COLUMN

女性不妊症については「女性不妊症の原因とは?原因になる疾患について」の記事でご紹介していますので、合わせてご覧ください。

人工授精とは

人工授精説明画像

人工授精とは、AIH(Artificial Insemination of Husband)とも言われ、排卵の時期に管で精液を子宮内へ直接注入する方法です。

タイミング療法で妊娠しない場合に行われる、婦人科治療で一番負担の少ない治療法です。いずれも、卵管狭窄や卵管閉塞がないことが前提となります。副作用もほとんどなく、胎児への影響もない方法です。
また、人工授精には様々な方法があり、患者様の状態に合わせて検討されます。

適応となるのは?

人工授精は、タイミング療法を一定期間繰り返し実施しても妊娠しない場合に検討されます。
女性側の原因としては、子宮頚管性不妊症、子宮内膜症性不妊症、卵管性不妊症、原因不明不妊症などです。
また男性側の原因としては、勃起障害や、(腟内)射精障害、精液量が少ない、あるいは性交障害(セックスレスを含む)、精液所見の低下がある場合などです。

例えば、総運動精子数(精液量x濃度x運動率)が900万以上1560万未満の場合は、人工授精レベルの精液所見です。
乏精子症や精子無力症、特に精子の運動や濃度に問題がある場合には、男性の泌尿器科的検査を行うことをお薦めしています。(ガイドライン推奨グレードA)

精液検査の結果についてはこちらの記事もご覧ください。
精液検査の結果はどう見たらよい?不妊治療に影響のある数値

人工授精の種類

人工授精には、ドナーの精子を用いる非配偶者間人工授精 (artificial insemination with donar’s semen: AID)と、夫の精子を用いる配偶者間人工授精(artificial insemination with husband’s semen: AIH)があります。

また、授精する場所により、子宮頸管内人工授精(intracervical insemination: ICI)、子宮内人工授精(intrauterine insemination: IUI)、卵管内人工授精(卵管内精子潅流)(fallopian tube sperm perfusion: FSP)、腹腔内人工授精(direct intraperitoneal insemination: DIPI)があり、それぞれ患者様の状態により精子を注入する場所が選定されます。
子宮頸管内人工授精より子宮内人工授精の妊娠率が高いことが報告されており、現在、人工授精の方法の主流は子宮内人工授精とされています。

タイミング法と人工授精との違いとは?

タイミング法では、医師が最も妊娠しやすい日を指導し、そのタイミングで夫婦は性行為を行います。

タイミング法では膣内の子宮の入口手前に精液が入りますが、人工授精では管を使い予め調整された精子(精液を洗浄し濃縮されたもの)を子宮内に入れるので、その後のプロセスは自然に近いと言えます。状況により、少量の排卵誘発剤が使われる場合があります。

顕微授精・体外受精との違い

体外受精と顕微授精は、どちらも体外で受精が起こります。この時使われる卵子と精子は、通常同日に採卵・採精されます・どちらも受精に必要な卵子と精子は1つずつですが、受精のさせ方に違いがあります。

体外受精では、卵子と精子を一緒に培養して(媒精)して受精させますが、このとき、精子は十分な精子の数が必要です。そして精子が自らの力で卵子入って行くことで受精が起こります。
一方、顕微授精では、人工的に精子を卵子に注入することにより、受精がおこります。1個の精子がいれば顕微授精は可能なので、乏精子症や体外受精をするには精子の数が足りない場合でも受精が可能となります。
※精子が少ない場合は、予め精巣内精子回収を行い、凍結保存することがあります。

顕微授精と人工授精の違い

顕微授精と人工授精は、どちらも人の手により精子を注入されますが、受精自体は、顕微授精は体外で起こし、人工授精では体内で起こります。

顕微授精では、人工的に精子を卵子に注入することにより受精を行います。
一方、人工授精では、マスターベーションにより射出された精液を洗浄し、濃縮した「調整精子」を準備します。それを排卵日に、医師の手により、子宮内に注入されます。

体外受精と人工授精の違い

体外受精では、予め採卵し培養した卵子を使い体外で受精が起こるのに対し、人工授精では、排卵された卵子と体内で受精が起こります。どちらも精子が自分の力で卵子に入って行くことで受精が起こります。

人工授精の流れ・方法

排卵日予測

エコー検査で子宮内膜の厚さや、卵胞がどの程度まで発育しているかや、尿中LH測定、頸管粘液を検査することにより排卵日を予測します。(ホルモン検査を併用することもあります。)

卵胞モニタリング

卵胞が育っているかを確認します。通常、卵胞は20ミリの大きさになります。

当日:【男性】採精

精液を採取します。禁欲期間は長くても短くても良くはないので、3日が望ましいです。(採精は、できれば院内採取してください。精子は温度や紫外線の影響を受けやすく、自宅採取の場合は、搬送過程でダメージしてしまうからです。やむを得ず自宅採取となる場合は、肌に当て体温と同じ温度で搬送すると良いです。)
採取された精液は処理され、次に精子を濃縮し良好な精子のみを回収します。この時に細菌や白血球などの不純物を取り除きます。

当日:【女性】超音波検査・人工授精

調整を行った精子を子宮内へ注入します。この時15秒以上かけてゆっくり注入し、すぐに動くより実施後10分以上安静にしたほうが妊娠率が高いとされています。

2日後~:黄体ホルモン補充(hCG注射)

人工授精後は、排卵と黄体機能の確認をします。低下が認められる場合は、内服もしくは注射で黄体ホルモンの補充を行います。
黄体ホルモンの低下は、受精卵の着床障害の原因になることがあります。

妊娠判定

人工授精後、2週間が経過しても月経が起きない場合は妊娠判定を行います。

人工授精のデメリット・リスク・副作用

人工授精を行うことにより、男性側には特にリスクはありません。しかし女性は、腹膜炎などの感染が起きたり、出血、多胎妊娠、過剰刺激症候群となることがあります。

通常、精液は子宮頚管と子宮頸管粘液を通過することで殺菌され、子宮内へ直接細菌が入ることはありません。しかし人工授精に使う精子は、事前に処理はしますが無菌にはなりません。人工授精では精子を直接子宮内に入れるため、感染のリスクがあります。もし感染してしまうと、菌が卵管から腹腔内に繁殖し、腹膜炎となることがあります。子宮内膜症やクラミジア感染の既往がある場合は、リスクが高まります。

人工授精をする前に男性不妊検査を行うべき理由

婦人科では、精液検査の結果で、総運動精子数が900万以上1560万未満の場合は人工授精を薦められます。しかし男性側に精索静脈瘤などの治療可能な男性不妊の原因が見つかり、それを治療することにより、精液の改善が期待できます。

精液が改善すると、自然・人工授精・体外受精・顕微授精、全ての方法において妊娠率・出産率が上昇し、流産率・奇形率が減少します。

婦人科治療を始める前に、泌尿器科的男性不妊検査を受けることは、奥様の負担の軽減にも繋がります。
欧米では泌尿器科的検査を行うことは、ガイドライン推奨グレードAランクです。本邦でも2021年より生殖医療ガイドラインに定められることとなりました。

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