男性不妊症は治療できる?原因や検査の種類・受診できる科を紹介 | 男性不妊治療は銀座リプロ外科            
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男性不妊症とは?原因や検査・治療方法を解説

男性不妊症は、妊娠を望むカップルにとって重要なトピックの1つです。原因によっては治療が可能ですが、男性不妊症を専門にしている医療機関はまだ多くはありません。

本記事では、男性不妊症の主な原因や種類、治療方法について詳しく解説します。「妊活しているのに成果が出ない」「もしかして自分に原因があるのでは?」と心配な方は、ぜひ参考にしてください。

 

 

男性不妊症とは

男性不妊48%、女性不妊50%、夫婦療法2%

男性不妊症とは、不妊の原因が男性側にあるケースのことです。WHO(世界保健機関)は、不妊期間が1年を超えることを不妊と定義しています。

WHOの調査では、男性に原因がある不妊が48%と報告されており、決して珍しくはありません。

男性不妊症であっても、適切な治療によって精液所見を改善させることで、妊娠の可能性を高められます。

 

男性不妊症の原因・種類

男性不妊症の原因は、大きく以下の3つに分類されます。

1. 造精機能障害
2. 精路通過障害
3. 性機能障害

男性不妊症にはいくつかの要因がからむケースが多いため、原因を特定するためには専門知識が欠かせません。「不妊の原因が自分にあるかもしれない」と不安な方は、泌尿器科で診察・超音波検査を受けて確認しましょう。

1.造精機能障害

男性不妊症で最も多い原因は、質の良い精子を造る機能が低下することです。

造精機能障害は、以下のような病気で起こります。

・精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)
・非閉塞性無精子症

男性不妊症の原因として最も多く、患者さん全体の約40%に認められる疾患が「精索静脈瘤」です。

精索静脈瘤は、精巣から心臓へ血液を戻す血管内で逆流が起こり、陰のうや精索で瘤(こぶ)のように拡張してしまう病気です。血液のうっ滞で精巣温度が上昇し精巣機能を低下させ、精子の質や量に悪影響を及ぼします。

精索静脈瘤は、乏精子症・精子無力症の原因の1つです。乏精子症は精液中の精子数が1600万個/ml未満の状態のことです。精子の運動率が42%未満の状態を精子無力症といいます。

無精子症は精液の中に精子がまったく含まれていない状態で、閉塞性と非閉塞性の2つに分類されます。ホルモンや染色体の異常、先天的な形成不全によって、精巣内で精子が造られていない状態が非閉塞性無精子症です。

造精機能障害を起こしている原因で最も多い病気が精索静脈瘤で、診察と超音波検査が必要です。精索静脈瘤は手術によって改善し精液の改善や自然妊娠が期待できます。

造精機能障害の原因や治療方法を詳しく見てみる

2.精路通過障害

精路通過障害も男性不妊症の原因の1つで、精子が造られていても射精時に精液中に現れない状態を指します。無精子症のうち、閉塞性無精子症は精路通過障害です。

精巣で造られた精子は精巣上体で成熟し、精管・射精管の順に通って尿道から排出されます。しかし、通り道が塞がっていたり狭くなっていたりすると、精子が体外に出られません。通路が完全に塞がっている状態は、精路閉鎖と呼ばれます。

精路通過障害の原因は、以下のとおりです。

先天的な要因 先天性両側精管欠損症
後天的な要因 ・尿道や精巣上体・精管の感染症などによる炎症
・射精管閉塞症
・前立腺嚢胞
・小児期両側鼠径(そけい)ヘルニア手術の後遺症
・精管結紮術(パイプカット)

 

精路通過障害は、精路再建術といった外科的治療によって改善できるケースがあります。
当院では、日帰り顕微鏡下パイプカット再建術を行っており精子の出現率90%です。

3.性機能障害

男性不妊症は、性機能障害が原因で起こることもあります。性機能障害の約4割は、勃起不全(ED)と射精障害の2つです。残り6割は原因不明とされ、心理的要因があると考えられています。

EDは、不妊治療におけるタイミング法のプレッシャーがきっかけで発症するケースも少なくありません。ED治療薬で改善が見込める場合もあるため、早期の治療が重要です。

無射精症 射精に達しない
逆行性射精 精液が膀胱に流れ込む
早漏 射精のタイミングが早すぎる
遅漏 射精までに時間がかかりすぎる
膣内射精障害 マスターベーションではできても性交時に射精できない

 

膣内射精障害の対処法の1つが、性交時に一度陰茎を抜き、カップに射精し、針なしの注射器で精液を膣に注入する方法です。

勃起不全と射精障害はともに、心理的要因がからんでいるだけでなく、ホルモン異常が原因の可能性もあります。他人には相談しにくいかもしれませんが、一人で思い悩まずに専門家のサポートを頼ることも考えましょう。

 

男性不妊症の検査方法

男性不妊症は、以下の方法で検査が可能です。

・精液検査
・触診
・超音波検査
・採血によるホルモン検査
・染色体検査
・性感染症検査

精液検査を受ける際は、精子の質が低下しないよう病院内での採精をおすすめします。3日間ほど禁欲したあとに採取し、精子の状態を確認します。正常値は、精液量1.4ml以上、精子濃度1600万/ml以上、運動率42%以上です。

精液検査の結果の見方を詳しく知りたい

触診・超音波検査では、精巣の大きさや精索静脈瘤・精管の有無を調べます。

ホルモンのバランスが崩れていないかの血液検査を行うこともあります。調べる項目は、男性ホルモンの一種であるテストステロンや、性腺に働きかけるLH・FSH、性欲に作用するプロラクチンなどです。

遺伝子検査の一種である染色体検査は、血液を採取して行われます。

性感染症検査も、男性不妊の原因特定のために重要です。淋菌やクラミジアなどは、尿道炎や精子の運動率低下を引き起こすことがわかっています。

治療方針を決めるうえで、検査による原因の特定は不可欠です。夫婦ともに妊娠を望んでいるのであれば、女性と同じタイミングでぜひ不妊検査を受けましょう。

※当院では、精液検査といった基本的な検査は実施しておりません。検査をご希望の方には、山王病院リプロダクション科(赤坂)をはじめとする提携の医院をご紹介いたします。

 

男性不妊症の治療を検討する目安

避妊せずに性交渉を続けても1年間妊娠に至らない場合は、不妊症に当てはまるため、検査・治療を検討しましょう。ただし、女性の年齢が35歳以上であったり、男性に自覚症状があったりするケースは、早期の治療がおすすめです。

男性のなかには、不妊に対する当事者意識が低い方もいます。しかし、喫煙や過度な飲酒といった生活習慣や精索静脈瘤をはじめとする病気が、精子の質に悪影響を及ぼしている可能性もあります。

パートナーとともに検査を受け、適切な治療方針を決めましょう。早期の治療開始が妊娠の可能性を高める鍵です。

 

男性不妊症の治療方法

男性不妊症の治療方法と目的は、以下のとおりです。

根本的治療 不妊原因を直接治療して生殖機能を改善させる
対症療法 不妊原因の治療はせずに妊娠を目指す
補助的治療 ほかの治療法の補助として導入する

 

個々の不妊原因や状況に応じて治療法が選択されます。専門医・パートナーとよく相談し、適切な治療計画を立てることが重要です。

 

男性不妊症の根本的治療が適するケース

根本的な治療法が適する男性不妊の原因は、以下のとおりです。

不妊の原因 根本的な治療法
精索静脈瘤 日帰り顕微鏡下精索静脈瘤手術・ナガオメソッド
精路通過障害 精路再建術
低ゴナドトロピン性性腺機能低下症 ホルモンの自己注射

 

根本的治療により不妊の原因を解消できれば、妊娠に向けた今後の計画が立てやすくなります。各症状と治療方法を確認しましょう。

精索静脈瘤|日帰り顕微鏡下精索静脈瘤手術・ナガオメソッド

精索静脈瘤の治療として当院で採用している独自の手術方法は、「日帰り顕微鏡下精索静脈瘤手術・ナガオメソッド」です。局所麻酔での手術であるうえ、1時間程度で終わるので、日帰りで受けられます。

鼠径部下で約2.5cmの小さな切開を行い、顕微鏡を使って精索内の逆流静脈のみを丁寧に識別し、結紮(けっさつ)・切離します。動脈やリンパ管・神経などの大切な部分を残せるため、合併症や再発のリスクが低い点もメリットです。内精逆流静脈結紮だけでなく、外陰部逆流静脈も結紮できるので再発が低いです。

手術後の患者さんの87%に精液所見の改善が見られており、自然妊娠率の向上が期待できます。

日帰り顕微鏡下精索静脈瘤手術・ナガオメソッドは、手術のあと1週間経てば性交渉の再開が可能です。婦人科の不妊治療は、精子のDNAの改善を待ち、2ヵ月後からをおすすめしています。

精路通過障害|精路再建術

精路通過障害には、精路再建術が有効です。精路再建術は精子の通り道が閉塞しているケースのうち、再建可能な場合に行います。

以下の3つが具体的な術式で、閉塞部位や原因に応じて選択されます。

術式名 対象となる閉塞
精管精管吻合術 パイプカットや鼠径ヘルニア術による精管の閉塞
精管精巣上体吻合術 精巣上体炎によって精巣上体に起こる閉塞
射精管解放術 前立腺嚢胞によって射精管に起こる閉塞

 

当院では、パイプカットにより遮断された精路を再建する精管精管吻合術のみ実施可能です。手術時間は120~150分ほどで、入院の必要はなく日帰りで行えます。

過去に避妊目的でパイプカットを受けた方で、妊娠を希望する場合は、当院にご相談ください。

低ゴナドトロピン性性腺機能低下症|ホルモンの自己注射

低ゴナドトロピン性性腺機能低下症の治療には、ホルモンを補う方法が有効です。低ゴナドトロピン性性腺機能低下症は非常に稀な疾患で、精巣を刺激する性腺刺激ホルモンの減少により男性ホルモンの分泌量が低下し、精子形成不全を起こす病です。

低ゴナドトロピン性性腺機能低下症に嗅覚障害をともなう場合はカルマン症候群と呼ばれます。

低ゴナドトロピン性性腺機能低下症には、下垂体から分泌されるホルモンの一種であるFSHやLHを自己注射する治療が有効です。3~6ヵ月で効果が現れることが多く、男性ホルモンの分泌促進や精子形成不全の改善が期待できます。

 

男性不妊症の対症療法

男性不妊症の対症療法は、不妊の直接的な原因の治療をせず、以下のような方法で妊娠を目指す方法です。

対症療法名 治療方法 適するケース
人工授精 精子を子宮内に直接注入する ・精子の運動率が低い
・性交障害がある
体外受精 卵子と精子を体外で受精させ、受精卵を子宮内に移植する ・精子の数が少ない
・精子の運動率が低い
顕微授精 精子を卵子に直接注入して受精させる ・精子が非常に少ない
・精子運動率が極めて低い
精巣内精子採取術(TESE) 精子を精巣から採取して顕微授精する 無精子症

 

選択すべき対症療法は、男性の精液所見に左右されます。

精索静脈瘤があると、精子の遺伝子がダメージを受け、精液の質が低下する可能性があります。先に精索静脈瘤を治療することにより、対症療法の種類のステップダウンや、自然妊娠の成功、流産のリスク低減が望めるでしょう。

人工授精といった対症療法を行う前に精索静脈瘤の有無を確認し、必要に応じて適切な治療を受けることをおすすめします。

 

男性不妊症の補助的治療

サプリメントや漢方薬を用いた補助的治療も、男性不妊の治療法の1つです。精子の質の改善や増加を目指す方法ですが、すべてに医学的根拠があるとは限りません。

妊活する男性に対してよく使われるサプリメントは、以下のとおりです。

・コエンザイムQ10
・L-カルニチン
・亜鉛

男性不妊の治療に使われる漢方薬は、補中益気湯・六味丸・八味地黄丸・牛車腎気丸などです。漢方薬が精液所見の改善に効果があるとする研究も存在し、サプリメントとの併用や治療の一助としての使用が行われています。

医学的根拠の少ない漢方薬やサプリメントに頼って時間を無駄にしないよう、泌尿器科医とエビデンスの高い治療法を相談のうえ使用してください。

 

男性不妊症の治療は何科で行われる?

男性不妊症の診療は、不妊治療を専門としている泌尿器科や産婦人科で行われます。精索静脈瘤といった男性不妊の原因を触診や超音波検査で的確に診断し、適切な治療を行える医療機関を選ぶことが重要です。

男性が不妊治療を検討する際は、不妊を専門としている泌尿器科の受診がおすすめです。泌尿器科では、診察と超音波検査によって、精索静脈瘤のような男性不妊症の原因を短時間で診断できます。

不妊の原因を突き止めて早期に手術を行うことで、精液所見の改善や自然妊娠の可能性が高まります。適切な診断と治療を受け、妊娠への第一歩を踏み出しましょう。

 

男性不妊症の治療は当院へご相談を

「男性不妊症かもしれない」と感じた際は、ぜひ当院にご相談ください。

専門的な知識と技術を持つ医療機関で診察を受けることが、男性不妊症の治療における重要なポイントです。当院は男性不妊治療を専門とし、特に日帰り顕微鏡下精索静脈瘤手術・ナガオメソッドにおいて高い治療成績を有しています。

男性不妊症は、適切な診断と治療により改善できる場合があるため、お悩みの方はぜひ当院をご利用ください。

この記事の執筆医師

永尾 光一 先生

永尾 光一 先生

東邦大学 医学部教授(泌尿器科学講座)
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

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