精巣上体摘出術が勧められるケースや手術の流れ・合併症のリスク - 銀座リプロ外科
COLUMN

陰のう・精巣の痛みが長く続き、精巣上体摘出術を検討している方に向けて、手術の方法やリスクを詳しく解説します。

精巣上体摘出術は、慢性精巣上体炎やパイプカットによる痛みが、薬や保存的治療で改善しないケースに勧められる手術です。原因を根本的に除去することで、痛みの解消が期待できます。

「痛みから解放されたい」「誰にも相談できない」という方は、ぜひ当記事で情報収集してください。不安が解消されたあとは、手術を受けるために信頼できる医療機関で受診することをおすすめします。

 

 

精巣上体とは?

精巣上体(せいそうじょうたい)とは、男性の生殖器の一部で、「副睾丸(ふくこうがん)」とも呼ばれる器官です。精巣の上から後ろ側にあり、形は細長く、頭部・体部・尾部の3つに分かれた構造をしています。

器官内では6mにも及ぶ細い精巣上体管がコイル状に折りたたまれ、尾部で精子の通り道である精管につながっています。

精巣上体の役割は、以下のとおりです。

1.精子の成熟
2.精子の貯蔵
3.精子の輸送

精巣で造られたばかりの精子は未熟で受精能力がなく、精巣上体の中を通り、数日~14日ほどかけて成熟します。成熟した精子は、尾部に一時的に蓄えられ、射精時に精巣上体から精管を通って前立腺へ運ばれます。

精巣上体は、男性の生殖能力において重要な役割を持つ器官です。

 

精巣上体摘出術が行われるケース

精巣上体摘出術は、精巣上体の一部または全体を切除する手術で、主に以下のような場合に行われます。

・慢性精巣上体炎
・精管結紮術(パイプカット)後に痛みが続く場合
・腫瘍

長く続く痛みは、精神的なストレスの大きな要因となり、生活に影響を及ぼすでしょう。手術によって痛みの原因を除去できれば、生活の質(QOL)を大きく回復させることにつながります。

慢性精巣上体炎

精巣上体摘出術が検討されるケースの1つが、慢性精巣上体炎を患い、痛みが続いている場合です。

慢性精巣上体炎とは、長期間にわたって精巣上体に炎症が続く状態です。性感染症・結核・尿路感染症といった細菌感染がきっかけで起こることがありますが、原因がはっきりしない場合も多く存在します。精索静脈瘤でうっ血状態だと慢性精巣上体炎が治りにくい場合もあります。

精巣上体炎

慢性精巣上体炎の症状は、以下のとおりです。

・陰のうの慢性的な痛みや違和感
・陰のうの赤み・腫れ・しこり

原因菌や強い痛みに対しては、抗生物質や消炎鎮痛薬による治療が行われることが一般的です。投薬で改善しなかったり、腫瘍や結核が疑われたりするケースでは、精巣上体摘出術が検討されます。

細菌が原因で発生している慢性精巣上体炎は、切除術によって感染の広がりを防げることがあります。細菌が原因ではない慢性精巣上体炎には、保冷剤や冷えピタで冷やしたり、入浴を控えシャワーを勧めることがあります。

精管結紮術(パイプカット)後に痛みが続く場合

精管結紮術(パイプカット)の後遺症として痛みが続く場合も、精巣上体摘出術が行われるケースです。

パイプカットとは男性の避妊手術のことで、精管を切断したり縛ったりし、精子が射出されないようにする方法です。術後に精巣の痛みを訴える方は少なからず存在し、手術を受けた患者さんの3分の1以上にも及ぶといわれています。

パイプカット後の痛みの原因は人によって異なるものの、次のように考えられています。

・パイプカットの際に精管周辺の組織・神経が傷ついた
・手術部位が感染を起こした
・精子の通り道が遮断されて精巣上体に負荷がかかる
 (特に精巣上体近くでパイプカットされると精巣上体管の内圧が高くなります)。

数年にわたって痛みが続くと、仕事や性生活に大きな支障をきたしてしまうでしょう。精巣上体の切除により、症状の改善が期待できます。

腫瘍

精巣上体に良性腫瘍ができた場合にも精巣上体摘出術が検討されます。ただし、精巣上体に腫瘍ができる頻度は高くありません。

精巣上体にできる腫瘍の症状としては、腫れやしこりが挙げられ、自分で触って発見する方も多く見られます。悪性腫瘍との鑑別を含め、確定診断には以下のような検査が必要です。

・超音波検査
・CT・MRI検査
・組織検査
・腫瘍マーカーの測定

精巣内にできる腫瘍は、大部分が悪性であるといわれています。精巣上体に悪性腫瘍が発見された場合は、進行を防ぐために、すみやかな精巣全体の摘出が必要です。

 

精巣上体摘出術について詳しく解説

精巣上体摘出術について、手術の流れや合併症のリスクを解説します。詳しく知り、手術に対する不安を解消しましょう。

注意すべきは、精巣上体は精子の通り道ですので、妊活の予定や希望がある場合は行えません。また、精巣上体を圧迫した時に限局した痛みがあれば良いのですが、痛みの部位がはっきりしない場合は、慢性前立腺炎、精索静脈瘤、神経痛なども考えられ精巣上体摘出は行いません。

出血や感染といった合併症のリスクは、どのような手術にも少なからず存在し、神経質になる必要はありません。ただし、合併症を予防したいなら、手術の経験が豊富で治療成績の優れた医師・医療機関を選ぶことが1つの手です。

手術の流れ

精巣上体摘出術では、まず麻酔が行われます。陰のう部のみの局所麻酔での手術が一般的ですが、症状や医療機関によっては全身麻酔や硬膜外麻酔、脊髄麻酔が使用されることもあります。

手術の流れは、以下のとおりです。

1.陰のうの皮膚を小さく切開して精巣と精巣上体を確認
2.精管を血管から剥離
3.精巣上体を剥離
4.精巣を温存しつつ精巣上体のみを切除
5.精管や血管との接続部分を結紮・止血
6.皮膚を縫合

入院が必要かどうかは、医療機関が採用している麻酔の方法や術式によって異なります。「仕事が忙しく長くは休めない」「休むことで手術が知られないか心配」という方は、日帰りが可能な手術を行なっている病院を選ぶと良いでしょう。

合併症

ほかの多くの手術と同様に、精巣上体摘出術には、以下のような合併症が起こるリスクがあります。

合併症 詳細
出血 傷口からの出血
血腫 ・陰のう内に血が溜まって腫れることがある
・多くは自然に吸収されるが、大きい場合は処置が必要となる
感染 ・手術の傷口から感染することがある
・術後に抗生物質を予防投与する場合もある
痛み 手術で神経が損傷すると術後も痛みが続く
男性不妊 精巣上体は精子の通り道なので、妊活の可能性がある場合は行わない

 

両側の精巣上体を摘出した場合は男性不妊となります。自身が子どもを望んでいるかの意向を、手術前に主治医へ伝えておくことが重要です。

 

精巣上体摘出術と似ている手術

以下の手術は精巣上体摘出術と似ており、混同してしまう方もいるでしょう。

・高位精巣摘除術
・精液瘤手術

陰のう・精巣周辺を処置する点は精巣上体摘出術と共通していますが、目的・対象疾患・手技がそれぞれ異なります。違いを詳しく解説します。

高位精巣摘除術

高位精巣摘除術は、精巣上体摘出術と似ている手術です。精巣をまるごと摘出する手術で、主に精巣腫瘍(精巣がん)の場合に行われる方法です。

鼠径部を切開し、手術中にがん細胞がちらばらないよう、精巣の血管を縛り、精巣・精巣上体・精索をすべて摘出します。

高位精巣摘除術には、以下の目的があります。

・がんを根治させる
・摘出した組織の病理検査により腫瘍のタイプ・悪性度を診断する

精巣がんは進行が速いため、すみやかに精巣を摘出し、転移を防ぐことが必要です。転移があれば、術後に化学療法や放射線治療が行われます。

精巣摘出後の見た目が気になる場合は、術後に人工睾丸(偽睾丸・精巣インプラント)を挿入する方法があります。

精液瘤手術

精液瘤手術も、精巣上体摘出術と似ている手術です。

精液瘤とは、精巣上体自体・近くに精液が溜まった袋状の腫瘤です。通常は良性で、触るとしこりとして感じられます。軽度の場合は経過観察が選ばれることもありますが、見た目が気になったり、痛みがあったりする方には治療が行われます。

精液瘤に針を刺して内部の液体を吸引する方法は、袋が残るため再発の恐れがあり、完治には手術が必要です。手術では、陰のうを切開し、袋を破らないように注意しながら、精巣・精巣上体と完全に分離したうえで精液瘤を摘出します。

精液瘤は精巣上体管の一部なので摘除すると男性不妊を引き起こすリスクがあります。一般的に、子どもを望んでいる男性には、精液瘤の手術は勧められません。

 

当院の特徴

顕微鏡下精巣上体摘出術を実施している当院の特徴は、以下のとおりです。

・泌尿器科疾患の手術実績が豊富
・顕微鏡手術のスペシャリストが在籍
・局所麻酔、日帰り手術で、自費診療です
・手術用顕微鏡を使用し、動脈などの大事なものを温存できます

繊細な技術を必要とし、自身のQOLに深く関わる泌尿器科の手術を受ける際は、信頼できる病院選びが非常に重要です。当院で精巣上体摘出術を受けるメリットを確認しましょう。

泌尿器科疾患の手術実績が豊富

当院では、精巣上体摘出術のほかにも、以下のような泌尿器科疾患に対する手術を多数実施しています。

・精索静脈瘤の手術
・陰茎湾曲症の手術
・パイプカットおよびパイプカット再建手術
・陰茎プロステーシス手術(難治性ED治療)

男性不妊の原因である精索静脈瘤の治療では、「日帰り顕微鏡下精索静脈瘤手術・ナガオメソッド」という独自の手法を採用しています。

日帰り顕微鏡下精索静脈瘤手術・ナガオメソッドは、高倍率の顕微鏡を使って大切な動脈・神経・リンパ管をすべて温存し、逆流している静脈だけを処置する方法です。

従来の術式では処置していなかった外陰部逆流静脈(外精逆流静脈)まで結紮・切離するので、再発率を0.1%まで抑えられます。治療後は、87%の患者さんの精液所見が改善し、男性不妊で悩んでいたご夫婦でも自然妊娠が可能となったケースがあります。

「陰部を見せるのは恥ずかしい」「痛みをすぐに何とかしてほしい」という方は、泌尿器科手術の豊富な経験を持つ当院の医師へお任せください。

顕微鏡手術のスペシャリストが在籍

顕微鏡手術のスペシャリストが在籍していることも、当院の特徴です。太さ0.3〜0.5mm程度の細い血管やリンパ管を縫合する、「スーパーマイクロサージャリー」と呼ばれる分野の専門家が手術を担当します。

スーパーマイクロサージャリーは、高倍率の顕微鏡をのぞきながら0.05mmの専用針を操作する方法で、研鑽を積んだ医師のみが行える手術です。当院の精巣上体摘出術でも、顕微鏡を用いて細かく確認しながら処置します。

高度なスキルを持つ術者が担当することで、手術とは関係のない血管や神経を傷つけずに温存でき、合併症のリスクを抑えられます。

 

精巣上体摘出術は当院へご相談を

精巣上体摘出術をお望みなら、当院へご相談ください。

当院は、高倍率の手術用顕微鏡を使った顕微鏡下精巣上体摘出術を提供しています。局所麻酔で行えるので入院の必要はなく、日帰りが可能です。

顕微鏡下精巣上体摘出術は質の高い設備・技術をともなう術式のため、保険適用ではなく自費診療で行なっています。スーパーマイクロサージャリーの分野で研鑽を積んだ医師が処置し、合併症のリスクを抑えます。

精巣に耐えがたい痛みがあり、精巣上体摘出術をご希望の方は、ぜひ下記フォームから初診をご予約ください。

精巣上体摘出術のために初診を予約する

この記事の執筆医師

永尾 光一 先生

永尾 光一 先生

東邦大学 医学部教授(泌尿器科学講座)
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

所属医療機関

一覧ページに戻る

診療・手術一覧

この記事を見た人はこんな記事も見ています

「質の高い治療を受けて精索静脈瘤を確実に治したい」と、自由診療という選択肢をお考えではありませんか。 自由診療は、決して病院のお金儲けの手段ではなく、公的医療保険制度に含まれない質の高い治療を受けるた…

続きを読む

精索静脈瘤とは、精巣(睾丸)周辺の静脈が拡張し、こぶ状に膨らんだ状態を指します。陰嚢(いんのう)の表面に血管がうねうねと浮き出て見えたり、立位での陰嚢の膨隆感・違和感が生じたりするのが典型的です。精…

続きを読む

  永尾医師について 本日は男性不妊症の原因の一つである精索静脈瘤と、その治療における第一人者である永尾光一先生にお話をお伺いします。 先生、本日はよろしくお願いいたします。まずは、先生のこれまでの…

続きを読む

男性不妊症の原因の一つとして、「精子の酸化ストレス」が注目されるようになりました。 精子が酸化ストレスを受けると、パートナーの受精率の低下や、流産率の上昇を引き起こしてしまいます。 精子に悪影響を及ぼ…

続きを読む

ご予約・お問い合わせ