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年代別妊娠確率まとめ|20代・30代・40代の妊娠確率を徹底解説

妊娠し子供を出産することを希望する場合に、妊娠確率と年齢は切っても切り離せない関係です。体の老化があるように、妊娠に必要な卵子にも老化現象がおこり、加齢とともに妊娠できる確率は低下します。

本記事では、年代別の妊娠確率についてのデータを元に、妊娠にまつわる基本的な知識から不妊治療についても解説しています。

これから妊娠を希望される方、現在不妊症でお悩みの方もぜひ参考にしてください。

 

年代別の自然妊娠の確率

妊娠とは、女性の体内で排卵が起こり精子と出会って受精し、子宮内膜に受精卵(胚)が着床し成長することをいいます。排卵周期に合わせて性交渉を行い、排卵、受精、細胞分裂、着床の4つのステップがすべて正常に起こり、妊娠が成立することを自然妊娠といいます。

男女ともに健康で生殖機能に問題がなく、排卵日付近に性交渉を行った場合の妊娠率は、平均20~25%といわれています。この数字は女性の生理1周期あたりの確率となっているので、このまま妊活していくと半年後には約80%、1年で90%に近い方が妊娠するという計算になります。

しかし自然妊娠の確率には、年齢が大きく関係しています。先ほどの1周期あたりの妊娠率は年齢が上がるにつれて低下していき、女性の場合35歳を過ぎると急激に低くなります。

さらに、40歳では約10%、45歳になるとその確率は5%にまで低下し、自然妊娠する確率は0に近い数字になっていきます。

この数値はあくまで統計上ということになるため、実際に妊娠できるかどうかは生殖機能や、性交渉のタイミング、またパートナーとの相性などによっても左右され、個人差が大きいといえるでしょう。

男性では72日間かけて常に新しい精子が造られますが、精索静脈瘤、喫煙、加齢などによって精巣機能が衰えることが知られていて、妊娠させる力は年齢とともに低下していきます。そのため妊娠率とは男女双方の年齢や健康状態に大きく左右されます。

妊娠を希望する場合は、男女ともに妊娠に向け、卵子の老化、男性の精索静脈瘤、加齢、生活習慣などに配慮する必要があります。

 

年齢別の不妊治療をした場合の妊娠の確率

年齢別の不妊治療をした場合の妊娠の確率

妊娠を望み、避妊をしないで一定期間性交渉を行っても妊娠に至らない場合を「不妊」といいます。日本産科婦人科学会ではこの一定期間を「1年間」と定義しており、1年間自然妊娠しない場合を「不妊症」としていますが、男女とも不妊要因が有る場合は早めの治療を推奨しています。不妊症のカップルに対して行う妊娠するため治療を「不妊治療」と呼んでいます。

不妊治療には、近年進歩している生殖補助医療を含め、下記のような段階的な方法があります。

タイミング法

自然妊娠の場合も排卵周期に合わせて性交渉を行うと妊娠する確率が高くなりますが、不妊治療としてのタイミング法では、排卵誘発剤などを使って人工的に排卵を起こします。排卵を起こしたタイミングで性交渉を行う方法です。

人工授精

自然妊娠の場合、精子は自力で子宮まで泳いでいき卵子と出会い受精しますが、精子の数や運動率、精子や卵子の質によって子宮までたどり着けなかったり、受精が上手くいかなかったりします。その場合に、精子を直接子宮へ注入するのが人工授精です。子宮へ精子を届けた後は自然妊娠と同じ過程をたどり、着床・出産へと至ります。

体外受精

女性の体から採取した卵子を体外で精子と受精させる方法です。卵子と精子を同じ場所で培養します。正常に受精し細胞分裂が進んだら子宮へ戻します。

顕微受精

顕微授精は体外受精の方法の1つで、通常の体外受精の方法でうまく受精しなかった場合に、顕微鏡で拡大視しながらひとつの精子を直接卵子に注入する方法です。

これら4つのステップの不妊治療を行った場合の妊娠確率も、年齢とともに変動します。治療方法やクリニック、また患者様によって個人差がありますが、一般的に女性の場合は20代後半~30代前半が最も成功率が高いとされています。

例えば体外受精や顕微授精の場合、30代前半では妊娠確率は約40%あると言われていますが、40歳を過ぎるとその確率は20%以下です。

これらの不妊治療では、受精の手助けを行うことはできますが、卵子や精子そのものの質を改善したり老化を止めたりすることはできません。卵子のDNAと精子のDNAのダメージがあると受精卵のDNAもダメージされ、長引く不妊や繰り返す流産の原因にもなります。卵子の老化、精巣機能悪化要因(精索静脈瘤など)、生活習慣などに配慮が必要となります。

 

年齢が上がるにつれて妊娠がしづらくなる理由

加齢が妊娠に大きく影響している理由は、卵子の数の減少と老化、婦人科系疾患を発症しやすくなることといえるでしょう。

女性が妊娠し出産するための準備は、お母さんのおなかの中にいる胎児のときから始まっています。原子卵胞(げんしらんぽう)と呼ばれる卵子を入れておくための細胞の数は、妊娠5か月ごろにピークを迎え700万個ほどになります。

その後生まれるころには200万個に、生まれてからは年齢を重ねるごとに数は減少していき、月経がはじまる思春期の頃には20~30万個になっています。この卵子の数は生涯にわたって減り続け、増えることはありません。

卵子の数は、20代で10万個、30代で2~3万個、40代では1,000個ほどにまで減少し、やがて閉経を迎えるころには検出されなくなります。卵子の数は個人差があり、閉経までまだ残っている人もいれば、いざ妊娠したいと思ったときに、もうほとんど残っていないという人もいます。

また、卵子も体と同じように年をとり老化していきます。卵細胞が老化すると、染色体異常や遺伝子の状態に異常が起きやすくなり、健康な卵子に比べると受精卵になれる確率が低くなっていくのです。

卵子の数や質の問題に加え、子宮内膜症や子宮筋腫などの婦人科系疾患も加齢とともに発症しやすくなります。これらの疾患があると妊娠しにくくなることが知られており、不妊症の原因の1つとなっています。

男性も年齢が上がるにつれて妊娠確率が低下する

男性は精子を作る機能(造精機能)に問題がなく、射精ができる限り生涯にわたって妊娠を成立させることはできます。それは、男性の場合、72日間で常に新しい精子が造られるからです。しかし、精子を造る工場である精巣の機能が低下すると良い精子を造ることができなくなります。精巣機能の悪化要因として、精索静脈瘤、加齢、生活習慣などがあります。加齢は治療できませんが、精索静脈瘤や生活習慣は改善させることができます。

不妊症と聞くと、女性側の問題であるように捉えられがちですが、男性側に問題がある場合も不妊症カップル全体のおよそ48%もあり、男性不妊は珍しいことではありません。

男性不妊となる原因は様々ですが、精索静脈瘤や加齢などによって精巣機能が低下し、精子濃度低下、精子運動率低下、精子正常形態率低下、精子DNAダメージの悪化などで妊娠率低下や流産率が上がる要因となります。

加齢は治療することはできませんが、精索静脈瘤を早期発見して適切な治療を行えば低下した造精機能や精子のDNAを改善させることができます。
妊娠を希望する場合は、不妊は女性だけの問題とせず、男性も泌尿器科や不妊治療クリニックなどで早い段階で検査を行うことをおすすめします。

▼精索静脈瘤についての詳しい説明は、こちらもご覧ください。
精索静脈瘤 ―銀座リプロ外科

 

自然妊娠の確率を上げる方法

自然妊娠の確率を上げる方法

年齢とともに下がってしまう自然妊娠の確率ですが、妊娠率を上げるポイントはいくつかあります。

妊娠確率の高い排卵日前後に性行為を行う

妊娠するためには、卵子と精子が出会う必要があります。しかし、女性の子宮内にいつも受精が可能な卵子がいるわけではなく、周期に合わせて毎回1つずつ排卵され子宮へ送り込まれます。

排卵されるタイミングで性交渉を行うと、卵子と精子が出会うことができ妊娠率が高まります。卵子の寿命は排卵後24時間、精子の寿命は射精後約72時間といわれます。そのため排卵され24時間以内に精子と出会う必要があります。

射精のタイミングはコントロールすることができますが、排卵日は自然にはコントロールすることができません。しかし、基礎体温を使っておおよその排卵日を推測することはできますので、普段から記録しておくとよいでしょう。

基礎体温は起床後体を起こす前に測る体温のことで、月経周期の中で高温期と低温期に分かれています。月経がはじまると低温期が約2週間続いた後一度ガクッと下がり、その後急激に上昇して高温期というサイクルです。低温期の最後にガクッと下がったころが排卵日と考えられ、性交渉を行うと妊娠率が高くなるとされています。

排卵日を知る方法は、基礎体温から推測する方法のほか、排卵日予測検査薬を使っても知ることができます。尿をかけるだけで排卵日の約1日前がわかるので、基礎体温と併用することで排卵日の特定率が上がるでしょう。このように、女性の排卵日に合わせて性交渉を行うことで、妊娠率の向上が期待できます。

男性不妊の治療を行う

不妊の原因は、女性だけではなく男性にもあることがわかっています。不妊症のカップルのうち約48%は男性不妊が原因であるというデータもあるほど珍しいことではなく、治療すれば妊娠率をアップできるケースがあるのです。

男性不妊で治療可能な疾患に精索静脈瘤があります。精索静脈瘤は、陰嚢の精索と呼ばれる静脈や精管の束の部分にこぶ(瘤)のようなものができる疾患です。精索静脈瘤になると、造精機能や精子のDNAに問題が起きます。痛みや見た目の異変など自覚症状がない場合がほとんどで、泌尿器科的検査を行ったら精索静脈瘤だったというケースも少なくありません(男性不妊の40%、一般男性の15%に精索静脈瘤があります)。

精索静脈瘤は、手術で治すことができます。術後は精液所見や精子のDNAが改善し、妊娠率の上昇、流産率の低下などの報告がありますので、不妊治療としてまずは男性の泌尿器科的検査を行い、適切な治療を行いましょう。

 

妊娠する可能性を高める5つの習慣

妊娠には、年齢のほかに体調や精神状態も大きく関係しています。ここでは妊娠する可能性を高めるための5つの習慣をご紹介します。

健康的な食生活を心がける

健康的な食生活は、体調を整える上でも大切な要素です。妊娠によいとされるものばかり意識して摂るというより、バランスよく食べて基本的な体の調子を整えましょう。また糖の取りすぎにも注意しましょう。

適度な運動を行う

適度な運動は、ストレスの軽減やホルモンバランスの改善に役立ちます。また、痩せすぎや太りすぎなども不妊の原因の1つとなるため、継続できる軽い運動で体重をコントロールしましょう。あまり負荷の大きい運動より、ウォーキングやヨガなどがおすすめです。

睡眠を十分にとる

睡眠不足はホルモンバランスが乱れる原因になることもあります。毎日7~8時間の睡眠時間をとるように心がけ、規則正しい生活で体内時計を整えましょう。妊娠に備える体づくりが大切です。

ストレスを軽減する

ストレスは知らず知らずのうちにたまり、体調に悪影響を及ぼすことがあります。妊娠にもストレスは大きく関係していて、自律神経が乱れたりホルモンの分泌が悪くなったりする原因になるといわれています。

妊娠したいと焦ったり、過度に不安になったりすることも、ストレスとなりうることがあります。リラックスできる時間や趣味の時間を持ち、自分に合ったストレス解消法を見つけておきましょう。

禁煙・適度な飲酒

喫煙や過度なアルコール摂取は妊娠確率に悪影響を及ぼすことがわかっています。適度な飲酒や禁煙を心がけ、普段から体調を整えておきましょう。

 

男性不妊の可能性も疑う

何度かふれているように、不妊症は女性の問題だと思われがちですが、そうではありません。不妊カップルのうち、男性側にも不妊の原因があるケースが48%にものぼるというデータもあり、男性不妊は珍しいことではないのです。

男性不妊の原因は、精子の量や質、運動能力などが影響しているといわれています。これら精子所見が悪くなる原因に、精索静脈瘤、陰嚢の温度上昇、ストレス、喫煙、過度なアルコール摂取などが挙げられます。

男性側も女性と同じように健康的な生活習慣を心がけ、不妊の原因となる疾患などがある場合は早めに治療することが大切です。泌尿器科や不妊専門クリニックなどでは不妊の原因を検査することもできます。妊娠を希望する場合は、医師に相談し治療が必要な場合は早めに対処しましょう。

▼男性不妊に関してはこちらの記事もご覧ください。

 

まとめ

妊娠率は、男女ともに年齢が上がるにつれ低下し、不妊治療を行った場合でも妊娠確率は年齢とともに下がります。

妊娠に影響を与える要素は様々ありますが、加齢は誰にでも同じように起こることの1つで避けることができません。健康的な生活習慣やストレスの軽減など、日常的にご自身でできる改善を心がけ、適切なタイミングで不妊治療を受けることが妊娠率を高めるポイントです。

また、不妊の原因が女性にだけあるものと決めつけないで、男性不妊には治療可能な精索静脈瘤もありますのでのパートナーと一緒に妊活に取り組むことが大切です。妊娠は男女どちらか一方だけでは成立しません。

妊娠を希望する場合や不妊の治療を始める場合は、まずは生殖医療専門医(女性は婦人科、男性は泌尿器科)を受診し、医師に相談のもと適切な検査や治療を行うことをおすすめします。

年齢とともに下がってしまう妊娠確率を少しでも高いものにするため、時間を先延ばしにせず早めに治療をはじめましょう。

当院では、精索静脈瘤を、10分程度の診察とエコーで診断できます。精索静脈瘤手術は、1時間程度の日帰り手術を行っております。麻酔は、局所の麻酔だけですので中学生でも日帰り手術が可能です。
精索静脈瘤を治療することにより、精子の染色体・DNAが良くなります。DNAが良くなれば、顕微授精・体外受精・人工授精・自然、全ての方法で妊娠率・出産率が上昇し、流産が減少します。奥様の負担を軽減できます。

この記事の執筆医師

永尾 光一 先生

永尾 光一 先生

東邦大学 医学部教授(泌尿器科学講座)
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

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