男性不妊治療・手術の前に行うB型肝炎検査について | 男性不妊治療は銀座リプロ外科            
COLUMN

男性不妊治療・手術の前に行うB型肝炎検査について

 

昨今、晩婚化の影響や医療の進歩によって、不妊治療を行う方が増えてきました。
まだ多くの方は、女性側に不妊の原因があり、女性が治療するものと認識されています。しかし実際は、男性側に原因があることも多く、治療によって不妊を改善することが可能です。

今回は、男性不妊治療の検査で行うB型肝炎について紹介していきます。
当院では、手術をお受けいただく患者様に医療安全上お受けいただいております。

B型肝炎は感染力が非常に強く、毎年新規の感染者が報告されている病気です。B型肝炎の症状や経過のほか、不妊治療の前にB型肝炎の検査を行うべき理由についても記載します。
当記事が、不妊治療を悩まれている方のお力になれば幸いです。

 

男性不妊・精索静脈瘤にお困りのかたへ
男性不妊の40%精索静脈瘤が原因

男性不妊の40%にある精索静脈瘤は、精巣やその上の精索部(精管、血管、神経、リンパ管などを覆う膜)に静脈瘤(じょうみゃくりゅう・静脈の拡張)が認められる症状のことを指します。一般男性の15%に認められ、男性不妊症患者の40%がその疑いであるとされています。

B型肝炎とは?

B型肝炎(HVB)とは、B型肝炎ウイルスによって肝炎を起こす病気です。

ウイルスが含まれている血液や体液が体内に入ることによって、肝臓に感染して炎症(=肝炎)を起こします。ウイルスが長く肝臓にすみつくことで、肝臓ガンや肝硬変にもなる感染力の強い病気です。

B型肝炎は感染した時期やその時の健康状態によって、一過性のもの(急性肝炎)と生涯継続するもの(慢性肝炎)に分けることが出来ます。B型肝炎は感染していた母親から産まれることでの母子感染(垂直感染)と、感染した人の血液・体液の付着や性行為からの感染(水平感染)がありますが、母子感染は慢性肝炎になりやすいのでより注意が必要です。

B型肝炎の感染者は世界で3億5000万人、日本でも約130~150万人が感染していると推測されています。高齢者の場合は死に至ることもあるほど、重篤な病気です。

 

B型肝炎の症状について

B型肝炎を大きく分けると、急性肝炎と慢性肝炎の2種類になります。一般的に出現する症状は、疲労感・黄疸・食欲不振などですが、急性肝炎と慢性肝炎では異なる症状もあります。

 

急性肝炎

急性肝炎は、数週間から半年ほど肝炎が持続した状態のことをさします。急性肝炎の代表的な症状は以下の通りです。

  • ・発熱
  • ・全身の倦怠感
  • ・食欲不振
  • ・嘔吐
  • ・黄疸
  • ・褐色尿
  • ・関節痛
  • ・かゆみを伴う蕁麻疹

症状が軽いケースは感染の自覚がない場合もありますが、中には重症化してしまい、肝不全などの劇症肝炎になる場合もあります。感染者の中にはD型肝炎にもかかっていることがあり、併発している場合は症状がより重いです。

 

慢性肝炎

慢性肝炎は、半年以上肝炎が続く状態をさします。慢性肝炎の場合は、ほとんどの人が無症状です。しかし場合によっては、以下のような症状が出ることもあります。

  • ・全身のだるさや疲れ
  • ・食欲不振
  • ・褐色尿

無症状でも長時間放置していると、肝硬変や肝臓ガンなどを引き起こす可能性があります。

慢性肝炎の患者の多くは、母子感染者と5歳以下の低年齢期での感染者です。中には急性肝炎からの発症者もまれにいて、急性肝炎を発症した年齢が低いほど慢性肝炎になりやすくなります。

しかし健康な成人でも、5%未満とごくわずかですが陽性者は慢性化してしまうので、適切な治療や検査が必要です。

 

症状と経過について

症状と経過について

B型肝炎感染後の経過は、感染した年齢によって大きく変化します。

急性肝炎の潜伏期間は1~6か月です。症状が出ないこともありますが、倦怠感や食欲不振などの不調を伴うこともあります。数日後には褐色尿や黄疸などの症状も出現しますが、多くは数週間で回復期に入ります。

しかし約1%は劇症化してしまい、その内の約6割程度が亡くなっているのが現状です。
また、急性肝炎の一部の感染者は、慢性肝炎になることもあるので注意が必要になります。

一方、出産時や乳幼児期に感染した場合は、体の中のウイルスを病原体と認識することが出来ずに、体内のウイルスは持続して存在します。この状態を無症候性キャリアといい、無症候性キャリアのときは肝炎の症状は出現しません。

その後、成長とともに免疫機能が発達してくると、体内のウイルスを排除しようと免疫反応を起こして、肝炎を発症します。一般的には10代~30代のころに症状が出ますが、急性肝炎のような体の不調は感じられにくいです。その後ほとんどの場合は肝炎が治まっていき、非活動性キャリアに移行します。

1度肝炎を発症しても、その後ウイルスが減少して炎症が鎮静化した非活動性キャリアになれば、病気の進行や肝臓ガンの発症は低下すると言われています。しかし10~15%ほどの人は、肝炎の状態が持続する慢性肝炎になります。

B型肝炎は、出産時や乳幼児期の感染の他に、ごくわずかですが大人の感染でも慢性化してしまう病気です。慢性肝炎になると、自覚症状がないまま肝硬変や肝臓ガンを発症することもあるため、定期的な検査や治療が必要になります。

 

不妊症治療・手術前に何故行う?

B型肝炎感染者の多くは、母子感染によるものです。

赤ちゃんは産道を通って産まれてくるので、B型肝炎に感染している母親から産まれてくる赤ちゃんは、ほぼ100%の確率でB型肝炎に感染すると言われています。そのため、B型肝炎感染者から産まれた赤ちゃんには、出産後に適切な治療が必要です。

しかし母子感染だけでなく、不妊治療に関しても、B型肝炎の発見や治療が必要だということが分かっています。

2014年に、B型肝炎への感染が受精能力を下げる恐れがあるという記事が発表されました。
記事には、体外受精や胚移植を行うカップルを対象に調査を実施し、陽性群224組に対して、男女ともに陰性の対照群(B型肝炎以外の条件が等しいグループ)448組を比較した結果が記載されています。

調査グループ詳細

  • ・女性が陽性:77組
  • ・男性が陽性:136組
  • ・男女ともに陽性:11組
  • =陽性群224組

  • ・男女ともに陰性:448組
  • =陰性群448組

調査の結果、

  • ・受精卵の質:女性が陽性の場合低下する
  • ・精子正常形態率:陽性群のほうが低い
  • ・不妊症の治療期間:陽性群のほうが長い
  • ・受精率:陰性群が84.3%なのに対して、陽性群は76.6%

と発表されました。

記事には、B型肝炎陽性群と陰性群の臨床妊娠の割合に有意差がなかったことも記載されています。

上記はあくまでも研究結果になりますが、こういったデータの存在は大きいですよね。
この記事だけで結論付けるのは危険なことですが、この結果を見ると、B型肝炎の感染が不妊の原因になる可能性を示唆できるでしょう。

赤ちゃんを守るためにB型肝炎の検査や治療は必要なことですが、妊娠を考えているご夫婦にも、B型肝炎の検査や治療は重要です。

 

その他に行うスクリーニング検査について

不妊治療を始める前に、現在の健康状態を知るためにも、スクリーニング検査(術前検査)を行います。このスクリーニング検査では、不妊の原因になりえる病気もチェックしているので、治療の前に必ず行う検査です。

検査は女性と男性で調査の項目が大きく異なります。男性のスクリーニング検査で調べる主な項目は以下の通りです。

  • ・精液検査
  • ・精巣超音波(精索静脈瘤検査)
  • ・B型肝炎
  • ・C型肝炎
  • ・HIV
  • ・梅毒
  • ・ホルモン検査
  • ・前立腺腫瘍マーカー検査
  • ・遺伝検査 …など

検査は血液検査のほか、エコーや触診で行うものもあります。クリニックによって行う検査は異なるので、事前に確認が必要です。

上記に挙げた中でも、精液検査は最も基礎的な検査です。この検査で、精子の量や運動率などを調べます。また、精液所見はその日の体調によっても変動することがあるので、複数回検査することが必要です。

一方、女性のスクリーニング検査項目は以下の通りです。

  • ・B型肝炎
  • ・C型肝炎
  • ・梅毒
  • ・HIV
  • ・風疹抗体
  • ・子宮頸がん検査
  • ・ホルモン検査
  • ・経膣超音波検査
  • ・子宮卵管造影検査
  • ・排卵検査
  • ・クラミジア抗体
  • ・甲状腺機能
  • ・卵巣予備脳
  • ・テストステロン測定 …など

男性に比べて女性は検査項目が多く、検査日数もかかります。検査が複数回行われるのは、月経によってホルモンの分泌量が変化するのが原因です。一般的には、月経期・卵胞期・排卵期・黄体期に通院が必要で、それぞれの時期で検査項目が異なります。

クリニックによっては上記の項目のほかに、子宮頸管粘液検査やヒューナーテストなども行うことがあるので、女性は男性に比べてかなり時間がかかってしまいます。しかしどれも意味のある検査なので、不妊治療を円滑に進めるためにも、スケジュールを守って検査を受けましょう。

 

男性不妊治療・精索静脈瘤手術は銀座リプロ外科へ

不妊治療は、女性が原因と思われていることも多いですが、中には男性に疾患があることもあります。男性側の不妊原因の約8割は、精子の数が少ない・動きが悪いなどといった造精機能障害です。

そして造精機能障害の大半は、精索静脈瘤が原因であるとわかっています。精索静脈瘤は、精巣の静脈が逆流してしまって、精巣の周りにコブのようなものが出来てしまう病気です。
しかしこの病気は手術によって治療ができ、多くの場合、術後に精液所見が改善されます。

不妊治療を成功に導くためにはスピードが大切です。女性の妊娠率には年齢が大きく関わってきます。不妊治療を行う際は、女性だけでなく男性も検査をすることがおすすめです。
検査によって治すべき疾患の有無や、現在の健康状態を知ることで、より早い不妊改善へと繋がります。

銀座リプロ外科では、治療可能な男性不妊の原因に特化したクリニックです。完全予約制の上、プライバシーに配慮した個室空間なので、他者を気にせず診察が可能です。
また、銀座リプロ外科には、豊富な経験と高度な技術があります。

精索静脈瘤の診断や手術の第一人者が担当する当院だからこそできる、精索静脈瘤の日帰り手術も行っています。お忙しい会社員の方も、遠方にお住まいの方も、不妊治療のお悩みをお持ちの方はぜひ1度、当院にご相談ください。

精索静脈瘤の手術に関して詳しくはこちらをご覧ください。

この記事の執筆医師

永尾 光一 先生

永尾 光一 先生

東邦大学 医学部教授(泌尿器科学講座)
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

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