨盤底筋を鍛えれば、子宮を支える力が回復し、症状の改善が期待できます。肛門や腟にゆっくりと力を入れたり、抜いたりする動作を繰り返しましょう。効果が出るまでに時間がかかりますが、毎日継続することが大切です。

ペッサリーは腟内に挿入し、子宮が下降しないようにサポートする医療器具です。装着後すぐに症状の改善が期待できる一方で、炎症・痛み・感染といったリスクが存在します。

フェミクッションは腟口に当てて、骨盤内の臓器を適切な位置で支える医療機器です。体内に挿入する必要がなく、体への負担もほとんどありません。

 

子宮脱にはフェミクッションがおすすめ

子宮脱の治療には、以下の理由からフェミクッションの使用をおすすめします。

  1. 簡単に装着できる
  2. 子宮の位置を戻すサポートができる
  3. 装着後すぐに効果を実感できる

フェミクッションは、手術やペッサリー療法よりも体への負荷が少なく、感染リスクの低い医療機器です。リスクを抑えつつ、子宮脱の症状を改善したい方は、ぜひフェミクッションを使用しましょう。

 

理由1. 簡単に装着できる

フェミクッションは簡単に装着できるため、子宮脱の治療におすすめです。クッション・ホルダー・サポーターといった部品は取り扱いが容易で、下着のように簡単に穿けます。

フェミクッションの使用方法は、以下のとおりです。

  1. クッションをホルダーにセットする
  2. 臓器を体内に戻す
  3. 寝た状態でサポーターを膝まで穿く
  4. 腟口を少し開いてホルダーにセットしたクッションを当てる
  5. サポーターを穿く

サポーターの生地は伸縮性に優れているため、患者さんの手が不自由・寝たきりでも介助者が1人いれば簡単に装着可能です。

治療のためとはいえ、「複雑な装着方法をともなうアイテムは負担になる」という方は、フェミクッションの購入を検討しましょう。

 

理由2. 子宮の位置を戻すサポートができる

子宮の位置を戻すサポートができる点も、フェミクッションが子宮脱治療におすすめの理由です。

フェミクッションを使用する際は、脱出した臓器を体内に戻した状態で腟口をクッションでやさしく押さえ、サポーターで引き上げます。サポーターは引き上げた位置で固定され、装着中にズレて子宮が下がってくることはほとんどありません。

腟口と接触するクッションには、人に対する安全性の高いシリコーンゴムが使われています。

フェミクッションは、高いサポート力が得られるにもかかわらず、腟に異物を挿入しないので、炎症や感染のリスクを抑えられます。

 

理由3. 装着後すぐに効果を実感できる

装着後すぐに効果を実感できる点でも、フェミクッションは子宮脱治療におすすめです。

装着するだけで子宮を体内で安定させられ、臓器の下降を防止できます。お腹に力がかかっても臓器の脱出を防げるため、子宮脱に悩む多くの方の症状を改善できるでしょう。

フェミクッションの効果は臨床試験で実証されており、学会発表や論文などで公開されています。毎日装着を続けることで、フェミクッションを使っていなくても子宮が下降しにくくなったケースもあります。

 

子宮脱の症状に当てはまったらフェミクッションを

セルフチェックで子宮脱の症状に当てはまった方は、フェミクッションの購入を検討しましょう。

フェミクッションは、手術のように皮膚を切開することはなく、ペッサリーとは異なり体内への挿入の必要もありません。子宮脱治療に不安がある方でも気軽に取り入れやすく、簡単に装着できます。

医療機器として医薬品医療機器総合機構に届出が提出されており、臨床試験で症状の改善効果が実証されています。

子宮脱は症状が進行する恐れのある病気で、早めの治療が大切です。重症化を防ぐためにも、子宮脱が疑われる場合は医療機関で受診し、フェミクッションで治療しましょう。

この記事の執筆医師

永尾 光一 先生

永尾 光一 先生

一般社団法人日本精索静脈瘤協会 理事長
医療法人社団マイクロ会 理事長
銀座リプロ外科 院長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

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