男性不妊治療・手術の前に行う梅毒検査について | 男性不妊治療は銀座リプロ外科            
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男性不妊治療・手術の前に行う梅毒検査について

 

不妊治療が普及しつつある今、不妊原因の半数は男性側にあると言われています。
しかし不妊の原因を調べるためには、複数の検査を行わなくてはいけません。時間もお金もかかるので、中々治療に踏み切れない方もいると思います。

男性不妊の多くは治療によって改善が見込めます。
治療を始める前にはいくつか検査を行いますが、中には検査に不安を抱えている方もいるでしょう。

当記事では、不妊治療前に行う梅毒検査やその他の検査項目についてご紹介します。
検査の内容や必要性を正しく理解することで、不妊治療への不安や抵抗が無くなれば幸いです。

 

男性不妊・精索静脈瘤にお困りのかたへ
男性不妊の40%精索静脈瘤が原因

男性不妊の40%にある精索静脈瘤は、精巣やその上の精索部(精管、血管、神経、リンパ管などを覆う膜)に静脈瘤(じょうみゃくりゅう・静脈の拡張)が認められる症状のことを指します。一般男性の15%に認められ、男性不妊症患者の40%がその疑いであるとされています。

梅毒とは?

梅毒は、梅毒トレポネーマという細菌が原因で発症する性感染症の一種です。
性交などによって、感染した部位が粘膜・皮膚と接触することで細菌が体内に侵入し、発症します。

梅毒トレポネーマが一度体内に入ると、数時間以内にリンパ節まで達し、血液とともに全身に回ってしまいます。そのため梅毒は、時間の経過とともに全身に症状が現れる病気です。

しかし、梅毒トレポネーマは温度や湿度の変化に弱いので、粘膜や皮膚から離れてしまうと数時間ほどで感染力を失います。そのまま死滅することもありますが、無症状で進行している場合もあるので、適切な検査や診断が必要です。

梅毒は世界中に感染者がいる疾患で、昔から性感染症の代表として恐れられてきた病気です。戦前は不治の病と言われていましたが、現在は医療の進化によって治療が可能になりました。

早期の治療によって完治も目指せる病気ですが、感染力が非常に強いため、感染者数は年々増加傾向です。日本でも、7,000人を超える感染者数(2022年8月7日時点)が報告されていて、今後さらなる増加が懸念されています。

 

梅毒の症状について

梅毒は、病気の経過によって症状が異なるのが特徴です。
詳しくは後述しますが、経過は4段階に分けられ、病気が進行すればするほど症状が重くなります。梅毒の感染によって現れる主な症状は以下の通りです。

  • ・しこり
  • ・リンパ節の腫れ
  • ・潰瘍
  • ・発疹
  • ・発熱
  • ・疲労感
  • ・頭痛
  • ・食欲不振 など…

梅毒に感染しても上記のような症状がなく、無症状のまま重症化してしまう場合もあります。感染が長引けば、骨・筋肉・内臓・脳・心臓までもが病に侵され、最悪の場合死に至ることもあるので、早期発見と適切な治療が大切です。

 

症状と経過について

症状と経過について

梅毒には4つの段階があります。

第一期
梅毒には3週間ほどの潜伏期間があります。潜伏期間を経て、最初に症状が出現した時期が第一期です。

この時期は、梅毒トレポネーマに感染した箇所にしこりができます。このしこりは「初期硬結」とも呼ばれ、非常に小さく、コリコリしているのが特徴です。出血も痛みもないことが多く、自然に軽快します。

また、太ももの付け根近くのリンパ節が腫れることもありますが、痛みがないことが大半です。

これらの症状は一か所に出ることが通常ですが、稀に複数箇所に出現することもあります。多くの場合は数週間で症状が消滅しますが、体内から病原体が排出されたわけではありません。この時期に性交などを行うと、相手にうつる可能性があります。

第二期
第一期で治療をしないまま3か月以上病気を放置しておくと、第二期へと突入します。
梅毒が進行し、細菌が血液によって全身に運ばれてしまうので、手のひらや足の裏などの全身に赤い発疹が現れます。このうっすら赤い発疹はバラの花のようにも見えるため、「バラ疹(ばらしん)」とも呼ばれています。

発疹は自然と消滅する場合もありますが、梅毒が治ったわけではありません。
梅毒トレポネーマは抗菌薬で治療しない限り消滅しないので、症状が軽快していても、体内には病原体が残った状態です。

第三期
梅毒に感染してから3年以上たった時期を第三期と呼びます。
第二期までに感染が発覚して治療を開始する場合がほとんどですが、第三期まで放置してしまうと、ゴム腫と呼ばれるやわらかい腫瘍が出現します。

ゴム腫が出来るのは皮膚だけではありません。骨や内臓、筋肉などにも発生することがあります。ゴム腫の増殖はゆっくりですが、より早く治療を開始することが大切です。

第四期
感染から10年以上経過した状態が第四期です。
この時期になると末期症状が現れ、臓器にも病変が生じます。感染状態によって、心血管梅毒と神経梅毒に分けることが出来ます。

心血管梅毒
心血管梅毒は、大動脈などの心臓につながる血管が感染した状態です。心血管梅毒になると、大動脈の壁が弱まって大動脈瘤が発生します。大動脈瘤ができてしまったことで気管などを圧迫し、呼吸困難や咳がでます。

また、大動脈弁から血液が漏れてしまったり、心臓に血液を運ぶ動脈が狭くなったりするため危険な状態です。心血管梅毒は、胸の痛みや心不全を起こすことがあるので、命に関わることもあります。

神経梅毒
神経梅毒は、細菌が神経に影響を及ぼした状態です。未治療の梅毒感染者の約5%に起こると言われています。

この神経梅毒には4つのタイプがあり、

  • ・無症候型
  • ・髄膜血管型
  • ・進行麻痺型(実質型)
  • ・脊髄ろう型

に分けることができます。

さらに、タイプによって以下のような症状があります。

【無症候型】
髄膜の軽い感染症で髄膜炎を発症することがある。

【髄膜血管型】
慢性の髄膜炎が発生。筋力の低下や体の麻痺、失禁などのほか、脳卒中を引き起こすこともある。

【進行麻痺型(実質型)】
行動に変化がみられ、認知症や精神障害につながる。集中力や記憶力の低下だけでなく、自身を過大に妄想する空想誇大妄想などもみられる。

【脊髄ろう型】
脊髄の病変が進行し、背中・胃・膀胱・のど・足などに強い痛みが出る。体に麻痺が残り、体重が減少する。

上記のように、梅毒が進行すると全身の臓器が侵され、死に至ることがあります。

梅毒の経過は4つに分けられますが、第一期と第二期を早期顕性梅毒・第三期と第四期を晩期顕性梅毒と分類しています。

現代では、晩期顕性梅毒まで進行するのは稀なケースですが、症状があっても軽い場合や無症状の場合は、病気に気付くことが困難です。気づいたときには重症化しているケースもあるので、少しでも上記のような不調を感じたら感染を疑うようにしましょう。

 

不妊症治療・手術前に何故行う?

性感染症の一種である梅毒は、不妊治療を行う前に感染の有無を調べる必要があります。もちろん陽性だった場合には早急な治療が必要です。ではなぜ、検査が必要なのでしょうか。

梅毒の感染を調べる理由はいくつかありますが、中でも大きな理由は赤ちゃんを守るためです。

妊娠している女性が感染すると、母子感染の可能性があります。母子感染は、胎盤を介して胎児が梅毒に感染して「先天梅毒」になった状態です。

先天梅毒の場合、出生時は無症状ですが、生後間もなくリンパ節腫脹・髄膜炎・発疹などの症状が現れます。また、妊娠した女性が梅毒に感染すると妊娠の継続が難しくなり、約40%が死産や流産となります。

母子感染を避けるための梅毒感染予防として、性交の際にコンドームを使用することは有用です。しかし、完全に防ぐことはできません。そのため、妊娠を希望する女性だけでなく、男性も検査が必要です。安心で安全な不妊治療を行うためにも、男女ともに検査を行いましょう。

当院では、手術をお受けいただく患者様に医療安全上お受けいただいております。

 

その他に行うスクリーニング検査について

母子感染が懸念されているのは梅毒だけではありません。そのため、不妊治療を始める前に複数のスクリーニング検査が必要です。女性と男性では検査する項目が大きく異なりますので、それぞれの検査項目を紹介します。

女性が行うスクリーニング検査

  • ・感染症検査
  • ・クラミジア抗体検査
  • ・甲状腺機能検査
  • ・卵巣予備脳
  • ・ホルモン検査

女性は月経周期によってホルモンの値が変わるため、月経周期にあった検査を行います。

  • 【月経期】
  • ・ホルモン検査
  • ・経膣超音波検査

  • 【卵胞期】
  • ・子宮卵管造影検査
  • ・経膣超音波検査

  • 【排卵期】
  • ・経膣超音波検査
  • ・尿中LH検査
  • ・子宮頚管粘液検査
  • ・ヒューナーテスト

  • 【黄体期】
  • ・ホルモン測定

このように月経周期によって検査項目を設けることで、その時期に合ったホルモンの分泌が行われているかどうかが分かります。複数回通院する必要がありますが、自分の体を再確認することで、より効率的な治療を行えるでしょう。

男性が行うスクリーニング検査

  • ・感染症検査
  • ・ホルモン検査
  • ・精液検査
  • ・超音波検査
  • ・尿検査 など…

精液検査で精子がない場合は、染色体検査などで詳しく調べます。また、泌尿器科では、精索静脈瘤の有無を調べるために触診やエコーします。予め検査項目を確認しておくと安心です。

 

男性不妊治療・精索静脈瘤手術は銀座リプロ外科へ

最近は、不妊治療が女性の方では普及しています。妊娠を望むご夫婦のうち5.5組に1組は、不妊の検査や治療をしたことがあるほどです。医療の進歩のほか、晩婚化なども関係し、不妊治療患者は今後も増加する傾向だと言われています。

多くの情報が簡単に手に入る世の中ですが、未だ、不妊の原因が男性側にあるかもしれないという情報はあまり広まっていません。不妊に悩むご夫婦の半数は男性側が原因ですが、不妊の原因は女性にあるという考えが強く残っているためでしょう。

不妊の原因は検査をしないとわからないので、思うように治療が進まないご夫婦が多いです。時間を有意義に使うためにも、不妊治療をお考えの際はご夫婦そろっての受診をお勧めします。

治療前の検査で男性側に原因が見つかった場合には、ぜひ銀座リプロ外科にご相談ください。

銀座リプロ外科では、男性不妊治療の専門家だからこそ行える治療法をご提案いたします。プライバシーに配慮した個室の診察室でお話を伺い、患者様と一緒に治療方針を決めていきます。

また、当クリニックでは、男性不妊の原因で1番多い精索静脈瘤の確実な手術(ナガオメソッド)を日帰りで行うことが可能です。精索静脈瘤手術の第一人者である永尾ドクターだからこそできる日帰り手術は、多くの患者様にご満足いただいております。

不妊治療が身近になった今だからこそ、不妊の原因を探るための検査は重要です。
ご夫婦で検査や治療をすることで、早期の原因発見や不妊改善につながります。協力して取り組むため、ご夫婦の絆も深まることでしょう。

不妊治療はスピードが大切です。少しでもご不安なことがあれば、ぜひ一度、当クリニックまでご相談ください。

精索静脈瘤の手術に関して詳しくはこちらをご覧ください。

この記事の執筆医師

永尾 光一 先生

永尾 光一 先生

東邦大学 医学部教授(泌尿器科学講座)
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

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