「コンドーム以外で避妊できないか」と、男性主体で行える避妊法をお探しではありませんか。
男性ができる避妊法のうち、確実性の高い方法がパイプカットです。パイプカットは、パートナーに一切負担をかけずにほぼ100%避妊できます。妊娠の心配をせずに自然な性生活を楽しめるため、男女ともに満足度の高い選択肢だといえるでしょう。
本記事では、男性ができる避妊法を紹介します。パイプカットのメリットも解説し、手術に際して多くの方が抱く疑問にお答えするので、ぜひ参考にしてください。
- 男性不妊・精索静脈瘤にお困りのかたへ
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男性不妊の40%にある精索静脈瘤は、精巣やその上の精索部(精管、血管、神経、リンパ管などを覆う膜)に静脈瘤(じょうみゃくりゅう・静脈の拡張)が認められる症状のことを指します。一般男性の15%に認められ、男性不妊症患者の40%がその疑いであるとされています。
男性ができる避妊法の種類
男性ができる避妊法として、以下の3種類を紹介します。
・コンドームの使用
・リズム法
・パイプカット
避妊法ごとに特徴やメリット・デメリットが異なります。理想的な性生活を送るためには、自分に合った避妊法を取り入れることが大切です。
コンドームの使用
コンドームは、男性の代表的な避妊法として広く認知されています。比較的安価で簡単に手に入る一方で、正しく使用したとしても必ず避妊が成功するわけではありません。
性交時にコンドームを装着した際の避妊失敗率は、以下のとおりです。
コンドームの装着方法 | 避妊失敗率 |
---|---|
理想的な使い方 | 約2% |
一般的な使い方 | 13~18% |
一般的な使い方で避妊失敗率が上がる理由は、コンドームが正しく着けられていなかったり、装着するタイミングが悪かったりするためです。保管する環境が品質の低下を招くこともあり、破損の原因になります。
男女一方のゴム(ラテックス)アレルギーによって、コンドームの装着が難しい場合もあります。コンドームを装着すると、不快感が生じて性交が楽しめないカップルもいるでしょう。
コンドームは手軽に取り入れられる避妊法ですが、確実性や使用によるストレスといった面で、少なからずデメリットが存在します。
リズム法
男性がパートナーとともにできる避妊法の1つに、リズム法があります。リズム法とは、以下のような手段で女性の月経周期・排卵日を予測し、妊娠しやすい時期の性交を避けて避妊する方法です。
方法 | 排卵日の予測方法 |
---|---|
カレンダー法 | 月経周期を把握して計算する |
頸管粘液法 | 頸管粘液(おりもの)の状態を観察する |
基礎体温法 | 基礎体温の変動パターンを見る |
3つの方法を併用し、総合的に判断するやり方を「症状体温法」と呼びます。
排卵期には、女性ホルモンの影響でおりものの状態に変化が起きます。排卵期のおりものは、透明で量が増え、伸びが良くなるといった特徴があり、日頃からよく観察することで判別可能です。
基礎体温を避妊に活用するためには、数ヵ月分の記録を残し、パートナーの傾向を知ることが大切です。基礎体温の低温期と高温期のリズムがわかれば、おおよその排卵日を予測できます。
リズム法は、理想的な条件下で避妊が行われた場合の失敗率は1~9%ですが、ルールが適切に守られない状態では約25%まで跳ね上がります。確実性の向上には、基礎体温やおりものの記録・観察を毎日パートナーにしてもらい、性交可能期間を守ることが大切です。
排卵日は女性の体調やストレスの影響でずれやすいので、わずかな変化をキャッチし、慎重に判断する必要があります。
パイプカット
男性が避妊手術を受けて妊娠を防ぐ方法が、パイプカットです。パイプカットとは、陰のうの中にある精管を切断して縛り、精子の通り道をふさぐ手術です。術後は射精した精液の中に精子が混入しなくなるため、ほぼ100%の確率で避妊できます。
ただし、精度の高い手術を受けなければ慢性的な痛みや精力低下の恐れがあり、医師なら誰でもできるわけではありません。パイプカットは切開をともなう手術で、副作用や合併症のリスクもあります。
一度遮断した精管を元に戻すことは難しいといわれているので、メリット・デメリットを理解したうえで、パートナーと相談しながら手術を検討しましょう。
男性の避妊法|パイプカットを選ぶメリット
男性の避妊法であるパイプカットには、以下のようなメリットがあります。
・避妊のためにコンドームを使用する必要がない
・妊娠の不安を軽減して性交を楽しめる
パイプカットは、男性が行う避妊法のなかでも高い効果が望める方法です。手術を受ければ、避妊効果以外のメリットも感じられます。
避妊のためにコンドームを使用する必要がない
パイプカット後の男性は、性交時にコンドームで避妊する必要がありません。コンドームを使わないことによるメリットは、以下のとおりです。
・肌の触れ合いが直接的になり感度が高まりやすい
・性交中のコンドーム脱落・破損による避妊失敗の心配がない
・装着の手間がなくなり自然な流れで挿入できる
・コンドーム購入の手間や費用がかからなくなる
パイプカットは、手術を受ける際の一時的なコストは必要ですが、長期的に見ると投資対効果の高い避妊法だといえるでしょう。
妊娠の不安を軽減して性交を楽しめる
パイプカットは非常に優れた避妊効果があるため、妊娠の不安を軽減して性交を楽しめます。
コンドームやリズム法といった避妊法は、すぐに取り組める反面、失敗のリスクをあわせ持っています。性交後に「失敗していたら」と不安になるカップルもいるでしょう。ピルやIUD・IUSなど女性が行う避妊法は副作用の可能性があるうえ、定期的な通院が必要です。
パイプカットは一度手術を受ければ、継続的な副作用や合併症に悩まされることも少なく、半永久的に避妊効果が持続します。性交中に「妊娠させるかもしれない」という心配から解放されるとともに、パートナーにピルの服用といった負担を強いる必要がなくなります。
パイプカットでの避妊によってリラックスして性交に集中できるようになり、素敵な性生活を楽しめるでしょう。
男性の避妊法|パイプカットの注意点
男性の避妊法としてパイプカットを選択する際の注意点は、以下のとおりです。
・元に戻す手術は限られた医師にしか行えない
・必ず避妊できるわけではない
・感染症の予防はできない
パイプカットはほぼ100%避妊できる点が魅力ですが、注意点もあるため、理解したうえで手術に臨んでください。
元に戻す手術は限られた医師にしか行えない
パイプカットで一度切断した精管を元に戻す手術(再建術)は非常に難しく、高度な技術と経験を持つ限られた医師にしか行えません。
パイプカットは実施していても、再建術を行なっていないクリニックもあります。「手術後に子どもがほしくなった」というときでも対応できる施設は限られており、再建したからといって精液所見が正常に戻るとは限りません。
パイプカット再建の難しさを念頭に置いたうえで、パートナーとしっかり話し合い、手術を検討することが肝心です。
当院では、再建を見越したパイプカットが可能です。ライフプランの変更に備え、将来の選択の余地を残せるか、手術前に医師へ相談すると良いでしょう。
必ず避妊できるわけではない
男性のパイプカットは避妊成功率がほぼ100%ですが、必ず成功するわけではありません。手術後に性交の相手が妊娠する理由として主に考えられることは、以下のとおりです。
・術後すぐに避妊しないで性交した
・切離・結紮(けっさつ)した精管が自然につながった
パイプカット直後は、精管内に精子が残っています。術後でも妊娠する恐れがあるため、避妊具なしの性交前には、精液検査で精子が射出されていないことのチェックが必須です。
切離・結紮したはずの精管が自然につながり妊娠に至るケースも、ごく稀に確認されます。精管がつながっても自分ではわからないため、定期的に精液検査を受け、精子が射出されていないかチェックしましょう。
感染症の予防はできない
男性が避妊効果の高いパイプカットをすれば、性交時のコンドームは不要ですが、性感染症の予防はできません。コンドームには、避妊に加え、性器同士の直接的な接触を防ぐことによる性感染症の予防効果もあります。
コンドームを装着しなければ、性感染症をうつしたり、うつされたりするリスクが高まります。性感染症のなかには自覚症状がない病気もあり、知らないうちに感染を広げる恐れがあるため、注意が必要です。
特定のパートナー以外とも性交渉がある方や、新しい人と関係を持つ際は、性感染症予防のためにコンドームを装着しましょう。
男性の避妊法|パイプカットに関する疑問に回答
男性の避妊法であるパイプカットについて多く寄せられる、以下の質問にお答えします。
・パイプカットは誰でもできますか?
・副作用はありますか?
・術後のダウンタイムはありますか?
・性交は術後いつ頃から可能ですか?
・パイプカットは元に戻せますか?
パイプカットの実施を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
パイプカットは誰でもできますか?
避妊手術であるパイプカットの対象者は、以下のような男性です。
・成人である
・子どもがすでに1人以上いる
・パートナーの同意が得られている
・本人の強い希望がある
・本人の健康状態が良好である
・病気やお金などの理由で子どもを育てることが難しい
パイプカットは避妊目的で行うため、パートナーがいる方は相手の同意が不可欠です。避妊を希望する理由は人によって異なりますが、手術をして後悔しないかをしっかりと考えたうえで決断しましょう。
副作用はありますか?
パイプカットは陰のうの一部を切開する外科手術であり、患部に腫れや痛みといった副作用が生じる可能性があります。
痛みの大半は数日で治まる程度で、鎮痛剤で対処可能ですが、症状が長引く場合は担当医へ相談してください。状態によっては治療が必要なケースもあるため、自己判断は危険です。
陰のうは元々シワが多い部分なので、切開による傷痕はほとんど気にならないでしょう。
「パイプカットをすると、精力や勃起力・感度が衰えるのではないか」と心配する方もいますが、手術で精管動脈を温存できれば、まったく影響はありません。精液量が減少したり、女性らしい体つきになったりすることもないため、ご安心ください。
パイプカットは、少数であるものの、以下のような合併症や後遺症を引き起こすリスクもあり、注意が必要です。
・出血や血腫
・慢性的な痛み
・感染症
パイプカット後に、慢性の精巣上体炎になり、継続的な痛みを訴える方もいます。発熱や倦怠感が生じたときは感染症を疑ってください。パイプカットする場所によっても慢性精巣上体炎になりやすさが異なります。
また、動脈・神経を傷つけずに精管だけを結紮できる精度の高い手術を受けることで、副作用のリスクを下げられます。
術後のダウンタイムはありますか?
パイプカット後は、以下を目安にダウンタイム(体が回復する期間)をとり、副作用や合併症のリスクを軽減することが大切です。
行動 | 再開までの期間 |
---|---|
デスクワーク | なし(手術当日から可能) |
シャワー | 1日(手術翌日から可能) |
運動・肉体労働 | 1週間程度 |
入浴 | 2週間程度 |
ダウンタイムをしっかりと確保しなければ、副作用や合併症のリスクが高まります。痛みの感じ方には個人差があるので、無理のない範囲で少しずつ元の生活に戻していきましょう。
性交は術後いつ頃から可能ですか?
パイプカット後の性交は、患部の腫れが引き、痛みが治まる約1週間後を目安に再開できます。ただし、手術直後はまだ精管の中に精子が残っており、妊娠の可能性があります。避妊をせずに性交すると、望まない妊娠につながる恐れがあるため注意しましょう。
パイプカット後に15~20回ほど射精すると、残っていた精子がすべて射出され、なくなるといわれています。目安の射精回数を超えたら精液検査を受け、精子の有無を確認してください。精子が確認されなくなるまで、性交時は必ずコンドームを装着しましょう。
パイプカットは元に戻せますか?
パイプカットは、再建術によって元の状態に戻せる可能性があります。しかし、パイプカットの再建は非常に難しく、100%元に戻る保証はありません。
当院では、状況や心境の変化によって再び妊娠を望む男性に、パイプカット再建術を実施可能です。手術で精管をつなげて精子が出現すれば、妊娠が望めます。
当院のパイプカット再建術は、以下のとおり高い治療成績を残しています。
精子出現率 | 90% |
---|---|
精液所見の正常化率 | 50% |
パイプカットの際に、再建を見越して精管の上方で処置をしていることも当院の強みです。
当院における男性避妊手術の流れ
当院における男性避妊手術(パイプカット)の流れは、以下のとおりです。
1.事前準備
2.手術
3.手術後
予約から術後の注意事項まで、避妊手術の全体像を理解することで、自身の生活や仕事に合わせて準備ができます。それぞれの段階で大切なポイントや、当院の特徴を解説します。
1. 事前準備
当院は完全予約制を導入しているため、初診の予約をしたうえでご来院ください。プライバシーに配慮した個室診療を行なっており、パイプカットというデリケートな問題も落ち着いて相談できる環境です。
初診日には、問診・触診と必要に応じてエコー検査を行い、診断結果をもとに手術の可否を決めます。手術を決断された場合は、術前検査として血液検査もお願いしています。
初診後にご来院いただくタイミングは、手術当日です。パイプカットに関する疑問点があれば、初診時に担当医へ質問し、不安を解消しておきましょう。
2. 手術
当院のパイプカットは、スーパーマイクロサージャリー(超微細手術)の高度な技術を持った医師が、手術用の高倍率顕微鏡を使用して行います。局所麻酔を用いるため、医師と雑談をしながら落ち着いた雰囲気の中での手術が可能です。
手術では精管だけを切断・結紮し、精管動脈やリンパ管などを確実に温存することで、合併症のリスクを抑えます。精管動脈を温存しなかった場合は、血流障害が起き、精巣機能の低下や男性ホルモンの減少を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。
のちにパイプカット再建術を希望する患者さんに対応しやすいよう、精管を精巣から少し離れた位置で切断する点が当院の手術の特徴です。切断した精管の端を筋膜で覆い、再開通予防もしっかりと行なっています。
当院では、精管を確実に切断した証として、精管切断端の顕微鏡写真を患者さんにお渡ししています。
3. 手術後
当院のパイプカットは日帰りで行う手術です。医師からお伝えする注意事項をお守りいただき、術後をお過ごしください。手術後に特に意識したい点は、以下のとおりです。
・ダウンタイムを適切にとる
・精液検査で精子の消失を確認するまでは避妊する
・出血・強い痛み・発熱などがあればすぐに受診する
術後すぐは安静に過ごし、自分の体調と相談しながら元の生活に戻していきましょう。体に異変がある場合は、早めに受診してください。
当院では、術後に「パイプカット証明書」をお渡しします。それぞれのご事情に適した説明や証明が求められる場面で、ご活用いただけます。
男性の避妊手術をお考えなら当院へ
男性の避妊手術をお考えの方は、当院へご相談ください。
女性が行う避妊手術は全身麻酔を使用するケースが多く、体への負担も大きくなります。
一方で、当院の「顕微鏡下動脈温存パイプカット手術」であれば、局所麻酔を採用しており日帰りができます。患者さんの体や生活への影響を抑えられる点がメリットです。精管のみを確実に処置し、動脈やリンパ管などは温存するため、合併症のリスクも下げられます。
顕微鏡下動脈温存パイプカット手術は、「やっぱり子どもがほしい」と気持ちが変わった場合に備え、再建術を見越した術式です。
当院には、高難度な技術を要する顕微鏡手術を得意とする永尾医師をはじめ、経験豊富なスタッフが多数在籍しています。確実性の高いパイプカットをご希望の方は、ぜひ当院にお任せください。
お問い合わせ・ご予約はこちら
〒104-0061 東京都中央区銀座2-8-19 FPG links GINZA 6F
この記事の執筆医師

永尾 光一 先生
銀座リプロ外科 院長
前・東邦大学泌尿器科教授
昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。
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