「男性もブライダルチェックを受けたほうが良い?」「どんな検査をするの?」という疑問にお答えします。
ブライダルチェックは、子どもを望むカップルにとって大切な検査です。元気な子どもを授かるためには、妊娠・出産をする女性だけでなく、男性もしっかりと検査を受け、感染症や不妊の原因がないかを調べましょう。
本記事では、男性ブライダルチェックの重要性や検査内容、費用相場を解説します。ブライダルチェックを特に受けたほうが良い男性の特徴も紹介するので、参考にしてください。
- 男性不妊・精索静脈瘤にお困りのかたへ
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男性不妊の40%にある精索静脈瘤は、精巣やその上の精索部(精管、血管、神経、リンパ管などを覆う膜)に静脈瘤(じょうみゃくりゅう・静脈の拡張)が認められる症状のことを指します。一般男性の15%に認められ、男性不妊症患者の40%がその疑いであるとされています。
男性のブライダルチェックとは?
男性のブライダルチェックとは、結婚や妊活をする前に、感染症の有無や精液・精子の状態を検査し、子どもをつくるうえで問題がないか調べることです。
性感染症にかかっている場合は、パートナーの不妊や胎児の異常を引き起こす恐れがあります。感染症や不妊の原因があっても自覚症状がなく、ブライダルチェックで初めて気づく方もいます。
男性のブライダルチェックが重要な理由
女性だけでなく男性にも不妊の原因が見られる場合があるため、結婚や妊活をする前にブライダルチェックを受けて調べることが重要です。
WHO(世界保健機関)の調査では、男性不妊は全体の48%を占めると報告されています。不妊は女性に原因があると思われがちですが、男性側に病気が潜んでいたり、精子に問題が見られたりするケースも少なくありません。
結婚・妊活前に適切な検査を受けることで、無症状の場合でも異常の発見が期待でき、早い段階で治療を始められる可能性があります。女性と同様に、男性も加齢によって生殖能力が低下していくため、早めの検査がおすすめです。
ブライダルチェックを特に受けたほうが良い男性とは
ブライダルチェックを特に受けたほうが良い男性の特徴を、4つ紹介します。
・過去に性感染症にかかったことがある
・精巣・陰のうにかかわる病気になったことがある
・年齢が35歳以上である
・喫煙している
性感染症や精子に悪影響を及ぼす生活習慣に心当たりがある男性は、不妊のリスクが高い状態です。積極的にブライダルチェックを受けましょう。
過去に性感染症にかかったことがある
過去に性感染症にかかったことがある男性は、ブライダルチェックで再発リスクがないかを調べてください。性感染症とは、性行為でうつる病気を指します。
性感染症にかかった人のなかには、治療を受けたあと、治ったかどうかの確認まではしない方もいます。つらい症状がなくなったからといって、感染症が治ったとは限りません。治癒を確認しないまま放置すると、性感染症の再発や不妊につながる恐れがあります。
結婚生活に性感染症の影響が及ばないよう、前もって検査しておくことがおすすめです。
精巣・陰のうにかかわる病気になったことがある
ブライダルチェックは、以下のような精巣や陰のうにかかわる病気になったり、治療をしたりした経験がある男性に、特に推奨されます。
・停留精巣の手術を受けた
・鼠径ヘルニアの手術を受けた
・おたふく風邪にかかり精巣が腫れた
・抗がん剤治療や放射線治療を受けた
・精索静脈瘤を指摘された(または陰のうの左右差がある)
精巣や陰のうにかかわる病気は、精巣機能が低下したり、精管が傷つき精子が出にくくなったりする原因となり、妊娠の確率を下げてしまいます。自覚症状はなくても精子の質が低下しているケースもあるため、ブライダルチェックで検査することが大切です。
年齢が35歳以上である
生殖能力が落ち始める35歳以上の男性は、ブライダルチェックを検討してください。35歳以上の男性は、25歳未満の方に比べて、1年以内の妊娠率が半分にまで下がるといわれており、年齢の影響を受けることは明らかです。
男性は加齢により精巣機能が低下し、精液量や精子の運動率などが減少します。精子のDNA損傷も多くなるため、受精後にうまく胚が育たず、流産を引き起こす可能性も高まります。
35歳以上の男性は、ブライダルチェックで自身の精子の状態を把握しましょう。
喫煙している
喫煙の習慣がある男性はブライダルチェックを受け、不妊につながる要素がないか調べることをおすすめします。喫煙は、精子の数の低下や、形態異常の増加に関連することがわかっています。
タバコに含まれる多くの有害物質は、精子のDNAを損傷させ、正常な妊娠を阻害する要因です。電子タバコにも有害物質は含まれているため、紙タバコ同様に不妊につながります。
タバコは、主流煙より有害な副流煙を発生させます。副流煙の害を受けているパートナーは、不妊の原因になる卵子の染色体異常を起こす確率が上昇するため注意が必要です。
自身だけでなくパートナーの健康のためにも禁煙するとともに、ブライダルチェックを積極的に受けましょう。
男性ブライダルチェックの検査内容1|感染症
男性ブライダルチェックで行われる以下の2つの感染症検査について詳しく解説します。
・性感染症検査
・風しん抗体検査
感染症にかかっていると、不妊の原因になったり、生まれてくる赤ちゃんに大きく影響を及ぼしたりする可能性があります。検査結果に応じて適切な対処をすることで、妊娠・出産時のリスクを低下させられるケースもあるため、事前にしっかりと確認しましょう。
性感染症検査
男性のブライダルチェックでは、性感染症にかかっていないかを調べることが一般的です。男性側に性感染症があると、女性にうつす可能性があり、子どもにも悪影響を及ぼしかねません。
ブライダルチェックで検査される性感染症と、感染した場合に妊娠・出産に与えるリスクは、以下のとおりです。
性感染症 | 検査方法 | 感染によるリスク |
---|---|---|
HIV | 血液検査 |
・適切な対処をしないと15~30%が母子感染する ・適切な対処をすれば母子感染率は1%未満である |
梅毒 | 血液検査 |
・胎盤を通じて母子感染する ・死産・早産リスクが上昇する ・出生児に発疹・骨の異常・目の炎症・難聴のリスクが生じる |
淋菌感染症 | 尿検査 |
・男女ともに不妊の原因になる ・流産・早産・前期破水のリスクが上昇する ・赤ちゃんが結膜炎になる可能性がある |
性器ヘルペス | 血液検査 |
・新生児ヘルペスを発症する可能性がある ・新生児ヘルペスの全身型と中枢神経型では、後遺症や死亡のリスクがある |
性器クラミジア | 尿検査 |
・男女ともに不妊の原因になる ・流産・早産リスクが上昇する ・赤ちゃんが肺炎や結膜炎になる可能性がある |
B型肝炎 | 血液検査 |
・赤ちゃんに黄疸や発育不良が見られる可能性がある ・赤ちゃんが肝臓の病気になるリスクが高まる |
性感染症のなかには目立った症状が出ない病気もあるため、「健康だから大丈夫」と思わずに検査を受けることが大切です。
検査結果に問題があった場合は、早めに治療を受けてください。
風しん抗体検査
風しんに対する抗体の有無は、男性のブライダルチェックに欠かせない検査の1つです。
風しんとは、急性の発疹性感染症でウイルスによって引き起こされ、妊娠初期の妊婦がかかると、障害を持った子どもが生まれる可能性が高まります。飛沫感染で広がるため、妊婦だけでなく、周囲の人も風しんにかからないよう注意することが重要です。
風しんウイルスに対する免疫は、ワクチン接種を2回することで99%獲得できるといわれています。生まれた年代による、風しん予防接種の回数の違いは、以下のとおりです。
男性の生まれた年代 | 接種回数 |
---|---|
平成2年4月2日以降 | 2回 |
昭和54年4月2日~平成2年4月1日 | 1回 |
昭和54年4月1日以前 | 0回 |
しかし、30代後半~50代の男性の5人に1人、20代~30代前半では10人に1人が風しんの免疫を持たないといわれています。ブライダルチェックで「風しんの抗体がない」と診断された方は、妊活前に予防接種を受けましょう。
男性ブライダルチェックの検査内容2|精液・精子の状態
男性のブライダルチェックで行う精液検査では、精液や精子の状態を調べます。精液検査で調べられる主な項目は、以下のとおりです。
・精液量
・精子濃度
・精子の運動率
・精子の正常形態率
精液量が少なかったり、精子の数や運動率が低下していたりすると、妊娠しにくくなります。
精液の状態は、採取場所・禁欲期間・採取からの時間・体調などの条件によって変化しやすいものです。特に、自宅で採精した場合は、さまざまな影響を受け、精液所見が悪くなる傾向があります。
精液検査では、3日間の禁欲後、検査する病院内で採取することがおすすめです。院内採取ができない場合は、体温くらいの温度を保ちながら、検査する医療機関まで30分以内に運ぶことが推奨されています。
男性ブライダルチェックの検査内容3|超音波(エコー)検査
ブライダルチェックで超音波検査を受けると、男性不妊につながる原因を特定できるケースがあります。
超音波検査では、体の表面にプローブと呼ばれる器械をあて、精巣・陰のうの状態や精索静脈瘤の有無、血流の異常などを確認します。精索静脈瘤は不妊男性の約40%に認められ、精子の数や質の低下を引き起こしますが、治療により改善が望める病気です。
精索静脈瘤のほかにも、精巣腫瘍や陰嚢水腫といった病気が発見されることもあります。
超音波検査は基本的に痛みをともなわないため、患者さんにとって負担が少ない検査です。
男性ブライダルチェックの流れ
男性が行うブライダルチェックの流れは、以下のとおりです。
1.予約
2.受付・問診
3.血液・尿検査
4.精液検査・陰のうの診察とエコー検査
5.結果の説明
ブライダルチェックでは、2回通院することが一般的です。初回の受診では、受付と問診のあと、採血・採尿を行います。
2回目の通院時には精液検査と陰のうの診察とエコー検査を実施します。持参またはクリニック内で採取した精液をすぐに検査してもらい、血液・尿検査の結果とともに、医師から説明を受けましょう。精索静脈瘤が見つかった場合は手術を検討します。
ブライダルチェックは、泌尿器科や不妊専門クリニックで受けられます。
男性ブライダルチェックの費用相場
男性のブライダルチェックにかかる費用は、およそ3~5万円です。ブライダルチェックは健康診断と同じ扱いのため、公的保険は適用されません。クリニックが検査の金額を独自に決められる自由診療にあたり、全額自己負担です。
ただし、不妊検査を受けた場合に助成金を申請できる自治体もあります。ブライダルチェックで不妊の可能性が高いとわかった場合は、追加で受ける検査が助成金の対象にならないか調べてみましょう。
ブライダルチェックに含まれる検査項目は、クリニックによって異なります。クリニックを選ぶ際は、費用面だけではなく検査内容にも注意を払うことが大切です。
男性不妊が疑われる場合の追加検査
ブライダルチェックの結果から男性不妊が疑われる場合は、以下の検査を追加で行います。
・内分泌検査
・染色体・遺伝子検査
・精子精密検査
追加で検査を受けて不妊の原因を特定し治療できれば、妊娠率を高められるでしょう。
内分泌検査
採血による内分泌検査も、ブライダルチェックで不妊の疑いがある男性にすすめられる検査です。脳の下垂体や精巣から分泌される以下のようなホルモンに異常があると、男性不妊を引き起こします。
・卵胞刺激ホルモン(FSH)
・黄体形成ホルモン(LH)
・プロラクチン
・テストステロン(男性ホルモン)
・エストラジオール(女性ホルモン)
卵胞刺激ホルモンや黄体形成ホルモンは、性腺刺激ホルモンとも呼ばれ、精子やテストステロンの生成を促します。テストステロンは、性欲や勃起力などの性機能維持に重要な役割を持つホルモンです。
ホルモンが過剰に分泌されて起こる問題もあります。プロラクチンやエストラジオールが過剰に分泌されると、性腺刺激ホルモン(FSH・LH)の産生を阻害し、性機能や精子形成に障害をもたらしかねません。
染色体・遺伝子検査
ブライダルチェックで精液所見が悪かった場合は、必要に応じて染色体や遺伝子の検査を検討してください。
男性不妊を引き起こす染色体や遺伝子の異常でよく見られる状態は、以下の2つです。
・クラインフェルター症候群
・Y染色体微小欠失
クラインフェルター症候群は、X染色体が1つ以上多くなる男性特有の病気です。症状が軽い場合は発見が遅れ、思春期以降に第二次性徴が出現しなかったり、子どもを授かれず不妊検査を受けたりすることで判明します。
クラインフェルター症候群は、精巣萎縮や無精子症などを引き起こす原因となり、男性不妊と密接にかかわっています。
Y染色体微小欠失とは、Y染色体のAZF領域が欠けている状態です。Y染色体のAZF領域は精子形成に大きく関与しており、欠失すると無精子症や乏精子症が起こることがあります。
精子精密検査
男性ブライダルチェックでの精液検査結果に問題がないにもかかわらず、なかなか妊娠に至らない場合は、精子精密検査を受けましょう。
以下のような精子精密検査により、一般の精液検査より詳しく精子の質を調べられます。
検査名 | 概要 |
---|---|
DFI検査 | 精子のDNA損傷率(断片化率)が調べられる |
ORP検査 | 精子のDNAにダメージを与える酸化ストレスの程度が調べられる |
一般の精液検査では異常が認められなくても、精子精密検査を受けると精子のDNAの損傷がわかるケースもあります。精子のDNA損傷は、男性不妊や流産率の上昇といった悪影響を及ぼす可能性があるため、精密検査で詳しく調べることは非常に大切です。
精子の酸化ストレスやDNA損傷は、精索静脈瘤によって引き起こされることがあります。
男性不妊につながる精索静脈瘤は治療できる病気
男性不妊につながる精索静脈瘤は、治療により改善が見込めます。精索静脈瘤とは、精巣から心臓へ戻る血管で血液の逆流が起こり、陰のうや精索部分の静脈が拡張する病気です。
血液が逆流すると、精巣温度の上昇や血流の悪化を招き、精巣の萎縮・男性ホルモンの低下などが起こります。男性ホルモンの低下は、性欲の減退や勃起障害につながり、性交渉に問題が生じる恐れがあり注意が必要です。
精索静脈瘤は、精子の数や運動率の低下、精子DNA損傷の原因となります。結果として、パートナーが妊娠しにくくなったり、流産してしまったりすることにつながってしまうでしょう。
成人男性の15%、男性不妊患者さんの約40%に見つかる病気ですが、自覚症状が現れず気づかずにいる方も少なくありません。視診や触診、超音波検査で簡単に診断でき、治療することで精液所見の改善が見込めます。
当院では、独自の手術法である「日帰り顕微鏡下精索静脈瘤手術・ナガオメソッド」により治療を行います。逆流により拡張した静脈だけを結紮(けっさつ)・切離するため、一般的な手術法と異なり、問題のない血管・リンパ管・神経はすべて残せる点がメリットです。
高度な技術を持った医師が、内精逆流静脈だけでなく外精逆流静脈も結紮・切離し、再発率を低く抑えます。合併症のリスクもほとんどない(0.1%)ため、患者さんの身体的負担が少なく済むでしょう。
男性ブライダルチェック後のご相談は当院へ
男性ブライダルチェックで精液所見が悪く、精索静脈瘤が疑われる際は、当院へご相談ください。当院では、精索静脈瘤の検査や手術を含む、男性不妊の治療を実施しています。
当院独自の「日帰り顕微鏡下精索静脈瘤手術・ナガオメソッド」は、再発率が0.1%で、精液所見の改善率が87%という高い有効性が認められる手術方法です。局所麻酔を使い、1時間ほどで手術が終わり、入院の必要はなく日帰りができます。
精索静脈瘤は進行性の疾患で、放っておくと精巣の機能や精子の状態がしだいに悪化していきます。早期治療のために信頼できる医療機関をお探しの方は、ぜひ当院にお問い合わせください。
お問い合わせ・ご予約はこちら
〒104-0061 東京都中央区銀座2-8-19 FPG links GINZA 6F
この記事の執筆医師

永尾 光一 先生
銀座リプロ外科 院長
前・東邦大学泌尿器科教授
昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。
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