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精液・精子が少ない原因と対処法、自然妊娠はできる?

不妊治療では、男女ともに検査を行うことが大切です。検査の結果、何らかの異常が認められた場合、早い段階で治療を行えば妊娠の可能性が高まります。

男性の場合は、精液検査を行います。精液の量が少ない、精子の数が少ないなど精液所見が悪い場合は、原因を探り、精液所見の改善に向けて治療を行います。

 

精液が少ないとどうなる?

WHOの調査によると、不妊カップルのうち女性に原因がある37%、男性に原因がある8%、女性男性双方に原因がある35%、原因不明が5%となっています。不妊症と聞くと女性の問題と捉えられがちですが、双方に原因がある場合が約半数あり、男性不妊も珍しいことではないのです。

男性不妊は原因不明の場合もありますが、精液検査の結果、精液が少ない、精子が少ない、運動率が悪い等の所見が見つかることもあります。

では、精液や精子の量が少ない状態とは、具体的にどのくらいのことを指すのでしょうか。精液量の正常値は、1度の射精で平均およそ2mlとされており、この量より極端に少ない場合は、逆行性射精が疑われます。

また精子量は、1mlあたり6,000~8,000万匹が正常値で、自然妊娠するためには1,600万匹以上必要とされています。これはWHOの定めた基準で、妊娠するために必要な精子量の最低ラインとされている数字です。

しかし、この基準は妊娠できたカップルで最低量だったのが1,600万匹という意味であり、自然妊娠を希望する場合は、一般的に1mlあたり5,000万匹以上精子が必要といわれています。

精液所見は精子の量・運動率によって下記のように分類されます。

精子量(1mlあたり) 運動率
正常値 6,000~8,000万匹以上 70~80%
軽度 1,600万匹程度 50%程度
中等度 500~1,600万匹以下 20~40%
重度 500万匹以下 10%以下
無精子症 0 0

 

これらの所見は、採取した精液を顕微鏡で確認しわかる事ですが、ご自分の目で見て、精液が白く濁っていない、透明に近い場合も精液中の精子が少ない可能性があります。

妊娠を成立させるためには、運動率が高い多くの精子が必要なため、精子の数が少ない場合は、不妊の原因となる事があるのです。

 

精液が少ない原因

射精しているにもかかわらず精液量が極端に少ない場合は、逆行性射精が疑われます。

逆行性射精とは射精障害のひとつで、本来なら射精時に閉じている膀胱の一部が開いたままの状態になり、精液が膀胱に逆流してしまう症状です。精液が陰茎から外に出ず、逆方向の膀胱へ流れてしまうため、射出される精液量が減るか、まったく出ない場合もあります。

逆行性射精の最も多い原因は、前立腺肥大症の治療で行う前立腺手術による神経障害だといわれています。また糖尿病や腹部・骨盤の手術が原因で発症する場合もあります。

射精感があるのに精液がまったく出ない場合は、射精後の尿を検査し、精液が混じっているかどうかで診断します。

 

精液が少ない場合の対処法と自然妊娠について

精液が少ない場合の対処法と自然妊娠について

精子は、精液の中に含まれている生殖細胞のことで、射精される際のどろどろとした液体は、精漿(せいしょう)とよばれる成分です。精液の中のおよそ2~5%しか精子の量はなく、90%以上がこの精漿です。

精液が少ないと当然精子の量も少なくなります。妊娠を希望する場合は、精液の量にも着目しておく必要があります。

精液には、次の3つの役割があると考えられています。

  • 精液に含まれる糖類が、精子の運動のためのエネルギーになる
  • 受精に向かう際に通る膣内環境(酸性)から、精液のアルカリ性が精子を守る
  • 乾燥から精子を守る

自然妊娠のためには、精子の数はもちろん、精液の量も多いほうが受精の成功率は高くなるといえるでしょう。

精液量を増やすためには、食生活、睡眠など生活習慣の改善や、運動、ストレスの軽減など、日常生活の見直しが効果的です。これらは、精液所見を改善する方法と同じですので、精液の量が改善されれば、精液所見の改善もみられるでしょう。

 

精子が少ないとどうなる?

前述のように、精子の数が少ないと男性不妊の原因になります。精子の数が少ない場合を「乏精子症」、精子が全くいない場合を「無精子症」といいます。

乏精子症

精子の数が一般的な数値よりも少ない状態をいいます。基本的には精液1ml中に精子が1,600万未満の場合です。また、精子の数と運動率の低さは併発している場合が多く、乏精子症は精子不動症も認められる場合が多いといわれています。

無精子症

無精子症は、精液の中に精子が全く見られない状態。一般男性の約100人に1人、男性不妊症の方では約10人に1人という割合で認められます。

精子を作ることはできていても、通路が詰まっていて出てこられない場合(閉塞性無精子症)と、精子が上手く作られていない場合(非閉塞性無精子症)の2つのパターンがあります。

自然妊娠を希望する場合は、精子の数は1ml中に5,000万匹以上が望ましいようです。乏精子症・無精子症の原因については不明な場合も多いですが、先天的な原因(遺伝的な要因)と、後天的な原因(ストレス・喫煙・過度のアルコール摂取・肥満・がん治療の後遺症など)が報告されています。また、精索静脈瘤も精子の数が少なくなる原因のひとつと考えられています。

不妊に悩んでいる場合は早期に受診し、適切な治療を受けることで改善がみられる可能性が高くなります。

精索静脈瘤については、こちらで詳しく解説しています。合わせてご覧ください。

 

精子が少ない原因

精子が少ない原因は、大きく分けて2つあります。

造精機能障害

精子を作る機能に問題があり、精子の数や運動率の低さなど、精子の機能が弱まってしまう症状です。男性不妊のおよそ84%は造精機能障害だと言われています。

原因はわからないものが半数近くあるものの、精索静脈瘤が36.6%、ホルモン低下が1.2%となっており、いずれの場合も治療することで改善が見込めます。

精索静脈瘤の詳しい治療方法についてはこちらもご覧下さい。

精子の質が良くない場合、自然妊娠が難しくなり、人工授精や顕微鏡受精など次のステップを検討する必要が出てきます。

精路通過障害

精路通過障害とは、精子を作る機能に問題はないものの、精子が出てくる通路(精路)に何らかの異常が見られ、正常な射精が妨げられている状態のことです。

原因としては、クラミジアなどの性感染症による精巣上体炎や精管の炎症で、通路がふさがってしまうことが挙げられます。そのほか、先天的も精管が欠損している、尿道炎、射精管閉鎖症、鼡径ヘルニアなどが原因となっている場合もあります。

精路通過障害は、精路再建術などにより改善できる場合がありますが、原因によって治療法が異なるため、妊娠を希望する場合は早期に受診することがおすすめです。

 

精子が少ない場合の対処法と自然妊娠について

乏精子症の場合、精子の量によって、軽症・中等症・重症に分けられ、それぞれ治療法が異なります。正常値を6,000~8,000万匹以上(精液1mlの内)とし、それ以下の場合を下記のように分類しています。

軽度(1600万匹程度) 中等度(1,600万匹以下) 重度(500万匹以下)
治療法 人工授精 体外受精 顕微授精

 

自然妊娠する上での最低ラインは、軽度と言われており、中等度になると自然妊娠は難しくなります。重度の場合はさらに進んだ顕微授精で治療を行います。

 

精索静脈瘤の手術について

乏精子症の原因となる精索静脈瘤は、手術による治療が可能です。手術にはいくつか種類がありますが、一般的には精巣静脈高位結紮術と、日帰り顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術が行われます。

銀座リプロ外科では、精索静脈瘤手術の第一人者である永尾教授が開発した、顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術ナガオメソッドによる手術を行っています。

ナガオメソッドでは局所麻酔で手術を行い、高い技術により日帰り手術が可能です。逆流している静脈のみを結紮し、精管・動脈・リンパ管・神経、など温存できる大事な器官はすべて温存するため、再発率が0.5%と非常に低い結果となっています。

また、術後の精液所見の改善も87%と高い結果が見られ、精子量は顕微鏡レベル(精子の数が500万以下)の場合で平均18倍増、体外受精レベルで4.3倍、人工授精レベルで2.5倍、タイミングレベルでも1.8倍と改善しています。これにより、術後は体外受精や顕微鏡受精の成功率も上がります。

ナガオメソッドでは、ドップラー(超音波血流計)を用います。ドップラーを使うと、動脈と静脈の血音を聞き分けることができ、大切な動脈をすべて残すことが可能。逆流している静脈だけを結紮するナガオメソッドにおいて必要不可欠な機械です。

精索静脈瘤の手術を行うことにより、精液所見の改善のほか、精巣機能の悪化予防、精子のDNA・染色体の質の改善、男性更年期の予防、陰のうの痛みの改善に効果が期待できます。

 

まとめ

不妊カップルのうち、約半数が男性にも原因があることがわかっています。妊娠を希望するなら、早い段階で男女ともに検査を受けるのがおすすめです。

また、精索静脈瘤の手術は日帰りで行えます。手術時間も約1時間半程度なので、男性不妊でお悩みの方は精索静脈瘤の手術をご検討ください。

完全予約制

診察は、完全予約制となっております。下記予約サイトよりご予約の上、診察にお越しください。

費用

診察は、完全予約制となっております。下記予約サイトよりご予約の上、診察にお越しください。

初診料 5,500円
精索静脈瘤検査 5,500円
日帰り顕微鏡精索静脈瘤手術
(ナガオメソッド)
440,000円~

 

費用について詳しくはこちらをご覧ください。


施術の紹介

精索静脈瘤とは?症状や検査方法、治療・手術方法を解説

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この記事の執筆医師

永尾 光一 先生

永尾 光一 先生

東邦大学 医学部教授(泌尿器科学講座)
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

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