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精索静脈瘤手術・名医がいる病院の選び方

精索静脈瘤手術と一言で言っても、数多くの術式があります。また、同じ術式であっても、手術を担当する外科医の技術によって、予後や再発・合併症の有無に大きな違いが出てきます。精索静脈瘤手術を成功させ、その後の不妊治療をスムーズにすすめていくためには、信頼できる医師・病院を選ぶ必要があります。

ここでは、精索静脈瘤手術において名医がいる病院を選ぶポイントについて、紹介します。

 

どのように病院を選べばよいのか

ネットで検索すると、精索静脈瘤手術をおこなっている数多くの病院がヒットします。いずれもさまざまなアピールポイントで宣伝をしていますが、手術を検討している人はどんなポイントに注意すべきなのでしょうか。

 

男性不妊の専門医かどうか

男性不妊手術の目的は、手術をすることではなく、精巣機能を改善することに最善を尽くすことです。男性不妊の専門医は、不妊カップルとともにあります。不妊を専門としない泌尿器科医は、腹腔鏡手術などに興味があり、手術成績も考慮せずに術式を選択している場合もあります。

 

どんな術式を採用しているのか

理想的な手術方法は、大事なもの(精管・動脈・リンパ管・神経)をすべて温存し、悪い逆流静脈(内精静脈・外精静脈)を1本も残さず結紮(しばる、または2重にしばり切離)することです。

1本でも悪い逆流静脈を残してしまうと改善なしまたは再発してしまいます。理想的な術式にいかに近いかどうかを検討してみてください。腹腔鏡手術では、リンパ管も結紮し外精逆流静脈も残ります。リンパ管結紮すると陰嚢水腫という合併症が起こります。

顕微鏡下低位結紮術でも、理想的な手術が難しいと言って、精管と主な動脈だけを温存し、残りをまとめて結紮するという短時間でできる手術法を行っているところがあります。外精逆流静脈が残り、多くの動脈・リンパ管・神経を犠牲にしています。動脈損傷があれば静脈瘤は治っても精巣の血流が悪くなり精巣機能は良くなりません。リンパ管が損傷すれば陰嚢が腫れます。神経損傷では痛みが残る可能性があります。理想的な手術を行っていると説明する医師もいますが、顕微鏡手術の系統的な指導を受けていない医師がいきなり手術しても、動脈に貼りついた逆流静脈をきれいに分離することはできませんし、外精逆流静脈も残ります。

どの様な手術方法なのか、それが理想的な手術方法か、顕微鏡手術の実績などを質問してください。理想的な手術かどうかは、まず外精逆流静脈を結紮している、動脈・リンパ管・神経の温存数が多い、逆流静脈の結紮数が多いなども参考になります。

 

症例数がどのくらいなのか

外科手術は、術者の技術レベルも大事ですが、その術者が高いレベルの手術を沢山経験することも大事です。

当院は、精索静脈瘤手術を年間1,000例程度行っているハイボリューム施設です。また、当院で主に執刀している永尾医師は、ナガオメソッドの開発者でもあり、同手術を20年以上、10000例以上の実績のある先生です。

 

信頼できる先生かどうか

外科手術について、詳しく納得行くまで説明してくれる先生を選ぶのが良いです。ご自身でもホームページや資料をよく読んだ上で、理解が足りないと感じたら自分から質問してみてください。そして、納得するまで手術は受けないでください。

 

やってはいけない選び方

いっぽうで、手術をおこなう病院を選ぶ際、やってはいけない選び方についても紹介します。

やってはいけない選び方

 

手術の費用

手術の技術や手術方法を考えずに、どこでも同じ術式と考えて、値段で手術方法を選ばないでください。保険診療希望でしたら入院・全身麻酔の顕微鏡下高位結紮術をお勧めしています。顕微鏡下高位結紮術は、逆流静脈・動脈・リンパ管・神経の本数が非常に少なく、比較的熟練医でなくても安全に行われます。ただし、外精逆流静脈は残ってしまいます。

 

よく調べずに病院を予約する

受診してから手術方法・手術の技術・手術症例数に納得いかないなどの場合がありますので、病院のホームページをよく読んでから受診することをお勧めします。

以下は、精索静脈瘤の手術方式を特徴ごとにまとめ、比較した表です。

動脈やリンパなどの温存本数、再発率や合併症の可能性や保険適応の有無などもまとめてありますので、自分に合った手術を行っている病院を探すなど、病院選びの参考にしてみてください。

<手術比較表>

ナガオメソッド
顯微鏡下低位結紮術
顕微鏡下リンパ管
温存高位結紮術
一般的な顕微鏡下
低位(一括)結紮術
一般的な顕微鏡下
低位(簡易)結紮術
肉眼的高位結紮術 腹腔鏡手術
麻酔法 局所麻酔 (7段階) 全身麻酔 全身/局所麻酔 全身麻酔/局所麻酔 全身麻酔 全身麻酔
入院日帰り 日帰り 入院 入院/日帰り 入院/日帰り 入院 入院
動脈温存
(外精動脈温存)
6-16本
(0-6本)
0-1本
(なし)
1-2本
(なし)
1-2本
(なし)
なし
(なし)
なし
(なし)
リンパ管温存
(外精リンパ管温存)
8-26本
(0-7本)
3-5本
(なし)
なし/1-2本
(なし)
なし/1-2本
(なし)
なし/1-2本
(なし)
なし/1-2本
(なし)
神経温存
(外精神経温存)
8-28本
(2-13本)
1-3本
(なし)
なし
(なし)
なし
(なし)
なし
(なし)
なし
(なし)
内精逆流静脈結紮
外精逆流静脈結紮
10-67本
(2-20本)
3-7本
外精逆流静脈残存
数えない
外精逆流静脈残存
少ない(残存あり)
外精逆流静脈残存
数えない
外精逆流静脈残存
数えない
外精逆流静脈残存
再発率 0.5% 5% 13.3%※ 13.3%以上※ 29% 3-7%
精巣水瘤合併 なし なし あり あり あり あり
重篤な合併症の
可能性
なし なし あり
(血流障害・精巣萎縮)
あり
(血流障害・精巣萎縮)
なし あり
(出血・腸管損傷)
使用器具 顕微鏡・ドップラ血流計
・NAGAOBO
顕微鏡 顕微鏡 顕微鏡 腹腔鏡
技術レベル 非常に難しい 普通 簡単・短時間 簡単・短時間 普通 普通
保険適応 自費 保険 自費/保険 自費/保険 保険 保険
おすすめ度
(銀座リプロ外科)
△/× △/× × ×

文献

  1. ヨーロッパ泌尿器科学会男性不妊ガイドライン
  2. K. Nagao: One day microsurgical varicocelectomy under local anesthesia.
    IFFS/ JSRM International Meeting (Symposium) , Yokohama, 2015

※本邦では、外精静脈を残すので、鼠径部結紮術と同じ再発率である。

精索静脈瘤再発予防には、外精静脈の結紮・切離が重要です

顕微鏡下精索静脈瘤低位(鼠径下)結紮手術 2019.4シュレーゲル教授招請講演のスライド

演者(米国の第一人者)シュレーゲル教授(コーネル大学) 座長永尾教授(東邦大学・銀座リプロ外科)
陰部大腿神経の陰部枝 温存される 温存される
外精逆流静脈 結紮し切離(両氏の共通点) 結紮し切離(両氏の共通点)
外精動脈(少しの違い) 太ければ温存 ※1 顕微鏡下にすべて温存 ※1
精巣導帯静脈 温存される
(精巣は通常は露出されない)※2
温存される
(精巣は露出されない)
精巣挙筋静脈 温存される 温存される
精巣挙筋動脈 温存される 温存される
精管静脈(少しの違い) いつも温存される >2mm 結紮し切離 ※3 <2mm温存される
精管動脈 温存される 温存される
内精逆流静脈 結紮し切離 結紮し切離
精巣動脈 温存される 温存される
すべての神経 温存される 温存される
すべてのリンパ管 温存される 温存される
  1. ※1 外精動脈が内精動脈と吻合または接続しているというデータがないため、日常的にすべての外精動脈を保存ているわけではない。永尾教授は、静脈と動脈は並行して走行するので外精動脈も精巣に重要と考える。
  2. ※2 複雑で再発性の精索静脈瘤の修復の場合にのみ精巣露出する。
  3. ※3 太いものには逆流があるので結紮

 

シュレーゲル教授と永尾先生のお写真
 ※左:シュレーゲル教授/右:永尾先生

当院で主に執刀する永尾医師は、ナガオメソッドという手術で20年以上も精索静脈瘤手術をしており、
その手術数は10,000例程となります。

スーパーマイクロサージャン(超微小外科医)でなければ出来ない高度な技術「ナガオメソッド」は、必要なもの全てを残して悪い逆流静脈だけを結紮するため、一般的な手術に比べて機能の低下や合併症も殆どなく、血流障害やリンパ浮腫は起こりません。精液所見の改善も87%(※1)と高い結果を得られています。

男性不妊でお悩みの方は、東邦大学の永尾教授が開発したナガオメソッドによる精索静脈瘤手術をご検討ください。

顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術・ナガオメソッドの優位性と精液所見の改善について説明していますので是非ご覧ください。

ナガオメソッドの手術について
詳しくはこちらから

(※1 データ出典:Nagao K ,Nakajima K :One day microsurgical varicocelectomy under local anesthesia.International Federation of Fertility(IFFS)/ Japan Society for Reproductive Medicine(JSRM) International Meeting 2015*(Symposium)* ,Yokohama,2015 4)

この記事の執筆医師

永尾 光一 先生

永尾 光一 先生

東邦大学 医学部教授(泌尿器科学講座)
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

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