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精液量を増やす方法とは?男性不妊の治療方法も解説!

精液量は男性不妊の確認に際し、セルフチェック時の有効な指標の一つです。とはいえ、その基準となる量まで把握されている方はあまり多くないのではないでしょうか。

本コラムでは、精液量を増やす方法と、男性不妊の治療方法について解説します。

 

男性不妊・精索静脈瘤にお困りのかたへ
男性不妊の40%精索静脈瘤が原因

男性不妊の40%にある精索静脈瘤は、精巣やその上の精索部(精管、血管、神経、リンパ管などを覆う膜)に静脈瘤(じょうみゃくりゅう・静脈の拡張)が認められる症状のことを指します。一般男性の15%に認められ、男性不妊症患者の40%がその疑いであるとされています。

精液量が少ない原因

まず、自然妊娠の可能性を高くするには適切な量の精液が必要です。
精液とは射精時に出る液体で、精漿という液体と精子で構成されており、自然妊娠をするためには精液内に一定数の精子が必要です。

精液量が少ない原因はいくつかありますが、加齢により男性ホルモンの分泌が減少し、作られる精液が減少するケースや、生活習慣や食生活、疾病・疾患などが挙げられます。

 

精液量を増やす方法とは?

精液量を増やす方法として、男性ホルモンの分泌を促し、適度な分泌量を保つことが効果的です。男性ホルモンは骨格や筋肉の量に影響するほか、生殖機能の向上だけでなく、精神面の健康にも関与します。

食生活や生活習慣の改善により、男性ホルモンの分泌の促進が期待できます。男性ホルモンの分泌により精巣機能が向上すれば、精巣内で生成される精子の量も増え、精液量が増えることも期待できます。

必要に応じて適切な検査を受けることで、疾患がある場合には、精液量が増えて自然妊娠可能な状態へ改善できるでしょう。

食生活の改善

食生活では亜鉛やビタミン等の栄養素を意識的に取り入れるように心がけましょう。積極的に摂取すべき食材として、牡蠣・豚レバー・きのこ・緑黄色野菜・山芋・里芋等があげられます。これらの食材は男性ホルモンの分泌を助ける栄養素を豊富に含んだ食材です。

脂質の多い食事や炭水化物を中心とした食生活では、男性ホルモンの量が減少し、精巣の機能が低下する恐れがあります。また、過度な飲酒は避け、タンパク質やコレステロールも適量を接種できるバランスの良い食生活を心がけましょう。

生活習慣の改善

肥満は男性ホルモンの分泌を低下させます。適度な運動をし、適正体重の維持を心がけましょう。また、睡眠不足や過度な睡眠は精液の生成量の減少だけでなく精子の質の低下にもつながります。しっかりと休息をとることで精液量の増加が期待できます。

喫煙習慣のある方は、精液の量と質の改善のためだけでなく、EDの予防のためにも、喫煙そのものを見直すことも必要です。

この他にも、長風呂やサウナ、保温効果の高い下着などは避け、精巣周辺を温めすぎないことも大切です。精巣周辺の温度上昇は、精巣機能の低下につながります。

疾患の治療

精液量の減少は疾病・疾患に起因するものもあります。主な疾患には、造精機能障害や性機能障害があります。これらの疾患は適切な治療により自然妊娠可能な状態への改善も期待できます。

精索静脈瘤(造精機能障害)

造精機能障害は男性不妊の原因の80%を占めます。染色体やホルモンの以上が原因となることがありますが、約半数は原因不明です。

造精機能障害には精子を作る機能が低下した「乏精子症」「無精子症」などがあり、その要因として最も多いのが精索静脈瘤です。これらの症状では精液中の精子が少なくなり、精液量は減少します。

造精機能障害の治療方法は、根本的治療と対症療法に分けられます。まずは精索静脈瘤の有無について検査をしたうえで、精索静脈瘤が認められる場合には、根本的治療として手術を行います。

精索静脈瘤手術に関して詳しくはこちらをご覧ください。

また、パイプカットをされていた場合にはパイプカット再建術を行います。
対症療法としては人工授精・体外受精や顕微授精、精巣内精子採取術(TESE)が行われる他、薬物療法も行われます。

性機能障害

性機能障害は、神経障害や糖尿病、心因性、薬剤性など病気やストレスにより勃起や射精ができない状態です。ED(勃起障害)や射精障害が分類されます。

EDは性行為を行う際に十分な勃起を維持できないという症状で、精神的な原因が考えられます。EDは治療薬で改善でき、改善後は自然妊娠も可能です。

射精障害は精液量が減少している、または精液が射出されない状態のことを指します。逆流性射精、糖尿病などが原因となるケースがあります。治療方法としては薬物療法が選択されるケースが多いです。

精索静脈瘤リスク度診断

 

適切な精液の量

適切な精液の量

個人差はありますが、一般的に男性の1回の射精量は平均3ml程度です。ただし、加齢、健康状態や性的興奮度などによっても変動します。

2021年に更新されたWHOの基準では、1.4ml以上の精液量があれば自然妊娠が期待できるとされています。

妊娠の可能性と射出される精液の量は、必ずしも相関関係はありません。精液量が多くても、または少なくても、精子濃度や精子の運動率が高ければ妊娠確率は上昇します。

精液検査では、精液を用いて精子に妊娠に支障をきたす問題がないかどうかを検査します。検査によって、精液内の精子の量や精子の質を確認することができます。

精液検査で確認する項目は次のとおりです。WHOの精液検査の基準値も併記します。

  • 精液量:1.4ml以上
  • 精子濃度:1600万/ml以上
  • 運動率:42%以上
  • 総運動精子数(精液量×精子濃度×運動率):1638万以上
  • 正常形態率:4%以上(奇形率96%未満)

精液所見の悪い理由として、生活習慣や食生活の他、精索静脈瘤、精路閉塞(精子の通り道の閉塞)、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症(下垂体ホルモン低下)などの疾患があります。

精液所見の悪い方の有病率は、精索静脈瘤40%、精路閉塞2%、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症0.0001%であり、治療可能な疾患のほとんどは精索静脈瘤です。

精液量や精子の質を改善するには、生活習慣や食生活の改善、疾患・疾病の治療が必要不可欠です。

 

精液量が多い人も男性不妊検査を

精子の質の良い精液であれば、量が多い方のが自然妊娠の可能性は高まります。

精液量が多い方でも、精液の質によっては自然妊娠の可能性は低くなってしまいます。精子の質を確認するには簡単なセルフチェックもありますが、より具体的に対策を検討するのであれば精液検査が有効です。

男性不妊は自覚症状がない場合が多いため、医療機関で次のような検査を受け、判断することをおすすめします。

精液検査

精子を採取し、精液量や精子濃度、運動率、正常形態率などを調べます。

尿検査

性病の感染有無を調べます。

超音波検査

エコーを使用し、精巣のサイズの計測、精巣内部の異常や精索静脈瘤の有無などを調べます。視診・触診も行います。

血液検査

血液中のホルモン、抗精子抗体、染色体を調べます。感染する可能性のある感染症の有無も確認します。

男性不妊の場合は、まず精索静脈瘤の症状がないか確認することが大切です。なぜなら、痛みが少なく自分では気づきにくいということや、精索静脈瘤が男性不妊で最も割合が大きい原因であるからです。

 

男性不妊と女性不妊の割合

WHOが行った調査では、不妊原因の内訳は女性因子のみ41%、男性因子のみ24%、女性及び男性因子24%、原因不明11%です。つまり男性因子は48%で、約半数となります。

男性因子だけを取り上げると数値は低く見えますが、女性および男性因子が24%あることから、不妊検査は男性も女性も受けることが必要であり、専門クリニックで状態に合わせた検査や治療をしっかりと受けることが大切です。

男性不妊には、加齢や生活習慣、疾病・疾患等さまざまな原因があります。それぞれの原因に対し、適切な方法で対応しなくてはなりません。男性不妊の原因が精索静脈瘤などの疾患であった場合、早期に適切な治療を行うことで、精液量や精液の質の改善が見込めます。

 

精索静脈瘤の検査・治療は銀座リプロ外科へ

男性不妊中でも、その原因として高い割合を占める精索静脈瘤は、手術により根治可能疾患であり、改善後の自然妊娠に有効な手段です。

当院で精索静脈瘤手術に採用しているナガオメソッドは、再発率は0.5%と低く、重篤な合併症の心配もほとんどありません。オンライン診療も受け付けていますので、精索静脈瘤をはじめ、不妊でお悩みの方はぜひ一度銀座リプロ外科までご相談ください。

精索静脈瘤手術に関して詳しくはこちらをご覧ください。

施術の紹介

男性不妊症とは?原因や検査・治療方法を解説

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この記事の執筆医師

永尾 光一 先生

永尾 光一 先生

東邦大学 医学部教授(泌尿器科学講座)
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

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