パイプカットに合併症や後遺症はある?男性が受けられる避妊手術 - 銀座リプロ外科
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パイプカットに合併症や後遺症はある?男性が受けられる避妊手術

パイプカットに合併症や後遺症はある?男性が受けられる避妊手術

「確実に避妊できる方法を探しているが、手術をして後悔しないか」と、パイプカットの後遺症を心配していませんか。

性行為によって相手の妊娠を望まない場合は、コンドームの使用や低用量ピルの服用などのさまざまな避妊方法があります。

なかでもパイプカットによる男性の避妊手術には高い効果があり、より確実に妊娠を避けられます。手術をしたからといって性生活に影響はなく、男性としての機能を失う心配もありません。

本記事では、パイプカットについて、合併症・後遺症のリスクも交えて解説します。パイプカットをお考えの方はぜひ参考にしてください。

パイプカットを通じて、ライフプランを確実にしたり、性生活を楽しんだりできる未来を手に入れましょう。

 

 

男性不妊・精索静脈瘤にお困りのかたへ
男性不妊の40%精索静脈瘤が原因

男性不妊の40%にある精索静脈瘤は、精巣やその上の精索部(精管、血管、神経、リンパ管などを覆う膜)に静脈瘤(じょうみゃくりゅう・静脈の拡張)が認められる症状のことを指します。一般男性の15%に認められ、男性不妊症患者の40%がその疑いであるとされています。

パイプカットとは

パイプカットとは、正式には「精管結紮術(せいかんけっさつじゅつ)」という、男性が受ける避妊手術です。

精子は、男性の陰のうの中にある精巣で造られ、精巣上体という組織で成熟します。性的刺激によって精管に飛び出し、精液に混ざって体外へ放出されます。

パイプカットは、陰のうを約1cm切開し、精管を切断するまたは縛ることで、精子が精液に混ざらないようにする方法です。精子が造られなくなるわけではなく、ほかの病気になるといった新たな問題がない限りは、パイプカット後も生涯にわたって精巣は機能し続けます。

パイプカットを受けると、基本的には永久的に生殖機能が失われます。再び子どもが欲しいと思っても、確実に元に戻せる保証はありません。

パイプカットは、家族計画を目的として、より確実な避妊を希望する場合に行う手術であることを認識しましょう。パートナーがいる方は、術前に相手とよく相談することが必要です。

 

パイプカットでリスクのある合併症・後遺症

パイプカットは小さいながら傷をともなう手術のため、以下のような合併症・後遺症が起こるリスクがあります。

・出血
・血腫
・感染症
・痛み・違和感
・手術の傷痕

どのような手術でも、出血や痛みのリスクは少なからず存在します。後遺症出現の確率は、執刀する医師のスキルや医療機関の設備によっても異なるでしょう。

パイプカットをする病院を選ぶときは、手術を受けた患者さんのなかで、どのくらいの方が後遺症を発症しているのかを質問することがおすすめです。治療成績の良い病院を選んで手術を受けてください。

出血

出血は、パイプカットの合併症・後遺症として考えられるリスクの1つです。

皮膚や組織を切った部分からの軽い出血がほとんどで、傷口からじわじわと出血が続く場合があります。まれに精管周囲の血管から出血が起こることもあります。

多くは自然に止まりますが、場合によっては止血処置が必要です。傷口は感染が起こりやすく、放置により新たな合併症の原因となってしまいかねません。術後の安静指示や活動再開の目安をしっかりと守ることで、パイプカット後の出血予防につながります。

血腫

血腫も、パイプカット後に起こることのある合併症・後遺症です。血腫は、血管外に出た血液が体外へ出ず、皮膚の下や組織の中で固まってしまう状態で、以下のような原因で起こります。

・手術の際に血管が傷ついた
・止血が不十分であった
・患者さんの血液凝固機能に問題がある

血腫は、一時的に腫れやしこりを生じますが、自然に体内に吸収されて治ることがほとんどです。血腫が大きかったり神経を圧迫して痛みが出たりするときは、取り除く処置が必要になることもあります。

感染症

パイプカットの合併症・後遺症として考えられるリスクの1つが、感染症です。

手術では、小さいとはいえ皮膚に傷がつくので、切開した部分から細菌感染を起こす可能性があります。パイプカット後に以下のような症状が現れた場合は、感染が疑われるため、医療機関を受診しましょう。

・手術部位に腫れ・赤みがある
・手術部位が熱を持っている
・悪寒・倦怠感・発熱といった全身症状がある

感染が起こった場合は抗生物質の内服で治療し、症状が重ければ入院して点滴を受けることもあります。

感染のリスクを抑えるために、術後は、医師からの入浴や性行為の再開の指示を守ってください。手術後に抗生物質を予防的に投与された場合は、決められた期間しっかりと飲み切りましょう。

痛み・違和感

痛みや違和感も、パイプカットの後遺症です。手術後から数日間、陰のうや精巣に鈍い痛みや腫れを感じることがあります。

多くの場合、痛みは徐々に和らいでいきますが、おさまるまでの期間には個人差があり、1週間ほど続くこともあります。消炎鎮痛剤の内服で軽快する方がほとんどです。

ただし、パイプカット後に数週間〜数ヵ月続くような慢性的な痛み(慢性精巣上体炎)を訴える方も、少ないながらも存在します。パイプカットが精巣上体に近い部位の場合に起こりやすいです。生活に支障が出る場合は、精巣上体摘出術といった手術が推奨されることもあります。

手術の傷痕

パイプカットで気になる後遺症の1つが、手術の傷痕が瘢痕化(はんこんか)するリスクです。瘢痕化とは、傷が残って目立つことです。

パイプカットでは、左右の陰のうに対して、それぞれ1cm程度の小さな切開が行われます。陰のうの傷口は目立ちにくいものの、傷の治りが遅れたりケロイド体質だったりすると、傷痕が盛り上がり、次のような症状を生じることがあります。

・かゆみ
・痛み
・引きつれ感
・赤み

切開した傷よりも大きく広がってしまうケロイドになると、見た目が気になったり、皮膚とこすれて不快感が出現したりする方もいるでしょう。手術部位に違和感がある場合は自己判断で放置せず、できる限り早くクリニックへ相談してください。

 

パイプカットの後遺症についてよくある質問

避妊手術に不安がある男性に向けて、パイプカットの後遺症についてのよくある以下の質問にお答えします。

・性欲減退が起こるのでは?
・精液が出なくなる?
・ほかの病気のリスクが上がるのではないか?
・確実に避妊できる?

「パイプカット=男性機能の喪失」といったイメージは誤っていることを確認しましょう。

性欲減退が起こるのでは?

適切な方法でパイプカットを行えば、術後も精子や男性ホルモンは生成され続けるため、性欲に影響はありません。

パイプカットは精子を通す精管を切るだけで、血管・神経には一切手を加えないことが基本です。男性ホルモンは精管ではなく血管を通るため、手術の影響を受けることはないといえます。

パイプカットの前後で、性欲・勃起力・性的快感などは変化しないと考えて良いでしょう。「妊娠の心配が減ってリラックスできるようになった」と、より性的活動を楽しめることも期待できます。

ただし、手術の精度が低く、血管や神経を温存できなかった場合は、男性機能やホルモン分泌が低下する恐れがあります。精管動脈を温存する精度の高い手術を選択しましょう。

精液が出なくなる?

パイプカットは、精液中に精子が混ざらないようにする手術なので、術後も射精は可能です。

精液の90%以上は前立腺や精のうから分泌される液体で構成されており、精子が占める割合はわずか5%以下です。パイプカットでは5%に満たない精子を運ぶ通路を遮断するだけのため、射出される精液の見た目や量に大きな変化はありません。

性交渉や自慰行為において、パイプカット後に射出されるのは精子がいない精液ですが、射精は術前と変わらず行えます。

ほかの病気のリスクが上がるのではないか?

パイプカットを行なっても、心臓病・脳卒中・高血圧などのリスクが上昇するという報告はありません。複数の医療機関のホームページや専門サイトでも「高血圧のリスクが上がることはない」と明言されています。

過去に「パイプカットが前立腺がんのリスクを高める可能性がある」とする研究もありました。しかし、近年の大規模な疫学研究では、「精管切除と前立腺がんリスクに明確な関連性は認められない」と結論づけられています。

病気を心配しすぎてストレスを溜めるほうが、循環器疾患や脳血管疾患のリスクを高めてしまいかねません。「パイプカットが原因で病気になることはない」と認識して良いでしょう。

ただし、ご家族に高血圧やがんの方が多い場合は、パイプカットに関係なく定期的に健康診断を受けることをおすすめします。

確実に避妊できる?

パイプカットは非常に高い確率で(ほぼ100%)避妊できる方法ですが、確実に妊娠しないとはいえません。次のような場合は、パイプカット後でも性交渉の相手が妊娠する可能性があります。

・パイプカット前の精子が残っていた
・精管が再開通した

パイプカット後、しばらくは術前に造られた精子が精管内に残っています。術後すぐに避妊せず性行為を楽しめるわけではなく、精液検査を受けて精子が射出されないことを確かめることが必要です。それまではコンドームを使用しましょう。

ごくまれですが、精管が自然に再開通する症例も報告されています。より確実な避妊のためには、定期的な精液検査を推奨します。

 

パイプカットで後遺症が出ないようにするには

パイプカットを確実に成功させ、後遺症を回避するためには、安全かつ正確に手術を行うことが必要です。

パイプカットで切断または結紮する精管の太さは、およそ3mmです。さらに、数mmほどの血管やリンパ管、神経などと一緒に、精索と呼ばれる1つの束になっています。

精管だけを確実に切断・結紮するには、非常に高い技術が必要であることがわかるでしょう。

当院で実施している顕微鏡下動脈温存パイプカット手術は、マイクロサージャリー(微小外科)と呼ばれる技術を使って行われます。また、当院では顕微鏡下パイプカット再建術も行なっているため再建に支障がないパイプカットを行なっています。

マイクロサージャリーとは、手術用のルーペや顕微鏡を使って微細な血管や神経を処置する、非常に繊細な手術法のことです。高度で熟練した技術を要するため、研鑽を積んだ限られた医師しか執刀できません。

当院の顕微鏡下動脈温存パイプカット手術の方法や費用をチェックする

合併症リスクを抑えるためには、入浴や運動といった術後の生活の制限や、性行為の再開時期について医師からの注意点をよく守ることも大切です。術後に少しでも気になる症状があれば、早めにクリニックに相談しましょう。

 

当院におけるパイプカットの手術の流れ

パイプカットを当院で受ける際の流れを説明します。当院の顕微鏡下動脈温存パイプカット手術は、マイクロサージャリーという高レベルな技術を用いた精度の高い手術であることが特徴です。

手術の概要を知り、パイプカットを受ける不安を少しでも減らす一助としてください。

術前

当クリニックは、完全予約制です。事前に予約フォームからご予約のうえご来院をお願いいたします。お一人でも、パートナーの方といらしても問題ございません。

当院は個室診療のため、誰かに聞かれる心配なく、避妊やパイプカットといったプライベートなご相談をしていただけます。

術前には、問診・触診のほかご希望に応じてエコー検査を実施し、医師がパイプカットについてご説明します。手術をご希望の場合は、感染症確認のための血液検査を受けていただくという流れです。

手術

パイプカットは、マイクロサージャリーの技術を用いて局所麻酔で行います。患者さんは意識がある状態なので、医師やスタッフとお話をしながら、ぜひリラックスして手術をお受けください。

手術では、執刀医が顕微鏡をのぞきながら、確実に精管であることを確認したうえで結紮します。さらに、処置した精管の断面を筋膜で覆い、再開通を防ぎます。

精管動脈や精管神経などの精子の通り道ではない器官は温存するので、以下の3つが期待可能です。

・術後の痛みの軽減
・精巣の血流維持
・男性ホルモン低下の予防

希望された方には切断した精管の拡大写真を、ご自身で確認していただいています。

術後

当院の顕微鏡下動脈温存パイプカット手術は局所麻酔で行うので、術後の体調に問題がなければ日帰りしていただけます。シャワーは翌日から、入浴は2週間後から可能です。

痛みや腫れは通常数日のうちに落ち着きますが、痛みや腫れが続くようであれば早めにクリニックへご相談ください。

手術直後は、手術前に精管を通った精子が残存している状態です。術後しばらくの間は、精液に精子が混ざっています。

1週間ほどが経過し、腫れがおさまったら性交渉の再開が可能です。ただし、精液検査で精子が射出されなくなったことが確認できるまでは、必ずコンドームで避妊を行なってください。

パイプカット後に15~20回ほど射精するまでは、精子が残っているといわれています。精液検査は、手術から1~2ヵ月後を目安に行うと良いでしょう。

当院でパイプカットを受けられた方には、「パイプカット証明書」を発行していますので、ぜひご活用ください。

 

パイプカットをご希望の方は当院へ

パイプカットをご希望の方には、当院での顕微鏡下動脈温存パイプカット手術をおすすめします。当院は、顕微鏡手術のプロフェッショナルがそろう泌尿器科です。

パイプカットは、高度な技術を要する避妊手術です。安全で確実な手術を行えば、コンドームのようなほかの方法に比べて避妊率は格段に高くなります。

しかし、誤って精管ではない別の器官を結紮すれば、避妊効果がないばかりか、慢性的な痛み・男性機能の低下のような後遺症が出る可能性があるでしょう。

当院では、スーパーマイクロサージャリーの技術を持ち、精管の特徴を熟知した医師が執刀しており、安全で確実な手術を日帰りで受けていただけます。

パイプカット再建も手がけているため、「パイプカットを受けたあとに子どもが欲しくなった」という場合も視野に入れた処置が可能です。

パイプカットをご検討中の方は、予約フォームからお申し込みのうえ、ぜひ一度当院へご相談ください。

パイプカットの初診を予約する

この記事の執筆医師

永尾 光一 先生

永尾 光一 先生

東邦大学 医学部教授(泌尿器科学講座)
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

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