パートナーの妊娠を望んでいるものの叶わず、自身の生殖機能に不安を感じていませんか。
「射精しにくい」「陰のうの見た目に変化が見られる」といった症状がある方は、生殖機能の異常が疑われます。
不妊の原因は、男性側にある場合が約48%といわれています。男性不妊は放置しても完治しないため、子どもを望んでいる方は早めに原因を突き止め、治療することが大切です。
本記事では、男性の生殖機能の異常と、不妊の原因の治療方法について詳しく紹介します。生殖機能を向上させ、男性不妊の問題を改善したい方は、参考にしてください。
- 男性不妊・精索静脈瘤にお困りのかたへ
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男性不妊の40%にある精索静脈瘤は、精巣やその上の精索部(精管、血管、神経、リンパ管などを覆う膜)に静脈瘤(じょうみゃくりゅう・静脈の拡張)が認められる症状のことを指します。一般男性の15%に認められ、男性不妊症患者の40%がその疑いであるとされています。
男性の生殖機能とは?
男性の生殖機能とは、性行為で女性を妊娠させる力です。
自然妊娠を目指す方にとって、自身の生殖機能の状態を確認することは非常に大切です。生殖機能の役割や正常だといえる基準値について詳しく説明するので、ぜひチェックしてください。
男性生殖機能の役割
男性の生殖機能は、造精機能と性機能の2つに大きく分けられます。
造精機能とは、精子を造る力です。
精巣(睾丸)では1日に5000万〜1億個もの精子が産生されており、受精できる状態になるまでに約70〜80日かかります。脳の視床下部・下垂体から出るホルモンは、造精機能に大きな影響を与えており、内分泌機能が正常でなければ精子の質は低下するでしょう。
性機能は、性的な興奮・勃起・射精といった、精子を女性の体内に送り込む一連のプロセスに関わる機能で、以下のような心身との関連があります。
自律神経 | 勃起や射精に関与する |
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陰部の血流 | 血流が悪いと勃起しにくくなる |
男性ホルモン | 性欲の維持・勃起の持続に影響する |
心理面 | ストレスやうつ状態は性機能に悪影響を及ぼす |
自然妊娠の成立には、造精機能と性機能が正常に働くことが必要です。
男性生殖機能が正常だといえる基準値
男性生殖機能の異常を判断する際は、精液検査における基準値が1つの指標となります。
精液検査の項目 | 自然妊娠が目指せる下限基準値 |
---|---|
精液量 | 1.4ml |
精子濃度 | 1600万個/ml |
精子の運動率 | 42% |
総運動精子数 (精液量×精子濃度×運動率) |
1638万個 |
精子の正常形態率 | 4% (奇形率96%未満) |
基準値を満たさない数値が出た際は、生殖機能の低下を疑い、より詳しい検査や治療を検討しましょう。精液の状態は日によって変動するため、2回以上検査することで、より正確な数値を得られます。
男性の生殖機能に異常を起こす原因
男性の生殖機能に異常を起こす主な原因は、以下の3つです。
・造精機能障害
・勃起不全・射精障害
・精路通過障害
妊娠に至らない原因が男性にあるケースを「男性不妊」と呼びます。自然妊娠の可能性を下げる要因を知り、男性不妊についての理解を深めましょう。
造精機能障害
造精機能障害は、精子を造る機能に異常があり、男性の生殖機能が低下している状態を指します。男性不妊の8割が造精機能障害によるといわれており、最も多い原因は精索静脈瘤です。
精索静脈瘤は、精巣近くの静脈が逆流して瘤(こぶ)のように太くなり、血液の流れが滞る病気です。精巣は熱に弱く、血液で温められると働きが悪くなり、精子を造る機能が低下します。
精索静脈瘤は一般男性の15%に見られる疾患でありながら自覚症状が乏しく、知らない間に、以下のような状態に陥っていることも少なくありません。
乏精子症 | 精液中の精子の数が少ない |
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無精子症 | 精液中に精子がない |
精子無力症 | 精子の運動率が低い |
奇形精子症 | 正常な形の精子が少ない |
精子DNAの損傷 | 精子のDNAが損傷する |
精索静脈瘤が原因の場合は、適切な方法で手術をすることで、精液所見の改善が見込め、自然妊娠も期待できるでしょう。
先天的な染色体異常やホルモンの分泌不足で、造精機能障害が起こる場合もあります。
勃起不全・射精障害
男性の生殖機能に異常を引き起こす要因として、勃起不全や射精障害も挙げられます。
勃起不全 | 性交時に勃起状態を維持できない状態 |
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射精障害 |
十分な性的刺激を受けても絶頂感に達することが困難な状態 膀胱へ射精する逆行性射精、膣内だけ射精できない膣内射精障害 |
勃起不全や射精障害の原因は、以下のとおりです。
・心理的なストレス
・身体的な疲労
・生活リズムの乱れ
・神経系の障害(骨盤内手術ほか)
・加齢
・運動不足
・誤った方法でのマスターベーション
・喫煙
・生活習慣病(糖尿病、ほか)
・薬剤(前立腺薬、抗うつ薬ほか)
勃起不全には、バイアグラやシアリスなどのED治療薬が有効で、個人差はあるものの、70~80%の方で効果が見られています。健康的な生活を送り、ホルモンバランスを整えることも、性機能の維持には大切です。
精路通過障害
精液が出なかったり量が少なかったりする方は、精路通過障害によって生殖機能が低下している可能性があります。
精路通過障害とは、通り道が塞がれて精子が体の外に出ない状態です。過去に泌尿器科的手術を受けた方や、精巣・精管に炎症が発生している場合に起こりやすくなります。
精子の通り道が塞がっていても射精自体は問題なくできるケースも多く、精路通過障害に気づくには精液検査が欠かせません。
パイプカット手術の経験があり、生殖能力を失ったケースも、精路通過障害に含まれます。精路通過障害は、精管を再建する手術を受けることで改善が可能です。
男性が自分で生殖機能の状態をチェックする方法
男性が自身で生殖機能の状態に異常がないかをチェックするには、以下の項目を確認しましょう。
・陰のうや精巣の大きさに左右差がある
・精巣が小さい
・陰のうに痛みや違和感がある
・陰のうが腫れた経験がある
・性行為において挿入・射精ができない
・性行為中に勃起が持続できない
・陰毛が少ない
陰のうや精巣の見た目の変化・違和感は、生殖機能の異常を見分ける重要な指標です。当てはまる項目があった方は、妊娠が望める状態かどうか、泌尿器科で診察や精液検査・超音波検査を受けることをおすすめします。
病院で行われる男性生殖機能の検査
男性生殖機能の異常の有無を確認するために行う検査は、以下のとおりです。
・精液検査
・診察・超音波(エコー)検査
・血液検査
精液だけでなく、精巣・陰のうやホルモンの状態も調べることで、より精密に生殖機能の異常をチェックでき、スムーズな治療につなげられるでしょう。
精液検査
精液検査は、男性生殖機能の異常の有無を調べるうえで一般的な方法であり、以下の内容をチェック可能です。
・精液量
・精子濃度
・精子の運動率
・精子の正常形態率
・感染症の有無
検査を受けるには、禁欲を3日間したあと、マスターベーションで射精した精液を採取します。多くのクリニックでは、プライバシーが守られた個室で採精が可能です。
精液の状態は日々変化するため、一度異常を指摘されても、再検査で問題がないと判断される方もいます。恥ずかしさから検査に抵抗を感じる方もいますが、痛みや体への負担はともないません。
精液検査は、自分の生殖機能を確認するために、妊活を始める男性なら一度は受けておきたい検査です。
診察・超音波(エコー)検査
泌尿器科での診察・超音波検査も、男性の生殖機能をチェックできる方法です。
診察では、泌尿器科医が生殖器を見たり触ったりして、陰のうや精巣・血管・精管の状態を確認します。次に、陰のうにプローブという器具を当てて超音波を送受信し、精巣の状態や精索静脈瘤がないかなどを検査します。
超音波検査なら、診察ではわからなかった軽度の精索静脈瘤の診断も可能です。下腹部に力を入れて検査することで、精索静脈を流れる血液が逆流しているかを観察でき、進行度の把握に有効です。
精巣腫瘍の有無や精管の状態に異常がないかも、超音波検査や診察でチェックします。検査に精通した泌尿器科であれば、超音波検査にかかる時間はわずか10分程度です。
血液検査
男性生殖機能に異常がないかを確認するために、血液検査が行われることもあります。血液検査では、生殖機能に関連するホルモンの状態や、染色体・遺伝子の異常を確認できます。
男性の生殖機能に影響を与えるホルモンの例は、以下のとおりです。
テストステロン (男性ホルモン) |
精子形成や性欲の維持に関わる |
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黄体刺激ホルモン (LH) |
男性ホルモンの分泌を促す |
卵胞刺激ホルモン (FSH) |
・男性の精巣に働きかける ・精子形成に関わる |
プロラクチン | 多すぎるとテストステロンやLH・FSHの分泌が抑制される |
テストステロンや精巣に働きかけるホルモンの値を確認することで、精液異常の原因を突き止められます。勃起不全や射精障害は、ホルモンバランスの変化も原因で起こるため、懸念がある方は検査を受けましょう。
染色体や遺伝子の異常があると、生まれつき精子を造れない可能性があります。血液検査の結果は、精子の数が少ない場合や無精子症の治療方針の決定にも役立ちます。
男性の生殖機能の問題に対する治療①手術
男性の生殖機能に異常が見られる原因が精索静脈瘤や精路通過障害なら、手術による治療があります。
手術によって原因を取り除ければ、精液所見は改善し、自然妊娠が望めるでしょう。2人目・3人目の子どもを望んだときまで効果が持続することも、根本的な治療のメリットです。
男性生殖機能の改善が望める手術について解説します。
精索静脈瘤手術
精索静脈瘤によって男性の生殖機能が低下している場合に根治を目指すには、手術が有効です。
手術では、静脈瘤ができた精索静脈を糸でしばって切断し、逆流している血管の血流を遮断します。手術によって精巣の環境を改善できれば、精子を造る機能やホルモンの状態の向上が期待できます。
当院で実施している「日帰り顕微鏡下精索静脈瘤手術・ナガオメソッド」は、局所麻酔を使うため日帰りで受けられ、手術にともなうリスクや負担が極めて少ない治療法です。
手術用の高倍率の顕微鏡を使い、精管・動脈・リンパ管・神経を1本1本分離し、すべて温存することで、術後の合併症のリスクを抑えます。
通常の手術では処置しない外陰部(外精)逆流静脈まで結紮(けっさつ)・切離するので、再発率は0.1%です。手術後は、87%の患者さんの精液所見が改善したという高い効果が報告されています。
人工授精や体外受精を勧められるレベルの精液所見でも、ナガオメソッドによって自然妊娠が叶ったケースもあります。
精索静脈瘤の術式には複数ありますが、再発や合併症のリスクが低い方法をご希望なら、ぜひ当院での手術をご検討ください。
日帰り顕微鏡下精索静脈瘤手術・ナガオメソッドについて詳しく確認する
精路再建手術
精路再建手術は、男性の生殖機能を改善できる治療法の1つです。過去にパイプカット手術を経験した方や、両側の鼠径ヘルニア手術の影響で精子の通り道が閉塞している場合に適しています。
精巣上体炎が原因で、精子が体外に出てこなくなり無精子症になっている方は、精管精巣上体吻合術の検討が必要です。
当院では、パイプカット後の再建のみ日帰りで行なっています。精路再建手術を受けて精子の通り道がつながれば、精液所見が改善し、自然妊娠の可能性が高まるでしょう。
パイプカット再建をしてもすぐに精子が出現するわけではありません。少なくとも2~6ヵ月は見積もり、妊活の計画を立ててください。
男性の生殖機能の問題に対する治療②補助的治療
補助的治療は、男性生殖機能の改善において医学的根拠は乏しいものの、精子の質の改善を助ける方法です。以下のような薬の内服が検討されることがあります。
・サプリメント(コエンザイムQ10・亜鉛・L-カルニチン)
・漢方薬
・ホルモン製剤
男性不妊を薬で完全に治すことは難しく、薬物療法はあくまで補助的な方法だと認識しておきましょう。
喫煙や飲みすぎといった生活習慣も、生殖機能に悪影響を与えることがあります。栄養のある食事をとってしっかりと眠り、心身を健康に保つことも妊活には大切です。
精子を造る機能を良い状態に保つために、長風呂やサウナで精巣を温めることは避けましょう。
男性の生殖機能の問題に対する治療③対症療法
男性不妊の治療法には、生殖機能自体にはアプローチせずに妊娠を目指す対症療法もあります。対症療法の例は、以下のとおりです。
人工授精 | 採取した精子を排卵日を狙って子宮に注入して受精させる |
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体外受精 | 体外で卵子に精子をふりかけて受精させ培養して子宮に戻す |
顕微授精 | 体外で卵子に1つの精子を注入して受精・培養後に子宮へ戻す |
精巣内精子採取術 (TESE) |
顕微授精を行うために精巣内から精子を含む組織を採取する |
対症療法を試すとしても、精子の状態が良くなければ成功率は下がってしまいます。妊娠を望むたびに治療を繰り返す必要があり、大きな負担がかかる点がデメリットです。
生殖機能の異常を改善したい男性は当院へ
生殖機能に異常を感じ、症状を改善したいとお考えの男性は、当院へご相談ください。生殖機能に異変が見られても痛みや違和感といった自覚症状は乏しく、自分の体の状態に気づかないまま男性不妊に悩む方が少なくありません。
当院は男性不妊専門のクリニックです。他人に話しづらい生殖機能の悩みをお気軽にご相談いただけるよう、プライバシーに配慮した診察体制を整えています。
不妊の原因によっては根本的な治療が可能ですが、男性生殖機能の手術は、術者の手技が特に問われる分野です。当院には、高度な技術が必要な手術であるスーパーマイクロサージャリーを行える医師が複数在籍しており、高い治療成績を誇ります。
男性不妊の悩みを改善し、パートナーの妊娠を実現させたい方は、ぜひ一度当院へお問い合わせください。
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この記事の執筆医師

永尾 光一 先生
銀座リプロ外科 院長
前・東邦大学泌尿器科教授
昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。
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