COLUMN

精索静脈瘤の予防とセルフチェックのご紹介!

女性の社会進出や価値観の多様化がきっかけとなり、日本では晩婚化が進んでいます。
妊娠には年齢が大きく関係しているため、不妊治療を行う夫婦も増えてきました。

不妊の原因はさまざまですが、おおよそ男女1:1で原因があると言われています。しかし男性不妊については、あまり広く知られていません。

当記事では、男性不妊原因で最も多い「精索静脈瘤」について解説していきます。
実は、精索静脈瘤自体、あまり珍しい病気ではありませんが、自覚症状がないために重症化しやすい厄介な病気です。

今回は、自宅でできるセルフチェック項目や方法を詳しくお伝えしますので、不妊や造精機能障害でお悩みの方はぜひ参考にしていただき、病気の早期発見につなげてください。

 

精索静脈瘤とは?

精索静脈瘤とは、陰嚢という袋の中にある精巣や、その上にある精索部分(精管・動脈・静脈・リンパ管・神経などが3層になった膜)に血液が逆流してしまい、静脈が瘤のようになる病気です。

男性特有の疾患で、一般男性で15%・男性不妊患者では40%以上で認められています。成人男性だけでなく、小児でも確認されている疾患です。

また、精索静脈瘤は左側の精索に生じることが多いと分かっています。この原因は、右側より左側は精巣静脈が長く、さらに直角に合流するため、血液の滞りや逆流が起きやすいからです。

通常は、血液の逆流を防止するために「静脈弁」という機能があります。この静脈弁が何らかの理由で壊れて機能しなくなると、血液の逆流が生じ、精索静脈瘤を発症します。

不妊と精索静脈瘤の関わりは深く、男性不妊の4割以上が精索静脈瘤患者です。精索静脈瘤を患うと血液が滞るため、精巣の温度が上昇します。その結果、熱に弱い精子に悪影響を及ぼし、造精機能が低下することが原因です。

痛みなどの自覚症状がほとんどないため、気づきにくく、発覚した時にはすでに重症化しているケースも多々あります。

しかし、精索静脈瘤は治療が可能です。重症化してしまった場合でも、手術によって、造成機能が改善する可能性は大いにあります。

男性不妊原因の半数以上は精索静脈瘤が原因であるため、妊娠を望むなら、一度検査を検討すると良いでしょう。不妊治療を始める際は、ご夫婦での診察・治療がおすすめです。

 

精索静脈瘤の予防について

精索静脈瘤を発症した場合、大半が手術などの外科的治療を行います。通常の内科系疾患には、日々の生活で病気の予防につながる点がいくつかありますが、精索静脈瘤に関しては明確な予防策がありません。

ですが、日常生活のちょっとした改善で、精索静脈瘤を含む、男性不妊原因全般の予防につながります。今一度、ご自身の生活習慣の見直しを図ってください。

また、精索静脈瘤は早期治療によって、生殖機能の改善・向上が可能です。早めに病気の存在に気付き、治療を行うためにも、日々セルフチェックを行うと良いでしょう。少しでも気になる症状があれば、専門機関の受診をおすすめします。

 

精索静脈瘤の予防|精巣を温めない

精索静脈瘤の直接的な予防になるわけではありませんが、男性不妊全般の予防策として、精巣を温めないというポイントがあります。

デスクワークや長時間の運転などで座っている時間が長い人は、熱がこもって精巣を温めてしまうため注意が必要です。膝上にパソコンを置いて作業することも、熱がこもる原因になるため避けてください。

また、長時間の入浴やサウナも、精巣を温めることにつながるので控えるべきでしょう。

精巣は熱に弱く、体温よりも2~3度低い状態でないと正常に機能しません。機能が低下すると、男性不妊の原因につながります。日頃座る時間が長い場合は、1時間に1回程度立ち上がり、放熱しましょう。

 

精索静脈瘤の予防|摩擦・圧迫が生じる運動は避ける

ロードバイクを使用している人や、締め付け・サポート力が強い下着を着用している場合、圧迫や摩擦を引き起こし、精巣を温める原因にもつながりますので注意が必要です。
サイズが合わない下着の着用も避けてください。

もし、日頃の自転車利用を避けられないのなら、ロードバイクのようなサドルが小さいものではなく、分厚いものを選ぶと良いでしょう。

 

精索静脈瘤の予防|その他日常生活で気を付けること

精索静脈瘤を含めた男性不妊を防ぐポイントとして、生活習慣病を予防し、規則正しい生活を送ることが重要です。具体的には、以下のような点を心がけましょう。

・ジョギングやウォーキングなど適度な運動をする
・毎日6~7時間は睡眠をとる
・起床時間・就寝時間を決め、規則正しい生活を心がける
・禁煙する
・深酒しない
・毎食、バランスの良い食事を決められた時間にとる
・ストレスをため込まない

肥満や糖尿病なども精液所見の悪化につながります。意識的に体を動かし、血流をよくすることが大切です。

体に良い生活を送ることが精子の質を高めることにもつながりますので、一度、現在の生活習慣を見直してみてください。

 

精索静脈瘤のセルフチェック

精索静脈瘤のセルフチェック

精索静脈瘤は、自宅でのセルフチェックで発見できる場合があります。診断を確定するには専門機関で検査を行う必要がありますが、セルフチェックが病気の早期発見につながることがあるため、日々のチェックは重要です。

もし、長時間立っているとき、陰嚢や鼠径部に違和感が出現するのなら、自身の陰嚢を見たり触ったりしてください。また、症状がなくても不妊で悩んでいる場合は、一度確認すると良いでしょう。

チェックの際は床に立ち、陰嚢がぶら下がった状態で観察するとわかりやすいです。
陰嚢の外側からでも見たり触ったりできるので、ぜひチェックしてみてください。

精巣・陰嚢のチェック方法

精巣のサイズや陰嚢の状態は自身で確認することが出来ます。以下の手順でセルフチェックしてみましょう。

●精巣サイズ
精巣の前面を可能な限り陰嚢皮膚に押し付けてください。こうすると、精巣の輪郭が際立ちます。この状態で精巣サイズを測りましょう。
自身で測る場合、以下の式に実寸を入れて計算します。
0.7×縦(cm)×横(cm)×横(cm)=容積(ml)
※横=幅と仮定

容積が14ml以上は正常。12ml以下は小さいとされています。
精巣のサイズに左右差がある場合は注意が必要です。もし左側が小さい場合、精索静脈瘤の疑いがあります。

また、精巣のサイズが急激に大きくなったようなら、精巣腫瘍などの他の病気が考えられますので、早めに専門機関を受診し、検査してください。

●陰嚢サイズ
目で見て、陰嚢のサイズに左右差がある場合、大きい方に精索静脈瘤があるかもしれません。
早期の受診を検討しましょう。

●陰嚢の状態
本来、陰嚢は寒いと収縮して小さくなり、温かいと垂れ下がって温度調節しています。
もし、陰嚢が常に垂れ下がっている状態なら、陰嚢の温度が常に高い可能性があるので、精索静脈瘤を疑いましょう。

また、陰嚢の表面に凸凹がある(虫がいるように見える・うどんがあるように見える)場合、精索静脈瘤の可能性があります。

セルフチェックポイント

自宅でチェックや計測を行った結果、以下のような状態であるときは注意が必要です。

・触ると腫れている(熱を持っている)
・精巣や陰嚢のサイズに左右差がある
・陰嚢の表面に凹凸がある(皺がよっている)
・陰嚢にうどんのようなものがあるように見える
・陰嚢が垂れている
・陰嚢を触るとぶよぶよした瘤のようなものがある
・痛みや違和感、不快感がある

上記のような所見が確認される場合、精索静脈瘤の可能性があります。1つでも思い当たるものがあれば、早期に検査すべきでしょう。

また、精索静脈瘤が進行して重症になると、陰嚢部分にミミズが這っているように見えることがあります。目で症状が確認できる場合は、病気が進行している可能性が高いので、すぐに専門機関を受診してください。

もし、精液検査で異常がなくても、精索静脈瘤による造精機能障害は進行性のため、上記のような症状があるなら専門医の受診がおすすめです。気になる症状は医師に相談しましょう。

 

まとめ

今回は、男性側の不妊原因で一番多い、精索静脈瘤について紹介しました。
精索静脈瘤は、患者数が多いわりに認知度が低く、早期の治療が難しい病気です。今まで男性不妊という言葉自体が知られていなかったため、自らの造精機能障害を疑い、セルフチェックを行う方はいなかったでしょう。

病気の診断を確定するには検査が必要のため、専門機関の受診が必須です。
ですが、自宅でセルフチェックを行うことで、自ら病気の可能性に気付き、受診につながるケースがあります。病気の早期発見も可能です。
日頃からセルフチェックを行っている場合、患部の経過が分かるため、受診や治療もスムーズに進むはずです。患者様自身の治療負担も軽減されることでしょう。

精索静脈瘤に限らずどんな病気でも、普段の状態に比べて少しおかしいな…と思った時点で早めに検査すれば、病気が見つかることが多々あります。心当たりや不安な点がある場合は、銀座リプロ外科までご相談ください。

当院は、男性不妊治療を専門に扱っており、多くの治療実績があります。確かな技術と経験で、患者様の身体的負担・精神的不安を取り除いた最善の治療が可能です。

当院には、精索静脈瘤手術の第一人者である永尾医師をはじめ、経験・知識ともに豊富な医師が複数在籍しているので、病気の状態や患者様のスケジュールによっては日帰り手術も行っており、多忙な方・遠方にお住まいの方でも治療ができます。ぜひ一度ご相談ください。

また、男性不妊の相談・治療ができるクリニックはまだまだ少ないため、当院では積極的に情報を発信しています。今回ご紹介した精索静脈瘤の気になる原因や症状、放置するリスクや痛みなども以下の記事で詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。

精索静脈瘤についてはこちらの関連ページもご覧ください。
精索静脈瘤の原因は?主な原因を徹底解説!
精索静脈瘤を放置するとどうなるの?自然に治ることはあるの?
無症状でわかりずらい?精索静脈瘤の主な症状

精索静脈瘤の手術に関して詳しくはこちらをご覧ください。

この記事の執筆医師

永尾 光一 先生

永尾 光一 先生

東邦大学 医学部教授(泌尿器科学講座)
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

所属医療機関

一覧ページに戻る

診療・手術一覧

この記事を見た人はこんな記事も見ています

無精子症とは、精液中に精子が存在しない状態のことをいいます。男性側の不妊の原因として挙げられますが、不妊治療を […]

続きを読む

不妊治療や周産期医療が発展した現代日本でも、流産や死産などで大切な命が失われてしまうことは少なくありません。そ […]

続きを読む

顕微授精とは、精子の数や総運動精子数が極めて低い方が選択する不妊治療です。「妊活の最終手段」ともいわれ、タイミ […]

続きを読む

近年のライフスタイルの変化や晩婚化を背景に、不妊の検査や治療を希望する方も年々増加傾向にあります。不妊治療とい […]

続きを読む

ご予約・お問い合わせ