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女性不妊症については「女性不妊症の原因とは?原因になる疾患について」の記事でご紹介していますので、合わせてご覧ください。

顕微授精とは?費用や妊娠の確率、リスクについても解説

人工授精説明画像

 

顕微授精とは

顕微授精は体外受精の1つです。ICSI(Intracytoplasmic sperm injection=卵細胞質内精子注入法)とも呼ばれるこの方法は、女性の体内から取り出した卵子を顕微鏡で拡大しながら専用の針で精子を注入し、受精の手助けをする方法です。

元々授精障害などに対応する治療法で、タイミング療法や人工授精などを行っても妊娠しない場合や、女性側の年齢に考慮した場合に検討され用いられます。

顕微授精のメリット

顕微授精には、以下の3つのメリットがあります。

  • ・精子が1つ以上あれば行える
  • ・授精障害があっても授精が可能
  • ・体外受精よりも受精の可能性がやや高い

顕微授精のデメリット

顕微授精にはメリットがある一方で、マイナス面も存在します。以下のデメリットを把握しておきましょう。

  • ・卵子に人工的に穴を開けるので、卵子が傷ついたり壊れたりする可能性がある
  • ・成熟した卵子しか使えない
  • ・胚培養士の力量が問われる
  • ・定期的な通院が必要
  • ・工程が多いため、費用が高額

 

顕微授精が適応になるケース

顕微授精が行われるのは、体外受精で受精が成立しなかった場合や、卵子・精子の数が少ないなどの理由で受精が見込めない場合に用いられます。通常の体外受精の場合は、卵子1つに対して精子が10万個必要だと考えられていますが、顕微授精の場合は卵子1つに対して精子が1つあれば受精が可能なので、精子が少ない場合は顕微授精が適応になります。
また、女性の年齢を考慮して行われる場合もあります。

 

顕微授精の妊娠率

日本産婦人科学会が2018年に発表した顕微授精の妊娠率は19.9%でしたが、発表当時よりも顕微授精の症例は増えてきていますので、近年では、顕微授精を用いた場合の妊娠率は50%~70%だと言われています。

数値が大きく開いている理由は、個々の年齢の差やクリニックの差によって生じています。基本的に顕微授精は体外受精よりも妊娠率が高い傾向にありますが、胚培養士の経験や患者背景が異なるため、安易に比較はできません。

顕微授精はあくまでも受精の手助けをする方法なので、必ず受精するわけではありません。妊娠に最も重要なのは女性の年齢なので、年齢が上がると妊娠率は下がってしまいます。

 

体外受精と顕微授精の違い

体外受精と顕微授精は、どちらも体外で受精が起こります。この時使われる卵子と精子は、通常同日に採卵・採精されます・どちらも受精に必要な卵子と精子は1つずつですが、受精のさせ方に違いがあります。

体外受精では、卵子と精子を一緒に培養して(媒精)して受精させますが、このとき、精子は十分な精子の数が必要です。そして精子が自らの力で卵子に入って行くことで受精が起こります。
一方、顕微授精では、人工的に精子を卵子に注入することにより、受精がおこります。1個の精子がいれば顕微授精は可能なので、乏精子症や体外受精をするには精子の数が足りない場合でも受精が可能となります。
※精子が少ない場合は、予め精巣内精子回収を行い、凍結保存することがあります。

体外受精については、「体外受精とは?費用やスケジュール、妊娠の成功率などを解説」をご覧ください。

 

人工授精と顕微授精の違い

人工授精と顕微授精は、どちらも人の手により精子を注入されますが、受精自体は、人工授精では体内で起こり、顕微授精は体外で起こします。

人工授精では、マスターベーションにより射出された精液を洗浄し、濃縮した「調整精子」を準備します。それを排卵日に、医師の手により、子宮内に注入されます。
一方、顕微授精では、人工的に精子を卵子に注入することにより受精を行います。

人工授精については、「人工授精とは?流れや費用、妊娠確率、副作用などを解説」をご覧ください。

 

顕微授精の流れ

排卵誘発

注射や内服などの排卵誘発剤により卵巣を刺激し、排卵を促します。正常周期で排卵が起こる場合でも、確率を上げるために行われることがあります。卵巣刺激の方法は複数あり、年齢や卵巣予備能(卵巣の機能)などに考慮して選択されますが、卵巣の機能が悪い場合は、卵巣刺激の方法が限られてしまいます。

採卵

経膣式超音波で卵巣内の卵胞を見ながら、膣から専用の針を入れて卵胞に刺し、卵胞液とともに卵子を吸引して取り出します。針を刺すので多少の痛みはありますが、静脈麻酔や座薬などの麻酔を使って、痛みを緩和しながら行われます。

採精

卵子が確認出来たら精子を採取します。当日の来院が不可能な場合は、自宅で採精して持参することや、あらかじめ凍結保存した精子を使うこともあります。

受精

顕微鏡を使って、細いガラス管に採取した精子を取り入れ、直接、卵子の細胞質に精子を1つ入れます。

胚培養

精子を注入した卵子は、専用の培養液を用いて培養します。この作業はインキュベーターという機械で、温度とガス濃度をコントロールしながら、体内と同じ環境を作って行われます。

胚移植

良質な胚をカテーテルで子宮内に戻します。多胎を防ぐためにも、移植する胚数は原則1個と日本産婦人科学会の規定で決まっていますが、女性の年齢や過去の治療歴などを考慮して2個移植する場合もあります。
胚移植には、受精してから2~3日後に行う初期胚移植と、5~6日間培養して着床直前の胚を移植する胚盤胞移植があります。

妊娠判定

胚移植から約2週間後に、尿検査や血液検査で妊娠判定を行います。

 

顕微授精にかかる費用

顕微授精は体外受精に比べて工程が多くなるため、費用が高額です。採卵や採精の方法でも料金は異なりますが、顕微授精の場合は、各クリニックの体外受精の料金や胚移植の料金にプラスして、約5~6万円ほどかかります。

 

顕微授精のリスク

顕微授精のリスクには、下記のような例が挙げられます。

  • ・卵巣過剰刺激症候群(OHSS)
  • ・受精卵ができない
  • ・妊娠しない
  • ・受精しても胎児への懸念がある

 

卵巣過剰刺激症候群は、排卵誘発剤の過剰投与により、卵巣が過剰に反応している状態をいいます。腹水が溜まったり場合によっては入院が必要です。また、血液が濃縮し、血栓症・脳梗塞のリスクもあり、妊娠するとさらに悪化してしまいます。
受精卵ができない、あるいは、胚(受精卵)ができた場合でも、すべてにおいて妊娠できる訳ではありません。
また、顕微授精と胎児の状態の関係を懸念する声はありますが、現在のところ、胎児に異常が生じる確率は、自然妊娠と差がないと報告されています。
研究段階ではありますが、顕微授精は、自然妊娠より、流産・早産・低体重・先天異常の割合が若干高いとされています。いずれにしても、重度の男性不妊症に顕微授精を行った場合、顕微授精を適切に行われた場合でも、染色体や造精機能関連遺伝子の異常が発生する可能性はあります。(※婦人科治療を始める前に、男性の泌尿器科的検査を行うことをお薦めいたします)

 

顕微授精の成功率を上げるためにできること

顕微授精を成功に導くためには良質な卵子と精子が必要です。DNAや染色体にダメージがある状態では成功率も下がってしまいます。顕微授精を行う前に、女性も男性も精密な検査を行い、検査の結果が悪かった場合は、適切な治療を行うことで成功率の向上が期待できます。
また、自身の体内で作られる卵子や精子のために、日々の生活や食生活を見直して常に良好な状態を保つことも大切です。特に、妊娠と食生活は深いつながりがあるとも言われているので、意識的に改善するとよいでしょう。


この記事の執筆医師

永尾 光一 先生

東邦大学 医学部教授(泌尿器科学講座)
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

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