「生殖医療ガイドライン2021」の「重度の男性不妊の場合は泌尿器科的検査を行う」は、重症男性不妊症と診断されてもすぐに体外受精・顕微受精をするのではなく、まずは泌尿器科(生殖医療専門医)で検査を受けることを強く推奨しています。
軽症でも同様で、もっとも効果のある治療法を選択するための検査であり、結果として、女性の心身的負担、更には経済的負担を減らすことにもつながるので、婦人科治療を考えている場合は、その前にぜひ男性が泌尿科的検査を受けてください。
婦人科で行う精液、ホルモン、感染症検査では見つけられない男性の不妊原因を特定できます。男性の不妊原因を特定すると、もっとも効果のある治療法を選択できるようになります。
ここでは、銀座リプロ外科での精索静脈瘤検査の方法についてご紹介します。
- 男性不妊・精索静脈瘤にお困りのかたへ
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男性不妊の40%にある精索静脈瘤は、精巣やその上の精索部(精管、血管、神経、リンパ管などを覆う膜)に静脈瘤(じょうみゃくりゅう・静脈の拡張)が認められる症状のことを指します。一般男性の15%に認められ、男性不妊症患者の40%がその疑いであるとされています。
当院での検査項目
当院では、視診(見た目で診察)と触診(触って診察)に加えて、陰嚢のエコー検査を行っています。
1.陰部の視診と触診
視診は精巣サイズの測定(正常なサイズは14cc以上)、精巣上体の大きさや硬さ、圧痛・違和感の有無を診ます。
精管の触診では太さと欠損の有無、陰毛・陰茎の発育状態も確認します。
2.陰嚢のエコー検査
精巣腫瘍、精液瘤、精巣水腫、精巣内石灰化の有無などを確認します。
精巣上体の観察と精索静脈瘤の診断も行います。
陰嚢のエコー検査の画像と解説
(例)左側2画面のエコー検査の画像です。
左の静脈径は、6.8mm 6.2mm 4.5mm 4.8mm 4.7mm。
ドップラで安静でも逆流著明、腹圧でさらに増強していました。
以上の所見より、診断は左側グレード3の精索静脈瘤です。
左側1枚目 |
左側2枚目 |
(例)左右の精巣のエコー画像です。
精巣内に腫瘍はありませんが、左右の精巣に白い点が多数見えます。これは精巣機能低下により石灰化してきています。
また、右側に精液瘤9.7mm × 10.1mmがあります。こちらは治療してしますと精巣機能低下につながるので、不妊治療中の場合は、経過観察です。
更に、精巣の大きさに左右差があるのが分かります。左側16ml、右側20mlで、精索静脈瘤により、左側が萎縮しています。
左側 |
右側 |
精液検査をし、精液所見が悪い場合(濃度・運動率・正常精子形態率などの低下)は、泌尿器科受診をお薦めいたします。精索静脈瘤などの、治療できる疾患が見つかった場合は、治療してから体外受精や微授精をすることをお薦めいたします。
男性を治療することにより、妊娠率・出産率のアップ、流産・奇形を低下させることができます。
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〒104-0061 東京都中央区銀座2-8-19 FPG links GINZA 6F
この記事の執筆医師
永尾 光一 先生
東邦大学 医学部教授(泌尿器科学講座)
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長
昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。
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