「避妊をしなければ簡単に子どもを授かれる」と思ってはいませんか。妊娠確率と年齢は切っても切り離せない関係にあり、精子の質は30代から下がるといわれています。
不妊の原因は、女性だけでなく男性に見られる場合もあるため、少しでも不安がある方は早めに検査を受けることが大切です。
本記事では、年代別の妊娠確率や成功率を上げるポイントについて解説します。妊活を始めたものの結果が出ず不安な方は、ぜひ参考にしてください。
- 男性不妊・精索静脈瘤にお困りのかたへ
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男性不妊の40%にある精索静脈瘤は、精巣やその上の精索部(精管、血管、神経、リンパ管などを覆う膜)に静脈瘤(じょうみゃくりゅう・静脈の拡張)が認められる症状のことを指します。一般男性の15%に認められ、男性不妊症患者の40%がその疑いであるとされています。
年代別の自然妊娠の確率
自然妊娠の確率には、年齢や健康状態が大きく関係しています。
妊娠とは、女性の体内で卵子と精子が出会って受精し、子宮内膜に受精卵(胚)が着床して成長することです。排卵周期に合わせて性交渉を行い、以下の4つのステップがすべて正常に起こることを自然妊娠といいます。
・排卵
・受精
・細胞分裂
・着床
健康なカップルの妊娠確率の平均値と、年代別の変化を確認しましょう。
平均値
男女ともに健康で生殖機能に問題がなく、排卵日付近に性交渉を行なったときの妊娠確率は、生理1周期あたり平均20〜30%といわれています。避妊せずに性交渉を行えば、半年後には約80%、1年で90%に近い方が妊娠するという計算になります。
ただし、あくまで統計上の確率であり、個人差が大きい点は認識しておきましょう。妊娠できるかは、生殖機能や性交渉のタイミング・パートナーとの相性などに左右される点に注意が必要です。
年代別
妊娠確率は、女性・男性ともに加齢によって下がります。
女性が自然妊娠する確率は、35歳を過ぎると急激に低くなり、45歳以上では約5%で、次第に0へ近づいていきます。
体外受精や顕微授精のような不妊治療における妊娠確率は、30代前半では約50%である一方、40歳を過ぎると30%以下になり、45歳以上では10%以下です。
男性は40代から妊娠させる力が低下するという報告があり、30代のうちに妊活を視野に入れることが大切です。
参考:男性が知っておくべき不妊のリアル|三重県男女共同参画センター「フレンテみえ」
女性が赤ちゃんを授かるためには明確なタイムリミットがある一方で、男性は妊娠確率と自身の年齢の関連を深く考えたことがないかもしれません。パートナーの妊娠を望む方は、男性も時間との勝負であることを認識しておきましょう。
年齢が上がると妊娠確率が下がる理由は?
加齢によって妊娠確率が下がる理由を、女性・男性に分けて解説します。
男性は年齢を重ねても約70~74日間で常に新しい精子が造られ、自然妊娠の力は衰えないと思われがちです。しかし、年齢とともに精子を造る工場である精巣の機能は低下します。
精子を造る工場である精巣に最も影響する病気が、精索静脈瘤です。一般男性で15%、不妊男性で40%もあり、加齢による精巣機能悪化に影響しています。
健康な男女であっても加齢が妊娠確率に影響を与えることを、頭に入れておきましょう。
女性
女性の加齢が妊娠に大きく影響する理由は、大きく以下の3つです。
卵母細胞の数が減少する
卵子の染色体異常が起こる可能性が高まる
婦人科系疾患を発症しやすくなる
女性が妊娠・出産するための準備は、母親のお腹の中にいる胎児のときから始まっています。卵子の元である卵母細胞を包む原始卵胞(げんしらんぽう)の数は、妊娠5ヵ月頃にピークを迎え700万個ほどあります。
生まれる前に多くが体内に吸収され、出生時の卵母細胞の数は約200万個です。卵母細胞の数は生涯にわたって減り続け、増えることはありません。
年代ごとの卵母細胞の数は、以下のとおりです。
年代 | 卵母細胞の数 |
---|---|
思春期 | 20〜30万個 |
20代 | 10万個 |
30代 | 2〜3万個 |
40代~ | 1,000~1万個 |
卵母細胞が減少するスピードには個人差がありますが、30代後半を過ぎる頃に急速に数が減り、1,000個を下回ると閉経が起こるといわれています。
参考:年齢が不妊・不育症に与える影響 Q24|一般社団法人 日本生殖医学会
加齢とともに卵母細胞が老化し、染色体や遺伝子に異常が起こるリスクが高まる点にも注意が必要です。若く健康な卵子に比べ、受精卵になれる確率が低くなります。
また、年齢が上がると、子宮内膜症や子宮筋腫などの婦人科系疾患の発症リスクが高まります。病気が原因で排卵や着床がうまくできないケースもあるので、婦人科系疾患は女性不妊の大きな要因です。
男性
男性は、加齢により精巣機能が低下するため、妊娠確率が下がる恐れがあります。精子の質は35歳頃から低下が始まり、50代になると精液所見が以下のように変化します。
検査項目 | 30代と比較した場合の50代の精液所見 |
---|---|
精液量 | 3~22%低下 |
精子運動率 | 3~37%低下 |
精子正常形態率 | 4~18%低下 |
参考:年齢が不妊・不育症に与える影響 Q25|一般社団法人 日本生殖医学会
精子運動率とは、精液中で活発に動いている精子の割合です。受精能力の指標となる、正常な形の精子の割合を精子正常形態率といいます。
精液所見の低下は妊娠確率を下げる可能性があり、原因の1つは精索静脈瘤です。精索静脈瘤は進行性の病気で、気づかず放置すると、月日が経つにつれ精子を造る機能が低下します。
加齢による精巣機能悪化には一般男性で15%、不妊男性で40%もある精索静脈瘤が大きく影響しています。
精索静脈瘤を早期発見して適切な治療を行い、低下した精巣の機能を改善させれば、妊娠確率を上げられます。
妊娠の確率を上げる6つの習慣
妊娠確率を高めるための6つの習慣は、以下のとおりです。
・食生活を見直す
・適度な運動を行う
・睡眠を十分にとる
・ストレスを軽減する
・適度な飲酒・禁煙を心がける
・男性不妊の可能性を疑う
妊娠には、年齢のほかに健康状態も大きく関係しています。生活習慣を整えることは、妊活に対する意識をパートナーとそろえるきっかけにもなるでしょう。
食生活を見直す
妊活を始める際は、女性だけでなく男性も食生活を見直すことをおすすめします。
妊娠確率を高めたい男性が摂ると良い栄養素は、以下のとおりです。
栄養素 | 期待される効果 | 多く含まれる食品 |
---|---|---|
亜鉛 |
・精子の質向上・増加 ・前立腺の機能向上 |
・牡蠣 ・ホタテ ・レバー ・牛肉(赤身) ・豆腐 ・納豆 ・カシューナッツ ・アーモンド |
葉酸 |
・精子数の増加 ・精子のDNA損傷の予防 |
・枝豆 ・モロヘイヤ ・ブロッコリー ・ほうれん草 ・春菊 ・レバー |
ビタミンC |
・精子の酸化ストレス軽減 ・精子の運動率向上 |
・赤パプリカ ・キャベツ ・ブロッコリー ・いも類 ・キウイフルーツ ・イチゴ |
ビタミンE | 精液の質向上 |
・ひまわり油 ・モロヘイヤ ・かぼちゃ ・アーモンド ・いくら |
ビタミンD | 精子の運動率上昇 |
・きのこ類 ・しらす干し ・鮭 ・卵 |
オメガ3脂肪酸 | 精子の質向上 |
・青魚 ・アマニ油 |
妊娠に良いとされる食材ばかり摂るのではなく、バランス良く食べて体の調子を整えましょう。肥満は男性不妊のリスクを高めるため、脂質や糖質の摂りすぎにも注意が必要です。
適度な運動を行う
妊娠確率を高めたい男性ができることの1つに、適度な運動があります。適度な運動は、ストレスの軽減やホルモンバランスの改善、適正体重の維持に役立ちます。
筋肉量と男性ホルモンの分泌量には関係があるといわれているため、無理のない範囲で筋トレを行うこともおすすめです。男性ホルモンの多くは精巣で分泌され、性機能や精子を造ることに関与します。
激しすぎるトレーニングは、男性の妊活において逆効果になる場合があるので、ウォーキングやヨガなどの無理なく継続できる運動を行うと良いでしょう。
睡眠を十分にとる
十分な睡眠も、妊娠確率を高めたい男性が心がけたい習慣です。
男性ホルモンは就寝中に分泌されるため、睡眠不足はホルモンバランスが乱れる原因になります。男性ホルモンの働きが低下すると、精子の質や性機能に悪影響を及ぼす可能性があり、注意が必要です。
男性の睡眠時間が6時間未満・9時間以上の場合は、妊娠確率が低下するといわれています。パートナーの妊娠を望む男性は、毎日7〜8時間の睡眠を心がけ、規則正しい生活で体内時計を整えてください。
ストレスを軽減する
妊娠確率の向上を望むのであれば、ストレスを溜めないことも心がけましょう。過度なストレスは、体調に悪影響を及ぼし、自律神経の乱れやホルモンの分泌低下の原因になります。
早く子どもがほしいと焦ったり、過度に不安になったりすることも、ストレスとなり得ます。自分に合ったストレス解消法を見つけ、リラックスできる場所や趣味の時間を確保しておきましょう。
パートナーが、不安やイライラを溜めていないか気にかけることも大切です。お互いの気持ちを共有して支え合えれば、心の安定に繋がります。
適度な飲酒・禁煙を心がける
過度なアルコール摂取や喫煙は妊娠確率の低下に繋がるため、控えましょう。
アルコールを摂取しすぎると、男性ホルモンの働きが低下し、以下のような悪影響が出る可能性があります。
・精巣の萎縮
・精子数の減少
・性機能の低下
タバコに含まれる有害物質は、男性の性機能に密接に関連しており、ED(勃起不全)の可能性を高めます。
パートナーの妊娠を望むのであれば適度な飲酒や禁煙を心がけ、普段から体調を整えておきましょう。禁煙や節酒は、妊娠・出産が叶ったあとにパートナーと赤ちゃんの健康を守り、ともに子育てしていくためにも大切な習慣です。
男性不妊の可能性を疑う
妊娠確率を高めたい場合は、男性不妊を疑って検査することも有効な方法です。
不妊カップルのうち、男性側に原因があるケースは48%にものぼります。パートナーとともに健康的な生活習慣を心がけても妊娠に至らない場合は、自身に原因がある可能性を視野に入れることが大切です。
男性不妊で最も多い原因である精索静脈瘤は、治療できる病気です。加齢により妊娠確率が低下する懸念もあるため、泌尿器科などで早めに診察・超音波検査を受けましょう。
▼男性不妊に関するお悩みがある方は、以下の記事も参考にしてください。
・精子の質を高めたい
・妊活にやる気が出ない
・精索静脈瘤の検診を受けたい
自然妊娠の確率を上げるポイント
妊娠確率を上げるためにできる対策として、以下の3つがあります。
・排卵日前後に性行為を行う
・男性不妊の検査を行う
・男性不妊だった場合は治療する
女性だけに身体的・心理的負担をかけないよう、男性にできることについて詳しく解説します。
排卵日前後に性行為を行う
自然妊娠の確率を上げたい男性が意識すべきポイントの1つが、排卵日前後に性行為を行うことです。
妊娠するためには、卵子と精子が出会う必要がありますが、女性の子宮内はいつでも受精が可能なわけではありません。卵子は生理周期に合わせて毎回1つずつ排卵され、子宮へ送り込まれます。
排卵されるタイミングで性交渉を行うと、卵子と精子が出会うことが期待でき、妊娠確率を向上させられます。一般的な寿命は、卵子は排卵後24時間、精子は射精後約72時間です。妊娠するには、排卵のあと24時間以内に受精する必要があります。
射精のタイミングは男性が自身でコントロールできますが、排卵は女性による調整が困難です。しかし、基礎体温を使っておおよその排卵日を推測できます。
基礎体温は起床後体を起こす前に測る体温のことで、月経周期のなかで高温期と低温期に分かれています。月経から低温期が約2週間続いたあと、一度ガクッと下がり、急激に上昇して高温期に入るサイクルです。
低温期の最後に基礎体温がガクッと下がった頃が排卵日と考えられ、3日前〜翌日のタイミングで性交渉を行うと妊娠率が高くなります。
排卵日は、基礎体温のほか、排卵日予測検査薬を使うことでも推測できます。尿をかけるだけで排卵日の約1日前がわかるので、基礎体温と併用すると特定率が上がるでしょう。
女性の排卵日に合わせて性交渉を行い、妊娠確率アップを目指してください。
男性不妊の検査を行う
男性不妊の検査を受けることは、自然妊娠の確率を高めるポイントの1つです。妊娠が成立しにくい原因を特定・治療できれば、成功率をアップさせられるでしょう。
男性不妊の検査は、大きく以下の2つに分かれます。
・精液検査
・泌尿器科的検査
泌尿器科的検査は、触診と超音波検査で行われます。男性の不妊検査は大きな身体的負担をともなわず、短時間で終わるので、不安を感じる必要はありません。不妊治療を専門としている泌尿器科への相談を検討してください。
男性不妊だった場合は治療する
検査によって男性不妊がわかった場合は、妊娠確率を上げるために適切な治療を受けましょう。治療できる男性不妊の原因には、精索静脈瘤があります。
精索静脈瘤は、精巣から心臓へと戻る血管内で逆流が発生し、陰のうや精索がこぶ状に変化する疾患で、精巣機能や男性ホルモンの分泌の低下に繋がります。
痛みや見た目の異変などの自覚症状がない場合がほとんどであり、「泌尿器科で検査をしたら精索静脈瘤だった」というケースも少なくありません。
精索静脈瘤は、逆流している血管をしばる手術により治療が可能です。術後は精液所見や精子のDNAの改善・妊娠率の上昇・流産率の低下が期待できます。
精索静脈瘤は、一般男性の約15%、男性不妊患者さんの約40%に見られます。妊娠を望む男性は他人事と思わず把握しておき、見つかった場合はすみやかに適切な治療を行いましょう。
妊娠確率を上げる|不妊治療のステップ
妊娠確率を上げるための婦人科の不妊治療のステップについて説明します。
・タイミング法
・人工授精
・体外受精
・顕微授精
日本産科婦人科学会では、1年間自然妊娠しないケースを不妊症としています。不妊症のカップルが妊娠するために行う治療が不妊治療です。
不妊治療を行なった場合でも、妊娠確率は年齢とともに下がります。早めに行動を始めることが妊娠確率を高めるポイントです。ただし、精索静脈瘤手術などで男性不妊が改善し、自然妊娠する場合もあります。
タイミング法
不妊治療の最初のステップとしてよく用いられる方法に、タイミング法があります。
タイミング法は、妊娠しやすいタイミングを予測して性交渉を行う方法です。身体的負担が少なく、自然妊娠に近い形で進められる点がメリットです。
妊娠確率を上げるために、医療機関に頼らず、夫婦で排卵周期に合わせた性交渉を行うこともあるでしょう。
不妊治療では、卵胞の大きさやホルモンの値から排卵のタイミングを予測します。排卵誘発剤を使って人工的に排卵を起こす場合もあります。
タイミング法を半年試しても妊娠しなかった方は、不妊治療の次のステップに進むことを検討しましょう。
人工授精
タイミング法で妊娠しなかった場合は、次の選択肢として人工授精に進むことがあります。人工授精では、排卵のタイミングに合わせて洗浄・濃縮した精子を子宮内に直接注入します。
自然妊娠の場合、精子の数や運動率によっては子宮までたどり着けません。しかし、人工授精では、精子を子宮へ直接注入するため、卵子と出会う確率の向上が期待可能です。
精子が子宮に届いたあと受精できれば自然妊娠と同じ過程をたどり、着床・出産へと至ります。
体外受精
不妊治療においてタイミング法・人工授精で妊娠できなかったときは、体外受精のステップへと進むことが検討されます。
体外受精は、女性の体から採取した卵子を体外で精子と受精させる方法です。卵子に精子をふりかけて受精を促し、細胞分裂が進んだ状態の良い受精卵(胚)を子宮へ戻します。
受精卵を移植したあと、子宮内膜の状態を整えるために、女性にホルモン治療をする場合もあります。
体外受精は妊娠の確率が上がる一方で、排卵の誘発や採卵の際に、女性に身体的な負担がかかる点がデメリットです。
顕微授精
顕微授精は、高度な生殖補助医療技術の1つで、多くは通常の体外受精で妊娠しなかった場合に選択されます。顕微鏡で拡大視しながら、1つの精子を卵子に直接注入する方法です。
顕微授精では薬で排卵誘発を行い、卵胞に針を刺して採卵します。男性は自宅や病院で採精します。
精液の中から質の良い精子を選んで注入できるので、乏精子症や低い精子運動率といった場合にも有効です。しかし、いきなり生殖補助医療に頼るのではなく、検査をして精子の状態を向上できないか調べることも1つの手です。
妊娠確率を上げたい男性は当院へ
「妊娠確率を上げたい」「30代なので自然妊娠できるか不安」という男性は、当院へご相談ください。当院は、男性不妊の原因として最多である精索静脈瘤の専門的な検査・治療を実施しています。
当院の「日帰り顕微鏡下精索静脈瘤手術・ナガオメソッド」は、術後に87%の患者さんに精液所見の改善が見られている、再発や合併症のリスクが低い手術です。精子の状態が良くなれば、自然妊娠や、不妊治療のステップダウンが期待できるでしょう。
年齢が上がるとともに下がってしまう妊娠確率を少しでも高めるために、「男性不妊かもしれない」と不安な方は、ぜひ一度当院の初診をご予約ください。
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この記事の執筆医師

永尾 光一 先生
東邦大学 医学部教授(泌尿器科学講座)
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長
昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。
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