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人工授精は、タイミング法の次に取られる不妊治療として知られていますが、なるべくなら人工授精で妊娠までいきたいと考える方も多いと思います。ここでは、人工授精の成功率を高める方法についてご紹介しています。

人工授精とは

人工授精とは、AIH(Artificial Insemination of Husband)とも言われ、排卵の時期に管で精液を子宮内へ直接注入することにより、卵子と精子が出会うチャンスを高める方法です。

タイミング療法で妊娠しない場合に行われる、婦人科治療で一番負担の少ない治療法です。いずれも、卵管狭窄や卵管閉塞がないことが前提となりますが、副作用もほとんどなく、胎児への影響もありません。

また、人工授精の適応は、子宮頚管性不妊症、子宮内膜症性不妊症、片側卵管性不妊症、軽度男性不妊症、原因不明不妊症などの患者様です。

一般的な人工授精の成功率(=妊娠率)とは

人工授精での一般的な成功率は1回あたり5-10%程度と高くはありません。そのため繰り返し行う必要があります。ある研究データでは、妥当な 人工受精の回数は、35 歳未満は 9 回まで、 35-40 歳未満は 7 回まで、40 歳以上は 2 回までとされています。(日本生殖医学会雑誌Vol.61 No.4 October 2016  P―171 人工授精治療は何回が妥当か―累積妊娠率からみた検討― 松川ら)若い女性でも5周期以上続けた場合では3-5%であるため、3-4周期おこない、結果が出ない時は、他の方法を考えます。

人工授精の妊娠率を高めるためにできること

男性側の精子の質を高める

人工授精は、軽度男性不妊症には有効とされていますが、精液所見が極端に悪い場合は、適応外となります。そのため、男性不妊の検査をし、治療可能な疾患が見つかれば、治療することにより精子の質を高めることができ、結果、人工授精での妊娠率を高めることができます。

治療ができる男性不妊症の原因には、精索静脈瘤というものがあります。精索静脈瘤があると、精巣機能が低下し精子のDNA・染色体がダメージします。治療することにより、精液の改善が行うことができるため、妊娠しにくい場合は、婦人科治療を始める前に男性の検査を受けておくと良いでしょう。

精索静脈瘤について、詳しくはこちらのページでご紹介しています。

精索静脈瘤

早めに不妊治療を始める(35歳までの人工授精)

男性は、常に新しい精子が生産されるのに対し、女性の卵子は、母体内で胎児期に作られるため、再び新しい卵子が生産されることはありません。
実際に排卵する卵子は400から500個程度となりますが、35歳を過ぎると卵子の質も低下し染色体異常が発生するため、年齢の増加とともに妊娠率も低下し、流産率が高まります。

そのため、挙児希望であれば早めに不妊治療を始めることが得策です。

排卵誘発剤の利用

排卵誘発剤は、卵胞を刺激し卵子を成熟させる効果があり、人工授精では、適切な時期に排卵させるために使用されます。
排卵誘発剤には、低刺激なものと高刺激なものとがあります。

低刺激では、クロミフェンクエン酸塩製剤(商品名:クロミッド)やシクロフェニル製剤(商品名:セキソビッド)などがあり、いずれも内服薬なので通院は不要です。視床下部でゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)の分泌を促し、下垂体からの黄体化ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌を促進させます。
一方、高刺激なものではゴナドトロピン製剤を注射します。ゴナドトロピン製剤は、クロミフェンクエン酸塩製剤(商品名:クロミッド)やシクロフェニル製剤(商品名:セキソビッド)が無効な無排卵周期症、または無月経の場合に使用されます。排卵誘発効果は高いですが、卵巣過剰刺激症候群や多胎妊娠の副作用があります。

人工授精がタイミング法の次に用いられる理由

費用負担が軽い

体外受精などに比べると、人工受精は繰り返し行うことができ、比較的費用負担においても軽い方法と言えます。年齢に対して回数の縛りなどがないことも特徴の一つです。

不妊治療における金額の目安は以下の通りです。
(2022年5月現在)

治療 金額 備考
人工授精 5,460円 18,200円の3割負担
その他、管理料等の加算あり
体外受精 12,600円 42,000円の3割負担
顕微授精 14,400~38,400円 48,000円~128,000円の3割負担
年齢に対して回数の制限あり

参考:不妊治療に関する支援について – 厚生労働省

身体への負担が少ない

夫から採取した精子を調整し、直接子宮内に注入するため、低侵襲で身体への負担が少ない治療方法です。
また、医師が介入するのは、精子を子宮内に注入し、その後は精子と卵子が自然に出会うため、自然妊娠に近い方法と言えます。

人工授精の副作用について

出血

カテーテルを子宮に挿入する際に刺激し、少量の出血を起こすことがありますが、出血自体は特に問題ありません。予防的に抗生剤を服用することがあります。

発熱

稀に人工授精を行った後に発熱することがあります。殆どが、子宮、卵管、腹腔内での細菌感染によるもので、予防的に2ー3日程度、抗菌剤を服用します。

多胎妊娠

通常、排卵期には1つの成熟した卵子が排卵されますが、排卵誘発剤により卵胞刺激を行うと多数の卵胞が育ち、排卵されてしまいます。そのため、妊娠率は上昇しますが、双胎などの多胎などのリスクがあります。

卵巣過剰刺激症候群(OHSS)

排卵誘発剤を多量に投与することにより、過剰に卵胞を刺激し多数の卵胞が発育し、卵巣が腫れたり腹水が溜ったりする、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を起こすことがあります。進行すると、腎不全や血栓症などの重篤な合併症を起こすことがあり、不妊治療は中断する必要があります。

この記事の執筆医師

永尾 光一 先生

東邦大学 医学部教授(泌尿器科学講座)
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

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