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男性の生殖機能が正常かはどうやって見分ける?治療方法も解説

男性の生殖機能が正常かどうやって見分ければよいのでしょうか?不妊の問題は女性側に原因があるとは限りません。男性に原因がある場合は全体の48%を占めています。(2017年WHO)

今回の記事では、男性の生殖機能が正常かどうかの見分け方や治療方法を解説します。不妊の問題や夫婦関係の悩みを感じている方は、ぜひ参考にしてください。

男性の生殖機能が正常の状態とは

男性の生殖機能が正常な状態といえるのは、まず勃起や射精に問題がないことが前提です。女性との関わりの中で滞りなく膣内に射精ができるのは、男性の生殖機能を判断するうえで重要な視点と言えます。

次に、精子の量や精子の働きが正常かを検査しましょう。

射精に問題がなくても、精子の働きに不具合がある場合があります。次の基準を満たしているのか、検査が必要です。

精子の運動率は同じ個人でも日々変動します。基準を目安として、明らかに満たない場合は治療を検討しましょう。

以下は当院のページより
https://ginzarepro.jp/column/semen-analysis/

医学的根拠の高い2021年のWHOの精液検査の基準値を紹介します。古い基準値や独自の基準を使用しているクリニックがありますのでご注意ください。

精液検査 基準値
精液量 1.4ml以上
精子濃度 1600万/ml以上
運動率 42%以上
総運動精子数(精液量×精子濃度×運動率) 1638万以上
正常形態率 4%以上(奇形率96%未満)

※精液検査が正常でも精索静脈瘤がありますと、精子のDNAダメージが起こり、なかなか妊娠しないことがあります。

男性の生殖機能が異常の状態とは

男性の生殖機能が異常な状態とは、勃起不全(ED)やオルガズム障害など性交渉や射精に問題がある場合と、精索静脈瘤などにより精子の濃度・運動率が低下し妊娠に至る機能が不足している場合が考えられます。

【勃起不全やオルガズム障害】

勃起不全やオルガズム障害は、身体的・心理的な原因が考えられます。特に要因になるのは、過度な疲労やストレスです。

また、うつ病のような精神的に不安定さを抱える病気になると、勃起機能やオルガズムに影響を及ぼします。

【造精機能障害】

造精機能障害とは、精子を作る機能自体に問題があり、精子濃度や運動率といった精子の機能が弱まっている(精液所見が悪い)状態のことを指します。男性不妊の約8割が、造精機能障害によるものです。

精索静脈瘤とは、精巣内にある静脈の逆流弁が機能せず、血液の流れが滞って瘤(こぶ)のようにふくらむ疾患です。精子は精巣が体温より低い温度で正常に機能するため、溜まった血液によって精巣が温まった状態はよくありません。

造精機能障害の精液所見について簡単に説明しておきましょう。
乏精子症は、精子濃度が1600万/ml未満の状態です。無精子症は、読んで字のごとく精液検査で精子が見つからない状態のこと。精子無力症は、精子運動率が42%未満の状態のことをいいます。

また、精子無力症や無精子症などの精子の問題は、射精ができたとしても妊娠には至らないため、子供を授かりたい場合は治療が必要です。

男性の生殖機能が正常・異常の見分け方

男性の生殖機能の正常・異常に関して自身でチェックする場合は、以下の項目に該当しないかチェックしてみましょう。

  • 挿入・射精ができない
  • 陰嚢や精巣の大きさに左右差がある
  • 陰毛が少ない
  • 精巣が小さい
  • 陰嚢が腫れた経験がある
  • 陰嚢に痛みや違和感がある

これらの所見がある場合は、生殖機能が正常に働いていない可能性があります。また、勃起不全やオルガズム障害は心理的な負担も原因の1つです。

仕事が多忙でないか、セックスに対してプレッシャーがないかなど、自身の心にも向き合ってセルフチェックを行いましょう。

また、クリニックなどで男性不妊の検査を行う場合は、以下のような検査を行います。

  • 精液検査
  • 診察・超音波(エコー)検査
  • 血液検査

それぞれの検査について説明していきます。

精液検査

男性不妊で受診をしたら、ほとんど方が受けられる一般的な検査です。精液検査では、精液量や精子濃度、精子の運動率、精子の状態、感染症の有無などを調べます。

2日から7日程度の禁欲機関の後、マスターベーションにより精液を採取します。クリニックなどの個室で、全量採取するのが一般的です。日によって精液の状態は変わるので、悪い結果が出たとしても再検査で問題ないとされる場合があります。

診察・超音波(エコー)検査

陰嚢にエコーをあてて、生殖器の状態を調べます。精巣の状態や精索静脈瘤がないかなどを確認できる検査です。

血液検査

血液中のホルモンの状態を調べます。男性ホルモンや性腺刺激ホルモンの状態を確認することによって精液異常の原因を突き止めるのに役立つ場合があります。勃起障害や射精障害がある方にはぜひ受けていただきたい検査です。

また、血液からは染色体の変化や遺伝子の異常を検査することができるので、無精子症や精子の数が極端に少ない方にもおすすめの検査です。

男性の生殖機能が異常な時の治療方法

男性の生殖機能が異常な時の治療方法

男性の生殖機能が異常な場合、いわゆる男性不妊の場合の治療法は、原因によって内科的治療と外科的治療、対処療法が行われます。

内科的治療では、まず生活習慣を見直します。喫煙やアルコールの過剰摂取などは男性不妊の要因です。また、長風呂やサウナ・ぴったりしたパンツの利用はできるだけ避けるなど、精巣を長時間高温の環境に置くことを避ける必要があります。

漢方薬やサプリメントを服用する場合もありますが、精液所見や妊娠率が改善されるという有効性が示されているものは少なく、補助的な治療法です。

外科的治療については、後に少し詳しく説明します。男性不妊の原因の約40%を占める精索静脈瘤は、手術によって精液所見の改善を目指せる疾患です。また、鼠径ヘルニア手術後の精管閉塞や、過去にパイプカットを行ったけれど子供を望んでいる場合に検討する精路再建手術もあります。

対処療法とは、人工授精や体外受精、顕微授精、精巣内精子採取術(TESE)のことです。精巣内精子採取術(TESE)は、手術操作によって生殖機能を低下させてしまいます。

精索静脈瘤の手術

精索静脈瘤の外科的治療として、根治を目指して手術が行われます。精索静脈瘤は、精索(精子の通り道である精管・血管・リンパ管・神経などが束になったもの)の静脈の血液が逆流する疾患です。手術では、精索静脈をしばる、または切断して、逆流が起きない状態にします。

精索静脈瘤の手術にはいくつかの方法がありますが、それぞれに再発や合併症のリスクが伴います。銀座リプロ外科では、再発や合併症のリスクが極めて少ない、「ナガオメソッド」での手術が可能です。ナガオメソッドは、生殖機能を改善させる唯一の方法と言えます。

精索静脈瘤の手術に関して詳しくはこちらをご覧ください。

精路再建手術

パイプカットの術後や鼠径ヘルニアの術後、精子の通り道が閉塞されている方へ行う精管吻合術や、精巣上体炎後など、精巣上体での閉塞によって無精子症になっている方へ行う精管精巣上体吻合術などがあります。

銀座リプロ外科では、パイプカット後の再建術のみ日帰りで行っています。

まとめ-男性の不妊治療なら銀座リプロ外科-

男性にも不妊の原因がある場合が多いということは、徐々に世間でも知られるようになりましたが、精索静脈瘤のことなど詳しいことはまだまだ認知度の低い分野です。

銀座リプロ外科は男性不妊専門のクリニックで、当院で主に執刀する永尾医師は男性不妊手術の第一人者であり、ナガオメソッドの開発者でもあります。

男性不妊は、お薬の服用による改善は医学的根拠が低く、根本的な治療には手術が必要です。非常に微細な領域での手術となり、術者の手技が特に問われる分野ですが、当院にはスーパーマイクロサージャンが複数名在籍しており、高度な技術を要する手術が可能です。

男性不妊でお悩みの方はぜひ、銀座リプロ外科へご相談ください。

この記事の執筆医師

永尾 光一 先生

永尾 光一 先生

東邦大学 医学部教授(泌尿器科学講座)
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

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