造精機能障害とは、精子を作る機能に障害があり、精子濃度や運動率といった精子の機能が弱まってしまう状態のことを指します。精子の機能が弱まる(=精液所見が悪くなる)ことで、自然妊娠が難しくなり、人工授精や体外受精、顕微授精をすることになります。ここでは、造精機能障害の検査や治療の方法についてご紹介しています。
- 男性不妊・精索静脈瘤にお困りのかたへ
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男性不妊の40%にある精索静脈瘤は、精巣やその上の精索部(精管、血管、神経、リンパ管などを覆う膜)に静脈瘤(じょうみゃくりゅう・静脈の拡張)が認められる症状のことを指します。一般男性の15%に認められ、男性不妊症患者の40%がその疑いであるとされています。
造精機能障害の原因
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- 造精機能障害について
精子の通り道の閉塞はなく、精巣自体での精子を作る機能が低下している状態です。
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- 造精機能障害の割合
男性不妊における造精機能の割合は、全体の82.4%と高い割合を示しておます。
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- 原因
約半分は原因不明なのに対し、精索静脈瘤は36.6%で、ホルモン低下によるものは、1.2%です。
精索静脈瘤とホルモン低下は治療可能な疾患です。
造精機能障害の精液所見
- 乏精子症は、精子濃度が1600万/ml未満の状態
- 無精子症は、精液検査で精子が見つからない状態
- 精子無力症は、精子運動率が42%未満の状態
検査方法
検査方法については、精液検査となります。
精液検査を行う場合、禁欲期間、採精時間や保温・遮光が重要です。
禁欲期間は、長くても短くても適切ではありません。4日前に射精して3日間禁欲で採精をお薦めしています。採精場所は、できれば院内で行ってください。クリニックの都合で院内採精できない場合は、下着の中に入れて保温した状態で短時間(30分-1時間以内)で搬送することをお薦めしています。
造精機能障害の治療方法
原因不明の造精機能障害は、根本的治療がありませんが、サプリメント・漢方などの補助的なものとなります。精索静脈瘤とホルモン低下は、治療可能な疾患ですので、泌尿器科で早期に病気を発見してもらい、早期に治療することが大切です。精索静脈瘤が発見されたら手術が必要ですが、日帰り手術も可能です。
ホルモン低下が発見されたら、ホルモン自己注射が行われます。
薬物療法
薬物療法はあくまで補助的な方法であり、医学的根拠も高くありません。原因不明の場合は、以下の薬物が使われます。
- サプリメント(コエンザイムQ10、亜鉛、Lカルニチンなど)
- ホルモン剤(クロミフェン)
- 漢方薬
手術による治療
よる治療は、根本的治療と対症療法に分けられます。まずは精索静脈瘤の有無について検査をしたうえで、精索静脈瘤が認められる場合には、根本的治療として手術を行います。また、パイプカットをされていた場合にはパイプカット再建術を行います。
精索静脈瘤が認められない場合には、対症療法として人工授精・体外受精や顕微授精、精巣内精子採取術(TESE)が行われます。
根本的治療:手術
精液検査の所見をふまえて治療方法を決めていくうえで、まず最初に行われるのが精索静脈瘤の検査です。精索静脈瘤が認められる場合には、手術で改善することで、精液検査の所見が大幅に改善することが多いです。
上記の結果のように、手術を行うことで精液所見は大幅に改善します。詳しくは「日帰り顕微鏡下精索静脈瘤手術・ナガオメソッド 」をご覧ください。
精路再建手術には、日帰り顕微鏡下パイプカット再建術があります。当院の成績は、精子出現率90%、精子正常化率50%、精子の濃度低下・運動率低下40%、精子が出現しない率10%です。精液所見が悪い場合は婦人科治療、精子が出ない場合は精巣内精子を採取して顕微授精などが検討されます。
対症療法:人工授精・体外受精、顕微授精、精巣内精子採取術(TESE)
人工授精や体外受精が選択される基準や、TESEが選ばれるケースについて触れていただきたいです。
泌尿器科を受診して精索静脈瘤やホルモン低下がない場合は、補助的にサプリなどを併用志ながら婦人科治療(対症療法)が検討されます。
精液量X精子濃度X運動率=総運動精子数が、婦人科治療の目安となります。
- 総運動精子数1638万以上は、タイミング法
- 総運動精子数900万以上1638万未満は、人工受精
- 総運動精子数500万以上900万未満は、体外受精
- 総運動精子数500万未満は、顕微授精
などの目安になります。
無精子症の場合は、精巣内精子採取術(TESE)を行い、精子が見つかれば顕微授精を行います。
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この記事の執筆医師
永尾 光一 先生
東邦大学 医学部教授(泌尿器科学講座)
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長
昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。
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