妊活してもパートナーがなかなか妊娠できず、「男性不妊の可能性も考えたほうが良い」と担当医に言われてお悩みではないでしょうか。
不妊症の原因は、女性に限らず男性にも認められることがあります。男性不妊であっても、検査をして原因がわかれば治療によって改善が期待可能です。
本記事では男性不妊の検査方法7選について解説し、よくある質問に回答します。「男性不妊の疑いがあるけど、検査に不安がある」という方は、ぜひ参考にしてください。
- 男性不妊・精索静脈瘤にお困りのかたへ
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男性不妊の40%にある精索静脈瘤は、精巣やその上の精索部(精管、血管、神経、リンパ管などを覆う膜)に静脈瘤(じょうみゃくりゅう・静脈の拡張)が認められる症状のことを指します。一般男性の15%に認められ、男性不妊症患者の40%がその疑いであるとされています。
男性不妊の検査方法6選
男性不妊の検査方法である、以下の6つについて詳しく解説します。
1.精液検査
2.診察
3.超音波(エコー)検査
4.ホルモン検査
5.染色体検査・AZF検査
6.DFI・ORP検査
世界保健機関(WHO)の報告によると、不妊症の原因がある性別の割合は、以下のとおりです。
女性因子 | 41% |
---|---|
男性因子 | 24% |
男女両方の因子 | 24% |
原因不明 | 11% |
不妊症のうち、約半数は男性側に原因があることがわかります。男性の生殖能力を確認する方法や、検査の流れを確認しましょう。
1. 精液検査
精液検査は、男性不妊を検査できる手段の1つです。精液中の精子の数・運動率・形態などを調べ、卵子までたどり着き、受精する能力があるかを判断します。検査結果が基準値を下回る場合は、自然妊娠が難しい可能性があるでしょう。
精液検査では、自宅や医療機関で射精した精液を採取します。自宅で採精する場合は、精子の質の低下を防ぐために光が当たらないようにして体温と同等の温度で保管し、30分以内に医療機関へ提出することが求められます。
精液の状態は体調や採精のタイミングによって変動しやすいので、検査を2回以上して結果を評価することが一般的です。
2. 診察
診察も、男性不妊の診断において重要な検査です。患者さんの生活状況を聞き取ったり、陰のうを見たり触ったりして、不妊の原因がないかを確認します。
検査方法 | 内容 |
---|---|
問診 | 病歴・勃起の有無・射精頻度などの聴取 |
視診・触診 |
・陰のう・精管・精巣上体・鼠径部のチェック ・精巣サイズの測定 ・精索静脈瘤の有無 |
陰のうや精巣のサイズや左右差などの観察により、泌尿器科的な疾患を鑑別できるでしょう。手術を勧められるほど進行した精索静脈瘤は、視診・触診の段階でわかることがあります。
3. 超音波(エコー)検査
超音波(エコー)検査は、不妊男性のうち40%の原因である精索静脈瘤の診断に有効な手段です。陰のうにプローブと呼ばれる器具を当て、超音波を照射して体内の情報を画像化します。
視診・触診ではわからないほど軽症の精索静脈瘤でも、超音波検査を使えば血流の異常や血管の太さをもとに病気を発見可能です。精巣腫瘍や精液瘤、陰嚢水腫といった病気がないかも確認します。
超音波検査は10分ほどで多くの情報が得られるため、男性不妊検査において非常に有用な方法です。
4. ホルモン検査
ホルモン検査は、精子の形成に欠かせないホルモンの分泌量を測定する方法です。血液検査によって、生殖機能に関わる以下のようなホルモンの値を測定します。
・テストステロン(男性ホルモン)
・卵胞刺激ホルモン(FSH)
・黄体形成ホルモン(LH)
・エストラジオール(女性ホルモン)
・プロラクチン
ホルモンの状態を見ることで、精巣の機能低下やホルモンバランスの異常といった、男性不妊の原因がないかを確認可能です。
ホルモン検査の結果は、当日から2週間後までにわかるケースがほとんどですが、クリニックごとに異なります。結果によっては、再検査が必要です。
5. 染色体検査・AZF検査
男性不妊検査では、染色体に異常がないかを調べることがあります。多くは、精子数がゼロである無精子症や、極端に少ない高度乏精子症の場合に行われます。
染色体とは、細胞の中にあり、DNAを含む棒状の構造体です。染色体検査のなかでも一般的なGバンド法では、以下の手順で血液中の染色体を染色し、顕微鏡で観察します。
1.採血
2.細胞培養
3.染色
4.顕微鏡での観察
5.異常の判定
本来なら23対46本あるはずの染色体の数が少ないといった数的問題や、構造異常がないかを調べます。
男性不妊を引き起こす異常のうち特に多い状態は、染色体の数が47本で、X染色体が通常よりも1本多いクラインフェルター症候群です。クラインフェルター症候群の方は精巣が発達せず、精子の形成能力が低下していることがあります。
AZF検査は、Y染色体微小欠失の検査で、無精子症の検査です。微小欠失には、AZFa・AZFb・AZFcなどの欠失があり、AZFa・AZFbの欠失では、精巣を開く手術でも精子を見つけることができません。
染色体異常・遺伝子異常は根本的に治療できないので、検査結果が子どもを望む夫婦のストレスとなる恐れがあります。検査を受ける前に主治医やパートナーとよく話し合うことが大切です。
6. DFI・ORP検査
精子のDNA損傷や精液中の酸化ストレスの度合いを測定するDFI・ORP検査も、男性不妊の検査で用いられる方法です。DNA損傷の割合や酸化ストレス値が高い場合は、男性不妊に陥っている可能性があります。
DFIは精子DNA断片化指数の略称で、検査では、精液中の全精子のうちDNAにダメージを受けている割合を算出します。精子のDNAダメージは、受精率・妊娠率を下げたり、流産率を高めたりする恐れがある指標です。多くの病院は、24%以下を正常な範囲と定めています。
ORP検査は、酸化ストレスと抗酸化力のバランスを調べる手段です。ORPが高いと酸化ストレスが蓄積し、精子の質が低下する可能性があります。酸化ストレスは、精索静脈瘤や、喫煙・飲酒・睡眠不足などの生活習慣の乱れや不摂生な食生活によって引き起こされます。
男性不妊の検査についてよくある質問
男性不妊の検査について、以下の質問に回答します。
・男性不妊の検査はいつ受けるべき?
・男性不妊の検査はどこで受けられる?
・男性不妊の検査にかかる費用は?
・精液検査前の禁欲期間はどのくらい?
回答をチェックし、男性不妊検査に関する不安や疑問を解消しましょう。
男性不妊の検査はいつ受けるべき?
男性不妊の検査は、女性より前もしくは同じタイミングで受けることがおすすめです。不妊症のうち約48%は男性にも原因があり、女性に要因がないケースは珍しくありません。
女性だけに不妊の原因があると決めつけず、男性自身も自らの状態を見つめ直すことが大切です。
男性が受ける不妊検査は、精液検査や超音波検査といった痛みや不快感をともなわない方法が多い点が特徴です。一方で、女性の検査には、経腟超音波検査や子宮卵管造影検査のような、腟内にプローブやチューブを挿入する体への負担が大きい手法が含まれます。
負担の少ない男性側の検査から始めることは、合理的で思いやりのある選択だといえるでしょう。子どもをなかなか授かれない方は、男性の不妊検査から始めることを前向きに検討してください。
男性不妊の検査はどこで受けられる?
男性不妊の検査は、泌尿器科や不妊治療専門のクリニックで受けられます。
男性不妊を専門としている泌尿器科なら、10分ほどの診察・超音波検査で不妊原因の最多疾患である精索静脈瘤の診断が可能です。精索静脈瘤をはじめとする、男性不妊の原因によっては、治療で自然妊娠が可能な状態まで精液所見が改善することが見込めます。
しかし、男性不妊に精通していないクリニックだと、精液検査で異常があっても、男性側の詳しい検査や治療をせずに不妊治療を勧めることもあります。
検査を受ける際は、男性不妊の知識があり、治療法を知っている医療機関を選ぶことが大切です。
男性不妊の検査にかかる費用は?
男性不妊の検査費用は実施項目によって異なり、相場は以下のとおりです。
精液検査 | 3,000〜6,000円 |
---|---|
超音波検査 | 3,000~10,000円 |
ホルモン検査 | 10,000〜15,000円 |
染色体検査 | 30,000〜40,000円 |
精液抗酸化力検査 | 5,000〜20,000円 |
DFI検査 | 10,000〜20,000円 |
ブライダルチェック (精液検査・性感染症検査・血液検査・超音波検査) |
10,000〜50,000円 |
当院では、精索静脈瘤の検査としての視診・触診・超音波検査を自由診療で実施しています。
精液検査前の禁欲期間はどのくらい?
世界保健機関のガイドラインでは、2〜7日間の禁欲が精液検査前に推奨されていますが、多くの医療機関が設定する理想的な期間は3日間ほどです。禁欲期間が過度に長かったり短かったりすると、検査結果に影響が出るため、男性不妊かどうかを正確に評価できません。
禁欲を長くすれば精液が古くなって精子の運動率が低く、奇形率が高くなる傾向があります。一方で短すぎる禁欲は、精巣内に精子を十分に蓄えられず、精液中の精子数が低下します。
自身が男性不妊かを正確に把握するために、適切な期間の禁欲をしたうえで精液検査に臨みましょう。
男性不妊が疑われる方は精索静脈瘤の検査を
男性不妊が疑われる方は、精索静脈瘤の検査を受けることが大切です。不妊の原因が精索静脈瘤だと判明すれば、治療することで自然妊娠できる可能性が高まります。
軽症の場合は、精索静脈瘤が生じていても自覚症状がほとんどありません。気づかないまま放置すると、男性不妊はますます重症化し、痛みや違和感が出現し始めることもあるため注意してください。
精索静脈瘤とは
精索静脈瘤とは精巣や陰のう上部の静脈が、血液の逆流により拡張し、瘤(こぶ)ができる病気です。精巣の温度を上昇させて機能低下を引き起こすため、乏精子症・精子無力症の原因になり、男性不妊の40%に精索静脈瘤が関連するとされています。
精索静脈瘤は自然治癒せず、放置すると男性不妊の状態は徐々に悪化するでしょう。陰のうに痛みや腫れも出てくることもあるため、早めの治療が大切です。
ただし、軽度の場合は症状が現れにくく、注意して陰のうの状態をセルフチェックしたり、専門医を受診したりしなければ気づくことは困難です。
精索静脈瘤は手術で精液所見の改善が見込めるので、男性不妊の疑いがある方には、泌尿器科での診察・超音波検査をおすすめします。
当院で検査・治療を受けるメリット
男性不妊が疑われる方が当院で精索静脈瘤の検査・治療を受けるメリットは、以下のとおりです。
・男性不妊専門の泌尿器科である
・局所麻酔を使った日帰り手術が受けられる
・再発リスクが0.1%である
・合併症リスクがほとんどない
・手術後の精液所見の改善率が87%である
・手術枠が大学病院の10倍以上も確保されている
当院は、「日帰り顕微鏡下精索静脈瘤手術・ナガオメソッド」での精索静脈瘤治療を実施しています。
ナガオメソッドは、高倍率の顕微鏡で確認しつつ、外精(外陰部)静脈を含め、逆流している静脈だけを1本ずつ結紮(けっさつ)・切離する術式です。再発率を低く抑えられ、一度手術すれば、次の子どもを望むときまで効果が続きます。
当院の強みは、精度の高い処置ができる顕微鏡手術のスペシャリストがそろっている点です。手術による合併症を防ぐために、動脈やリンパ管、神経などを1本ずつ丁寧に分離し、温存します。
当院は手術枠が多く、待つ期間が2週間ほどで短いことから、妊活にあまり時間をかけたくない方にもおすすめです。
精索静脈瘤の検査・治療は当院へ
子どもをなかなか授かれず男性不妊に悩んでいたり、精液所見が悪いと診断されたりした方は、ぜひ当院で精索静脈瘤の検査・治療を受けましょう。
当院では、税込5,500円(別途初診料5,500円)で、男性不妊の最多の原因である精索静脈瘤の検診を受けられます。精索静脈瘤が見つかった場合は、日帰り顕微鏡下精索静脈瘤手術・ナガオメソッドでの治療で精液所見の改善が期待できます。
日帰り顕微鏡下精索静脈瘤手術・ナガオメソッドは、合併症リスクのほとんどない手術です。術後は87%の方において精液所見の改善が見られ、再発率はわずか0.1%で、長期的な目線で見ても効果が望める方法です。
当院は男性不妊専門クリニックとして開設しており、患者さんが受診しやすいようにプライバシーに配慮した環境を整備しています。男性不妊の疑いがある場合は、ぜひ一度当院へご相談ください。
施術の紹介
男性不妊症は治療できる?原因や検査の種類・受診できる科を紹介
詳しくはこちらお問い合わせ・ご予約はこちら
〒104-0061 東京都中央区銀座2-8-19 FPG links GINZA 6F
この記事の執筆医師

日本泌尿器科専門医
永尾 光一先生
銀座リプロ外科 院長
前・東邦大学泌尿器科教授
昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。
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