不妊治療や周産期医療が発展した現代日本でも、流産や死産などで大切な命が失われてしまうことは少なくありません。その原因のほとんどが、遺伝性疾患や先天性異常が原因と言われています。
流産は繰り返し起こる可能性があり、事前の対策が重要です。しかし、遺伝子レベルの問題を対策するには、なぜそのようなことが起こるのか、遺伝子以外の要因はないのかを知る必要があります。
今回は、流産が起こってしまう原因や種類、対策方法などについて、詳しく解説していきます。
- 男性不妊・精索静脈瘤にお困りのかたへ
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男性不妊の40%にある精索静脈瘤は、精巣やその上の精索部(精管、血管、神経、リンパ管などを覆う膜)に静脈瘤(じょうみゃくりゅう・静脈の拡張)が認められる症状のことを指します。一般男性の15%に認められ、男性不妊症患者の40%がその疑いであるとされています。
流産とは?
流産とは、何らかの原因で妊娠22週未満(妊娠21週6日まで)の胎児が母体の中で亡くなり、妊娠が継続できなくなることです。
妊娠12週未満での流産は早期流産といい、流産全体の90%を占めます。また、妊娠22週以降に亡くなってしまった場合を死産といいます。
流産の原因
流産の約90%を占める早期流産の原因は、多くの場合赤ちゃんの染色体異常によるものです。つまり、受精卵が誕生した瞬間に、遺伝性の疾患や先天性異常を引き起こしているため、亡くなってしまうというものです。
しかし、必ずしも染色体異常が起こったからと言って、流産が起こるわけではありません。あくまで流産が起こりやすいというリスク因子とされています。
これまで流産の主な原因は、母親の精神的なショックやケガ(ただし軽いもの)などと考えられていましたが、それらの要因は流産と無関係と判明しています。
染色体異常以外の原因としては、女性の子宮構造的な異常や年齢、タバコ、飲酒、感染症(風疹など)、重度のケガなどがあげられます。最近では、反復流産(連続2回の流産)と精液所見の関係性が、アメリカ生殖医学界で話題となっています。流産の胎児へのリスク因子は女性側だけの問題ではなく、男性側の問題である場合も少なくないのです。
流産の種類
流産には、その原因や種類で名称が変わります。以下、詳しく解説していきます。
稽留(けいりゅう)流産
胎内の赤ちゃんは亡くなっているが、まだ出血・腹痛などの自覚症状がなく、婦人科診察で初めて確認される状態です。
完全流産
赤ちゃんと胎盤が、子宮外へすべて自然に出てしまった状態のことをいいます。
不完全流産
子宮内容物が排出されているが、まだ一部が子宮内に残っている状態をいいます。血液の塊が少し残る場合があります。
感染流産
細菌などにより、子宮内が感染を伴った流産のことです。母親が死亡するリスクがあるため、管理が必要になります。
反復流産
流産が連続して2回起こった場合のことをいいます。
習慣流産
流産を3回以上繰り返した場合のことをいいます。
化学的流産(生化学的妊娠)
妊娠のかなり早い段階で流産してしまい、尿検査や採血検査で妊娠反応が出たものの、超音波検査で妊娠が確認できる前に流産してしまった状態です。市販の妊娠検査薬を使用しなければ妊娠と気付かず、月経と考えてしまうことがあります。
切迫流産
妊娠20週までに、子宮頚管は拡大していない状態で、流産の一歩手前の状態で少量の出血や軽い腹痛が起こり、赤ちゃんが失われてしまう可能性がある状態です。
流産の確率
流産は妊娠全体の約10~20%で起こり、5~10人に1人の確率なので、決して珍しいことではありません。さらに、高齢になるほど流産の危険性が増加し、海外のデータによると、40歳代の妊娠では流産の危険性が50%まで跳ね上がるという報告もあります。
また、症例対照研究によると、女性の年齢などのリスク因子の影響を除いても、男性の加齢によって流産の危険性が上昇するという報告もあります。
45歳以上の男性は、25歳未満の男性より流産の確率が2倍に上昇するというものや、40歳以上の男性の場合、30歳以上の女性の流産のリスクに匹敵するという報告もあります。
流産の兆候・初期症状
流産の兆候や初期症状は、以下の通りです。
- お腹の張り・腹痛
- 少量の出血
- つわりの消失
- 基礎体温の低下
- 破水
- 下腹部の冷感
流産の兆候や初期症状としては、おなかの張り、腹痛、少量の出血などが聞かれますが、流産の種類や個人差によっては、症状がない場合もあります。
また、胎盤が作られる過程で子宮内膜の血管がささいなダメージを受け、出血が起こることもあります。一概に出血だけで流産であるとは言えません。
本格的に流産が起こり始めると、医療機関を受診しても間に合わない可能性が高いため、少しでも兆候や初期症状があった場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
流産の症状とは
流産が起こる場合、腹痛や出血などの具体的な症状については、以下の通りです。
お腹の張り・腹痛
流産が起こると、子宮内の内容物を排出するために子宮が収縮するため、腹痛が起こります。この腹痛は生理痛のような痛みや、軽い張りだけの場合もあります。
内容物が全て子宮外に排出されると完全流産となり、腹痛は収まります。排出しきれていない不完全流産だと、腹痛が継続することがあります。
出血
鮮紅色や暗赤色の少量、もしくは生理のような出血が起こります。出血が止まらない時や、腹痛を伴う場合は、流産の可能性を疑い、すぐに医療機関を受診しましょう。
流産の診断・治療方法
流産の診断方法は、内診、超音波検査、血液検査での診察となります。稽留流産は症状がないため、超音波で胎児が存在するにも関わらず、心拍が計測されないことで初めて流産と診断されます。
心拍を確認できるのは妊娠5週程度からであるため、早期流産は診断が難しいのです。1回の診察で確実な診断が可能なのは、妊娠8週以降からといわれます。
妊娠5週程度で胎児の心拍が確認できない場合は、2週間後に再度検査を行います。発育を確認できなかった場合、稽留流産と診断されます。
治療方法としては、現在の医療では妊娠12週までの切迫流産に対して治療法はないと言われています。また、完全流産や化学的流産の場合は、すでに子宮外へ排出されているため治療法はありません。
不完全流産や稽留流産の場合、一般的には待機療法となります。自然に出血し、排出されるのを待つ治療方法です。発熱や母体の身体状況が危険な場合は、陣痛誘発剤を用いるか、手術療法にて鉗子や吸引機で摘出します。
流産の予防方法
1度流産を経験すると、繰り返す場合も少なくありません。流産の主な原因は、染色体の異常によるものとしても、母体側で流産のリスクを下げることも可能です。以下のことに気を付けて、流産のリスクを少しでも回避しましょう。
喫煙をしない
妊娠中に喫煙をしている女性は、喫煙をしていない女性と比べて、自然流産のリスクが高くなると報告されています。タバコは血流の巡りを悪くするため、胎盤の機能を低下させるためです。禁煙だけでなく、副流煙にも十分に気を付けましょう。
飲酒をしない
母体が摂取したアルコールは、胎盤を通って胎児へと吸収されます。そのため、胎児細胞の発育を妨げると言われています。
肥満を防ぐ
肥満が流産のリスクを高めると言われています。妊娠高血圧症候群の合併症のリスクも高めるため、健康的な食生活を行い、体重の増加を抑えましょう。
性交渉のときは避妊具をつける
流産を引き起こす感染症として、絨毛膜羊膜炎があります。絨毛膜羊膜炎は、細菌性膣症から、膣炎、子宮頸管炎へと炎症が広がることで起こります。細菌感染を少しでも防ぐために、性交渉の際は避妊具を使用し、清潔を保ちましょう。
精索静脈瘤の手術を行う
男性不妊の原因の中で多い疾患が精索静脈瘤です。精索静脈瘤の手術を行えば、精液所見の改善により妊娠初期の流産率を減少させ、妊娠の可能性を上げられます。
まだ症例は少ないですが、妊娠初期に自然流産が起こったカップルが精索静脈瘤の手術を受けることで、妊娠率が向上できたという研究結果があります。手術によって精液所見が良くなり、妊娠率・生児獲得率・流産率にも良い結果が出ています。
精索静脈瘤であっても精液所見がWHOの基準値を満たす正常値であれば、一般的な手術適応の条件ではありません。しかし、女性が妊娠初期流産を繰り返すような場合は、精索静脈瘤の手術を受けるメリットがあり、流産を回避できる可能性もあるでしょう。
男性側でできる流産の確率を下げるための対策
流産の原因は、3分の2が原因不明とされています。そして、そのほとんどが、胎児の染色体が偶発的に異常をきたすことで起こると言われており、男女ともに原因はほとんどないともいわれています。
何度も流産を繰り返す場合は、女性側だけでなく、男性側にも原因がある可能性も否められません。夫婦染色体異常を疑い、検査をする必要があるでしょう。
主に男性側の問題としてあげられることは、精子異常によるものです。精子の数、運動率、奇形率などが流産のリスクを高めるためです。
精子異常の主な要因としてあげられるのは、精索静脈瘤があります。精索静脈瘤とは、精巣に通ずる静脈が逆流し、瘤ができてしまう病気です。
血流の滞りから精巣内の温度が上昇するだけでなく、酸素不足や活性酸素が増加します。精子の数や運動率が低下するだけでなく、DNAが損傷している奇形を引き起こします。
精索静脈瘤は無症状であることが多く、命の危険もないため、放置されること場合がほとんどです。しかし、1回の手術を行うことで妊娠率の向上だけでなく、流産の確率も減らすことができます。
精索静脈瘤の手術を受けたグループと受けなかったグループでは、妊娠率が45%から60%に増加しただけでなく、流産の確率が減ったことにより、出生率も31%から46%へと増加したという報告がされています。
精液所見が正常でも、精索静脈瘤の手術をしたことで、流産率が半分に減少したという論文も報告されています。精索静脈瘤の症状が軽度でも、治療をするメリットは大いにあるのです。もし症状など気になる場合には、ぜひ銀座リプロ外科までご相談ください。
1度流産を経験してしまうと、女性は特に自分を責め、次の妊娠へ不安な気持ちに陥るかもしれません。しかし、流産の確率は全体の10~20%と、決して珍しいことではありません。
流産を複数回繰り返していらした方が、当院を受診し、男性の治療後に自然妊娠されたというケースは多く、このような例は稀なことではありません。
特に、男性側に精索静脈瘤が見つかれば、治療が可能です。
奥様に婦人科的問題がないにも関わらず、多くの場合婦人科では、精液が悪いと男性の治療はせずに、体外受精や顕微授精をすることがあります。
男性の精索静脈瘤を直すことにより、精子のDNA・染色体が良くなり、良い受精卵を得ることができます。受精卵が良くなれば、自然・人工授精・体外受精・顕微授精など全ての方法で、妊娠率・出産率が上昇します。流産や奇形の減少などにもなり、奥様の負担を減らすことができます。
当院では、この精索静脈瘤の治療を専門としており、これまでに多くの方が自然妊娠されています。
奥様に婦人科的問題がある場合でも、男性を良くすることにより、ステップダウンが可能です。
心当たりの方は、ぜひ一度受診されてみてはいかがでしょう。
施術の紹介
精索静脈瘤とは?症状や検査方法、治療・手術方法を解説
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〒104-0061 東京都中央区銀座2-8-19 FPG links GINZA 6F
この記事の執筆医師
永尾 光一 先生
東邦大学 医学部教授(泌尿器科学講座)
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長
昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。
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