「避妊の方法に悩んでいる」「確実に妊娠を防ぎたい」という思いがあるなら、避妊法は慎重に選びましょう。
避妊法にはコンドームやピル、IUDなど多くの種類があり、特徴や確実性が異なります。女性の負担をともなう方法もあるので、パートナーと十分に相談して選択することが大切です。
本記事では、6種類の避妊法の特徴や違いを解説します。確実性の高い避妊法であるパイプカットのメリット・デメリットに加え、当院の手術の特徴も紹介するので、選択肢の1つとしてぜひ参考にしてください。
- 男性不妊・精索静脈瘤にお困りのかたへ
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男性不妊の40%にある精索静脈瘤は、精巣やその上の精索部(精管、血管、神経、リンパ管などを覆う膜)に静脈瘤(じょうみゃくりゅう・静脈の拡張)が認められる症状のことを指します。一般男性の15%に認められ、男性不妊症患者の40%がその疑いであるとされています。
避妊法の種類6選
避妊法は大きく分けて6種類あり、それぞれの概要は以下のとおりです。
避妊方法 | メリット | デメリット | 一般的な使用時の 避妊失敗率 |
---|---|---|---|
コンドーム |
・手軽に購入・使用できる ・性感染症が予防できる |
破損や装着ミスがあると効果が落ちる | 約15% |
低用量ピル (経口避妊薬) |
・避妊効果が高い ・月経痛軽減や周期も安定する |
・服用忘れがあると効果が低くなる ・副作用がある |
約9% |
アフターピル (緊急避妊薬) |
性行為後でも避妊できる |
・副作用が出やすい ・服用が遅れると効果が期待できない |
1.34% |
IUD (子宮内避妊器具) IUS (子宮内避妊システム) |
長期間使用できる |
・挿入時に痛みがある ・出血や合併症のリスクがある |
IUD:約0.8% IUS:約0.1~0.2% |
リズム法 |
・副作用がない ・費用がかからない |
・排卵日の確実な予測が難しい ・継続的な観察・記録が必要となる |
約25% |
避妊手術 | 半永久的に避妊できる |
・元に戻すことが難しい ・女性の手術は負担が大きい |
男性:0.15% 女性:0.6% |
避妊法の種類によって労力や失敗率が異なるため、しっかりと確認しましょう。
1. コンドーム
コンドームの使用は日本でよく知られた避妊法で、性器に装着して精子が膣や子宮に入ることを防ぎます。一般的な男性が装着するタイプのコンドームは、コンビニやドラッグストアなどで手軽に購入できることが大きなメリットです。
コンドームは性感染症(STI)の予防にも効果があるため、健康を守るうえでも重要な役割を果たします。
使用方法を誤ったり、性行為のときに破れてしまったりすると避妊効果はありません。一般的な使用下での避妊失敗率は15%前後とされ、ほかの避妊法と比較するとやや高めです。
誤った保管方法による品質の劣化も避妊失敗の原因になります。高温多湿や直射日光が当たる場所で保管したり、財布の中に長期間入れていたりすると、劣化を招き破損リスクが高まるため、注意してください。
コンドームで避妊する場合は、正確な装着・処理と適切な保管を心がけましょう。
2. 低用量ピル(経口避妊薬)
低用量ピルは女性が服用することで排卵を抑え、妊娠を防ぐ避妊薬です。女性ホルモンである黄体ホルモンと卵胞ホルモンの配合量によって複数の種類があり、目的や体質によって選ぶ必要があります。
低用量ピルの種類は、以下のとおりです。
種類 | 特徴 | 適している人 |
---|---|---|
1相性ピル |
・配合される女性ホルモン量が一定である ・生理期間は飲まない |
服用管理をシンプルにしたい人 |
3相性ピル |
・1シートのなかで女性ホルモン量が3段階に変化する ・生理期間は飲まない |
体内のホルモンバランスを自然な状態に保ちたい人 |
ミニピル (黄体ホルモンのみ) |
・エストロゲン不使用で副作用が少ない ・服用時刻が3時間以上ずれると効果が失われる ・生理期間も含めて毎日服薬する |
授乳中や血栓リスクがある人 |
低用量ピルは、失敗する確率が約9%と高い避妊効果があり、月経痛やPMSの緩和にも役立ちます。
一方、薬を飲み忘れると効果が低くなり、決められた期間は1日1回欠かさずに服用し続けなければなりません。処方のために定期的な婦人科通院を求められることもデメリットといえるでしょう。血栓症リスクがある、または副作用が強い方は服用できないケースもあります。
パートナーがピルを使用している場合は避妊を任せきりにせず、副作用やリスクを理解し、配慮する姿勢が大切です。
3. アフターピル(緊急避妊薬)
アフターピルは性行為後にできる避妊法です。排卵抑制や着床阻害の効果がある内服薬で、性行為後72時間以内の服用が求められます。
日本で承認済みの薬剤は、以下の2種類です。
・ノルレボ錠
・レボノルゲストレル錠
アフターピルの薬剤メーカーによると、性行為後72時間以内の服用で妊娠する確率は1.34%とされています。服用して3週間程度経ったら、検査薬で妊娠をしていないか確認しましょう。
頭痛や吐き気などの副作用が出るケースも稀にありますが、数日で治まることが一般的です。保険適用されず全額自己負担のため、費用は6,000~2万円とやや高額です。
アフターピルは普段から使える方法というより、避妊に失敗したときの「最終手段」として位置づけられています。
2023年11月から一部の薬局で試験的に、処方箋がなくても薬剤の購入が可能となりました。避妊に失敗してアフターピルが必要になった場合は、取り扱いのある薬局か婦人科へ早めに行き、処方してもらいましょう。
4. IUD(子宮内避妊器具)・IUS(子宮内避妊システム)
女性が行う避妊法として、IUD(子宮内避妊器具)とIUS(子宮内避妊システム)も挙げられます。IUD・IUSとは、小さな器具を子宮内に挿入して精子の侵入・受精・着床を防ぐ長期避妊法です。
製品名 | タイプ | 有効期限 | 特徴 | 避妊失敗率 |
---|---|---|---|---|
IUD |
・銅付加型 ・銅非付加型 ・薬剤付加型 |
3〜10年 ※種類によって異なる |
・排卵を妨げない ・月経量が増える場合がある |
約0.8% |
IUS | 黄体ホルモン放出型 | 5年 |
・月経量が減少する ・子宮内膜が薄くなる |
約0.1~0.2% |
婦人科での処置が必要となるものの、高い避妊効果と利便性の良さがメリットです。
一方、IUD・IUSの挿入時には痛みや不快感をともなうことがあり、出血や感染症、器具の脱落などのリスクも存在します。
自由診療扱いとなるIUD・IUSの費用は、器具代や挿入費用、診察代を含めて5~10万円と高額になりやすい傾向です。定期的な検診も必要となるので、女性の負担が大きくならないよう、男性の理解とサポートが重要といえます。
5. リズム法
リズム法は、排卵のタイミングを予測して妊娠しやすい時期の性行為を避ける、従来の避妊法で、以下の種類があります。
基礎体温法 | 毎朝の基礎体温から排卵日を推定 |
---|---|
頸管粘液法 | おりものの状態から排卵期を判断 |
月経周期法(カレンダー法) | 前回の月経から予測 |
リズム法は費用がかからず、身体的な負担が少ない一方、避妊に失敗する確率は25%前後とリスクの高い方法です。
女性の排卵日はストレスや体調で変動しやすく、確実な予測は難しいため、リズム法はほかの避妊法と組み合わせて行いましょう。
6. 避妊手術
避妊手術とは、精子や卵子の通り道である精管・卵管を物理的に遮断し、受精そのものを根本的に防ぐ確実性の高い避妊法です。
男性が受ける「精管結紮術(せいかんけっさつじゅつ)」は、精管を糸で縛り切離する手術で、パイプカットとも呼ばれます。
パイプカットは体への負担が少ないうえ避妊効果が高く、術後に妊娠する確率は0.15%です。局所麻酔で行える場合がほとんどで、傷も小さくてすみます。
女性に対する避妊手術は「卵管不妊手術」と呼ばれ、卵巣から子宮へ続く卵子の通り道を、クリップやバンドで挟んだり、熱で塞いだりする方法です。卵管が塞がることで卵子が子宮に届かなくなり、妊娠できなくなります。
女性の避妊手術は全身麻酔で行われ、入院が必要です。術後の妊娠率も0.6%と、男性の避妊手術と比べるとやや高めです。男性と女性の避妊手術を比較すると、パイプカットのほうが負担が軽いうえに効果が高いことがわかります。
おすすめの避妊方法はパイプカット
より高い避妊効果を求めるなら、パイプカットがおすすめです。
執刀する医師の技術によって、パイプカットの効果や再建の可否は異なるので、手術を受けるクリニックは慎重に選ぶことが大切です。
パイプカットで避妊するメリット・デメリットと、当院で行われている手術の特徴を紹介します。避妊手段を検討する際の参考にしてください。
パイプカットで避妊するメリット
パイプカットで避妊するメリットは、以下の6つです。
・避妊の成功率が99%以上と非常に高い
・避妊のためのコンドームが必要ない
・一度の手術で半永久的に効果が続く
・精液の量や見た目に変化はない
・コンドームやピルのような継続コストが発生しない
・女性に身体的・経済的負担を強いる必要がない
夫婦で「妊娠を望まない」と考えている場合、コンドーム装着の煩わしさや、ピルの副作用に悩む必要がなくなります。日常的な避妊管理から解放され、精神的に大きな安心感を得られることが魅力です。
定番のゴム製コンドームは、男女どちらかにラテックスアレルギーがあると使用が難しいでしょう。パイプカットであれば、健康上の理由で避妊が難しいケースでも有効です。
精度の高い手術で精管動脈や神経を温存することで、精力や勃起力・感度を損なわずにパートナーとの性行為に集中できます。妊娠の心配が解消し、性生活の満足度が向上することも大きなポイントです。
パイプカットで避妊するデメリット
パイプカットでの避妊には、以下のデメリットや注意点があります。
・避妊の確率は100%ではない
・性感染症を予防できない
・再吻合しても妊娠に至らない可能性がある
・精管動脈を誤って結紮すると合併症が起こりかねない
・精管が自然につながるケースがある
避妊効果が高いとはいえ、手術後すぐに精液中の精子がなくなるわけではありません。術後は精管に精子が残っているため、確認せずに性行為をすると、意図しない妊娠につながるリスクがあります。
性感染症の不安がある場合は、引き続きコンドームを使用しましょう。パイプカットは避妊はできますが、性感染症は防げません。
再び妊娠を望んだ際はパイプカット再建術という手段があるものの、良い結果を得るためには医師の高い技術力と経験が不可欠です。パイプカット再建しない場合は、精巣上体精子回収法(MESA)や精巣内精子採取術(TESE)で精子を採取して、顕微授精で妊娠を目指す必要があります。
術者の技量不足で精管と一緒に精管動脈も結紮してしまうと、血流が悪くなり、精巣の機能低下や萎縮、男性ホルモンの減少などが起こります。男性ホルモンの減少は更年期障害につながるため、注意が必要です。
パイプカット後、稀に精管が再びつながり体外に精子が出てくることもあります。手術後は定期的に精液検査を受けると、より確実に避妊できるでしょう。
当院が行うパイプカットの特徴
当院は、以下の特徴を持つ「顕微鏡下動脈温存パイプカット手術」を実施しています。
1.高い精度の顕微鏡下手術
2.動脈温存による合併症予防が可能
3.再建を見据えて切離位置を調整
避妊効果の高さと将来の選択肢を残せる点が当院で手術を行うメリットです。
パイプカットは将来の妊娠を望まないご夫婦にとって、確実性の高い避妊法です。しかし、精管の処置には高度な技術が求められ、医師の技量によって術後の結果に差が出ることもあります。
当院のパイプカットは局所麻酔を使用した日帰り手術で、術中の痛みはほとんどありません。
高倍率の手術用顕微鏡を使用することで、精管と周囲にある血管・神経を正確に識別可能です。精管のみを的確に処置し、術後の痛みや合併症のリスクを低減します。自然に再開通しないよう予防の処置も行なっているので、避妊効果をより確実に継続できます。
パイプカット再建術をしやすい位置で精管を切離しており、「やはり子どもが欲しい」と気持ちが変わった際も対応可能です。
術後に軽度の痛みを感じる方もいますが、鎮痛剤を服用すれば対処でき、数日で治まるケースがほとんどです。
術後はカットされた精管断端の拡大写真と、パイプカット証明書をお渡ししています。パートナーとのコミュニケーションや、詐欺の予防にお役立てください。
パイプカットに関してよくある質問
避妊効果が高いパイプカットについて理解を深めるために、以下のよくある質問に回答します。
・パイプカットを受けるための条件はある?
・仕事に影響は出る?
・術後はいつから性行為できる?
・一度パイプカットしたら元には戻せない?
「手術を検討しているけど不安がある」という方は参考にしてください。
パイプカットを受けるための条件はある?
パイプカットで避妊手術を受けるためには、以下の条件を満たすことが求められます。
・本人の明確な意思がある
・パートナーの合意が得られている
・18歳以上である
・安全に手術を受けられる健康状態である
避妊手術は原則として取り消しがきかないため、「一時的な感情」ではなく、十分な理解と納得のうえで選択しましょう。
配偶者や長期的なパートナーがいる場合、避妊手術の選択は将来のライフプランに大きくかかわります。事前に話し合いを行い、双方が納得して手術を受けることが大切です。
重度の持病や出血傾向がある方は、手術リスクを踏まえて判断する必要があります。初診時に問診や体の状態に応じた検査を行い、安全性を確認します。
「本当に手術を受けるべきか悩んでいる」という段階でも問題ありません。不安な点を解消するためにも、お気軽に初診をご予約ください。
仕事に影響は出る?
多くの場合、避妊手術のパイプカットを受けても、仕事への影響は最小限に抑えられます。当院のパイプカット手術は、局所麻酔で行う日帰り手術のため、デスクワークであれば当日から取り組んでいただけます。ハードな力仕事でないかぎり、基本的に翌日から可能です。
「術後の痛みが仕事に影響するのでは?」と心配になる方もいるでしょう。市販の鎮痛剤で対処できる軽度の痛みの方が大半ですが、症状が強い場合は適宜薬を処方します。
シャワーは翌日から、入浴(湯船につかる)は2週間程度経ってからが目安です。術後の感染や腫れを防ぐために守ってください。
できるだけ仕事を休みたくない方には、土日祝の手術対応や夜間診療も行なっています。無理のない手術スケジュールを一緒に考えましょう。
術後はいつから性行為できる?
避妊手術後の腫れや違和感が落ち着けば、おおよそ1週間後から性行為が可能です。痛みや腫れの程度は個人差があるため、無理せず体調に合わせて再開することが大切です。
ただし、術後しばらくは精子が精管に残っている可能性があります。
確実に避妊するためには、精子がなくなっているか精液検査で確認が必要です。検査の目安は、手術から1~2ヵ月後または10~20回射精したあとです。精子が出なくなったと確認できるまでは避妊を続けましょう。
性行為が再開できるからといって、100%避妊が可能というわけではありません。確実に避妊するためにも、術後のフォロー検査は非常に重要です。パイプカット後は定期的に精液検査を実施し、精子が射出されていないかのチェックをおすすめします。
一度パイプカットしたら元には戻せない?
パイプカットは「永久的な避妊手術」として認識されがちですが、当院で行う再建術であれば、妊娠を目指せる確率が高くなります。
当院は、超微小外科手術の実績が豊富な医師によるパイプカット再建術を多く手掛けている医療機関です。顕微鏡下で精管を丁寧につなぎ合わせる技術で、精子出現率91%、精液正常化率47%と、非常に高い治療実績を誇ります。
一般的には難しいとされるパイプカット再建術ですが、医師の技量によっては妊娠も望めます。「元に戻せない」「二度と妊娠はできない」とあきらめる前に、技術力のある医療機関に相談することが重要です。
パイプカットでの避妊は当院へお任せください
パイプカットで避妊を考えているなら、日帰りで顕微鏡下動脈温存パイプカット手術を行なっている当院へお任せください。
痛みの少ない局所麻酔法を採用し、顕微鏡下での精密な手術により精管動脈の温存や再開通予防対策を行なっています。高い技術を持つ医師が在籍しているため、精管のみの結紮が可能です。
当院のパイプカットは、再婚のような理由で状況が変わり、再び妊娠を望むようになった患者さんに対応できるよう、再建術がしやすい術式です。パイプカット再建術の治療実績も非常に高く、精液所見の改善が期待できます。
当院は、男性不妊治療に強いクリニックとして、数多くの手術実績と高い技術力を有しています。パイプカットでの避妊をお考えの方は、ぜひ一度当院へご相談ください。
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〒104-0061 東京都中央区銀座2-8-19 FPG links GINZA 6F
この記事の執筆医師

永尾 光一 先生
銀座リプロ外科 院長
前・東邦大学泌尿器科教授
昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。
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